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NHK技研公開:メガネ不要の空間像再生型3Dテレビが進歩。電子ホログラフィ技術も - Engadget Japanese


6月1日まで開催中のオープンラボイベント NHK 技研公開 2014より。NHKは2030年頃を目標として、空間像再生型立体テレビの開発に取り組んでいます。

NHKではこれを8Kスーパーハイビジョンテレビのさらに先の世代のテレビとして位置付けており、特殊なメガネなどを用いることなく、自然で見やすい立体像を空間に表示するための技術研究を進めています。

特徴は、見る角度を変えれば立体像の見え方も変わるというもの。いわゆるホログラフィを動画でやろうとしているというイメージです。

NHKが取り組んでいる立体像の撮像・表示方式は、インテグラル立体方式と呼ばれるもので、この方式を用いたテレビをインテグラル立体テレビと呼んでいます。今回NHKが技研公開2014で展示したインテグラル立体テレビは、画像の撮像と表示の高品質化を目指したものです。

NHK技研公開2014 立体テレビ関連

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インテグラル立体方式について簡単に説明すると、被写体とカメラの間に、微小なレンズが格子状に並んだ「レンズアレイ」と呼ばれる光学系を配置し、それぞれの微小レンズに映った映像をまるごと撮影することで、立体像(インテグラル画像といいます)の撮影が完了します。再生時はその逆で、インテグラル画像を表示したディスプレイをレンズアレイ越しに見ることで、被写体が立体的に見えるという仕組みです。

パッとはイメージしにくいですが、例えば横に2つ並んだレンズ越しに物体Aを見た時、左のレンズに映る物体Aと、右のレンズに映る物体Aは、微妙に角度が異なって見えているはずです。仮にレンズがデジタルカメラの画素数と同じだけあるとするならば、一つ一つ微妙に角度が異なる物体Aの像も、同じ数だけ存在していることになります。インテグラル立体方式は、レンズアレイを用いることで、それらすべての像を記録し、記録した映像をレンズアレイ越しに再生することで、立体像を表現する仕組みなのです。

前置きが長くなりましたが、今回NHKがインテグラル立体テレビ関連で発表した主な内容は三つ。

一つ目は、複数のカメラ映像からインテグラル立体像を生成する手法の改良。

この手法は、主に被写体が無地である場合に立体像の品質が低下する問題を抱えていました。今回、通常の照明に加えて赤外線のドットパターンを照射し、撮像側に赤外線カメラを追加することで、無地の被写体を撮影した際の画質を向上させています。

中央に赤外線ドットパターン照射用のプロジェクターが見えます。




二つ目は、レンズアレイを備えた撮影装置を増やして、立体像が見える範囲を拡大したこと。

撮影装置の台数を1台から7台に増やして多画素化を図り、立体像が立体的に見える範囲を水平・垂直ともに約2.5倍拡大しています。

水平方向にやや角度をつけて撮影。少しの角度の違いでも、視野角にかなりの差が出ていることがわかります。


三つ目は、ディスプレイの多画素化。

インテグラル立体像を高品質に表示するためには多くの画素が必要になりますので、4台のディスプレーに元の映像を大写しにし、表示画質の高品質化を試みています。


立体像の表示に関しては、インテルグラル立体方式とはまた別のアプローチとして、古くから知られるホログラフィの仕組みを電子的に制御して、動画を表示できるところまで持っていこうという試みもなされています。

展示に一例として置かれていた一般的なホログラフィ

ホログラフィは二つの光線がぶつかってできる干渉縞を記録したものです。今回の展示では、光の状態を制御できる空間光変調器というデバイスを使うことで、この干渉縞を電気的に書き換えることができるという資料が示されていました。

立体像を自然に表示するには、この空間光変調器の性能向上が欠かせないとしており、今回は重要な要素技術として、高精細かつ高速に応答するスピン注入型空間光変調器の開発発表が行われました。

説明員によると、今回はホログラフィを動画として写すためのディスプレイ技術として第一歩を踏み出した段階の展示であり、実用化はおそらく数十年単位先の話だろう、とのことです。

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