ASUSがCOMPUTEX TAIPEI 2014に合わせたプレスカンファレンスで発表したZENBOOK NX500は、4K解像度(3840×2160ドット)に対応した注目のノートPC。価格は未定で、発売は8月の予定です。
基本的なところは速報記事でお伝えしましたが、ここでは展示機に触れてわかった詳細情報についてお伝えします。
液晶ディスプレイの色域は優秀。パネルはシャープ製IGZOベースか?
まずなんといっても気になったのは、CEOのジョニー・シー氏自らアナウンスした液晶の色域(色を表示可能な範囲)です。記事でも紹介しましたが、公式発表された色域は、sRGB比で146%、より厳しいAdobe RGB比でも108%、テレビ用の規格であるNTSC比率でも100%と、DTPやフォトレタッチ愛好家向けの単体ディスプレイ並のスペックだからです。
発表会場では厳密な測定はもちろんできないので目視になりますが、そうした数値を出すだけのことはあるという印象。写真では表現できませんが、Windows 8.1のスタートメニューアイコンで使われる緑や、NETFILXアイコンの背景に置かれたどぎついぐらいの赤色などが表示できている点が印象的でした(一定以上色域が広くないと、どぎつい色は出せません)。
なお、斜めから見た際の視野角と色の変化は、左右方向、上下方向ともに大きなものではありません。こちらも非常に優秀です。
またディスプレイサイズですが、試用機の近くにあるスペック表で、15.6インチと判明しました。本体サイズは幅378×奥行き255×厚さ19mm、重量は2.2kg。想定ライバルと言っていいであろうMacBook Pro Retina(MBPR)15インチが358×247×18mm、2.02kgなので、若干大柄で重い感じ。ただしMBPR 15インチの液晶の解像度は2880×1800ドットなので、ここを考えるとトレードオフと言える範囲でしょう。
なお、「画面の解像度」表示では、ディスプレイ名が「LQ156D1JX02」と表示されています。これは他機種と対比すると、液晶パネルのモデル名と思われます。これを検索してもそのものズバリの型番はヒットしませんが、命名規則からするとシャープのそれに近いもの。
あくまでも予測ですが、同じく15.6インチ4K液晶を搭載したdynabook T954と同じくIGZOベース液晶パネルの可能性は高そうです。
メインメモリは最大16GB、SSDはPCIe x4だけでなくSATA RAID0も
基本性能の高さも特筆ものです。CPUは4コア8スレッド対応のCore i7-4712HQ(定格クロック2.3GHz、ターボ時最高3.3GHz)を採用し、外部GPUとしてGeForce GTX 850Mも搭載します(発表時のプレゼンテーションではGTX 850と記載されていましたが、Mの付くモバイル版でした)。
メインメモリは最大16GBまで搭載可能。大量のメモリを必要とする4K動画編集でも実用になりそうなレベルです。
注目は内蔵ストレージ(SSD)。仕様表では、フォームファクターはNGFF=M.2で、2枚まで装着可能である点。そしてPCI Express x4接続(これはMBPRのx2接続より、理論上2倍高速です)に加えてSATAIII=シリアルATA 6Gbpsにも対応し、SATAでの256GB構成では128GB×2枚を組みにしたRAID 0構成になっていることが見て取れます。
256GB構成ではPCI Express x4とSATA RAID 0の2パターンが選べるわけですが、どちらが速いのか、そして価格が注目されるところです。
ダメ押しとしてWi-Fiクライアントの速度も隠れたポイント。規格上はIEEE 802.11acですが、スマートフォンなどで見られる理論上最高速度433Mbps版ではなく、最高1300Mbpsという高速版だからです。
技術的には、通信回線(ストリーム)数が受信3本+送信3本となる、通称「3×3」に対応。NECのAterm WG1800HPなど、1300Mbps対応802.11acルーターと組み合わせることで真価を発揮できる仕様です。
なお価格は現状で未定ですが、こういった仕様を見ると、最廉価モデルでも20万円前後あたりになりそうな雰囲気があります。
電源仕様は130W? 今後気になるACアダプタの大きさ
実機で感心したのは、本体の仕上げです。ZENBOOKシリーズは天面に同心円状のヘアラインをデザインするなど、細かな仕上げにもこだわってきましたが、今回もしっかりと高級感を感じさせる仕上がりになっています。
写真を撮影した個体は若干の汚れがありましたが、ふち部分の仕上げなども非常に美しく、手前側に配置されたストレージアクセスランプなどのデザインも凝ったもの。
なお、キーボード面の左右には同心円状のドットパターンがありますが、これは印刷されているだけで、スピーカーなどではありません。これを最初に見た時には悪い意味で目立ちすぎかもと思いましたが、すぐに見慣れました。
特筆すべきは本体剛性。素材はアルミニウムベースとされていますが、液晶ディスプレイ側と本体側をそれぞれ、端を持って捻ってみましたが、ちょっとやそっとでは柔らかい感覚がありません。
さらにとくに大型液晶搭載ノートで弱点となる液晶側(蓋側)や、ヒンジ部も剛性に配慮された手触りとなっていました。高級機だからという点もありますが、こうした点まで配慮されているのは嬉しいところです。なお、排気口はMBPRと同じくヒンジ部付近にあり、ディスプレイ面に抜けるタイプです。
さて、隠れた注目ポイントが裏面に書かれた電源仕様です。というのも、19.5V 6.67Aで130Wという、一瞬見間違いかと思う値が書かれていたから。これが本当だとすると、ノートPCとしては破格の出力(=大きなACアダプタ)を要求されることになります。
展示機のACアダプタは隠されていたため大きさが不明ですが、他の機器で出力が近いACアダプタといえば、XBox 360 S(2代目)のACアダプタが135Wです。
もちろん掛けられるコストが違うため多分小型化はされるでしょうが、良くも悪くもサイズが注目されるところ。ともすれば、ここが購入を決めるか否かのポイントともなりそうです。
なお別記事でも報じた通り、ASUSはヘビーゲーマー向けのR.O.G.シリーズモデルとしてNX500の兄弟機的存在となるGX500を追加発表しました。本体デザインと液晶パネルの仕上げ(NX500は光沢、GX500は半光沢です)を除き、基本仕様から本体サイズ、重さに至るまでほぼ同一のモデルです。こちらも価格は未定ですが、発売時期は9月から10月頃の予定です。
昨今のノートPC市場は、米国でのSurface Pro 3発表会でも象徴的に取り上げられたように、AppleのMacBookシリーズの影響が大きい状態です。しかし、MacBook Air対抗モデルこそ各社Ultrabookなど多くがありますが、MBPR対抗モデルになると、液晶パネルの品質や本体重量がネックとなり、正面から対抗できるモデルは非常に少ないのが実情でした。
NX500はその意味で、MBPRに真っ正面から闘いを挑める初めてのノートPCなのやもしれない、という感想を持てる完成度といえます。間違いなく発売が楽しみなモデルです。