天使「あなたは二日後に死んでしまいます」
- 2014年06月14日 22:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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- 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 16:56:37 ID:aiIFGzXI
- その日はとても寒かった。
二十代も後半に差し掛かっているが、就職もせずバイトの日々だ。
友達もたいしていないし、もちろん彼女なんかできたことがない。
正直言って、自分がどうして生きているのか分からなかった。
『シベリア寒気団の影響により、この冬は平年より寒くなるでしょう』
男「寒いのか。いやだねー」
毛布にくるまってテレビを見ながらカップ麺をすする。こんな生産性のない日々が続いている。 - 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 16:57:29 ID:aiIFGzXI
- 寒いと気が滅入るのか、ネガティブな考えがどんどん浮かんでくる。
これからもこんな日々が続くのかとか、彼女ができないんじゃないかとか、一生童貞なのかとか。
『続いてはクリスマスのデートスポットの特集を――』
クリスマスとかいう忌々しい単語が出てきたので俺はテレビの電源を切った。
そうか、もうあと二日だったな。クリスマス。
カレンダーを見る。明日から二日間バイトの予定がない。
男「バイト入れときゃよかった……」
もはや手遅れだ。こうなりゃ二日間引きこもってやる。 - 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 16:58:10 ID:aiIFGzXI
- そして早くも暇をもてあました俺は、再びテレビを点けた。
どうやら歌番組をやってるらしい。
アイドルがサンタ衣装を着てクリスマスソングを歌っている。
男「あーあ。俺の所にもこんなかわいいサンタが来ねーかなー」
そうやって叶いもしないであろう願いを口にした時、玄関のチャイムが鳴った。
男「何のご用ですかー!」
ここから動くのも面倒なので、とりあえず訪問の目的を訊いてみた。
少女「ピザのお届けに参りましたー」 - 4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 16:58:52 ID:aiIFGzXI
- すると、何ともかわいらしい女の子の声が返ってきた。
ピザなど頼んだ覚えは無いが、顔だけでも拝んでおこうと俺は玄関のドアを開けた。
するとそこにはピザ屋の店員の姿はなく、
少女「死んでください」
代わりに、拳銃を俺に向けた女の子が立っていた。
俺は反射的に玄関のドアを閉めた。 - 5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 16:59:28 ID:aiIFGzXI
- 少女「すみません。今の冗談ですから開けてください」
ドアをノックしながら、女の子が何か言っている。
少女「あのー。外、寒いので入れてもらえませんか?」
拳銃だと? この平和大国で?
少女「あ、そうだ。お土産に肉まん買って来たんですよー。冷めてしまいますよー」
しかも女の子だぜ? 今のはきっと何かの見間違えだ。
少女「あの、そろそろ体が――」
俺はもう一度ドアを開けた。
少女「ああ、やっと開けてくれましたね」 - 6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:00:00 ID:aiIFGzXI
- そこには何の変哲も無い、コンビニの袋を持って寒そうにしている女の子が立っているのだった。
男「とりあえず入れよ」
特に入れてやる理由も無かったが、寒そうにしている女の子を見て自然とそう口にしていた。
少女「ありがとうございます。肉まんが冷えてしまったので電子レンジ借りてもいいですか?」
女の子はまるで自分の家であるかのように台所へと歩いて行った。
まあ、いいか。
しばらくして肉まんが温め終わり、女の子がリビングまでやってきた。
少女「肉まんどうぞ。熱いので気をつけてくださいね」
男「ああ、ありがとう」 - 7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:00:35 ID:aiIFGzXI
- 女の子は俺の向かいに座ると、改めて話を始めた。
少女「さて、色々と聞きたいことがあるでしょうがまず自己紹介と行きましょう」
男「ぜひともそうしてくれ」
少女「私は天使です」
男「…………は?」
おそらく俺はとてもまぬけな顔をしているだろう。
だが、目の前の女の子はそのくらい突拍子も無いことを言ったのだ。
しかし女の子、もとい天使は特に気にした様子も無い。 - 8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:01:41 ID:aiIFGzXI
- 天使「まあその反応も当然です。むしろいきなりこんなこと言われて信じるようなら少し頭を疑わないといけませんからね」
ずいぶんと失礼なことを言いながら、天使はすっくと立ち上がった。
天使「百聞は一見にしかずと言いますし。私が天使である証拠を見せましょう。――ほら」
何の前触れも無く、まるで最初からそこにあったかのように、天使の背に白い羽が現れた。
俺はしばらくの間その光景に見とれていた。そして無意識にその白い羽へと手を伸ばした。
天使「あ、羽は私の性感帯なのでできれば触れないで欲しいです」
その言葉で一気に現実に引き戻された俺は、伸ばしていた手を引っ込めるのだった。 - 9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:02:14 ID:aiIFGzXI
- 天使「冗談ですよ。ともかく、これで私が天使だと信じてくれますか?」
男「……悪いが、正直言うとまだ信じられん」
天使「そうですか。まあ、信じないならそれでもいいです。それよりもここからが大事な話ですから」
天使は今までのおちゃらけた雰囲気を消すと、静かな声で告げた。
天使「あなたは二日後に死んでしまいます」 - 10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:02:49 ID:aiIFGzXI
- 男「…………そうか」
天使「案外落ち着いてますね」
自分でも意外だった。普通ならこんなことを言われたら落ち着いていられないだろう。
もしかしたら、目の前の女の子が天使だと名乗った時点でこうなることを予測していたのかもしれない。
男「まあ、特に生きてる理由も無いし」
天使「そうですか」
しばらくの間、お互いに言葉を発さずにいた。 - 11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:03:23 ID:aiIFGzXI
- その沈黙を先に破ったのは天使の方だった。
天使「まあ少しは落ち込んでるんでしょう。そんなあなたに朗報です」
男「朗報?」
俺を元気づけようとしたのか、元のおちゃらけた雰囲気に戻った天使はそんなことを言い出した。
その厚意を受け取り、俺は相づちを打った。
天使「ええ。なんとあなたには死ぬまでの間に一つだけ願いを叶える権利が与えられました」
男「……それマジ?」
天使「マジです」 - 12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:04:44 ID:aiIFGzXI
- 男「それって君のできる範囲でとかじゃない?」
天使「それは違います。おそらく叶えられないことはないと思います。死にたくない以外は」
男「そっかぁ」
何でも願いを叶えてくれる。これは朗報以外の何物でもない。
俺に何か叶えたい願いはあっただろうか。
男「やっぱり童貞を……」
俺は無意識に天使を見た。
ゴミを見るような目で見返された。 - 13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:05:16 ID:aiIFGzXI
- 天使「もっと他にないんですか?」
男「いや、でもさ。やっぱり悔いは残るだろうし」
天使「私を当てにしているなら他を当たってください」
男「何でも叶えるって言ったろ?」
天使「天使を穢すのは重罪ですよ? これはあなたのために言ってるんですよ」
男「そうか……。いや、悪かった。やっぱり気が動転していたみたいだ」
天使「気にしなくていいですよ。それに、まだ二日あるんですから」
男「あと二日、か」 - 14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:06:54 ID:aiIFGzXI
- ピンポーン。
またチャイムが鳴った。
天使「あ、来たみたいですね。ちょっと出てきます」
男「お、おい」
俺を無視して、天使は玄関へと歩いて行った。
そして、
死神「そうか、君が男か。初めまして、私は死神だ」
今度はスーパーの袋を持った女の子がやってきたのだった。 - 15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:07:33 ID:aiIFGzXI
- 天使「ちょっと晩ご飯の材料を買ってきてもらいました」
男「なるほど……」
死神「やれやれ。天使は人使いが荒いな」
天使「というわけで、台所借りますね」
天使は死神からスーパーの袋を受け取ると、台所に歩いて行った。
そして、今度は死神が俺の向かいに座るのだった。 - 16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:08:08 ID:aiIFGzXI
- 男「なあ、君はほんとに死神なのか?」
死神「困ったな。天使は羽を見せればいいのだろうが」
男「鎌とか持ってないのか?」
死神「ああ、それなら。――ほら」
死神は、農作業に使う鎌をそのまま取り出したような巨大な鎌を、どこからか出した。
死神「これでどうかな?」
男「信じるよ。天使に死神と来たらもう疑いようが無いしな」 - 17 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:09:41 ID:aiIFGzXI
- 死神「ああ、そうだ。せっかくだし何か話さないか? 普段あまり人間と話す機会がなくてな」
男「そうなのか? じゃあ聞きたいんだが、天使と死神は仲悪いんじゃないのか?」
死神「いや、そんなことはないぞ。天使も死神も元は同じだからな。同じ組織の違う部署といった所か」
男「へえ。じゃあ学校とかあったり?」
死神「ああ。専門の学校などもあるが、私たちの場合は同じ学校を出ている。途中で別のコースに進んだがな」
男「なら、天使と死神はやることが違うのか」
死神「そうだな、天使の仕事は霊魂を天界に導くこと。それに対して、死神の仕事は悪霊を退治することなんだ」
男「でも、俺まだ死んでないのにどうして天使が来たんだ?」
死神「そうか、まだ聞いていないのか。では、願いを叶えるというのもまだ聞いていないのか?」 - 18 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:10:13 ID:aiIFGzXI
- 男「いや、それは聞いた。もしかして抽選に当たったとかなのか?」
死神「それは違う。よし、私が説明してやろう」
死神は姿勢を直すと、改めて説明を始めた。
死神「さっき死神の仕事は悪霊を退治することだと言っただろう? だが、ある時期から悪霊の数が増えてきてな。悪霊を生まれさせない方法が考えられたんだ」
死神「ところで、どのような者が悪霊になってしまうか分かるか?」
男「うーん……。悪いやつとかか?」
死神「いや、それは違うな。悪霊になってしまうのはこの世に未練を残した者だ」
男「未練を残した者?」
死神「たとえば、事故に遭って亡くなると地縛霊になるとよく言うだろう? いきなり命を奪われれば未練も残るというわけだ」
男「なるほどな」 - 19 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:10:46 ID:aiIFGzXI
- 死神「同様に、誰かに殺された者も悪霊になりやすい」
男「でも、そんなのどうやって防ぐんだ?」
死神「そうだな。こういうことは未然に防ぐことができない。だが、ちょっとのことで未練を断つことができる者もいるんだ」
男「それが、俺なのか?」
死神「ああ。私は内容を知らないが、君にもちょっとした未練があるはずなんだ」
男「未練、ねえ」 - 20 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/14(土) 17:11:25 ID:aiIFGzXI
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コメント一覧
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- 2014年06月14日 23:25
- さっきまでガリレオ見てたから男が堤慎一で再生された
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- 2014年06月14日 23:56
- ギャルゲーのやりすぎでこういう文がスラスラ書けるようになっちゃったんだろうなあ
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それと、冒頭の部分は独り身の男には堪えるなw