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「ある少女と『明日』について」|エレファント速報:SSまとめブログ

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「ある少女と『明日』について」

1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:47:25 ID:R5XQNDKg

いつ明日が来なくなるかわからない女の子の話をしようとおもいます。



2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:48:13 ID:R5XQNDKg


その少女は、病気にかかっていました。
今でこそそこら辺のお涙ちょうだい系の話でありがちな
余命を易々と申告されてしまう、治る見込みの無い病。
しかしその少女に、それほどドラマチックな展開は起きませんでした。
普通に過ごして、普通に生きていたら、突然余命を告げられた。
それだけ。



3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:49:32 ID:R5XQNDKg

そうなると少女も、生きることにある程度の見切りを付けることができました。
あるいは、最初から生きる意味を見つけられなかったのかも知れない。
少女には、この人生に対してすでにそれほどの未練がありませんでした。



4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:50:58 ID:R5XQNDKg


このまま慎ましく、
死ぬ直前だからって誰にも迷惑をかけず、
それこそひっそりと病院の中で病死しよう。
個人の病室に入れられた少女は、入院初日の夜にそう決めました。



5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:53:09 ID:R5XQNDKg

少女が入院して少したち、彼女に、何人かがお見舞いにやって来ました。
入院した二日目に来た先生は、
「お前が落ち着いた頃に、学校でも説明するから」
と言っていたので、おそらくそのタイミングなんだろうと、少女は思いました。



6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:54:27 ID:R5XQNDKg

お見舞いに来た人たちは

「頑張れ」
「諦めないで」
「応援してるよ」

と、皆口を揃えて、まるで学校で示し合わせてきたかのようにそう言いました。



7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:55:13 ID:R5XQNDKg

私は何を頑張ればいいの?
私は何を諦めなければいいの?
あなたたちは、いったい何を応援しているの?



8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:56:04 ID:R5XQNDKg

人生に見切りをつけてしまった少女に、すでに頑張るものなど、諦めるものなどなく。
そしてまた、応援されるようなことなどないと考えていました。



9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:56:48 ID:R5XQNDKg

もともと、少女にそれほど多くの友達はいませんでした。
小学校のころ仲良くしてくれていた友達には
「もうちょっと愛想よくすれば、友達できると思うんだけど」
と何度も言われていました。
しかし少女にとって、今までやっていたそれは精一杯の愛想でした。


あまり知らない人に自分の笑顔を向けることが、少女は苦手でした。



10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 22:58:17 ID:R5XQNDKg

少女のお見舞いに来て騒いで帰っていく人たちは、決まって対して仲良くもない人たちでした。
頑張れの言葉をかける自分たち
諦めないでと励ます自分たち
そんな「良いこと」をしている自分たちに酔うための材料として
友達の少ない不治の病を患う少女は、恰好の的となっていたのです。


それに気が付いた彼女は、次第にそんな人たちに心を閉ざすようになりました。



11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:01:55 ID:R5XQNDKg

周りに心を閉ざす中で、少女はふと、こんなことを思いました。

私の心は、私のために存在している。
誰かを楽しませるためじゃない。
誰かを悲しませるためじゃない。
自分を守るために、もしくは自分をごまかすために、私の心は存在しているんだ。と。



12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:05:20 ID:R5XQNDKg

彼女が入院してからというもの、
一日も欠かさずにお見舞いに来ている男の子がいました。
その男の子と少女に、特に大きな関わりがあったわけではありませんでした。
たまたまこの3年間同じクラスだった。
ただ、それだけ。



13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:09:32 ID:R5XQNDKg


しかしそれでも彼は、
入院されていることを知らされてお見舞いを許可された初日から

雨の日も風の日も、
彼女が検査で面会ができないときも、
彼は欠かさずに病院を訪れ続けました。



14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:13:57 ID:R5XQNDKg


最初こそ何故毎日毎日来るのだと訝しんでいた少女も、
時がたち、心無い言葉をかける人たちに心を閉ざす中で、
そういうことを口にしない彼に、疑問を抱かなくなっていました。



15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:17:48 ID:R5XQNDKg


どんなかたちの面会、
それこそ彼女が寝たきりであっても、
彼は毎日のことを彼女に聞かせます。
「今日は学校でこんなことがあったんだ」
彼は毎回、このような形で話を始めました。
「明日も、何か起こるといいな」



16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:21:43 ID:R5XQNDKg


あるとき、少女はその男の子に尋ねました。
「ねぇ」
「それで――…どうしたの?」
話の途中に話しかけたためか、男の子は少し驚きました。
「…」
「そっちから話しかけてくれるなんて珍しいね、なんかうれしいよ」
「うるさい」
「え、ごめん…」
少女は困ったような顔をする男の子を睨み付け、尋ねます。



17 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:25:52 ID:R5XQNDKg

「あんたはなんで毎日来るの?」
「え…?」
男の子の口は、ぽかんと開かれました。



18 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:31:39 ID:R5XQNDKg


「たしかにあんたとは3年間連続で同じクラスだったけど、それだけじゃない」
「3年間同じクラスの人なんて、ほかにも大勢いたわ。」
「でも、ここまでずっと来てるのはあんただけ」
「なんか、理由でもあるんでしょ?」
なんとなく気になっていたことを、少女はすべてまくしたてるように尋ねました。
男の子は、困ったように笑います。



19 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:35:21 ID:R5XQNDKg


「理由、かぁ…」
「…そう、理由よ」
少女は、男の子の困った笑い顔が嫌いでした。
理由は自分でもわからなかったけれど、とにかく嫌いでした。
「……君はもう覚えてないみたいなんだけど」
男の子は、静かに話し始めました



20 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:39:43 ID:R5XQNDKg


「同じクラスになる前に、一度会ったことがあるんだよ」
「…?」
少女には、そのような記憶はありませんでした。
男の子を毎日来させる程の何かなら、きっと忘れるはずはないのに。



21 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:49:45 ID:R5XQNDKg


「覚えてないかな、でもまぁ、そんなに大したことじゃなかったから覚えてなくても無理はないかも」
男の子は再び困ったように笑いました。
「その時、僕はちょっと気が滅入っててさ」
男の子は、話を続けます。
「柄にもなくというか、失礼だけど、死にたいって思ってたんだよ」
今は平気だけどさ、男の子は続けました。



22 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:53:55 ID:R5XQNDKg


「それで、なんかのタイミングで緊張の糸が緩んじゃって泣き出しちゃったんだよ、道の真ん中で」
「…ふぅん」
そこまできいても、少女はやはり思い出せません。
「そしたらさ、君が話しかけてくれたんだよ」
そこまで言うと、男の子は笑顔で少女の方を向き直り




「君の方が、死にそうな顔をしてたんだけどね」
と、笑顔で言いました。



23 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/06(火) 23:57:15 ID:R5XQNDKg


「なっ…はぁ!?」
少女は思わず声を荒らげました。
「ごめんごめん、確かにそれはびっくりしたけど、でもそれで元気づけられたのは本当だよ」
男の子はおなかを抱え、笑いながら少女の方を見ました。



24 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/07(水) 00:00:10 ID:kwWlxxlc


「だから、そのお礼って感じかなぁ」
「何それ、結局自己満足じゃん。 本当にそれが私かもわかんないし!」
わからない方を強調して、少女は男の子の理由を切り捨てました。
「自己満足、なのかなぁ。 そうなのかも」

「でも、何度でもいうけどあの時救われたのは本当なんだ」
だから、せめてものお礼はしたくて。
男の子はそういうと、悲しそうに顔を伏せました。
「…なんであんたが悲しそうにするのよ。 泣きたいのはこっち」
少女はため息をついて、続けました。



25 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/07(水) 00:05:09 ID:kwWlxxlc


「死にそうな顔してたなんて言われて、たまったもんじゃない」
「それはごめんって」
男の子はあの顔をしました。

「それに、そこはあんまり重要じゃないよ、大事なのは救ってもらったってところ」
私的には、それは重要じゃないんだけど。少女は出かかった言葉を飲み込みます。
「これでお礼になってるかなぁって、いや、なってないんだろうけどさ」
男の子は、泣きそうな顔になりました。
「だから、なんていうか。 僕はきみに何ができるんだろう、って」
少女は、深く息を吐きました。



26 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/07(水) 00:41:16 ID:kwWlxxlc


こいつはそんなことを気にしてたのか。
もともと恩を売るつもりでやったわけじゃないことに、そんな見返りなんて求めていないのに。
「気にしないでいいわ。 十分よ」
「ほんと!? 楽しめてる!?」
「それは…まぁまぁね」
「そっか…」
悲しそうな顔をする男の子に、少女はいらいらしながらも声をかけます。



27 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/07(水) 00:45:53 ID:kwWlxxlc


「…暇つぶし程度にはなってる」
すると、男の子の顔は明るくなり
「そっか! それで十分!」
満面の笑顔でそう告げました。
「…」
少女は男の子の笑顔を見て、ほっとした気分になっていました。



28 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/07(水) 00:46:58 ID:kwWlxxlc


まぁ、こいつのコロコロ変わる表情と話で暇つぶしできるし、悪くはない。
少女は、そう自分に言い聞かせました。
「…あ、時間!」
男の子はそう叫ぶと部屋の時計を確認して、急いで支度を始めました。

「ごめん、今日、ちょっとあの、用事があって…」
申し訳なさそうに男の子はそういいました。
「別にかまわないわ、それじゃあね」



29 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/07(水) 00:47:37 ID:kwWlxxlc


「うん、今日も話聞いてくれてありがとう!」
そういって男の子はドアまで行き、一度振り返りました。
「それじゃあ、また明日」
男の子は笑顔でそういうと、部屋から出て行きました。
少女はため息をつくと、横になって目を閉じました。
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月08日 14:58
      • ここでまとめるにしては異色のSSだった。
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月08日 15:05
      • いいね
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月08日 15:06
      • 4 うーん、たまにはいいんじゃないかな。
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月08日 17:09
      • 5 涙が止まらない








        涙が止まらない
      • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月08日 17:38
      • せいぜい明日を楽しみに生きるとするかね
      • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月08日 19:53
      • 5 言葉が出ない
      • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月08日 20:01
      • 4 ありがとう
      • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月08日 23:16
      • 5 道徳の教科書とかにありそう。GJ

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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