勇者「独り身だがショタを引き取ろうかと真剣に考えている」
- 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:19:55 ID:UXsy/MQ6
ここに記すのは、
私が勇者を辞めるキッカケとなった、とある村での出来事。
救えなかった、少年の話だ。
個人名が一つだけある。
気にしないでくれると助かる。- 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:21:09 ID:UXsy/MQ6
十年前。
冬。
雪が降っていた。
村の隅で、小さな人影は小さな雪だるまを作っていた。
勇者「可愛い雪だるまだな」
少年「……………」
勇者(……よく見れば、雪だるまにしては丸々としていない。背中には突起物があるし、)
勇者「--カッコイい雪だるまだな」
少年「……ありがとう。でもこれ、雪だるまじゃない」
少年「竜だよ」
勇者「…………りゅ、竜かぁ……」
少年「…………もう、雪だるまでいい」シュン
勇者「あ、いや、えっと……見えなくもないよ。竜に。か、カッコイいなぁ」
少年「ほんと?」
勇者「うん、ほんと」- 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:22:02 ID:UXsy/MQ6
少年「えへへ、ありがとう。おじさん」ニコッ
勇者「………………」
勇者(おじさん、か……これぐらいの子からみたら、俺はもうおじさんなのか、)
少年「どうしたの?」
勇者「……………なんでもないよ。気にしないでくれ」
少年「…………、」クスッ
少年「変なおにいさん」クスクスッ
十年前。
冬の終わり。
一面の雪景色は終わりを迎え、
白以外の色は各段に増えていた。
勇者「……ここにいたのか、」
少年「ぼくを探していたの?」
勇者「ああ」- 4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:23:09 ID:UXsy/MQ6
勇者「もう出発するから、挨拶でもって」
少年「……まだ冬は終わってないのに」
勇者「元々、本格的な冬が来る前に村から出る予定だったんだ。ほらここ、雪凄かったし」
勇者「それが、この村で冬を越すことになったから、急いで戻るってさ」
少年「そっか……おにいさん、商人さん達の護衛だもんね」
少年「……さよなら、おにいさん。話し相手になってくれて、ありがとう」
勇者「さよならじゃないよ」
勇者「また来る。早くて夏の終わり、遅くても秋には。今回からの長期契約だからな、この商人達とは」
少年「…………」
勇者「だから、またね、だ」
少年「うん」
勇者「--あ、そうだ。名前、聞いてなかった」
少年「…………、」
勇者「教えてくれるか?君の名前」- 5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:25:00 ID:UXsy/MQ6
少年「…………」プイッ タタタッ
勇者(……打ち解けたと思ったんだけど、そっぽ向かれた上に逃げられるなんてなぁ……)
少年「…………、」クルッ
勇者(ん?足を止めて、振り返った?)
少年「シキ」
勇者「え?」
少年「名前」
勇者「シキ?」
少年「うん」クスッ
少年「またね。おにいさん!」
九年前。
秋。
紅く色付く山。
その奥深くに、その村はある。- 6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:27:24 ID:UXsy/MQ6
勇者(また、一人でいる)
勇者「シキ!」
シキ「…………?」
勇者「久しぶり。元気だったか?」
シキ「…………あ、」
勇者「あ、っと……去年の冬、話した事あるんだけど……俺のこと、もう覚えてない?」
シキ「…………ごめんなさい」タタタッ
勇者「え、」
勇者(逃げられてしまった……)
勇者(仕方ないか、ほぼ一年会ってないんだし、忘れられてしまうのも)
勇者(それにしても、あの子……雰囲気変わったなぁ)
九年前。
秋。
久しぶりの再会は苦い物だった。
姿を見かけても、また声をかける勇気は無い。- 7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:29:22 ID:UXsy/MQ6
シキ「おじさん」
勇者「へ?」
シキ「じゃなかった、おにいさん。久しぶり。また来てくれたんだ」
勇者「あ……うん、」
シキ「ごめんね、忙しそうだったからなかなか声かけられなくて」
勇者「……シキ?」
シキ「なに?」
勇者「俺のこと、覚えてるのか?」
シキ「覚えてなかったら声なんてかけないよ」クスッ
勇者「…………、もしかして」
シキ「?」
勇者「君は、兄弟とか、いたりする?」
シキ「……シキに会ったの?」
勇者「え?シキ?」
シキ「シキとぼくはそっくりなんだ。ぼくより少し、怖がりだけど」- 8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:31:07 ID:UXsy/MQ6
勇者「兄弟?」
シキ「みたいなものだよ。ずっと一緒だから」
勇者「同じ名前なんだ」
シキ「うん」
勇者(兄弟で同じ名前、か。……そういう名付けもあるんだな……)
勇者(にしても、)
勇者「……悪いことしたなぁ」
勇者「知らない人から突然名前を呼ばれてやけに親しげに近付かれたんじゃ、怖くて逃げるのも当然か」
シキ「シキはおにいさんのこと知ってるよ。ぼくが話したから」
シキ「多分、どうすれば良いかわからなくなっちゃたから、逃げたんだと思う」
勇者「……なんせ、村では見ない顔だし、不審者だと思われてないなら良いか」
シキ「ごめんね、」
勇者「いや、いいよ」
勇者「でもな……、兄弟がいたか。困ったな」
シキ「?どうしたの?」- 9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:32:52 ID:UXsy/MQ6
- 勇者「ちょっと待ってて。すぐ戻るから」タタタタッ
数分後。
勇者「はい、これ」
シキ「……小さな、袋?何か入ってる、……中から甘い匂いがするね」クンクン
勇者「お土産。っても、そんな期待するようなもんじゃないからな」
勇者「一応、ここでは珍しい部類のお菓子、だと思うけど。……それ、一つしか持って来てなくてさ」
勇者「今回は二人で分けてくれ、な」
シキ「…………、」
勇者「ご、ごめん!俺、気がきかなくて。そうだよな、もし兄弟がいたらって考えてたら」
シキ「ありがとう!」ニコッ
シキ「ふふっ。お土産貰ったの、初めてだ。ぼくら二人になら、シキもきっと喜ぶ」
シキ「ありがとう、おにいさん!」ニコニコ
勇者「そこまで喜んでくれるなら、俺も嬉しいよ」
シキ「----、」
シキ「--シキも、喜んでるよ。今度、逃げないでちゃんとお礼言うって言ってるから」
シキ「シキをよろしくね、おにいさん」ニコニコ - 10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:34:07 ID:UXsy/MQ6
九年前。
秋。
出会った少年には、そっくりな兄弟がいた。
シキとシキ。同じ姿、同じ名前の。
シキ「…………」ジー
勇者「うおっ!?」
勇者(後ろにいたのか、全く気配を感じなかった)
シキ「……あ、のっ……」
勇者「……………、」
勇者(シキと瓜二つ、だが、雰囲気が違う。--あの時の子か。シキが言っていた、もう一人のシキ)
シキ「………………ました」ボソボソ
勇者「え?」
シキ「っ、」カァァア
勇者「あ、ごめん!聞き取れなかったから、今度はちゃんと聞くから」
勇者「もう一度、言ってくれると、助かる、んだけど……」
シキ「……お菓子、ありがとう、ございました……」ペコッ- 11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:35:19 ID:UXsy/MQ6
勇者「どういたしまして」ニコッ
シキ「………………えっと、その……おれ、……ごめんなさい、」
シキ「要件は、それだけ、です……もう行きますね」クルッ
勇者「あ、待って」
シキ「は、はい……」ピタッ
勇者(……雰囲気どころじゃない、同じ姿で同じ名前だけど、内面はまるっきり違うようだ)
勇者「あのさ、」
勇者「……正直な話、村にいる間は簡単な雑用ばかりで暇なんだ。道中の護衛が商談に混ざるわけにもいかないし」
勇者「だから、君の都合が良い時、時々で良いから俺の話し相手になってくれると助かるかな、」
シキ「……おれ、は、シキと違って、話すのは、得意じゃなくて」
勇者「得意じゃなくても助かるよ」
シキ「……あの、じゃあ……おれ、」
シキ「また、来ます……!」タタタタッ
勇者「うん、待ってるよ」- 12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:36:11 ID:UXsy/MQ6
九年前。
秋の終わり。
冷たい風が吹くようになった頃。
護衛対象の商団は、拠点の町に戻ることを決めた。
シキ「もう、行っちゃうんだね」
勇者「ああ。去年の事があるから、早めに出発するんだってさ」
シキ「…………、さよなら。おにいさん。ぼく達の話し相手になってくれて、ありがとう」
勇者「さよならじゃないよ。またね、だって」
シキ「!」
勇者「次の夏の終わり、秋にでも。また会おう」
勇者「それに、俺こそ、話し相手になってくれてありがとう」
シキ「うん。どういたしまして」ニコッ
勇者「今度は二人分、お土産持ってくるよ」
シキ「……いいの?僕らは何も渡せないのに」
勇者「いいよ。俺がやりたいだけだから」- 13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:37:48 ID:UXsy/MQ6
- シキ「えへへ……ありがとう。お土産、期待して良い?」
勇者「いや、それはやめて。プレッシャーかかる。期待は最小で」
シキ「ふふっ、わかった」
シキ「……本当は、シキと一緒に見送りたいけど、出来なくて、ごめんね」
勇者「……シキに、よろしくな」
シキ「うん」
シキ「またね、おにいさん!」
勇者「ああ。またな」
八年前。
夏の終わり。
その村には、その景色に不釣り合いな建物があった。
そこで何をしているかは、知らない。
シキ「おにいさん!」タタタタッ
勇者「久しぶり。元気にしてたか?」 - 14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:39:30 ID:UXsy/MQ6
シキ「はい」
勇者「シキも。元気?」
シキ「はい、元気です」
勇者「そっか。良かった良かった」
シキ「おにいさんも、変わらず元気そうで。良かったです」ヘラリ
勇者「そりゃあ、変わらないよ。俺は成長しきったからな」
勇者「お前は……背、少し伸びたな」ワシャワシャ
シキ「ほんとに少し、ですけど」ニコニコ
勇者「すぐに大きくなるんだろうなぁ、子供の成長は凄まじいし」
シキ「おにいさんは、大きくならない方がいいですか?」
勇者「へ?あ、いやそんなことないよ。むしろ、成長が楽しみかもしれない」
勇者「何時かは、……よっ、と」ヒョイ
シキ「!」
勇者「こうして持ち上げられなくなるんだろうな。ほら、高い高ーい」
シキ「あ、あの……!少し、恥ずかしい、です……」- 15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2013/09/21(土) 19:41:20 ID:UXsy/MQ6
勇者「……すまん。もうそんな年じゃないよな」ストン
シキ「…………」
勇者「…………」
勇者「あ、これお土産」
シキ「あ、ありがとうございます」
八年前。
秋。
この商人達が何を扱っているか、そのコメント一覧
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- 2014年05月23日 23:32
- 二重人格だから型月のシキから引っ張ってきたんじゃない?
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- 2014年05月23日 23:41
- 最初っからいい結末ではないと分かっていたけど本当に何も救いなくてつらいすぎ。誰か幸せになってよ
-
- 2014年05月23日 23:42
- ショタとのセックス無さそうだし、読むの止める
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- 2014年05月23日 23:50
- スレタイ詐欺じゃあねぇぇかぁ(泣)
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