姉「もしかして男くんはお姉ちゃんのことあんまり好きじゃない?」
- 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 17:51:48 ID:ezgiTSzQ
がちゃ
姉「よっす!」
男「うん」
姉「『うん』って、テンション低いね男くん」
男「ノックもせず部屋に入ってきた姉ちゃんがいきなり『よっす!』って言ったら誰でもこんな感じになると思う」
姉「そんな方程式が成立したらお姉ちゃん悲しいよ」
男「うん。……ええと、何しに来たの?」
姉「いやあ、台風が来てて外に出るの怖いし、男くんの部屋で借りてきた映画でも見ようかと思ってね」
男「映画館に行ったほうがいいんじゃないの」
姉「いや、だから台風が来てるんだって。聞いてた?」
男「うん」
姉「それとも『このババア映画館へ向かう途中に台風で吹き飛べばいいのに』って思ったとか?」
男「まあ、多少は」
姉「怒るよ?」
男「ごめんなさい」- 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 17:53:05 ID:ezgiTSzQ
姉「仕方ない、許してあげよう。代わりにいっしょに映画見ようね」
男「最初からそのつもりで来てたくせに」
姉「さあさあ、リモコンを早く出しなさい」
男「はい」
姉「ありがと」
男「映画って、なに見るの?」
姉「元気の出る映画だってさ。ほのぼの感動作」
男「なんてタイトル?」
姉「ええと、ダンサー・イン・ザ・ダーク?」
男「ああ、うん。ダンサー・イン・ザ・ダークね、うん」- 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 17:54:19 ID:ezgiTSzQ
姉「知ってるの?」
男「パルム・ドール受賞作ばっかり見てた時期があったもんで」
姉「パルム・ドールってなに?」
男「カンヌ国際映画祭の最高賞」
姉「ふうん。男くんには相当暇な時期があったんだね?」
男「うるさい」
姉「じゃあ、これ見たことあるの?」
男「一回だけ」
姉「おもしろい?」
男「どうだろう」
姉「元気出る?」
男「まあ、ミュージカル映画だし、3パーセントくらいは元気になるんじゃないかな」
姉「わくわく」- 4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 17:55:02 ID:ezgiTSzQ
20分後
男「……」
姉「……」
男「……」
姉「……ねえ」
男「なに」
姉「これほんとうにほのぼの感動作?」
男「いや、ぜんぜん違うけど」
姉「えっ?」
男「うん」
姉「いや、『うん』じゃなくて」- 5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 17:56:07 ID:ezgiTSzQ
さらに2時間後
姉「……えっ? 終わり?」
男「元気出た?」
姉「いや、ぜんぜん。聞いてた話とぜんぜん違うんだけど……」
男「なんて聞いてたの」
姉「『弱視の女性と息子との日常を描いたほのぼの感動作!!』って」
男「誰が言ってたの?」
姉「友だちが」
男「ふうん」
姉「だまされた?」
男「かもね」
姉「なんかショックだよ。だまされたことよりも映画の内容がショッキングだよ」- 6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 17:56:58 ID:ezgiTSzQ
姉「はあ……」
男「どしたの」
姉「憂鬱さね……」
男「なんで訛ってるの」
姉「方言でしゃべると女子力高そうに見えるじゃろ……」
男「そうかな。ていうか女子力高いってどういう状態なんだろう」
姉「方言を話すことと、魚を三枚におろせることに決まっとるじゃけん……」
男「えっ? そうなの?」
姉「えっ? ちがうの?」
男「いや、知らないけど。姉ちゃん、魚三枚におろせるの?」
姉「修行中」
男「じゃあ女子力低いの?」
姉「せやねんなあ……。うちまだまだやねんなあ……」
男「ふうん」- 7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 17:57:57 ID:ezgiTSzQ
男「前から気になってたんだけどさ、女性はいつまで女子なの?」
姉「どういうこと?」
男「いや、女子会ってあるじゃん」
姉「うん」
男「30代でも40代でも女子会とか言う人がいるじゃん。それってどうなんだろうって」
姉「『おじさんの心はいつでも少年のままだよ』ってやつとおんなじだよ。心はいつまでも女子だよ」
男「姉ちゃんも?」
姉「もちろん。ていうかわたしまだ20になったばっかりだし」
男「いや、でも20じゃん。成人じゃん。それでも女子なの?」
姉「うん」
男「そうなんだ」- 8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 17:58:59 ID:ezgiTSzQ
姉「映画終わっちゃったし、つぎはなにをしようかなあ」ゴロゴロ
男「用がないんだったら部屋に帰ればいいのに」
姉「えー。男くんもどうせ暇でしょ?」ゴロゴロ
男「どうせって。まあそうだけどさ」
姉「だったらお姉ちゃんの暇つぶしに付き合ってよ」ゴロゴロ
男「もう2時間も付き合ったんだけど」
姉「一日は長いんだよ。特に日曜日の午前は時間が経つのが遅い」ゴロゴロ
男「だからって朝から俺の部屋に来てごろごろしなくても」
姉「ほかに行くところがない」
男「自分の部屋で寝てればいいんじゃないの」
姉「冷たい。男くん、スーパー冷たい。ドライアイスみたい」- 9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 17:59:55 ID:ezgiTSzQ
男「ドライアイスでもなんでもいいけどさ、もうお昼だよ」
姉「えっ? お昼にドライアイス食べるの?」
男「誰もそんなこと言ってないよね?」
姉「『ドライアイスでもなんでもいい』って」
男「『お昼ごはんはドライアイスでいい』とは言ってない」
姉「だよね。びっくりしたよ」
男「こっちがびっくりするよ」
姉「なに食べるの?」
男「うーん、カップ麺かなあ」
姉「作ったげようか?」
男「カップ麺を? 百福さんみたいに?」
姉「ちがう。お昼ごはんを」- 10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:01:01 ID:ezgiTSzQ
男「姉ちゃんって料理できるの?」
姉「修行中だよ」
男「やっぱり料理も女子力につながるの?」
姉「5パーセントくらいは、たぶん」
男「得意料理は?」
姉「オムライス」ドヤァ
男「そんじゃあきょうはなにを作ってくれるの?」
姉「それは冷蔵庫の中を見てみないことにはなんとも言えないね」- 11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:01:59 ID:ezgiTSzQ
姉「チャーハン作るよ!」
男「チャーシューもベーコンもハムもないけど」
姉「お肉はウインナーで行くよ!」
男「パラパラにできるの?」
姉「炒める前に卵とあったかいご飯を混ぜておくといいって陳さんが言ってた」
男「ふうん。俺にはよく分かんないけど、がんばって」
姉「手伝ってくれたりしない?」
男「俺なんかが手伝っても邪魔だと思うけど」
姉「そんなことはないよ。玉ねぎだけ切ってほしいなあ」
男「玉ねぎ切りたくないの?」
姉「カエルの天敵ってなんだと思う?」
男「はあ? うーん……ヘビとか?」
姉「お姉ちゃんの天敵ってなんだと思う?」
男「……玉ねぎ?」
姉「せいかい。さすが男くん。お姉ちゃんマスターだね」- 12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:03:18 ID:ezgiTSzQ
姉「はい、玉ねぎ。わたしはそれ以外を切るから」
男「どんなふうに切ればいいの?」
姉「どんなふうって、ふつうにどうぞ。ご飯と同じくらいの大きさにね」
男「わかった」ザクザク
姉「いや、まずは皮を剥こうよ」
男「……」ペリペリ
姉「ふつう玉ねぎって皮剥いてから切らない?」
男「玉ねぎの常識なんか知らん」ペリペリ- 13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:04:00 ID:ezgiTSzQ
男「剥けたから切るよ」
姉「洗ってからね」
男「……」ジャー
姉「洗えたら切ってね」
男「……」ザクザク
姉「……」ジー
男「……」ザクザク
姉「あっ……」
男「なに」
姉「いや、左手をね、こう、猫の手みたいにして玉ねぎ持ったほうがいいよ」ニャー
男「なんで?」
姉「学校で教わらなかった? 指切っちゃうよ?」
男「……」ザクザク- 14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:05:03 ID:ezgiTSzQ
男「いつまで見てるの?」ザクザク
姉「男くんがまさかの料理できない男だったから心配で」
男「だいじょうぶだって。どんと来い」ザクザク
姉「男くんも立派になって……。お姉ちゃん泣けてきたよ」
男「それは玉ねぎのせいじゃないかな」ザクザク
姉「男くんも泣いてる。誰だ泣かせたのは」
男「玉ねぎ」ザクザク
姉「えいっ」パシャッ
男「なんで写真撮るの」
姉「明日みんなに男くんの泣き顔を見せてあげようっと」
男「やめろ」- 15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:05:55 ID:ezgiTSzQ
男「玉ねぎ切れたよ」
姉「おめでとう。これで男くんも女子力アップだよ」
男「あとはもう知らん」
姉「よし。じゃあいまからウインナー切るよ!」
姉「でーでーでーででーでーでーでー」
男「なにそれ」
姉「お料理BGM」
男「それ必要なの?」
姉「もちろん」
姉「きづかれーなーいでーとどーめーをーさーす」トントン
姉「どのじーだーいもーいーきのびてーきたー」トントン
男「容赦ないね」- 16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:06:38 ID:ezgiTSzQ
姉「でけたよ。あっ、チャーハンできたよ!」
男「べつに言い直さなくても」
姉「へいお待ち」コトン
男「いい匂い」
姉「おいしそう?」
男「匂いと見た目はおいしそうだけど」
姉「食べてみてよ」
男「言われんでも食べるわい」
姉「おっ、方言で女子力上げていく感じだね?」
男「いや、ぜんぜん違うけど。そもそもいまのって方言なのかな」- 17 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:07:20 ID:ezgiTSzQ
男「うまい」モキュモキュ
姉「ほんと? よかった」
男「なんか悔しい」モキュモキュ
姉「なにゆえ?」
男「わからないけど悔しい」
姉「料理、教えたげようか?」
男「いらない」
姉「拗ねてる」
男「拗ねてない」- 18 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:10:36 ID:ezgiTSzQ
* 昼食後
姉「13時だよ」
男「うん」
姉「なにする?」
男「自分の部屋に帰るって選択肢はないの?」
姉「?」
男「なにその『は? なに言ってんだこいつ?』みたいな顔」
姉「だって、部屋に戻ったってゲームしかやることないし」
男「すればいいじゃんゲーム」
姉「ボスに勝てないの。ゼロシフトだけじゃやってられないよ」
男「知らないよ」- 19 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:11:09 ID:ezgiTSzQ
姉「あっ、そうだ。将棋しようよ、将棋」
男「なんで将棋」
姉「ちょっと前に友だちの家で三月のライオンを読んだの」
男「ゲームしたり漫画読んだり映画見たり料理したり、大変だね」
姉「流されやすい性格なもんで」
男「誰かから影響されてるんだ?」
姉「そうそう、いろんな人から。さあ、将棋盤と駒はどこかな」ガサゴソ
男「たぶんそっちの引き出しの中だと思うけど」
姉「どれどれ」ガラガラ
姉「ほんとだ、あったよ」- 20 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/23(金) 18:12:54 ID:ezgiTSzQ
コメント一覧
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- 2014年05月23日 22:54
- ねーちゃんほしかったなぁ
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- 2014年05月23日 23:05
- 妄想乙 www
-
- 2014年05月23日 23:07
- ウチの弟もこれくらいかまってくれないだろうか…
-
- 2014年05月23日 23:12
- アヌビスは神ゲー
-
- 2014年05月23日 23:55
- 姉への願望がひどい
-
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