阿良々木暦「いおりレオン」
- 1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/25(金) 20:35:52.09 ID:6I5S2gV60
- ・化物語×アイドルマスターのクロスです
・化物語の設定は終物語(下)まで
・ネタバレ含まれます。気になる方はご注意を
・終物語(下)より約五年後、という設定です
・アイドルマスターは箱マス基準
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阿良々木暦「たかねデイフライ」 - 3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/25(金) 20:44:39.08 ID:6I5S2gV60
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001
雨が、降っていた。
ざあざあと屋根を無数に叩くその無機質な音は、車の排気音や喧騒と混じり合って一種のオーケストラを奏でている。
雨は好きだ。
雨は、嫌なことや間違えたこと、過去のあやまち、そういった類のすべてを洗い流してくれる――そんな気がして。
「なあ、水瀬――例えばの話なんだけど、さ」
僕は水瀬に語り聞かせる、と言うよりは誰にでもなく語り出す。水瀬が聞いているかどうかはどうでもいい。
時刻は夜の七時。
外はもう夜闇に包まれており、暗い事務所の一室で、僕は水瀬伊織と机を挟んで向かい合っていた。
この時間帯に窓のブラインドを閉めないでおくと、事務所のすぐ側にある信号機が変わる度に事務所に光が差し込む。
それは赤だったり黄色だったり時には青く点滅したりして、僕はそのサイケデリックな人工的な光のアートを気に入っていた。
一人で残業する時はわざとブラインドを開けっ放しにしたりする位だ。
「あくまで例えばだよ、水瀬が今にも飢えて死にそうだって時に、目の前に食べていい、と食事を出されたとしよう」
水瀬伊織、十五歳。
日本では有数の財閥である水瀬財閥の娘でありながらアイドルを営む少女。
性格は誇り高く不遜。
そんな気質と矜恃に見合う実力を持った気高いアイドル。
他のアイドル達や秋月に音無さんも帰宅し、今はアイドルの仕事を終え帰ってきた水瀬と僕だけ、という状況だ。
その水瀬は僕に何を言うでもなく、無表情のままに俯いている。
- 4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/25(金) 20:45:57.12 ID:6I5S2gV60
- 水瀬は、泣いていた。
声をあげる事もなく、静かに涙を頬に伝わせるその姿には、泣く時でさえ決して弱さを見せまいとする、彼女の美点であり弱点を垣間見た気がした。
「食べるだろう? 食べていいんだ。そこに我慢する理由なんてないんだ」
僕のせいだ。
僕のせいなんだ。
水瀬が、涙を流す原因となったのは。
だが、悲しいことに僕は彼女の涙を止める術を、持っていなかったのである。
僕は、無力だ。
プロデューサーを名乗っておきながら、担当アイドル一人の涙すら止めることが出来ないなんて。
僕は自分への不甲斐なさと深い悲しみを憂い、目を閉じる。
死んでしまえ、僕なんて。
水瀬の涙を止められないならば、僕に存在理由なんて無いんだ。
「例えその食事が元々は僕のもので、水瀬が食べたら僕が飢えてしまうとしても――僕は、水瀬を許す」
- 5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/25(金) 20:50:27.16 ID:6I5S2gV60
- 「……で、なんで私のみかんゼリー食べたの?」
「……例えばの話をしよう。水瀬が砂漠で喉が乾いて死にそうだったとするよ。そこに」
「食べたんでしょ?」
「……はい」
次の瞬間、水瀬の南斗獄屠拳を思わせる飛び蹴りが僕の顔面に突き刺さった。
僕の顔が水瀬の足型に凹む。
喰らう際にちょっとパンツが見えた。やったぜ。
「何やってんのよ! 何考えてんのよアンタ!」
水瀬は真っ赤になって怒り狂うと倒れた僕を何度も足蹴にする。
「仕事の後の楽しみにしてたのに!
せっかく愛媛から取り寄せた手に入りにくい逸品だったのに!
名札まで貼って冷蔵庫に入れて置いたのにい!」
「だって! 名札なんか貼ってあったらフリかと思うじゃないか!」
今時名札って、食べてくださいって言っているようなものじゃないか!
確かに水瀬に怒られたかったってのもあったのは認めるよ?
ああ認めるさ!
けど水瀬のゼリーを横取りする背徳感と、その後にどんな風に怒られるんだろうって誘惑に僕が勝てる訳ないじゃないか!
- 6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/25(金) 20:52:03.78 ID:6I5S2gV60
- 「信じられない! もう本当何なのよ!」
「ごめんなさい!」
「バカ! アホ! 間抜け! 役立たず! 変態! ロリコン! 無能!」
思いつく限りの罵倒と共に更に蹴りを激しく加えてくる水瀬。
僕は地べたに這いつくばりながらパンツを見ようと顔を上げられないか試行錯誤していたが、水瀬の連蹴りによりそれは叶いそうになかった。
だがまあいい、水瀬に罵倒されながら蹴られるなんて僕にとってご褒美以外の何物でもないからな!
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「なんで喜んでるのよ!」
息を切らしながら蹴るのをやめる水瀬。
僕はスーツについた埃を払いながら立ち上がる。
水瀬はあの体格――年齢の割にはかなり小柄で軽いので、蹴られたところで大して痛くもないというのが実際のところだ。
「悪かったよ、必ず同じものを倍にして返すからさ――今回はそれで気を収めてくれないか」
「…………」
呼吸を整え、腕を組んで溜息をひとつ。倍返し、という言葉が効いたのかどうかは不明だが、水瀬はそっぽを向き、
「今からオレンジジュース買ってきなさい。それで許してあげるわ」
と、得意のツンデレ属性を発揮してくれた。
これだから水瀬との絡みはやめられない。
「あ――ああ!」
恩赦が下った気持ちになり僕は外へと駈け出す。
水瀬をいじって怒られるのはここ半年で最早ライフワークと化してしまった僕ではあるが、決して嫌われたい訳ではないのだ。
こうしてパシリにされている間も次はどんな風にいじろう、と思っている僕は人間として終わっているかも知れないが。
- 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/25(金) 20:53:34.51 ID:6I5S2gV60
- そして神速と表現してもいい速さで果汁100%ジュースを購入して戻って来る。
と、
「ただいま」
「早っ!」
「――なんだそれ、水瀬」
「さあ、今届いたのよ」
それは、異様に大きい宅配便だった。
いや、異様に、というのは些か言い過ぎか。
その大きさは人ひとり入れそうな大きさとは言え、全員分のライブ衣装が届ときだってこんなものだ。
段ボールに貼り付けられた伝票の中身を記入する欄には、『アンティークドール』と書かれている。
アンティークドール? 宣伝か?
でもそんな仕事あったっけ?
アンティークドールが似合いそうなのは四条な水瀬、それに萩原あたりなイメージがあるが、僕の記憶が確かな限り、そんな仕事はなかった筈だ。
送り元は――付き合いのある少女ファッション雑誌だった。
「ああなんだ、お得意様だよ」
きっと次の仕事のサンプル品か何かだろう。
僕は水瀬にジュースを手渡すと、小休止のためにソファーに陣取る。
さすがに全力疾走は疲れた。
「人形? 開けてみていい?」
「ああ、いいよ」
水瀬は顔を綻ばせて開封を始める。
何処かの会社からの贈答品か、仕事を前提としたサンプルかも知れない。
水瀬はいつも兎の人形を抱えているし、家柄も影響して人形が好きなのかも知れない。
贈答品なら水瀬にあげてもいいし。
- 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/25(金) 20:54:46.42 ID:6I5S2gV60
- 「よ、っと……あら?」
「どうした?」
「人形にしてはずいぶん大きいわね……等身大で、とても精巧だし」
僕の今いる位置からは、箱の中身は見えない。
水瀬の言に興味の湧いた僕は、水瀬の背後へと回る。
と、
「いいっ!?」
「ど、どうしたの? きゃあ!?」
僕の反応に水瀬が驚くのも束の間、更なる驚愕に水瀬は思わず僕にもたれかかる。
何せ、『人形が動き出したのだから』。
『彼女』は面倒くさそうに段ボールから這い出すと、相変わらずの無表情で僕を見据えた。
「久し振り、鬼のお兄ちゃん」
「……何をしているんだ、斧乃木ちゃん」
「呼ばれて飛び出て」
呼ばれても飛び出てもいない彼女の名は斧乃木余接。
職業、陰陽師助手。
性格、淡白。
正体、死体。
- 9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/25(金) 20:59:07.49 ID:6I5S2gV60
-
002
結局、その日の夜は斧乃木ちゃんと別れて帰ることとなった。
いや、誤解しないで欲しいのは決して僕が意地悪で僕のアパートに泊めなかったとか、水瀬もいたことだし風評を損ねるから、という自尊心の為でもない。
単純に斧乃木ちゃんが嫌がったのである。彼女が言うところには、
『僕のような所詮死体に過ぎない存在がそんなきゅうけ……人間様と同じ屋根の下で眠るなんてことは出来ないよ。
ましてや歴戦の勇者とも讃えられる鬼のお兄ちゃんともなれば僕なんて畏れ多くてとてもとても耐えられたものじゃない。
僕はその辺のマンガ喫茶で寝るから気にしないで。
まあ僕は死んでいるから永遠に寝ているようなものなんだけどね。死体ジョーク』
なんて何処かの陽気な骸骨みたいな事を言って本当にマンガ喫茶に行ってしまった。
甘い物が好きな彼女のことだしマンガ喫茶に行きたかっただけじゃねえの、とも思ったが実際は忍が怖くて一緒に居たくない、という部分が強いのだろう。
忍は元の吸血鬼もどきに戻ったとは言え、一時期全盛期に戻った忍への苦手意識が未だに克服出来ていないらしい。
とりあえず水瀬を含めた765プロの面々には遠い親戚、ということにしておいた。
一人で家出同然に遊びに来てしまったので僕が保護している――という建前もつけて。
特に騒動もなく、斧乃木ちゃんと会話することもなく昼休憩になり、僕は事務所にいた人数分の缶コーヒーを貰い物の中から配るとさっきまで亜美ちゃん真美ちゃんとゲームをして遊んでいた斧乃木ちゃんの横に座った。
斧乃木ちゃんにもカフェオレを渡す。
「それで、何が目的で僕の職場に来たんだ?」
「僕が鬼のお兄ちゃんの下に来る。それだけで理由はわかりそうなものだけれど?」
「怪異……なのか?」
- 10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/04/25(金) 21:00:11.51 ID:6I5S2gV60
- 斧乃木ちゃんの存在自体が怪異そのものに酷似している為か、僕が連鎖的に怪異を引き寄せる性質なのか、もしくはその両方なのか。
斧乃木ちゃんが僕に関わる時は例外なく怪異が絡んでいる。
まさか、僕の与り知らぬところでまた765プロに怪異が迫っているのとでも言うのだろうか。
だとしたら、それは聞き過ごせない。
僕は警戒心を強め、斧乃木ちゃんを更に問い質す。
「怪異が、ここに現れるって言うのか?」
「ううん、僕がアイドルになるために来たんだよ、鬼のお兄ちゃん」
「…………うん?」
ちょっと待て、僕の耳が遠くなったのか?
それともここに来てようやくラノベ主人公の聴覚を手に入れたのか?
あの女の子からのフラグをバッキバキに叩き折ると言われる難聴は僕には必要ないぞ?
「アイドルのプロデューサーである鬼のお兄ちゃんの下に僕が来たと言うことは、僕がアイドルになるために決まっているじゃないか。頭大丈夫?」
「斧乃木ちゃんの頭の方が大丈夫じゃないと思うぞ」
「えへへっ、きらっ☆」
某緑髪の歌姫のように横にしたVサインを目の辺りで展コメント一覧
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- 2014年04月25日 22:11
- 先着※10までいおりんの猫耳触れます?
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- 2014年04月25日 22:28
- 一番!
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- 2014年04月25日 22:37
- 残りは春香と響と雪歩と律子か
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- 2014年04月25日 22:44
- 暴れる姿に某ゲロインを連想した
次はゆきほと予想
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- 2014年04月25日 22:44
- 雪歩がラスボスに1イオリン!
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- 2014年04月25日 22:45
- 余接?「この怪異、そんなに怖いかいい…? フフッ」
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- 2014年04月25日 22:48
- いおりんの猫耳コキができると聞いて
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- 2014年04月25日 22:49
- 私の出番がないピヨ
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- 2014年04月25日 22:54
- 社長との歯磨きプレイはよ
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- 2014年04月25日 22:57
- 全盛期のキスショットとパワーが匹敵って、世界10日で滅ぼせるレベル。いおりんスゲエよ。
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- 2014年04月25日 23:01
- ※6
楓さんどこほっつき歩いてるんですか?
タイトル見てカメレオンの怪異かと思った
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- 2014年04月25日 23:13
- ※10
あれは吸血鬼の感染のせいじゃなかった?
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- 2014年04月25日 23:23
- 残りは春香・雪歩・響・律子・小鳥さんか
楽しみだw
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- 2014年04月25日 23:38
- これならモバマスグリマスも行けるな……
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- 2014年04月25日 23:47
- ラストは体表を黒一色に塗りつぶす怪異に長年憑き纏われた社長を助ける「たかぎダーク」でお願いします
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