魔王「ど、どうやら勇者は私のことが好きらしい」【後半】
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魔王()(………コイツ、今、俺に何て言った……?)
魔王()(……俺が、誰、だって……?)
第一A「……うわぁ、マジかよ……、」
第一B「おいおい、我らが魔王様の目が死んでるじゃねーか………」
第一「わー、目が死んでるのは魔王様だけじゃないやー」
側近()(……少年と植物は守れた、けど、)
側近()(……何時もと違う、感じがする)
第一弟「…………側近様じゃ、ない、ですよね」
植物「ぐおっ?」キョロキョロ
蔓×5「くおっ?」キョロキョロ
植物蔓×5「?」キョトン
相棒()(長く意識を失ったつもりは無いが、)
相棒()(この違和感は、いったい……)
第三1「相棒さんやたらキリっとしてるな」
第三4「あの眉間の皺滅茶苦茶見覚えあるんだけど」
第三2「--あ、見ろよ。最後の一人がようやくお目覚めだ」
勇者()「……………」ユラリ
勇者()「魔力の制御が上手く出来なくなったのは、これが原因ってわけね」ザワザワ
勇者()「……まぁ、やけに雰囲気の変わった二人と、自分の姿を見れば大体察しがつくけど、」ザワザワザワ
第三3(………ノーコメントで)
第三5(……笑うな俺。笑うな俺)
勇者(魔王)「アテが外れたのなら好都合。全力で反撃させてもらうわ」ザワザワザワザワザワ
第三2(笑っていいかな。だって威厳たっぷりに女口調で男が喋ってるわけだし)
第一(やっばい笑いそう。ごめん旅人さんごめん)フルフル
第一(すごく面白い絵だよこれどうしようこれ)フルフル
勇者男「反撃される前に撤退させてもらうがな」フォン
勇者(魔王)「させるとでも?」フォン
瞬間展開、発動した魔法が激しくぶつかる。
余波が暴風となり吹き荒れた。
勇者(魔王)「跡形もなく消し飛ばしてあげるわ!」
勇者男(チッ……魔法の押し合いでは部が分が悪い)フォン
第三4「2、3!!お前らは俺達の後ろに!」フォン
第三1「障壁前提の威力だなこりゃ!」フォン
第三5「身体が変わっても魔法の強さは変わらないか、」フォン
第三2「ぷぷっ」
第三3「2くん……緊張感は大事にしようよ」
魔王(勇者)(俺って分裂出来たっけ、)ヒュン
剣士「--っ、その姿でも殺意は変わんねぇのな、」
剣士(勇者のやつ、頼むから早く発動させろよ!これ相手に避け続けるのは無理だって!!)
側近(相棒)(何で私が二人いるんだろう)」
僧侶「うう……」パチッ
僧侶(私……負けた……?竜族、に、)
側近(相棒)「寝とけばいいのに。……でも、起きたなら、警告」
側近(相棒)「動いたら、足からもらう」ザワッ
僧侶「!?」
第一弟「植物、魔法の余波が凄いけど、平気?」
植物蔓×5「?」キョトン
第一弟「平気みたいだね。良かった……」ホッ
第一弟「…………、」チラッ
第一弟(……入れ替わったのなら、このヒトはきっと、相棒さんなんだ……)
相棒(側近)(…………、これは、いや、考えるのは後だ、)
相棒(側近)「第一!!魔法使いの捕縛は任せた!!俺は転移を妨害する!!」フォン
第一A「了解!」
第一A(相棒さんがキリっとしてる!)
第一B「魔法使い、放心状態みたいだし捕縛は簡単そうだ」
第一B(相棒さんがキリっとしてる!)
第一「相棒さんがキリっとしてる!」
第一(任せて下さい!)
第一(あ、言っちゃった)
側近(相棒)(私がキリッと?)キョトン
側近(相棒)(--あ、ほんとだ。あっちの私がキリッとしてる!)
側近(相棒)「勇者、大変あっちの私が……って、勇者お取り込み中だった」
側近(相棒)(おまけになんだか勇者が変だ。魔王様みたい。好きすぎて口調が移ったのかな)
側近(相棒)「側近さんも、どこ行っちゃったんだろう……」
第一弟「……、あのっ、相棒さん!」
側近(相棒)「なに?少年」
第一弟(うう、中身は相棒さんってわかってるけど見た目は側近様だから正直気味悪い……)
第一弟「……相棒さん。側近様、いますよちゃんと。あっちに」
側近(相棒)「あっちにいるのは私だよ?二人いるのも変だけど」
第一弟「中身は側近様なんです」
側近(相棒)「中身?」
第一弟「えっと、中身というか魂というか、」
蔓「くお?くおっ!」
蔓(見た目は側近様なのに、中身は相棒さん、不思議!)
側近(相棒)「え、植物、今なんて……」
蔓「くおっ!」フォン
蔓(姿を映せば、わかるよね!)
ぱかりと開いた口。
その口内はすぐに鏡面へと姿を変える。
映ったのは一人の男。
鏡であることを証明するように、背後の景色まで完全に映っていた。
側近(相棒)「……………」クルリ
振り返れば鏡の中の男も振り返る。
どう確認しても、映る物は自分の周りにある物ばかりだ。
側近(相棒)(あっちの私、中身が側近さん。なら、こっちの私は?)アワワ
側近(相棒)(中身が私なだけで、映る、姿が本当なら、私、私今、)アワワワワワワ
第一弟「植物……!魔法使えたんだね!すごいよ!!」
蔓「くおっくおっ!!くおおっ!」
蔓(えへへ!弟が褒めてくれた!嬉しい!)
側近(相棒)(側近さんの、中身に、なってるってこと?」
側近()「~~~」フルフル
側近(相棒)「ひゃわああああああああああああああ!!!?」
魔王(勇者)「!!?」
魔王(勇者)(相棒?--いや、この声は側近さん?)
魔王(勇者)「どうしたんだろう……」ヒュン
剣士「…………いっ、」
剣士(くそっ、またかすった。両腕そろって飛ばされるのも時間の問題、)
剣士(野郎の情けない悲鳴聞いてる場合じゃねぇのに、)
魔王(勇者)「……………」チラッ
魔王(勇者)(分裂した俺といい、やけにキリッとした相棒といい、)
魔王(勇者)(……相棒っぽい側近さんといい、なんだろう、この違和感)
剣士(……こいつ、もしかして)
剣士(現状の把握が全く出来てないんじゃないか?--いや、この場にいて俺があれだけ言ったのにわからないなら、ただの馬鹿だろ)
魔王(勇者)(俺の身体、こんなに動かしにくかったっけ、)
剣士(--だが、馬鹿に賭けるしかない)
剣士「よお、勇者」
魔王(勇者)「……………」
剣士「魔王の……女の身体に入った気分はどうだ?」
魔王(勇者)「……あ?」
剣士「お前、勇者なんだろ?女の身体動かしてる気分はどうだって訊いてんだよ」
魔王(勇者)「--、」ピタッ
剣士「黒髪に金目、かなりの上物だよな。その身体は、」
魔王(勇者)(……俺の髪、黒だっけ。……服、黒い、ドレス?魔王様が着てた、……え、俺今スカートなの?あれ?気付いたら突然下半身スースーするようになった!!)
魔王(勇者)(いやいやいや何で!?何で何で何で!?おかしい、身体がおかしい!おかしいよ!!だって胸ある!俺男なのに!男なのに!!)
魔王(勇者)(え、え?ってことは、俺、俺--)
剣士「中身がお前ってのが勿体無--」
魔王(勇者)「うわああああああああ!!俺が女の子になってるー!!?」
側近(相棒)「ひゃわああああああああああああああ!!!?」
第一ズ「ぶふっ」「ぷっ」「ひっ、く」
第一ズ(駄目だ笑うな笑うな俺笑……)(いくら中身が相棒さんでもこれは……!!)(側近様がひゃわあ言った!凄い悲鳴あげた!)
第三ズ「ぷ、」「っぶっ、」「……っ」「ひゃひゃひゃひゃ!」「少しは……我慢、しなよう、2くん……」
勇者(魔王)「っ!?--な、なんて声上げるのよ側近!力抜けちゃうじゃない!」
相棒(側近)「俺じゃないわ馬鹿!というかお前も勇者の身体でその口調はなかなかエグいとわかれ!」
魔王(勇者)「うわああああああああ!!俺が女の子になってるー!!?」
相棒(側近)「お前は最初から女だろうってああ違う!中身は勇者か!!」
勇者(魔王)「なに!?勇者今気付いたの!?遅すぎるわよ!!」
勇者(魔王)(あ、自分が喋ってる声改めて聞いたらこれは酷い。勇者に悪い気がしてきた………)
勇者男(--混乱してきたな!これは好機!!)フォン
キュイイイイン
勇者男「逃げさせてもらう!!」フォン
瞬間、閃光。
光に紛れ輝く魔法陣は、術者の勇者の男を含め侵入者達の足元で輝く。
強い光に辺りが満たされてもなお、魔王は攻撃の手を緩めない。
相殺はせず、勇者の男は障壁で防ぎ続ける。
待つのは数秒後の、発動。
勇者(魔王)「残念だけど転移魔法はしっかり妨害してるのよ!」
勇者男「悪いが転移魔法ではない!」
キィィイイイン
相棒(側近)(転移の反応ではない、--面倒な方法を使う、)
そして、魔法は発動した。
侵入者達の足元に広がる魔法陣がぐにゃりと歪む。
次の瞬間には、その対象を包むように渦巻き出した。
勇者男「転移と召還を同時に妨害するのは、その性質上、不可能」
勇者男「さらばだ」ヒュン
僧侶「…………、」ヒュン
剣士「……馬鹿で良かったわ」ヒュン
発動した召還魔法は、召還に応じた侵入者三人をこの場から連れ去った。
魔法使い「………へ?」
妨害され応じ損ねた、一人を残して。
第一A「まぁ、一人だけならなんとか妨害出来るよう対策はするよな」
第一B「召還魔法を無理やり転移に応用して乗り込んで来た二人を知ってるわけだし」
第一「うんうん。その二人を知らなかったら、寂しく一人置き去り状態には出来なかったかなぁ」
魔法使い「……あ、あわわわわわわ………」ガクブル
第一B「とりあえず、あれだ。周り見てわかるだろ?完全に敵地だって」
第一A「怪獣も怖いがヒトはもっと怖いぜ。だからさ、使った魔法について全部話そうか」
第一「おとなしく全部話せば手荒に扱わない。けど、話してくれないのなら……そうだなぁ……」
第一「特に俺は、あんたに何しちゃうかわかんないやー」ニコリ
城内。
第一副隊長「まったく、ヒトをこんな所に連れてきて。どういうつもり?」
第二隊長「すまん。だがお前がいなくても大丈夫だと判断した」
第二隊長「魔王様達も、魂が抜けた割には気配が濃かったからな。あの