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阿良々木暦「ゆきほエンジェル」|エレファント速報:SSまとめブログ

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阿良々木暦「ゆきほエンジェル」

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/09(金) 19:47:22.17 ID:OHJpcaUT0

・化物語×アイドルマスターのクロスです
・化物語の設定は終物語(下)まで
・ネタバレ含まれます。気になる方はご注意を
・終物語(下)より約五年後、という設定です
・アイドルマスターは箱マス基準


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4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/09(金) 19:55:14.63 ID:OHJpcaUT0


001


シャッターを切る音が耳朶を心地良く打つ。

被写体となるのは我が765プロが誇る癒し系アイドル、萩原雪歩だ。
彼女は今現在、僕の眼の前でワンピースの水着姿で撮影をしている最中だった。やはり萩原には白が似合うと思う。

人間には、その人に似合う色が必ずある。
ここは僕の独断と偏見で申し訳ないが、敢えて765プロのアイドルに喩えるとしよう。

天海は桃色、如月は青、菊地は水色、水瀬は赤、高槻は橙、あずささんは群青、双海姉妹は黄、星井は金、我那覇は黄緑、四条は紫。
そして先述した通り、白の萩原。

僕は黒だ。
どす黒く、澱んで濁っている。
だからだろうか。純白、純潔、清純――そんな言葉が最も似合いそうな萩原は、僕にとってとても眩しく憧れる存在なのだ。
他の誰が何と言おうと、僕は歪んでいる。
忍野にも、 ひたぎにも、羽川にも言われたことだ。
僕は、相手が誰であろうとも困っている人がいたら助けてしまう、極度の『お人好し』だ。
死にかけの誇り高き吸血鬼を見て自分の命を差し出してしまう程の大馬鹿野郎だ。
そのこと自体は否定もしないし、今後やめるつもりもない。
やらない口先だけの善よりも行う偽善の方がまだましだ。
その歪みっぷりから扇ちゃんという影まで産み出してしまった位だが、僕が僕である以上は変わるつもりはない。
だが、僕という人間を外から観察したら、やはりきっと気持ち悪く歪んでいるのだろう。
それはもう見る人によっては、吐き気を催す程に。

自虐は行き過ぎると唯の嫌味だし、裏方の僕のことを知りたい人などそうはいまい。
話を戻そう。



5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/09(金) 19:57:20.82 ID:OHJpcaUT0

繰り返すように、だからという訳ではないが萩原はとても眩しく映る。

萩原雪歩のアイドルとしてのイメージは、『守ってあげたくなる女の子』だ。
その比喩に恥じないよう、萩原は見ているだけで男は庇護欲を駆り立てられる。
小さくて、弱々しくて、僕が守ってやらなければいけない、と思わせるのだ。
萩原の名誉の為に言っておくと、萩原本人は決してそれを意識して演じている訳ではない。素でそうなのだ。
先程も少し触れたが、行き過ぎたネガティブアピールは人に不愉快感を与えるだけだ。
時代の流れかここ十年ほどでネガティブを売りにした作品も増えて来たが、あれは漫画や小説だから許されるのであって、現実の人間が『私、人間として弱いんです』とか『死にたいんですよ』とか言っても可哀想な人扱いされるのが関の山だろう。
萩原のアピールポイントもその属性にあたるだろうが、嫌味なく受け入れられているのは彼女がただそれだけの人間ではないからだ。

彼女は、ああ見えて強い。
性格こそ時折卑屈すぎるんじゃないかと思うこともあるが、そもそも自分に対しての自信が微塵もない人間が大手を振ってアイドルなんてやれる甘い時代な訳がないのだ。
高槻とはまた違う方向性のひたむきさと、それに見合うスペックを所持した、外見にそぐわぬ熱い心を持った少女。
それが、僕が現時点で萩原に向ける認識だ。

今、目の前で雑誌のグラビア写真の撮影をしている萩原を見ていると、彼女の強さを再認識させられる。
極度の恥ずかしがり屋で自分に自信を持てない傾向にある彼女が、必死に羞恥心と自分との葛藤と戦った末に惜し気もなくその均整の取れた身体をレンズの前に晒している。
しかもこの写真は全国区にお届けされるのだ。
その決意たるや、賞賛せずに何を賞賛しろと言うのか。

決して恥ずかしがっている萩原が可愛すぎる、とかじゃなくてね?

今の僕の想いを一言で表すのならば、そう。



6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/09(金) 19:59:33.37 ID:OHJpcaUT0

「萩原の水着姿最高!」

思わず叫んでしまった。
カメラマンや照明さん、その他スタッフさんたちの視線が一挙にこちらに集まる。

その視線の意図はまあ、語るまでもないだろう。

「ぷ、プロデューサー……?」

「ああいえ、何でもありません。お気になさらず、続けてください」

紳士的に返すことで事なきを得た。
阿良々木暦は動じない。クールに流すことこそが人生において波風を立てないこつだ。
更に顔を赤くする萩原と、無言で仕事に戻るスタッフの皆様を前に、後で萩原に怒られるんだろうな、と思う。

ちくしょう、あんなに真っ赤になっちゃって、やっぱり可愛いぜ萩原。
この後滅多に他人に対して怒らない萩原に怒られるんだなあ、と思うとちょっと得した気分になる僕は、やっぱり八九寺や水瀬が言う通り変態なのかも知れなかった。

「ではこれで終了です。お疲れ様でした!」

「お、お疲れ様です!」

その後、さすがはプロなだけあってスタッフの皆さんは卒なく仕事を完璧にこなしてくれた。
萩原が頭を下げて逃げ出すように小走りで僕の元へやって来る。

「お疲れ、萩原。苦手な仕事なのによくやったな」

「ど、どうも……あ、それよりプロデューサー、さっきの……」

「あ、ああ……すまん、萩原を見ていたら、つい……」

「私、恥ずかしくて死んじゃうかと思ったんですからぁ……!」

「ごめんごめん。でもとっても可愛かったよ、萩原」



7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/09(金) 20:01:10.26 ID:OHJpcaUT0

お世辞でも何でもない褒め言葉だ。
普段ならばこんな歯が浮くような台詞は言わないのだが、先程も言ったように萩原の弱点として、自分に自信がない箇所が挙げられる。
だからこうして言葉の端々で彼女に自信をつけさせてあげるのもプロデューサーの仕事だと僕は思う。
昨今では可愛いと言っただけでセクハラになるらしいが、それ以上のことをしている僕にとってこれしきのことはセクハラの内に入らないに決まっている。

萩原は僕の言葉を受けその白い頬を桃色に染める。可愛いなあもう。

「そ、そんな……こんなひんそーでちんちくりんな私が、 か、かわいいなん……て……」

「如月と菊地に謝れ!」

「ふええっ!?」

思わず声を荒げてしまった。
スタッフの皆さんが怪訝そうな表情でこちらを見ているし、萩原はいきなりの出来事に目を丸くしているが、僕は構わず続けた。
傍から見たら僕が萩原を叱っているように見えたことだろう。

しかしリアルでふええなんて言葉が許されるのは萩原か高槻くらいのものだろうな。
忍や神原が言った日には腹パンしているところだ。

「何が貧相だ! 何がちんちくりんだ! いいか!
 ちんちくりんなんて言葉はな! 75の壁を越えてから言え! あの二人に失礼だとは思わないのか!」



8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/09(金) 20:02:23.23 ID:OHJpcaUT0

「あ、あの」

「なんだ!」

「後ろ……」

萩原の指差す先、僕は背後を振り返るとそこには、

「…………」

「…………」

「……あ、あはは……」

同じくして仕事に来たのであろう天海、如月、菊地の姿があった。
うち、セブンティーンならぬセブンティの二人が見下すような視線でこちらを見ている。
天海は苦笑しながら手を合わせていた。
それが二人を止められなくてごめんなさい、という意味なのか僕に対して冥福を祈っているのかは、僕にはわからない。

「ふっ……」

僕はなるべくニヒルな笑みを浮かべる。
なに、この程度のことで怯む僕ではない。

「プロデューサー、少し、お話が」

「ボクからも、ね?」

「……ああ、望むところだ」

僕は上着を天海に預け、首元のボタンを緩めながらネクタイをカッコ良く放り投げる。
何を隠そうこの一連の流れを家で練習したくらいだ。
戦うサラリーマンってフレーズいいよね。
無駄にならなくて良かったぜ。

「かかって来いやぁ!」

十五分後、僕等は楽屋の隅に一体の亡骸が転がるミステリーに出くわすことになる。

勿論言うまでもなく、死体役は僕だった。



9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/09(金) 20:08:30.15 ID:OHJpcaUT0


002


「いつつ……まったく、手加減ってものを知らないのか菊地は……」

「あれはさすがにプロデューサーが悪いと思いますけど……」

結局あの後、菊地の真天地覇煌拳を喰らって数分気絶していたらしい。
一撃必殺を躊躇なく僕に叩き込むようになってきたのは嬉しいやら悲しいやらで複雑な気分だった。

そして一人残った萩原が献身的にも手当をしてくれた。
地獄に仏だ……。

「ああそうだ、萩原にオファーが入ってたんだけど聞くの忘れてた」

「オファーですか?」

「ああ、漫画原作の実写映画の主人公役なんだけど……社長にも話したが、やるかどうかは萩原が決めていいってさ」

正直言ってアイドルと言うよりは女優の仕事だ。売名としての側面もあり確実にプラスではあるのだが、女優ともなると萩原も初めての仕事だろうし、意志を尊重しよう、ということになったのだ。

「なんてマンガですか?」

「ああそうだ、全巻もらってたんだ……っと、これだ。あっちから是非とも萩原を、って熱意的に頼まれてな」

鞄から一冊だけ持ってきた漫画を取り出す。
僕は漫画はほとんど読まないし、表紙から少女漫画だ、というくらいしかわからない。

「っ…………!」

萩原がそれを受け取るなり伏しがちの目を大きくして震えていた。



10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/09(金) 20:09:56.09 ID:OHJpcaUT0

「どうした、萩は……」

「やりますっ!!」

「うお!?」

「やります! やらせてください!」

「お、落ち着け萩原!」

「やらせてください! やらせてください!」

「やめろ! そのフレーズを連呼するな!」

まるで僕が萩原に強制させている変質者みたいじゃないか!!
何をとはさすがに言わないけれど!

漫画を胸に抱いて目をキラキラさせ、鼻息も荒く迫ってくる萩原。
普段の消極的な態度からは考えられない程のアグレッシブさだ。

「私、この漫画の大ファンなんです! ですから是非!」

「そ、そうか……ん?」

ふと萩原の持つ本の背表紙が視界に入る。
タイトルの下、作者の名前が記される箇所に書かれた名前は、

「せ、千石……?」

僕の見間違いでなければ、『千石撫子』と、そう印字されていたのである。

「ご存知なんですか!?」

「い、いやご存知も何も」

同姓同名でなければ『あの』千石なのだろうか。
しかし千石なんて苗字はまだしも、撫子なんて名前は往々にして珍しいのではないだろうか。

「…………」

僕は無言で携帯を取り出すと、履歴から発信する。
相手は今日の朝、電話してきた我が愚妹だ。
数コールの後、果たして月火ちゃんは出た。



11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/05/09(金) 20:11:28.05 ID:OHJpcaUT0

『月火だよー』

「月火ちゃん……聞きたいことがあるんだ」

『何々? 恋愛相談から闇討ち依頼まで何でも聞いちゃ
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 21:43
      • ほう。速筆乙
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 21:44
      • きたか…(ガタッ
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 21:45
      • まぁ雪歩は天使ですよね
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 21:47
      • 雪歩は天使か
        これはできる作者だな
      • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 22:00
      • 天使かと思ったら雪歩だった
        雪歩だと思ったら天使だった

        終わるのは寂しいねぇ...
      • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 22:28
      • なんだ天使か
        後2話かぁ…楽しみにしてたから寂しいなぁ…
        しかし春香は過去編…?それとも阿良々木の進退にあわせてまた怪異に会うのか…

        しかし阿良々木君、細かい事だがそこは『退職願い』にしとこうぜ
        まあそれだけ意志が硬いとも言えるが
      • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 22:33
      • 春香の話は傷物語や猫物語(黒)のような前日譚かな
      • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 22:34
      • ここにきてこの〆がくるかー
        傷的ポジションの春香を残したこの構成、ただものじゃ無いよな
      • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 22:36
      • まあこの後は961プロに移って「とうま~」「ほくほく~」「トイレ~」をやるんですがね
      • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 22:37
      • ま、魔王ってあんた
      • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 23:00
      • 天海は桃色、水瀬は赤 って逆な気がするが
      • 12. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 23:08
      • ホリックでもこんな怪異あったな

        雪歩マジ天使おっつっつ
      • 13. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 23:24
      • ラストの春香が楽しみだ
      • 14. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 23:30
      • 終わっちゃうの寂しいなぁ
      • 15. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 23:32
      • 無職になった阿良々木くんはハーレムメンバーに苛められながら養って貰えそうなイメージが
      • 16. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 23:33
      • あと二つ、だと…
        もう終わってしまうのか
      • 17. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 23:47
      • デーモン春香「ブハハハハ!!お前を無個性にしてやろうか!!」
      • 18. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 23:53
      • 大天使ユキホエル

      • 19. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年05月09日 23:56
      • 5 春香は異彩を放ちすぎだぜ。魔王っておい。

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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