サムスン「Gear Fit」レヴュー:美しいデザインが台無し、全然使えない最新ウェアラブルデバイス
日本ではまだ未発売ですが、サムスンの新しい腕時計型ウェアラブルデバイス「Gear Fit」は、今存在するベストなアクティヴィティトラッカーに成り得るか?
いや、ならないでしょう。全くそんなことない。実現されていない可能性ほど悲しい物はありません。早速、米ギズモードがレヴューしています。
これは何?
たくさんの最新機能を備える、スマートウォッチタイプのアクティヴィティトラッカー。
歩数、眠り、さらに心拍数も計測し、スマートフォンからの通知も表示することができます。
ただし、スマートフォンはサムスンのAndroid端末でしか使えません。
何がすごいのか?
Gear Fitはこの混沌としたウェアラブルデバイス市場に投入された中でもダントツに見た目が良いプロダクトです。そしてアクティヴィティトラッカーとスマートウォッチの両方を上手く兼ね備えているというから期待せずにはいられません。
デザイン
色気があって魅力的。
フロントからセンターまで、1.84インチ Super AMOLEDフルカラータッチディスプレイ。Galaxy S5のような漆黒のブラックのボディに鮮やかでカラフルなディスプレイ。ディスプレイ部分を囲うシルバーのクロームベゼルはGalaxy Noteでもおなじみです。ボタンひとつでスクリーンを起動、ホームスクリーンに戻って、そしてGear Fitをオフにできますよ。うん、とてもシンプルです。
バンド自体は標準的なハードラバー仕様で6色展開。エッジも中々良い感じで今まで使った中でも最もつけ心地が良いと思いました。シンプルな2つの穴を2つの留め金でとめる仕組み(Fitbitみたいな)で、思った以上にしっかり固定されて、外れてしまうことはありません。全体がとても艷やかで滑らかなので、主張し過ぎないウェアラブルデバイスです。目立たないんだけど、誰かに気づいてもらった瞬間(けなされる代わりに)褒めてもらえる、そんなデバイスです。
このデバイスの裏面はパルスオキシメータのような心拍数を測るセンサになっています。またIP67規格(水中に機器を沈めて機器の上面150mm以上、下面が1m以上の状態で、30分以上この状態を保持できる)の防水仕様です。つまりこのデバイスを身に付けたままシャワーを浴びたり雨に濡らしても平気ということ。でもスイミングは止めておいた方が無難でダイビングは無理、な防水レベルと思っておけば大丈夫。
またBluetooth 4.0 LEで、サムスンのAndroid端末と接続しています。
使ってみて
名目上、Gear Fitはとても素晴らしいものに見えますよね。歩数も測ってくれるし、サムスンのAndroid端末のアプリケーションからの通知を受け取ることもできます。エクササイズの状態を計測し、サムスンの健康管理アプリ「S Health」と連携し、スマートフォンでより多くのデータを確認することができます。
完璧な仕様に思えるのですが、実はそうでも無いのです…。
公正な立場で言うならば、Gear Fitはスマートフォンの通知を表示するセカンドスクリーンとして使うなら良いと思います。
腕についているGear Fitをパッと見て、処理すべきEメールは届いてないかどうか確認して、そしてそれまでやっていた作業にそのまま戻る…という動作は合理的で便利だと思います。
私は、Gmail、Google Voice、ハングアウト、カレンダ、Twitter、そしてFacebookの通知を受け取るように設定しました。(通知が)ポップアップされ、それをクリックすると、最初の数行のテキストが表示されます。もっと読みたい場合は、「Show on device(デバイスで見る)」ボタンを触って、スマートフォン上から該当するアプリを開いて確認することができます。
通知パネルとシームレスに連携出来ていて、去年のGalaxy Gearより、そしてその後継機種のGalaxy Gear 2より、大きく改善できていると思います。
でもGear Fitの独特な形状は、実際にこれらの通知を読むのに若干のイライラがあることは否めません。
腕の骨に垂直に装着していると読むのが辛いです。
標準的な方向で身に付ける(例えば指が上方向を向いてる時など)状態だったら、肘をぎゅっと内側にしぼめて、首を傾けて、ティラノサウルスみたいに腕を変に窮屈にした状態でスクリーンを見ないといけないのです。
スクリーンをフリックした時、指が自分の胸方向を指していたらまだ読みやすいかもしれませんが、それでも快適とは言い難い。
でも素晴らしい事に、サムスンはこのフィードバックに対して即座に対応し、スクリーン縦向きモードを作ってくれました。これでずいぶんと快適になりましたが、でも通知が来た時はテキストの表示が変なふうに分割されて表示されてしまうという悩みもあったりします。
また歩数計はあまり正確ではありません。散歩に出かけた時、自分で慎重に500歩数えてみたのですが、Gear Fitは700歩と示してくれました。どれだけサバ読んでるんでしょうか、たったこれだけで、使えない端末であるということが分かってしまいました。
さらに、手動で歩数計をスタートさせなくちゃいけないのも面倒。これは他のアクティヴィティトラッカーでは不要な作業のはずです。
まだまだダメ出しは続きます。
Galaxy端末に搭載されている「S Health」アプリにも歩数計が備わっています。きっとGear Fitともうまく連携してくれているはずなんです、理論上はね。
でも実際は、全然そんな事ありません。同期設定は、一番頻度が多いオプションで3時間ごと。または手動で同期。それでも気にならない人ならまだ許せるでしょうけど、そもそも全然Gear Fit とS Hearthの言ってることが違うわけです。
「2つの物事を同時に行えるように設計したのに、実際は全然連携しない」問題は、ランニング時にも顕著に現れます。
理想として、Gear FItはランニングアプリとしての「S Health」(それもRunkeeperなどの標準的なフィットネスアプリに遅れをとっている)のセカンドスクリーンとしてガッツリ連携するはずだと思いました。例えば、走りながらGear Fitで心拍数などのデータとかみたいと思いますよね。でも全然できません。
Gear FitとGalaxy S5の「S Health」アプリのランニングモードは全く別個のものとして動作しています。2人のデジタルコーチが、同時に2つの違う事を言ってくるんですよ。
そして走り終わった後、2つの異なるランニングレポート(しかもデータの差が酷い)を手に入れることができます。なんじゃこりゃ。
そしてスリープトラッカー(睡眠計)もひどい出来。
寝るときに、手動でスタートし、起きたら手動でストップしないといけないとか。そんなのすぐに忘れるに決まっているし、Basis Bandのような競合製品の要件にも全く追いついていません。
そして本当の問題は、それらのデータをどこにもエクスポートできないこと。S Healthアプリですら見ることができません。Gear Fitで睡眠を計測したとしても、起きた時に一回だけ時計のディスプレイに結果が表示され、後はデータは「週間睡眠履歴」のグラフに追いやられるだけ。使えなさすぎる。
またGear Fitをスリープモードにしている時は通知されないようにしたいと思いますが、この辺りも全然使えません。時計そのものからオフにしたり、ミュートすることができません。スマートフォン端末から「Gear Fit Manager」アプリを立ち上げて、毎晩通知をオフにして、そして朝になったらオンにするという面倒な作業で解決できますけどね。
「Gear Fit Manager」アプリはいくつかの機能を持っています。例えばGear Fitの壁紙や時計のスタイルを変えたり、表示される通知をコントロールすることができます。
「S Health」アプリの設定は、「Gear Fit Manager」アプリの中で(すでに混乱してきます)、設定できて、もっと多くのアプリをインストールするのはオプションです。
Gear Fitのメニューオプション「App Connect」をクリックすると、「Strava」をオン・オフするトグルが表示されます。
ただしこのStrava、Gear Fitとなーんにも連携しません。このStravaが使えるアプリは一切無し。存在価値不明でした。(アップデート:Stravaの内蔵され互換性が判明したのですが、StravaはまだGalaxy S5上で適切に動作していなかったようです。)
つまりまとめると、Gear Fitのソフトウェアは、完全に根本的に破綻しています。
Gear Fitのディスプレイはとても美しいけれど、アンビエントライトセンサーがないため、常に明るすぎたり暗すぎたりするのも難点。もし「ウェイクアップジェスチャー(時計を確認するジェスチャー)」のまま寝てしまったら、寝返りを打つ度に、時計が光って毎回目が覚めるのも鬱陶しい。
良い点も述べておきましょう。1回の充電で4日間電池がもつのは良いですよね。あとは何度もシャワーを浴びたけど全然大丈夫だったことでしょうか。
好きなところ
ハードウェアはほとんどパーフェクト。
アンビエントライトセンサーも無いし、Eメールに簡単に返事できるマイクも無いけれど。
でもスクリーンはとっても綺麗で、バンド部分は快適で、全体的な見た目はとっても良い感じ。1回の充電で4日間持続して防水仕様なのも頼もしいですね。
Eメールやテキストメッセージ、Twitterの@リプライ、Facebookメッセージの通知がパッと読めるのも便利。ミュージックプレイヤーをコントロールできるのもグッドです。
ダメなところ
ソフトウェアが救いようのないくらい酷い。悲劇的に酷い。
Gear Fitの開発チームとS Healthの開発チームはちゃんと話し合って連携したのでしょうか? さらに腹ただしいのは、自社製品の囲い込みのためにサムスン製のデバイスとしか連携しないようになっているところです。
Gear Fitの歩数計は不正確、エクササイズのアプリも「S Health」と全然統合されていない、睡眠データはどこにもエクスポートできない。屋外にいる時など、スクリーンを最大限に明るくしたくて設定を変えたとしても、その設定は5分しか続かないのも微妙すぎます。ランニングしに行く時など、屋外でスマートウォッチの明るさが5分しか持たないとか、イラッとしますよね…。
さらに言えばタッチスクリーンの感度もあまりよくありません。
これは買うべき?
答えはノー。絶対に買うべきではありません。
ソフトウェアの出来が悪すぎてせっかくのデバイスが台無し。その上価格は200ドル(約2万円)。サムスンはソフトウェアの大改修(というか徹底的に)をしてくれたとしたら、素晴らしいデバイスに大変身する余地はあると思いますが。
でも現時点では、サムスン製の端末のみで何とかかろうじて使うことができるだけ。
つまり、要らないデバイスということです。
Samsung Gear Fit仕様
・接続:Bluetooth 4.0 LE
・CPU:180MHz ST-Microelectronics STM32F439
・ディスプレイ:1.84インチ Super AMOLED
・バッテリー:210 mAh
・重さ:27グラム
・価格:200ドル(約2万円)
source: Samsung
Brent Rose - Gizmodo US[原文]
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