天気予報マークの今昔
天気予報のマークも立派なイノヴェーション。
晴れを表わすお日様に、くもりを表わす雲のマーク。天気予報のアイコンってわかりやすいですよね。スマホやテレビ、新聞なんかで天気をチェックするときに目にするこのマーク、約40年前に生まれたものだということはご存じでしょうか? 実は1970年代にある学生がデザインしたマークが登場するまでは、天気を示すのには判読しづらい記号が使われていたのです。
ニューヨーク・タイムズ紙ではDaniel Engber記者が、現在ユニヴァーサルだと思われる天気予報のマークを作った人物について記事にまとめています。彼によると、商業的な天気図の第1号は1910年に合衆国の気象局が公開したものなんだとか。その当時、天気を表すのに使われていた記号はずっとわかりにくいものでした。例えば、くもりは「◎のまんなかだけが塗りつぶされたもの」、風は「小さな矢印」で表現されていたそうです。
気象局のレポートによれば、この最初の天気図は3月1日に Minneapolis Journal誌上で発表されたそうです。そのたった4ヶ月後には45都市の65誌に広まりました。天気予報が一般大衆の間に広がったんですね。天気図の普及は、より多くの人がそれを目にしているということ。ほどなくして天気を示す記号は変わり始めました。
しかしながら、私たちがよく知る現在の形のマークが登場したのは1970年代に入ってからです。MTP studioによれば1969年当時BBCで使われていたマークはとても分かりづらいシロモノでした。
その数年後、若いイギリス人アート専攻の学生であるMark AllenさんはNorwich School of Artでの最後のプロジェクトとして、天気予報マークのデザインを一新します。それこそがが、後々まで使われることになったデザインなのです。NYT紙のインタヴューによると…
Allenさんいわく「表現のメインに使ったのは雲のアイコンで、それに(雨の滴や雷など)いろんなマークをつるしたんです」とのこと。1975年、BBCは200ポンドとほんの数%のライセンス料と引き換えにAllenさんのマークを採用します。彼がデザインしたマークはその後30年間、天気予報で使われ続けました。
Allenさんのデザインを見てピンと来た人もいるかもしれませんが、彼はヴィジュアル・コミニュケーションにおいて革命をおこした、オトル・アイヒャーの影響を受けています。アイヒャーは1972年のミュンヘン・オリンピックのアイコンを考案した、ピクトグラム・デザインの立役者でした。
Allenさんのマークは長期にわたってBBCで使われ、その間に世界中の放送局や新聞社で採用される天気予報マークに影響を与えたのです。
2005年、BBCはAllenさん考案のマークを使うのをやめますが、2011年に自社の天気ウェブサイト用に今っぽく手直しをして復活させました。その理由を、デザイン刷新に携わったデザイナーは「鮮やかでひと目で天気が分かるデザインにすることで、天気予報のサイトに表示される多くの情報や数字を和らげたかった」と説明しています。そしてサイトはトップに天気を示すマーク、さらにはJavascriptを使ったアニメーションやワイドスクリーンの空模様のイメージも使い、雰囲気をガラリと変えたのでした。
ここで、最近のお天気アプリのデザインをみてみましょう。iOSのアニメーションを使った天気のみせ方は、ユーザーの間で大評判となりました。HTCの天気ウィジェットのアニメーションもそうですね。シンプルなマークよりも、アニメーションを使ったアンビエントな表示で天気を知るほうがずっと神秘的な感じがしますね。
BBCの天気予報サイトも他の天気サイトやアプリと同様に、トレンドのアニメーション表示にインスピレーションを得たものと思われます。そんな中で、Allenさんのデザインがベースとなった天気予報マークも使われています。たかが天気予報のマークひとつで大げさかもしれませんが、テクノロジーや時代の流れで廃るものもあれば、本当に良いデザインは関係なく受け継がれていくということなのかもしれません。
top image by Sputanski.
source: The New York Times
Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文]
(たもり)
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