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唯「ロン!国士無双!」

阿笠「ワシはプリキュアになるぞおおお新一いいいい」コナン「は?」
小鷹「葵の膣中気持ちいい~」葵「う・・・ひぐっ・・・」
エロゲーにハマり過ぎた結果wwww
パズドラとかもう古いwww今一番アツいのはパズドルだろwwww
会社のトイレで嫁と戯れてたら会社クビ→女子社員からウンコ扱いされたったw
【超朗報】合法オンラインスロットーキターーーーーー
雪ノ下「比企谷君…ゴムを付けなさい…」
【速報】5分間で23万ゲトw就職先が確定しますたwwwww
え?まじで?23万クソワロタwwww




1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:03:00.01 ID:AgxS7yd10


「えええ!!!」

律が目を剥いた。
澪と紬も、同様に驚いた顔で、唯の倒した手牌を見つめている。

「えっへん!また私の勝ちだよ!」

すまし顔の唯が胸を張る。

「これで、5連勝だね!」

びしっ!とピースサインを突き出す。
いや、5連勝というより……。と、律が言う。

「お前、国士しかあがってねーじゃん」

唯がきょとん、とした顔をした。


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:03:57.73 ID:AgxS7yd10


「ごめん、私これしか役知らないんだぁ」

唯は困ったように笑う。
マジかよ……。3人は固まってしまった。

「あの、さぁ」

律がおずおずと口を開く。

「他の役も教えてやるから、覚えよう。な?」

唯の顔がぱぁっと明るくなった。

「ホント!?律ちゃん!私、うれしい!」

目の前で両腕をぶんぶんと振る。
国士ばっかあがられちゃたまらんからな。と、律は思っていた。


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:06:25.30 ID:AgxS7yd10


「これが平和な」

律が13枚と上がり牌1枚、計14枚の牌を指し示す。

「ピンフ?」

唯が不思議そうな顔で律の顔を見る。

「そう、平和。漢字で”へいわ”って書いて”ピンフ”って読むんだよ」

へー!っと唯が驚嘆の声を漏らす。

「いわゆるキラキラネームってやつだね!」

興奮気味に言う。律は呆れた表情を浮かべた。

「いや、それとは違うかな」

違うのかー、残念。と、せっかく覚えた言葉をうまく使えなかったので、
がっかりした表情の唯が、つぶやいた。


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:09:58.43 ID:AgxS7yd10


「よし!じゃあ全部覚えたから行くよ!」

唯が立ち上がった。

「どこへ行くの?」

紬が尋ねる。この場にいる他の二人も、同じ疑問を抱いていたので、
それを代弁する形になった。

「ちょっと、麻雀を打つあてがあってね。
今の私なら、誰とやっても負けないよ!」

唯がふんふんと鼻を鳴らす。

「し、知らない人と打つのは危ないぞ。お金賭けるかも、だし」

不安げな表情の澪が言う。
唯がまた、びしっ!とピースサインを突き出す。

「勝つから問題ないね!」

その言葉を聞いて、3人は一様にため息をついた。


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:12:25.05 ID:AgxS7yd10


約20分後。
唯と律は木でできた大きな門の前にいた。
紬と澪は、嫌な予感がするから、と言って帰ってしまっている。
律が口を開いた。

「お前、まさか、ここって」

律は、怯えと驚愕と、様々な感情が入り混じった表情を浮かべている。

「そう!ヤクザの家だよ!」

唯が叫ぶ。とても、大きな声だった。
律が唯にしがみつく。慌てて言った。

「こ、声がでかい!」

しかし、もう遅かったらしい。

「なんだ?お前らは」

黒服にサングラスをかけた人が、
大きな門の横の、小さな扉の方から、現れた。


11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:12:59.91 ID:AgxS7yd10


「それで」とサングラスの人に組長と呼ばれたおじいちゃんが言った。

「何がしたいって?」

唯と律は、奥の間に通されていた。
律はガタガタと震えている。
このまま東京湾に沈んじゃうんだ。
それとも山に埋められるのかな。
嫌な想像が頭から離れない。
そんな律をよそに、唯が能天気な声で答える。

「麻雀が、したいです!」

ふん、と組長が鼻を鳴らす。

「横の嬢ちゃんは?」

律を指し示した。
震えが、より一層強くなる。

「あ、あ、あ、あの。わたわたわたわた……」

一切言葉にならない。
ふぅ、とため息をついて、組長が横の男に何か指示を出した。
終わった。律は思った。


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:16:31.62 ID:AgxS7yd10


私、生きてる。生きてるんだ。
公園のベンチに、半ば放心したまま座っている律は、そう実感していた。

「私、生きてる」

声に出してつぶやく。
両手を開いたり、閉じたり。それをぼんやり眺める。
やっぱり、生きてるんだ。

「生きてるぞおおおおおお!!!!」

そう叫ぶと、公園にいたすべての人たちが、
ぎょっとした表情で律の方を見る。
組長の言葉を思い出す。

「この嬢ちゃんは付き添いで来ただけらしい。外まで送ってやれ」

大きな門の外まで来ると、サングラスの人は「ご苦労さん」とだけ言って
中に戻って行った。

「ヤクザだけど、いい人で良かった!
いい人で良かったなぁああああ!!!!」

家までの道のりを全速力で駆けながら、そんなことを叫んでいた。


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:19:24.02 ID:AgxS7yd10


「ふむ、つまり」組長は言った。

「代打ち希望、ということで、よろしいかな」

唯は力強い眼光で、口元に笑みをたたえながら、コクコクと頷く。

「そうです!その代打ちとかいうの、希望です!」

組長は「ふぅむ」と少し思案してから、言った。

「はいそうですか、といきなりやらせるわけにもいかん。
嬢ちゃんには何かテストを……」

そのときだった。

「ふざけるなっ!」

隅の方に座っていた、
ツンツンに立てた銀髪にサングラスの男が叫ぶ。

「組長!そんなガキにやらせる必要ありませんよ!
代打ちなら俺がいるでしょう!」

唯のことを指さしながら、組長に食って掛かった。


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:21:55.75 ID:AgxS7yd10


「まぁまぁ、落ち着け」
組長がたしなめる。

「テストくらいしてやっても、バチは当たらんのじゃないかな」

ちっ。銀髪の男が舌打ちをした。
今日は次から次へと、おかしな来客ばかりだな。
そう呟くのを、唯は聞き逃さなかった。

「気に入らんのなら、お前がテストしてやれ。
それなら納得も行くだろう」

組長は言う。
男は、はんっ!と鼻で笑った。

「じゃあ、俺に任せてください」

そう言うと、奥に置いてあった雀卓をここに持ってくるよう、
黒服に指示を出した。


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:24:04.01 ID:AgxS7yd10


「おい、ガキ。いいか。ルールを説明する」

目の前には、乱雑に牌が散らばっている雀卓がある。

「これはさっきまで実際に麻雀を打つのに使ってたものだ。
牌に細工だとか、枚数が違うだとか、そういうことは一切ない」

唯はコクリと頷く。

「ちょっと特殊なルールで打っててな。普段は使わないんだが、
赤牌が4枚混じっている。五萬、五索に1枚ずつ。五筒に2枚だ」

そこで、男はバン!と力強く雀卓を叩く。
卓の上で牌が躍った。

「お前には、全ての牌を伏せた状態で、この4牌を引いてもらう」

場がざわついた。
組長が呆れたように言う。

「おいそりゃ、いくらなんでも」
「いいよ」

間髪いれずに唯が言う。
さらに、場がざわついた。


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:26:49.73 ID:AgxS7yd10


「確かに聞いたぞ。二言はねぇな」

男が念を押す。唯は頷いた。

「いいよ。ただ」

ここで言葉を切り、男を見据える。

「お兄さんにも何か賭けてもらうよ」

「なっ!」男が絶句する。
「何を馬鹿な!」バン!と雀卓を叩く。また牌が躍った。

「調子に乗るのも大概にしろ!こっちはテストする側なんだ!」

大仰に腕を振り回しながら叫ぶ。
だからさ、と唯。

「それとは別に、何か賭けようよ」

「……何?」男が眉をひそめる。

「賭けるものは、なんでもいいからさ」

唯が不敵に笑った。


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:29:57.71 ID:AgxS7yd10


「なんでもいい、だと?」ふん、と男が笑う。

「じゃあ逆に聞く。お前は何を賭ける?
見たところ大した物も持ってなさそうだが」

男は唯と目が合う。その目が、深く、深く。澄んでいく。
男は唯の目に吸い込まれるような感覚を抱き、目を逸らした。

「命」

空気がピンと、張り詰める。
そのとき、間の、奥の奥の方で、唯が何かの気配を察知した。
男は狼狽して言う。

「な、何を言ってる」

うふふ、と唯が笑う。
「それで」そして続けた。

「お兄さんは、何を賭けてくれるの?」

場が、凍った。


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:33:24.21 ID:AgxS7yd10


「まぁまぁ嬢ちゃん、今はそういう時代じゃねぇ」

組長が言った。

「なんでも金で解決するもんさ」

おい、と合図すると、黒服の人が札束を四つ取り出した。

「ここに400万ある。嬢ちゃんはいくら持ってる?」

唯はポケットの中をごそごそと探った。
指に固い感触が触れる。

「これしか、ない」

えへへ、と笑いながら500円玉を見せる。

「は、はんっ!これじゃ賭けにならねぇな!」

男が強がって言った。
そのとき。

「その賭け。俺も乗らせてもらおうか」

間の、奥の奥の方から、これまた銀髪の男が、現れた。


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:37:10.02 ID:AgxS7yd10


「アカギ」組長が言う。

さっきの気配は、この人なのかな。唯は直感で、そう思う。
アカギと呼ばれたその青年は、
堂々とした態度で雀卓まで歩いてくると、
唯の方をちらりと見た。
そして、雀卓に向き直ると、そこに封筒を叩きつけた。

「俺の給料袋です。掛け金に差はあるけど、
まぁそこはそっちの勝ち目が多い賭け。大目に見てもらわないと」

ふふっ、と笑う。

「それでいい。じゃあ賭けは成立と言うことでいいな。
嬢ちゃんが勝てばそちらに400万円。配分はそっちに任せるが。
それにプラスして嬢ちゃんがうちの代打ちになると、
そういうことでよろしいか」

ちっ。男は舌打ちしたが「それで、いいですよ」と答えた。

唯も無言でコクリと頷き、雀卓に歩み寄ると、
牌の背とにらめっこを始めた。


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:39:36.28 ID:AgxS7yd10


「何を、やってる」

訝しげに男は言う。
唯は、じっ、と牌の背を眺めたり、手をかざしたりしていた。

「はっ、馬鹿馬鹿しい。
そうやってると透けて見えるとでもいうのか」

男は一笑に付す。

「そうだよ」

一切の邪気をまとわせず、唯は言った。
男はまた、はっ、と短く笑った。それも気にせず、唯は続ける。

「私ね、昔からすごい馬鹿だったの。
小学校に上がったときなんて、ひまわり学級に入れられそうだった」

あはは、と自嘲気味に笑う。
その間も卓の周りをウロウロしたり、目の高さを変えたりして、
雀卓の上の牌とにらめっこを続けていた。


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:42:01.08 ID:AgxS7yd10


「そう。だからね、生きるのに必死だった」

唯は力強く言う。

「人と同じように生きるためにはね、
人と同じようなことしてちゃ、ダメだったんだよ」

そこでピタリと、動きを止めた。

「考えても考えても、答えなんて出てこなかったけど」

一枚一枚牌を手繰り寄せる。

「だんだん何かを、ぼんやりと感じれるようになってきた」

4枚の牌を、雀卓に叩きつける。

「これくらいの感覚がなきゃ、今まで生きてこれなかったんだよ」

そこには、赤牌が4枚。表になって並んでいた。


36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:45:16.03 ID:AgxS7yd10


「馬鹿な!イカサマ……。イカサマだ!」

男が喚く。

「残りの牌を改めれば」

そう言いながら、全ての牌を表にする。
そこに、赤牌は、ない。

「馬鹿、な」

男は放心状態でへたり込んだ。
「ほっほっ」組長が笑いながらパチパチと拍手をする。

「素晴らしい。ではこれは約束のものだ」

四つの札束が、ドサリ、と目の前に置かれる。
唯はちらりとアカギの方を見た。そして、目が合う。


39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:48:00.22 ID:AgxS7yd10


「あ、あの。私お金出してないから」

おずおずと言って、全てアカギに渡そうとする。
おいおい、とアカギが笑う。

「賭け自体はお前がやったことだろ。
俺は乗っかっただけ。勝ち金はよくて、折半だな」

少し思案した唯だったが。

「じ、じゃあ」

二つの札束をアカギに渡す。
それを、不敵な笑みで受け取った。

「フフ、儲けさせてもらったぜ」

そう言うと唯のポンポンと頭を叩いた。

「それじゃあ。組長も」

唯と組長に一瞥をくれて、部屋を出て行った。


41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:50:54.66 ID:AgxS7yd10


「あ、あの!アカギさん!待ってください」

アカギは、後ろから呼び止める声に、立ち止まり振り返った。

「お前は」

目に映る姿に少し驚く。
はぁはぁと息を切らせている唯がそこにいた。

「おいおい、これから代打ちの仕事だったんじゃないのか」

唯は何か言おうとしているようだが、
ぜぇぜぇと苦しそうな息をつくだけで、
全く話にならない。相当息が切れているらしい。
アカギは息が整うのを待つことにした。


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:54:06.67 ID:AgxS7yd10


「代打ちの話なら、断ってきました」

唯は、笑顔でそう言う。
アカギはぴくりと、眉を動かした。

「なんだ。せっかくなれたのにな」

唯は笑顔を少し曇らせて、胸の前あたりで手を組んで、
指をもじもじと動かしていた。

「なんだ。どうした」

アカギが問いかけたが、しばらくもじもじとしたままだった。
しかし、意を決するようにして言う。

「あの、私、平沢唯って言います!
アカギさんの、弟子にしてください!」

体をくの字に曲げて、腕を突き出してくる。
OKだったら握手をしろと言うことらしい。
「俺は」アカギが言う。「弟子は取らない」
唯がしゅんとした顔をした。
「でも」アカギは続けた。

「ついてきたいなら、勝手にしな」

唯は、ぱぁっ、と明るい笑顔を浮かべて
「はい!」と力強く、返事をした。


48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 19:57:43.56 ID:AgxS7yd10


「なんだお前。ようやくルール覚えたばかりなのか」

アカギは呆れながら笑う。
唯も、えへへーと笑った。
近くにあるアカギの下宿で、
いっしょに晩御飯を食べた後でのことだった。

「じゃあ麻雀の打ち方については勝手に覚えろ。
基本的な技術については教えてやる」

「はい!」唯の顔が明るく輝く。

「とりあえず、サイの目は好きな数が出せるようにしておけ。
あとはすり替えだな」

唯の目の前で、アカギの手牌が瞬時に入れ替わる。
唯は目を見張った。
全然、見えない。

「じゃあ今日はとりあえずこれだけだな」

言うと、アカギはごろんと横になってしまった。
あれ、教えてくれるんじゃないのかな。
唯は横になったアカギを不思議そうに見つめていた。


53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:02:32.24 ID:AgxS7yd10


「おいおい、あんまり見られると寝づらいだろ」

アカギが咎めた。

「え、あ!ごめんなさい!」

慌てて目を逸らす。

「あ、あの。教えてくれるんじゃないのかな、って」

「ああ」アカギが真剣な目で言う。

「だから言ったろ、弟子は取らないって。
覚えたいなら勝手に見て覚えろ。
さっきのはサービスだ」

言うだけ言うと、また横になってしまった。
しばらく見つめていた唯だったが、
また怒られるかなと、慌てて雀卓の方へ視線を移した。
サイの目とすり替え、か。
唯は雀卓の上の牌を見つめていた。


56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:06:04.11 ID:AgxS7yd10


どれほど時間がたっただろうか。
目を覚ましたアカギは、何かが転がる音で目を覚ました。
何か小さい、ああ。サイコロか。
むくり、と体を起こす。

「なんだ、練習してるのか」

「わっ!」突然話しかけられて、唯は驚いた。
「悪い悪い」それを見て、アカギが笑う。
時計を見ると、1時間ほど寝ていたようだ。

「それにしても、さっきのは傑作だったな」

アカギはなおも笑っている。

「さっきの?」唯が手を止めた。
いいよ、続けてて。アカギは言う。
唯はまたサイを転がし始めた。

「さっきの、ヤクザの家でのことさ」


59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:09:56.93 ID:AgxS7yd10


「あれはねー、笑い堪えるのに必死だったよぉ」

唯は爆笑していた。アカギもつられて笑った。

「低能児の集会かと思ったぜ」

アカギは、あの時の唯の行動を思い返していた。

「しかし、お前はいつ気づいたんだ。あれに」

唯はうーん、と考え込む。
そして、自信なさげに言った。

「あのお兄さんが「特殊なルール」とか「普段使わない」とか、
そういうこと言い出したときかなぁ」

へぇ。とアカギが目を見張る。

「それで命までかけたのか」

えへへー、と唯は笑顔で返した。

「まぁあれはこっちのペースに持ち込むために言ったんだけどね。
だから万が一、お兄さんに乗ってこられたら困っちゃったよぉ」

いったん言葉を区切った。

「さすがに人が死ぬのは見たくないからねぇ」


62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:14:00.22 ID:AgxS7yd10


種さえ分かれば、至極簡単なことだった。
光の当たる角度や、故意に影を作ったりして、
牌の見える状況を変える。
そうすると浮かび上がってくる。
”普段使っている牌”と”普段使っていない牌”とがだ。

「ちくしょう」

雀卓を叩く。牌が躍った。
小指に巻かれた包帯に、血がにじんでいる。

「このままじゃ、すまさねぇ」

男は、ギリギリと、拳を握った。


65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:17:14.16 ID:AgxS7yd10


アカギは驚いていた。

「お前、それ狙ってやってるんだよな」

唯の振ったサイは、もうかれこれ100回ほど、
1のゾロ目を出し続けている。

「えへへー、そうだよぉ」

と笑いながら振ったサイも、1のゾロ目であった。

「たった、1時間ほどでできるとはな。驚いた」

唯がきょとんとした顔を向ける。
そして雀卓の牌に手を伸ばした。
瞬時に牌が入れ替わる。

「こっちに思ったより時間とられてね。
サイコロの方はまだそんなに振ってないよ」


67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:18:28.89 ID:AgxS7yd10


はっはっはっ、とアカギが笑う。
唯はそれを見て、意外だなぁと思った。
さっきまで「フフ」とか「ククク」としか笑ってなかったから。

「こいつは、すごいな」

そして、真剣な顔つきをした。

「俺の目に狂いはなかったみたいだ。
お前はいずれ、俺と戦うに値するほど、強くなる」

唯の目をまっすぐ見据える。
唯はなんだかドキドキして、すぐに目を逸らした。

「た、戦うだなんてそんな。
私、腕だってこんな細いし」

そう言って袖を捲りあげた。
アカギは呆れて言う。

「戦うって、そうじゃねぇ。麻雀でだよ」


69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:20:07.78 ID:AgxS7yd10


アカギは「ちょっと野暮用で」と言って出掛けて行ってしまった。
しばらく牌を触っていた唯だったが、ある考えに行きついた。

「そうだ!麻雀打ちに行こう!」

雀荘と言うものがあるらしいことを、
先程アカギから聞いていた。
もしかしたら、アカギさんもそこに行ったのかも。
唯はそう考えた。

「そうとなったら善は急げだよ!雀荘を探さないと!」

ガラガラガラ!と勢いよく引き戸を開けて、
唯は外に飛び出した。


70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:21:24.97 ID:AgxS7yd10


あてもなく歩いていた唯だったが、
意外と早く、それは見つかった。
ボロボロの看板に「麻雀」とだけ書いてある。

「ここで、麻雀が、打てるんだね」

唯は、やや興奮気味に言う。

「たのもー!」

颯爽と中に入っていくと、卓に座っている三人が、
いっせいにこっちを向いた。
新聞を読んだり、爪を切ったり、めいめいに好きなことをしている。

「嬢ちゃん、今日は店じまいだよ」

短いタワシみたいな髪型に、無精ひげをはやして、
ゴツゴツとした顔の男がそう言った。
まるで漁師か山男だな。唯は思う。
そうそう。と痩せぎすではげた男が相槌を打った。
猿みたいな男は、それでも黙って爪を切っている。

「そこをなんとか!」

唯は懇願した。
お辞儀した拍子に、ポケットに入れた札束を見られたことを、
このときの唯は、気付かなかった。


71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:22:55.73 ID:AgxS7yd10


「まぁ客にそう言われちゃしょうがねぇな。
レートは高いから覚悟しておけよ」

唯がキラキラとした顔で、うんうんと頷く。
山男は立ち上がって、その横を通り抜けると、
表のシャッターをガラガラと閉めた。

「こんな時間に営業してるってばれたら、
マッポがうるせえからな」

そう言いながら、窓を開けて、雨戸まで閉めている。
その間も、ハゲは新聞を読んでいて、猿は爪を切っていた。

「時間もないから三半荘勝負にしよう」

ごほん、と咳払いすると、ルールの説明に入った。

「3万点返しのワンスリー。飛び賞は10。
レートは1000点1万円だ」

「い、1万円!?」

唯は、あまりの高さに飛び上った。


73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:25:27.08 ID:AgxS7yd10


「なんだ、文句あるのか」

山男が顔を近づけて、臭い息を吹きかけてくる。
唯は顔を逸らして、ゴホゴホと咳き込んだ。

「い、いや!やります!お金ならありますので!」

やや動揺しながら二つの札束を見せる。
それを見て、三人は顔を見合わせ、ニタリと笑った。

「じゃあ、そのルールで始めようか」

山男が言った。気付けば、
ハゲと猿が、打つ準備を始めている。
唯は準備が整うまで、頭の中で計算していた。
ワンスリーの飛び賞10なら飛びラスでマイナス70。
三半荘勝負なら、3回連続飛びラスでもない限り、
200万以下にはならないよね。
それを繰り返し繰り返し計算する。
よし、大丈夫。
唯が安心した時。

「よし、始めるぞ」

山男が声を発した。


76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:28:37.77 ID:AgxS7yd10


唯から見て、反時計回りに、
山男、ハゲ、猿の順で卓についている。
起家は山男だった。サイの目は4。
開かれたドラは2p。各々配牌を取り終える。

手牌はまずまず、かな。配牌で1シャンテン。
タンピンの高め三色まで見える。
唯がそう思った、そのときだった。

「あ、イカサマ」

山男が手牌と山牌を入れ替えたのに気付いた。

「おじさん、今イカサマしたでしょ」

唯が山男をまっすぐに見据える。

「なんだぁ?」

山男はぶすっとした表情を唯に向けた。


78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:31:03.45 ID:AgxS7yd10


「イカサマだって言うなら、証明してもらおうか」

山男が唾をまき散らしながら言う。唯は顔をしかめた。

「山牌がさっきよりずれてるし」

そこまで言ったところで、山男に胸倉を掴まれる。

「そんなのは証明って言わねぇなぁ!ただの因縁だ。
いいか?イカサマを暴きたいなら、
牌を握り込んだ手を掴みやがれ!」

胸倉を掴んだままの手で、ぐい、と胸を押される。
痛い。
でも、この人の言ってることも確かだ。
山がずれてるなんて、証明にならない。

「ごめんなさい」

唯は謝った。
ふん。山男が言う。

「ごめんですんだら、警察はいらねぇな」

そう言うと、手に持った空の湯呑で、
唯の頭を思い切り殴りつけた。


81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:34:51.23 ID:AgxS7yd10


あまりの痛みに唯は雀卓に突っ伏した。
牌がガチャン!と大きな音をたてて散らばる。
頭を押さえた手を見ると、少し血がにじんでいた。
傷口がズキズキと痛み、頭がガンガンと脈打つ。
唯がおそるおそる顔を上げると、山男と目があった。

「あーあ。牌崩しちゃいけねぇなぁ。
チョンボ料8000点。払ってもらおうか」

そこからはもう、ひどいものだった。
三人は卓の上で、手牌の交換を平気でしている。
唯がそれをチラチラと見ると、
山男がサイドテーブルを拳で叩く。
ガン!と音がするたびに唯は身がすくんだ。

「なんだい、嬢ちゃん。まだ文句があるのかい」

山男の問いに、唯はふるふると首を振る。

「だったらチラチラ見てんじゃねえよ!」

またサイドテーブルを拳で叩きつける。
唯は小さく「ごめんなさい」と謝った。
ガタガタとした体の震えが、止まらなかった。


84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:38:40.00 ID:AgxS7yd10


「この半荘は、嬢ちゃんの飛びで終了だな」

山男はそう言うと、またガン!と音を鳴らした。
唯の体がビクリと跳ねる。
それを見て、満足そうに三人は笑った。

「じゃあ、これで……」

おそるおそる負け分の73万円を払って、唯が出て行こうとした。
そのとき。山男が唯の腕をがしり、と掴んだ。
「ひっ」と短い悲鳴を上げて、唯の体が硬直する。
ゴツゴツしてて、ざらざらしてて。嫌な感触の手だった。

「最初に言っただろ、三半荘勝負だって」

見ると、ニヤニヤとした三人の姿が目に映る。

「でも、頭も痛いし」

言いかけたところに、ガン!と言う音がして、体を縮こませる。

「約束は約束だろうが!」

山男はガンガンと、サイドテーブルを殴りつけている。
唯はガタガタと震えながらも、雀卓についた。


85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:40:06.98 ID:AgxS7yd10


「おいおい、嬢ちゃん。これじゃ足りねぇなぁ」

山男が何回も金を数え直しながら言う。
198、199、200!唯の鼻先で、ぱちんと札束を鳴らす。

「あの、足りない分は、今度返しますので」

ガタガタと震えながら言うと、ガン!と音がした。
身が、竦む。

「負け金の217万!今きっちり払ってもらおうか!」

サイドテーブルを殴りつけながら言う。
そのたびに唯が体を強張らせるのを、
ニヤニヤと三人で眺めている。

「でも、今、お金ない」

言うと山男が近づいてきた。
肌が密着しそうなほどの距離で言う。

「おい、服を脱げ」


95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 20:58:57.21 ID:AgxS7yd10


唯は混乱した。
ぎゅう、と自分の体を抱きしめるようにし、後ずさる。
急に世界に現実感が無くなって、
心臓の鼓動は速く、喉もカラカラになった。
私、これからどうなるんだろう。
ガクガクと、震えが激しくなった。

「おいおい、勘違いしてんじゃねーぞ」

がはは、と山男が笑う。

「なんだお前、自分が犯される想像でもしてんのか。
とんだエロガキだな。お前みたいなガキに欲情なんてするかよ、馬鹿。
妙な期待してんじゃねぇ」

左手でわっかを作り、右手の人差し指を出し入れしている。
三人は腹を抱えて笑った。

「制服だとか、買い取ってくれる店があるんだよ。
お前の顔写真付きなら、まぁそこそこの値段になるだろ」

唯はまだガクガクと震えていた。
黙って首を振る。

「なんだお前、なんなら脱ぐの手伝ってやろうか」

山男が近づいてきた。


96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:00:55.00 ID:AgxS7yd10


「これで、いいですか」

自分の体が見られるのが恥ずかしくて、手で前を隠す。
「はぁ?」山男が怪訝な顔で言う。

「何言ってんだ、まだ残ってるじゃねぇか」

唯は自分の呼吸が止まるのを感じた。
うまく息ができない。

「だって、これ」

唯は呻いた。

「下着もだよ。そっちの方が高く売れるんだ」

山男はつまらなさそうに言う。

「もう5年ほどお前が歳くってりゃ、
サービスしてもらってそれでチャラにするんだがなぁ!」

がはは、と下品な笑い声をたてた。


100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:06:14.26 ID:AgxS7yd10


全裸になった唯に向けて、興味なさげに毛布を投げつけた。

「裸で帰すのもなんだから、そいつはサービスでくれてやる」

唯は色の失った表情で、それを体に巻き付ける。
饐えたにおいがする。臭い。
入口のところで、猿がシャッターを上げて、押さえているのが見えた。

「おい、早くしてくれよ。マジでもう店じまいなんだ」

猿がゲヘヘと笑う。
唯がその横を通り抜けると、耳元に息を吹きかけてきた。
唯は「ひっ」と飛び退く。
目が合うとゲヘヘと笑い続けている。
気持ちが、悪い。
逃げるようにして外に走り出した。

「おーい!その毛布な、5年したら返しに来てくれや!」

がはは、という下品な笑い声が、唯の背中に向けて飛んできた。


102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:08:14.94 ID:AgxS7yd10


アカギが部屋で思案にふけっていると、
カラカラと音をたてて引き戸が開いた。

「おいおい、なんだよ。その格好は」

アカギは、体に毛布を巻き付けただけの唯を、部屋に招き入れた。
とりあえず、雀卓の横に座る。

「で、何があったんだ」

アカギは尋ねる。

「麻雀。負けちゃいました」

唯は悲しそうな顔で言った。
アカギはしばらくその表情を見ていたが、強い口調で聞き返す。

「ただ負けただけじゃ、そうはならねぇだろ。
言いたくないならそれでもいいが、詳しく聞かせろよ」

唯はとつとつと、事の顛末について話し始めた。


106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:11:24.55 ID:AgxS7yd10


「それで、そのあとやつらに何かされたのか」

唯はブンブンと首を振る。

「ガキには興味、ないんだって」

悲しげな笑みを浮かべる。
「そうか、それなら」良かったじゃねぇか。
そう言いかけて、アカギは口をつぐんだ。
何も良いことなんてねぇだろ。
思春期の少女に、あまりに惨たらしい仕打ちだ。

「妙な期待してんじゃねぇ、って笑われました」

アカギは、その時の状況を想像する。
暴力に支配され、蹂躙される、その場を。

「結局、私向いてないんです。こういうの」

アカギは唯を見た。
唯はただ、俯いている。

「麻雀なんか、始めなきゃよかったよ」


109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:14:09.11 ID:AgxS7yd10


アカギは唯をじっと見つめる。
そして、言った。

「そりゃあ、嘘だな。お前の本音じゃない」

唯はアカギの方を見る。
目が合い、しばし見つめ合う。

「本当は悔しいんだろ。お前。
ならなんで、やらねぇんだ」

唯の目に涙が浮かぶ。
「だって、私」言いかけるが、言葉にならない。

「お前はお前だろ。やりたいようにやりゃいい。
俺は自分の行動で、自分が死のうが後悔しない」

唯の頭をポンポンと叩く。

「だから泣いてもいいんだぜ。手ひどく負けた時はさ」

わあああ!と声を上げて、唯が抱き付いてきた。

「私!私、悔しい!」

唯はアカギにしがみついて、わんわんと声を上げて泣いた。


117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:20:35.31 ID:AgxS7yd10


「やってるかい」

荒々しくシャッターを叩きながらアカギは言う。
しばらくそれを続けると、中から声がした。

「うるせぇ!もう店じまいだよ!」

アカギは鼻で笑う。

「なんだ、いるんじゃない。
つれないこと言わないでさ、ちょっと相手してくれよ」

ガラガラと音をたててシャッターが開いた。
唯から聞いてた印象とほぼ一致する、山男が現れた。
そうか、こいつか。アカギの目がギラリと光る。

「なんなんだよ、お前は!」

そう叫ぶ山男の鼻先に札束を突きつけた。

「金なら、あるんだけど」

山男は後ろを振り返って、仲間の二人を見た。


121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:24:09.41 ID:AgxS7yd10


山男はルールを説明した。
その横でハゲと猿が準備をしている。

「大体分かったけど、三半荘は長いな。
一半荘でいいでしょ」

アカギが言う。山男は鼻白んだ。

「な、な、何を言ってんだお前は!
こっちはわざわざ準備までしてるのに!」

一半荘ではこいつの金を全て奪うのに届かない。
どうせそう思ってるんだろ。
アカギは相手の心を見透かしていた。

「だからさ、レートは3倍でいいよ。
その方が、勝負はひりつくだろ」

ニヤリと笑いながら言う。
その言葉を受けて、山男も下品な笑みを浮かべた。

「それならいい。それで、やろうか」


123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:27:05.45 ID:AgxS7yd10


「ツモ、6000オール。二人飛びで終了だな」

三人は唖然をした顔で、アカギの手牌を凝視していた。
上がり役の山男がかろうじて点数を残しているだけで、
残りの二人はそのツモで飛ばされてしまっていた。

「悪いね。そちらの負け金396万、払ってもらおうか」

山男がわなわなと震える。

「イカサマ!イカサマだ!」

そう言って殴りかかってきたが、
逆にアカギの拳を鼻面に受け、後ろにはじき飛ばされた。
地面に仰向けに倒れ、鼻血を吹き出し、失神している。

「イカサマって言うならさ、
牌を握り込んだ手くらい、掴んでくれないと」

アカギはそう言うと、クックックと笑った。
そして震える二人の方へ向き直る。

「さて、払ってくれよ。負け金」

鋭い眼光を向け、そう言った。


128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:31:56.86 ID:AgxS7yd10


ガラガラと、引き戸を開けると、
雀卓に顔を突っ伏していた唯が顔を上げた。
まだ毛布を体に巻き付けたままでいる。

「お、おかえりなさい」

どうやら寝ていたらしく、寝ぼけ眼でそう言った。
アカギはその顔に何かを投げつけた。
「ぷわっ!?」頓狂な声で、唯が叫ぶ。

「取り返してきたぜ、それ」

アカギの言葉に、投げつけられたものを見ると、
それは唯の制服と下着がビニールに梱包されたものだった。

「じゃあ着替え終わったら、声かけてくれ」

そう言うとガラガラと引き戸を閉めてしまった。
完全に閉まって、アカギが戸の前から移動したのを確認すると、
唯はビニールを破き、下着を身に着ける。
アカギさんは、私のこと子ども扱いしないでくれてるんだな。
そう思うと、頬が少し緩んだ。


130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:33:53.58 ID:AgxS7yd10


「もういいよー」

唯が声をかけた。
ガラガラと音をたてて開いた戸から、アカギの顔がのぞく。

「少しは落ち着いたかい」

そう声をかける。
アカギさんって優しいんだな。唯は思う。

「ええ、もうばっちりです!でも」

唯は不思議そうな顔を浮かべた。

「どうやって、制服取り返してきたんですか?」

「ああ、それは」アカギは少し考え込む。
「昼間の組長の力を借りたのさ」そしてそう言った。

「組長?」唯が疑問符を頭にたくさん浮かべて聞く。

「そう」アカギは答えた。
「あそこらへんの雀荘は全て、あの組のシマなんだ。
組長の名刺出せば一発だよ」

それ以上は何も聞かず、そうなのかー、と唯は納得していた。


133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:36:15.82 ID:AgxS7yd10


もちろん、アカギが言ったことは全部、でたらめである。
本当のことを言うと、唯に心配をかけると思い、
あえて嘘をついたのだった。
しかし、これが物語を思わぬ方向へ走らせることになるとは、
当のアカギも気づいていない。

「よし、今ので見当がつきましたよ!」

唯はすっく、と立ち上がる。
アカギはそれを見上げた。

「見当って、いったい」

アカギが言い終える前に、唯がその疑問に答える。

「あいつらに勝つ、算段がついたんです!」

ふん、と鼻を鳴らして、唯は出かける準備をする。
節操のない女だな、とアカギは思ったが、
その表情は至極、明るいものだった。


137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:40:24.98 ID:AgxS7yd10


「たのもー!」

唯がシャッターをガンガンと叩く。
中でゴソゴソと音がした。

「うるせぇ!今日はなんなんだ、いったい」

そう言って出てきた山男と目が合う。
パクパクと口を金魚のようにして、言葉を失っている。

「借りを、返しに来たよ!」

唯は不敵な笑みでそう言う。
そして「ごめん、毛布は忘れちゃったけど」と付け加えた。

「なん、なんだ。いったい」

山男は呟いた。


138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:42:07.95 ID:AgxS7yd10


「まったく、お前ら二人の頼みじゃなきゃ、
こんなこと本当は聞かんのだぞ」

組長は渋々といった感じで言った。

「恩に着るぜ、組長」
「恩に着ます!組長!」

やれやれ、と組長は言う。
昼間、唯がテストを受けた部屋に、面々は集まっていた。
山男、ハゲ、猿もいっしょである。
心なしか、震えているようにも見えるが。

「じゃあルールは今言った通りでいいんじゃな」

組長が念を押す。昨日、唯が打ったルールと同じだ。
唯が力強く頷く。
三人組も、弱々しくそれに続いた。

「しかし、唯ちゃんと言ったか。相手が三人組で、
イカサマも使われちゃ、勝ち目なんてないだろう?」

組長は言う。
三人組は「来た!」と思った。
この小娘はそういう策略で勝つつもりなんだろう。
さすがにこれだけの目があったら、イカサマなんて使えない。
悔しさと恐怖に震えながら、そう考えていた。


142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:45:05.82 ID:AgxS7yd10


「組長、そのことなんだけど」

唯が先を制した。ゴホンと咳払いをする。

「卓についている人以外は、
イカサマについて触れないようにしようよ」

組長はその言葉に驚いたが、もっと驚いたのは三人組だった。
このガキ何を考えている。
山男が冷汗を垂らしながら唯を睨み付けた。

「ただ、イカサマを指摘した時は、その証人になってよ。
卓の上で牌のやり取りとか、されたら嫌だし」

「ふむ」組長は言った。
「お三方もそれでよろしいか」

三人組がギクリと反応する。
他の二人が黙っているので、山男が代表して答えた。

「は、はい。そ、それで、いいです」

組長が大きく頷く。

「じゃあ、始めるよ!」

唯が高らかに宣言した。


144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:46:42.59 ID:AgxS7yd10


山男は憤慨していた。
このガキ、舐めやがって。
他の二人に目線で合図をする。
お互いコクリ、と一度だけ頷き合った。
俺らがどれだけ長い間、麻雀でメシ食ってきたと思ってんだ。
あからさまなイカサマ封じられたくらいで勝てると思うなよ。
ギリギリと歯ぎしりをする。

「じゃあ、仮親決めは、主催者の唯ちゃんでいいかの」

牌が積み終わったのを見て、組長が言う。
それを受けて唯がサイを振ると、5の目が出た。
親決めのサイは9。起家は唯になった。
そして、配牌を終える。

「まずまず、だね」

声に出してそういうと、唯は牌を伏せた。
その間にも、三人組は卓の下で牌のやり取りをしている。
馬鹿め、こっちはもうテンパイだ。さっさと振り込みやがれ。
山男はニヤリと笑う。

「私ね、昔からすごい馬鹿だったの」

突然、唯が語り始めた。


146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:49:25.11 ID:AgxS7yd10


「はぁ?」山男が怪訝な顔を浮かべる。
それも気にせず唯は続けた。

「頭で考えても分からないから、
何度も同じこと繰り返すことを覚えた。
それこそ何度も、何度も、ね。
そうしたら何も考えずできるようになることに気付いたの」

そして両手をじっと見る。

「これが、体で覚えるってやつなんだろうね。
おじさんたちはそこまでやったことある?きっとないよね。
あんなに麻雀を馬鹿にするようなことしたんだもん」

昨日のことを思い出した。短くため息をつく。
それに山男が食って掛かった。

「何をごちゃごちゃと!早く切って振りやがれ!」

唯は、牌をパタリ、と、表向きにした。

「切る牌が無いんだよ。天和、国士無双」

三人組が、あんぐりと口を開けた。


150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:53:48.81 ID:AgxS7yd10


「な、な、な」思わずイカサマだ!と叫びそうになった。
しかし、咄嗟に山男は口をつぐむ。
変ないちゃもんをつけると、ヤクザが黙っていないかもしれない。
ただ、驚愕の表情を貼り付けて、
唯の手牌を見ていることしかできなかった。

「32000オール。全員、飛びだね」

唯が言った。
組長が「ほお」と目を見張る。

「い、今は金がねぇ。店に戻れば」

言いかけた山男を、唯が制する。

「まだお金の心配はしなくていいよ。
だって、この後勝つかもしれないでしょ?」

山男が、何を言っているんだ、という表情で唯を見た。

「だって、昨日と同じルールなら、三半荘勝負だよね」

牌を積み、サイを構える。

「仮親決めは、トップ振りね」

満面の笑みで、そう言った。


153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 21:57:26.20 ID:AgxS7yd10


「わー、すごい儲かっちゃったねぇ」

アカギと並んで歩きながら、ルンルン気分の唯が言った。
3半荘の合計勝ち金、しめて513万円。
アカギも横で、フフ、と笑う。

「しかし、あれは見事だったな。
俺でもよく見てなきゃ、見逃しちまう」

唯はアカギに褒められて、顔が熱くなった。

「そ、そんなすごくないですっ!」

必死に言った。それを見てアカギが笑う。

「あ、あの、すり替えからヒントを得たんですよ。
それなら手牌全部すり替えちゃえばいいじゃん、って!」

唯は手をブンブンと振り回す。

「だから、すごいのはアカギさんです!」

唯は顔を真っ赤にして、俯いてしまった。
それをアカギが、ジッと覗き込んだ。


156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 22:00:03.78 ID:AgxS7yd10


「お前」言いながらアカギが顔を近づけてくる。
唯の手を握った。

「わわっ」唯の体の動きが止まる。
心臓がドキドキする。
これは、このパターンは。
あれか。あれなのか。唯は心の準備をした。

「もうちょっと自信持ってもいいんじゃねぇか。
馬鹿だとか言ってるけど、別にそうも見えねぇ。
手先も器用だしな」

そう言うと唯の手を見て、そしてそれを離すと、
またスタスタと歩いて行ってしまう。
しばらく歩いて後ろを振り返り、言う。

「おい、どうした。置いていくぞ」

唯は、はっと目が覚めたようになって、駆けて行った。

「アカギさんに乙女の純情を汚されました!」

ポカポカと殴りつける。

「お、おい。なんだよ、お前」

夕日にふたつのシルエットが、浮かんでいた。


160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 22:02:11.62 ID:AgxS7yd10


「まぁお前さんらにゃあ、
立て替えた513万円分は、働いてもらわんとなぁ」

先程とは打って変わって、ドスの利いた声で組長が言う。
三人組はガタガタと震えていた。

「これから暑くなるだろうから、北の方にしとくか」

組長は一切表情を変えない。
山男の額から、汗が滴り落ちる。
ハゲと猿は今にも気を失いそうだった。

「なんとか言わねぇか!」

組長が壁を蹴りつけると、があん、と大きな音がした。
「ヒィッ!」と悲鳴を上げ、三人組は体を硬直させる。

「まぁ、時間はたっぷりあるからな。
よおおおく、考えておくことだ」

頬をペチペチとそれぞれ叩くと、組長は出て行った。
極度の恐怖、緊張。それらが限界を超えたのだろう。
三人組はその場に崩れ落ちた。


162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 22:04:16.74 ID:AgxS7yd10


「アカギさん!次の勝負はどこ?」

唯が目をキラキラさせながら聞く。
アカギは少し遠い目をした。

「さぁて、どうするかな」

少し浮かない顔をしている。
「どうしたの?」唯は心配そうにのぞき込んだ。

アカギは観念したように言う。

「いや、ちょっと問題があって。この街を出ることになった」

「なぁんだ」と唯が笑う。
「私もついていきますよ!アカギさん!」

フフ、とアカギが笑った。
あはは、と唯も笑う。
いったい次は誰と勝負するんだろうな。
そう考えると、唯はとても楽しい気分になるのだった。

終わり


170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 22:28:23.72 ID:AgxS7yd10


ここまで読んでくれた人、支援してくれた人、感想くれた人
みんなに感謝します。ありがとう

>>166
そう、同じ



174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 22:35:01.07 ID:AgxS7yd10


>>171
前もたくさん保守してくれた人かな?ありがとう



174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 22:35:01.07 ID:AgxS7yd10


>>172
一応19歳を想定してる。ニセアカギ出してるし



177:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/05/12(月) 22:43:22.65 ID:AgxS7yd10


>>173
即興ってカメックスかな?個人的には結構好きだったりする
まぁ次も頑張って書くよ



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