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漫画ヒップホップの歴史『ヒップホップ家系図』まず邦題が最高 | DrillSpin Column(ドリルスピン・コラム)
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DrillSpin Picks :漫画ヒップホップの歴史『ヒップホップ家系図』まず邦題が最高

2014/05/16(金)更新

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漫画ヒップホップの歴史『ヒップホップ家系図』まず邦題が最高

先日発売された、噂のヒップホップ歴史マンガを手に入れました。今回はそのご紹介。ヒップホップ黎明期、若きレジェンドたちが、騙し騙され泥臭く切磋琢磨している姿が生々しく描かれていて、勉強になる&アガる! 

この記事の筆者

編集部K

今日は、先日邦訳版が発売されたナイスなコミックの紹介を。

グランドマスターフラッシュとデボラ・ハリー
左ページはブロンディのデボラ・ハリー、右はグランドマスター・フラッシュ



ヒップホップ家系図 vol.1(1970~1981)
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あとがきで作者がとても興味深いことを言っていて「コミックとラップ音楽(ヒップホップ文化の一部門)には多くの類似点がある」と。ここでいう「コミック」はマーヴェルとDCに代表されるヒーローアメコミのこと。「NYで生まれた」「長く非主流だったが、最後には全世界に認められた」……このへんは色んなカルチャーに通じる気がするけど、「本気になると奇抜なコスチュームに変身する」「大物同士の心躍るバトル」「個性豊かなメンバーがクランやチームで活動する」あたりはなるほど。
SFものTVドラマシリーズがデトロイト・テクノの宇宙観に大きな影響を与えたように、NYのブラックの若者たちの価値観にはヒーローコミックがどこか影響していたのかも。そしてヘッズ(ファン)が熱中したのも同じ魅力があったからかもしれない。
変身!
変身! 変身後は左からRUN D.M.Cの2人、MFドゥーム、スリック・リック、???、パブリック・エナミー (チャックD、ターミネーターX、フレイヴァー・フレイヴ)


この書籍はタイトルに有るように、1970年〜1981年にかけてヒップホップのリアルな歴史を全て実名でコミック化したもの。ただし「1970〜」と銘打っているものの、70年代なかばのクール・ハークによるブレイクビーツの発明、アフリカ・バンバータがギャングを抜けて若者の相互扶助クラン ズールーネーションを立ち上げた話などは前史として数ページで済まされて、本番は1977年に発生したNY大停電(とそれに伴う暴動)から。ここから混乱と成り上がりに彩られたヒップホップの初期黄金期、いわゆる「オールドスクール」が始まるのだ!
見返しの似顔絵名鑑、そして詳細な巻末索引(すばらしい!)を見ればわかる、魅力的な登場人物の数々……グランドマスター・フラッシュカーティス・ブロウグランドマスター・カズクール・モー・ディーそしてもちろんアフリカ・バンバータ! 若き日のヒーローたちによる、泥臭くどこかおかしな競争の日々! ラッセル・シモンズシルビア・ロビンソンリック・ルービン! 暗躍する黒幕たち! ファブ・ファイブ・フレディブロンディジャン・ミッシェル・バスキアドン・コーネリアス! きらびやかなセレブたち!

華麗な人物名鑑
華麗な人物名鑑

ストリートから生まれたヒップホップが、どれだけ互いにいがみ合って苦労して抜け駆けしようとしていたか。「一番最初に売れたラッパーチーム」として知られるシュガーヒル・ギャングがいかにインチキ気味に結成され売りだされたか、そしてそれがオリジネイターたちに与えた影響。MTVの象徴、NYパンク出身のブロンディがラップ文化を取り入れた「ラプチャー」がどれだけヒップホップの普及に貢献したか。そういったディティールが、パワフルかつおかしみのあるイラストで語られていきます。アメコミ臭いというより、適度にデフォルメされた日本人が描くヘタウマサブカル系っぽい絵柄で、受け入れやすいかも。


難点を言うならば、たしかに史実を多く盛り込もうとしたあまり、物語としては散文的というか、固有名詞がどんどん出てきてある種の古代神話や旧約聖書のような不親切な語り口になってしまっている部分はいなめない……が、この巻のクライマックスである、金持ちクラブ出身のラッパー ビジー・ビー・スタスキ vs. ストリート叩き上げ クール・モー・ディーのラップ対決など、初期ならではの野蛮なパワーに満ちた血沸き肉踊る展開はガン上がりです。さらに、ラップの邦訳が丁寧になされているのも特筆すべき点。悪口対決であるラップの意味が取れると更にガン上がりです。
そして全編通して何より、バム先生(アフリカ・バンバータ)が先見の明ありすぎ人格者すぎでカッコイイ……

最後に、この巻の最後でも紹介されている、初めて全国ネットTVメディアでまともに「ヒップホップ」が紹介されたときの動画を貼っておきます。
1981年のABCの20/20という番組で、すでにラップの起源についてモハメド・アリの口上やジェームス・ブラウンに言及しているだけでなく、南部黒人のトースティング、黒人の子供の遊びである縄跳び(ダブルタップ)の掛け声、黒人牧師の説教、レゲエにまで及んでいて、ほんの10分の番組にもかかわらず見識の確かさに驚かされます。そして、ブロック・パーティでラップする当時のカーティス・ブロウのフレッシュさ!  こりゃみんなが夢中になるのも間違いない。一見の価値有りです。『ヒップホップ家系図』を読んだあとに見るとさらに感動的で、オススメです。



内容以外にも、装丁や紙質が素晴らしい(パルプコミック風の上質紙)、索引や訳注が気が利いてるなど、素晴らしい点は多々有りますが、それは実際にお手にとって見てください。コレクターズアイテムとしても最高だと思います。そして、『ヒップホップ家系図』vol.1はこのヒップホップがようやく全国メディアで認められ始めた1981年で終わっているわけですが、この後1983年のRun-D.M.Cの大ヒットに代表される第二世代=ミドルスクール、そして80年代後半〜90年代にかけてのニュースクール、ニュージャックスウィング、そしてギャングスタ……と夢は続きます。なお原作はboingboingで連載中で、2014年5月現在、リック・ルービンによるデフジャム立ち上げ&パブリック・エナミーが結成されたところです(1982あたり?) 早く続刊が読みたい! 

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