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憂「契約執行!」唯「よしきたー!」



うはwwww2日で157万wwwオプション99楽勝すぎわろたwwwwwwwww
街コン終了wwwwオンライン合コンがヤヴァすぎるwwwwww
漆原「暑すぎてやる気でない」 芦屋「お前はいつもないだろ」
春香「ほ~ら、響ちゃんのグラビア巻頭特集だよ!」
漆原「ベルが遊びにやってきた」鈴乃「『面倒を見に来た』だ」
パズドラとかもう古いwww今一番アツいのはパズドルだろwwww
会社のトイレで嫁と戯れてたら会社クビ→女子社員からウンコ扱いされたったw
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【速報】5分間で23万ゲトw就職先が確定しますたwwwww
え?まじで?23万クソワロタwwww


1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:21:31.35 ID:EL6qIFfR0


お姉ちゃん。私の愛したお姉ちゃん。


 私はあなたを幸せにできたでしょうか。私からあなたへ贈ったもの全てがあなたを幸せにしたでしょうか。


 私は幸せでした。あなたの傍にいるだけで幸せを謳えました。


 それはこれからも、ずっと。


 あなたの寝息が私の胸元を優しくあたためてくれます。それだけのことなのに胸の隙間がすぅーっと埋まるようで、心細さなんてたちまち溶解して消えてしまいました。


 ありがとうお姉ちゃん。私が頑張ってこれたのはお姉ちゃんのおかげだよ。お姉ちゃんが私のそばにいてくれた。それだけで私は幸せでした。


 ありがとう。ありったけのありがとうをあなたに伝えます。


2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:24:04.39 ID:EL6qIFfR0


姉妹とは何でしょうか。


 あなたは先に生まれて、私は少しあと。そう、私は赤子でいたころあなたが隣で遊んでは眠っていました。ひょっとしたら、お母さんよりもあなたが視界を彩ることのほうが多かったと思います。


 あなたが手足を満足に動かせるようになったころでしたか。私の肌にあなたの温もりが伝わるようになったのは。私の稚い掌に手を重ねるあなたは、いつも私の反応を見て微笑んでいましたね。つられて私も笑っていたように思います。


 私も拙くも一人で歩けるようになると、ここそこに足を進めるあなたの傍にいようと追いかけたものでした。あなたの手を?まえて妹を連れ添う姉の図式を作っても、するりとあなたは抜け出して見えない何かへと向かってしまい、私は付いていこうと必死に歩きました。


 刷り込みしたひよこのようだ、といつか誰かに言われた気がしました。


 やがてあなたが幼稚園に通い始めると、二人が引き離される時間は格段に伸びました。小さな鳥籠の中から飼い主を待ち侘び囀る小鳥のように、寂しい思いをしていました。あなたのいないことで拗ねてしょっちゅうむずかるのでお母さんは大変だったそうです。


 一年後には私もあなたと同じ幼稚園に入園しました。行きも帰りも休み時間もあなたの温もりを求めて寄り添いました。あなたの笑う瞬間をこの世界の誰よりも見つめてきたと自負します。叱られているときでさえ崩さなかった笑顔を鮮明に記憶しています。


 しつけのなった籠の鳥のように、よくできたコを演じ逸早く大人たちから解放されてあなたのもとへ帰りたかった時期でもありました。


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:27:38.88 ID:EL6qIFfR0


成長していくにつれ私は別離の訪れを理解しました。あなたの去った幼稚園で泣きじゃくることもなく、私は染みついた習慣をこなしよくできたコであり続けました。
 友達も作れました。先生にも褒められました。近所の奥さん方にも羨ましがられました。それもこれもあれもどれもすべては、家に帰ればあなたがいると信じていたから。


 成長するにつれ、二人が離れ離れとなる時間は長くなっていきました。当然の摂理でしょう。


 それぞれがそれぞれを取り巻く環境と関わり、それぞれの社会を形成し、同じ空の下へ巣立っていく。


 それは不幸な運命だと嘆く自分がひょっとしたらいたかもしれません。表の私は幸せな運命だと理解していました。あなたが高校生活を満喫しているのを見て、中学生ながらわたしの心に摂理を悟りました。
 当時あなたへ向けた微笑みは本物ですから、深層の私が存在するのなら、どうか摂理を受け入れた私を許してください。


 不運にもあなたが高校生に上がるまで、私の方があなたよりも籠の外を飛び立ち籠の内を羽ばたいていました。表の私にとっては、ですが。


 でも不運のあとには運がついて回るのでしょう。高校生になったあなたは私なんかとは比べられないほど遠くまで羽ばたきましたね。おめでとうお姉ちゃん。


4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:30:20.74 ID:EL6qIFfR0


大空に線を一本引けばそこに鳥がとまる。一羽、また一羽と休み鳥たちの憩いの場となる。


 あなたが体験をときに嬉しそうにときに悩ましげに話してくれるだけで私の世界が広がった気がしました。この話を進めようと思うとあなたが初めてギターを弾いて聞かせてくれたときを思い出します。
 目の前で失敗を繰り返しながらも克服し一曲分弾き切った瞬間はいつだって心を沸き立てました。そんな籠の中でのお話。


 あなたにとっては軽音部が、私にとっては二人の親友たちが、籠の外でのかけがえのない居場所となりました。
 あなたが笑っているときに別の場所にいる私も笑えているでしょうか。そんなことを考えた時期もあったけれど、ときに線から線へと飛び移る梓ちゃんという小鳥がいたので、お互いの状況は具に知れて杞憂でした。


 だからときどき考えました、あなたが将来軽音部のみなさんと私の手が届かない場所へ行ってしまうことを。妄想の中のあなたは両腕で囲いきれない居場所を手に入れて世界で活躍していました。ライブ会場で観客へ向けて歌って踊って笑うあなたがいました。
 観客の中には私もいました。会場を満たす歓声に負けずあなたを呼ぶと一瞬だけあなたと私の視線が重なりました。


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:32:52.69 ID:EL6qIFfR0


妄想はそこで終わりません。ライブの晴れ舞台の幸せとは裏腹に不幸があなたを取り囲みました。
 あなたの人気へ嫉妬する同業者、あなたを利用するしか頭にない拝金主義者、音楽性の違いだとかくだらない理由で対立を煽るバンドメンバー、コアなファンによるストーカー、擦り寄る薬の売人、二股男、DVを働く上に婚外子を持つ夫、…………。
 幸せは長続きしないんだ、と深層の私が幾度もそう囁きました。


 あなたは高校1年生の頃に部活への出席を数日禁止されました。ボーカルの練習をし過ぎて喉を潰したこともありました。高校2年生の頃に部活メンバーの二人の喧嘩に直面しましたし、ライブ前日まで風邪で寝込みました。
 ライブは無事に成功しましたが、ひょっとしたらお姉ちゃんが練習不足の酷い演奏を披露して梓ちゃんにお説教されてたかもしれません。


 偉い人は言いました、禍福は糾える縄の如し。不幸をきっかけに幸せが訪れる、と。たとえば追試を受けるはめになったのが起因して軽音部と私は顔合わせすることになりました。ハッピーエンドの物語はこのもっともな例です。
 不幸にみまわられた主人公がそれをきっかけに幸せに巡り合えるのです。毒林檎を食べて死んだお姫様が偶然通りかかった王子様に救われて以前より満たされた人生を歩みました。


 ですがこの故事はハッピーエンドのみを言及しているわけではありません。幸せがきっかけで不幸が訪れるとも言っています。


 至極当然のことです。ハッピーエンドは不幸の訪れを前提として、不幸の前には幸せが在る。すなわち不幸の訪れで物語をぶった切ればバッドエンドです。白雪姫は死んだままなのです。
 不幸が訪れるそれまでの幸せ、あるいは日常という幸せこそが最上の幸福だったと悟るわけです。


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:35:08.00 ID:EL6qIFfR0


このように人生という運命の糸がハッピーエンドを迎える前に断線すれば悲惨なことこの上ない。妄想の中でお姉ちゃん、あなたが幸せを?めたとしてそれが不幸の訪れを示唆するかもしれない、と思うと胸が締め付けられました。


 表の私は言いました。あなたの邪魔をしてはいけない。私の妄想の鳥籠にあなたを閉じ込めてはいけない。私の妄想の鳥籠に私を閉じ込めてはいけないと。


 高校生活を精一杯楽しむ努力をしているあなたは宝石のように輝いていた。磨けば磨くだけ暖かな光沢を煌めかせてくれた。磨こうと手を差し出すのは私だけじゃない。軽音部のみなさんや幼馴染の和ちゃんや……多くの人に見守られていて挙げていったらキリがなかった。


 私の手が届かないところに行ってしまってもあなたは輝いていく。だから私も安心して送り届けられたらよかったのにな。


 3年生のあなたが修学旅行へ参加してしまい家に誰も帰ってこない、と気づいたら泣いてしまう私がいた。それまでだって合宿や中学の修学旅行で家を丸一日以上離れることがあったのだから慣れっこのはずなのに。
 家中を大掃除してルームメイキングを完璧に終わらせてあなたの帰宅を待ち侘びることに楽しみを見出していた、そんな私はどこに消えてしまったのか。


 私とあなたにいつか訪れる別離という摂理を前に、このような体たらくでいてはいけなかった。永別を迎えるわけでもないのに悲観に暮れることはないよ、と表の私は励ました。


 でももう楽観的であり続けるのは限界でした。深層の私がこう囁き続けたのです。私のあなたへの想いは恋心であり、心だけでなく肉体での繋がりを欲していると。
 その囁きは淫猥な夢として認識させられてきた。私が高校に上がってから生起頻度を上げながらずーっと、ずーっと。


 あなたを心も身も私の鳥籠に閉じ込めたいと思った。『寂しかったんだよ』と耳元で囁きたかった。言葉で愛を確かめ合いたかった。唇と唇で繋がりたいと思った。肌と肌を重ねて体温を共有したかった。
 汗とも涎とも淫液ともわからないほどにグチャグチャな液体で全身を濡らしてしまいたかった。朝になれば淫猥な幻想は霧散してしまった。


 いつまでも表と深層の板挟みに遭っていたわけではなかった。あなたが大学から合格発表をいただいた晩、深層の私が表の私と取って代わった。
 大学の資料を覗いてみれば寮生活を強いられているじゃありませんか。それまでとは比較にするのがバカらしいほど長期間、私はあなたと引き離されてしまう。


7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:37:46.60 ID:EL6qIFfR0


『どこにもいかないで』喉から突き出たその言葉を飲み込むことはできませんでした。俯いたまま上げられない視界であなたが固まったのを知覚しました。
 あなたは『大丈夫だよー連絡はいつでも取れるし』と無邪気な返事を聞かせてくれたけど、違うんだよ。私が欲しいのは言葉じゃない、愛だった。


 我先にと口外へ進撃する禍言をぶつけ続けました。視界は涙で朧げに霞み、声は震え嗚咽が混ざりました。やがて声にならぬ声だけが口から洩れてくるようになると、あなたの両腕が私を取り囲み収めました。涙腺がはじけてしまった。その晩、私たちは肌を重ね合わせました。


 深層の私はさざなみのように穏やかでした。淫猥な夢は現実となり、夢の世界は空っぽになりました。情事のさなかに意識を失った私はぐっすりと眠っていたそうです。


 こんにちは本当の私。さようなら羽ばたいた私。私とあなたは紅い糸で結ばれた一心同体だね。二度と離すものか。誓いの証にと寝起きのあなたと深い深いキスを重ね唇を離すと、あなたの口回りは涎塗れでした。
 そこに一粒の泡が浮いていたので人差し指でそっと触れると指にも貼りついて、壊れることはありませんでした。



 『ほんとうにいいの?』


 『憂にさみしい思いをさせたくないもん』


 『んんっ』



 別離という摂理は泡沫と消えてしまった。表の私が生きていれば不幸だと嘆いたことでしょう。あなたと別れる軽音部のみなさんも不幸だと歯がゆい思いをするでしょう。でも当人等が幸せだと思ってるのですからそれは幸せなことだと思いませんか?


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:40:23.15 ID:EL6qIFfR0


彼女等が未来を星の数だけ描いたように、私もあなたとの情事を海底から吹き出す泡のごとく夢みてきました。私では決して手の届かないところからあなたを引きずりこんで濡れ手で抱いたのです。
 でも安心してください。あなたが外へ出たいというなら出してあげます。私とあなたは紅い糸で結ばれているので離れることはないですから。


 朝はあなたにおはようって言うからおはようってキスしてほしい。ごはんから着替えまでお互いがお互いにしてあげてほしい。ときどき我慢できなくて朝から抱いてほしくなってもゆるしてほしい。


 夜は私におやすみって言ってほしい。いっしょにお風呂に入って、いっしょのシャンプーとリンスで洗いっこして、ひとつの歯ブラシを共有して、いっしょのベッドに入って、いっぱい私に優しくして、いっぱいキスを重ねて、二人でいっぱい気持ちよくなって……。


 私が高校の授業を受けてる間はもうしわけないけどあなたはお家にいてもらわなきゃ。でも安心して、あなたと私はメールでもSNSでも繋がってるからね。寂しい思いはさせないよ。電話だって掛けてくれていいよ。だから、一緒に同じ大学に入ろうね。
 軽音部の皆さんと同じ大学に入りたいんだよね。うん。うん。


 周囲は祝福してくれませんでした。梓ちゃんは時折悲しそうな目で私を見つめてきました。その反応は織り込み済みでしたので笑って流しました。
 お姉ちゃんに聞いた話、軽音部のみなさんは進学した大学であなたの代わりはいないから、とサークルに入るのを見送っているらしい。少し笑ってしまいました。私の百合色の生活が始まったのです。


 されどその幸せこそが不幸のきっかけだったのです。私の生きる社会で一組の同性愛カップルが槍玉にあげられました。彼女等に罪はないでしょうに、学年中から冷たい目で見られ、あるいはいじめられており見ていられません。
 こうして私たちはお互いの特別な関係を隠蔽するために嘘をひとつ、ひとつと重ねざるを得なくなったのです。


 真っ先に行ったことは梓ちゃんへの口封じでした。梓ちゃんをはじめとした軽音部のみなさんはあなたの人生を変えた私を良く思っていなかったので、彼女を目の前にしたとき戦々恐々としました。


 『二人を守るからどうか怯えないで』そう声をかけてもらえた瞬間膝から頽れてしまいました。軽音部のみなさんにお姉ちゃんを取り返した優越感を抱いていた頃の私を平手ではたきたくなりました。


 その晩私は己の罪をあなたに謝罪しましたね。あなたを軽音部のみなさんから引き裂いたのは間違いでした、私の一時の欲望であなたの将来を捻じ曲げてしまってごめんなさい。泣き崩れる私をあなたはいつかのように優しく抱きしめてくれました。
 その晩の情事は温かな泡に包まれたように安らぎを覚えました。


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:42:07.97 ID:EL6qIFfR0


こうして私たちは周囲の目を逃れ蜜月を堪能していました。梓ちゃんは『ギターを教えてあげないと唯先輩の腕が鈍る』からとときどきあなたに会いに来てましたが、本心ではあなたに会いたかったのでしょう。必ずお泊りセットを持ち込んでいましたから。


 梓ちゃんの優しさには感謝しなければなりません。あなたの体面は浪人生なので表だって遊びに行けず、家族やとみお婆ちゃんを除いてあなたと直接話してくれる相手は梓ちゃんだけでした。
 梓ちゃんと話すあなたは子供のようにはしゃいで、官能とは無縁のかわいさを感じました。


 ただ梓ちゃんは変わってしまいました。あなたが梓ちゃんに抱きつこうとすると過剰に避けようとしました。念のためソッチの目で梓ちゃんを見ていないと誤解を解いたつもりですが、やっぱり警戒してしまいます。仕方ない反応ですが、寂しい気持ちになりました。


 それでも梓ちゃんは私たちの特別な関係に理解を示してくれているのです。被害者のカップルの話題でクラスメイトが盛り上がるなかでも素っ気ない返事を告げ会話を終わらせる梓ちゃんに、胸がときめきました。もちろん恋愛感情は抜きで。
 そのことでお礼を言うと梓ちゃんは照れて黙ってしまいます。梓ちゃんと私との絆は深まったと思いました。




 ここで舞台の幕が閉じてめでたしめでたし。そうであったらどんなに良かったことでしょうか……。


 

 ある日、私と梓ちゃんがなにげない会話で盛り上がっていると数人のクラスメイトがこちらを見て笑っている気がしました。『憂は周囲を警戒しすぎだって』と梓ちゃんはクラスメイトたちのほうへ手を振りました。クラスメイトたちもこちらへ手を振り返しました。


 梓ちゃんはこう言いたいのでしょう。疑心暗鬼に陥ると無いものが在るよう見えてしまうと。だけれどそれは安直な発想ではないでしょうか。私はこう思いました。周囲に敏感であるから隠れた悪意の気配を察知することができると。


 不吉な予感がしました。私の第六感の警鐘が現実であったとして仮に私とあなたの特別な関係がなんらかの形で情報漏洩しているのなら、クラスメイト等は私たちに悪意を隠す必要はないでしょう?前例のあるとおり直接的に”いじめ”の形で制裁すればいいのです。


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:44:02.46 ID:EL6qIFfR0


ならば何に対して私は怯える必要があるのでしょうか。じつは梓ちゃんが私を裏切っていてクラスメイト等と私を観察して楽しんでいる、残酷な妄想が脳裏を掠めた。
 いけない。私は彼女を信頼しています。本当の本当に彼女の言う通り、無いものが見えているのでしょう……か?


 舞台の上で私が主人公を演じているとして、梓ちゃんの配役は私の親友であなたは恋人でした。クラスメイト他周囲の人間は申し訳ないけれど敵役でした。彼女等敵役が物語の糸を紡ぎだす鍵であることは明らかでした。
 しかし彼女等が敵役だという前提が崩れただの脇役(モブキャラ)であったとすれば、誰がこの物語の糸を紡ぐのか。私自身か。


 私は私自身が生み出した幻想と戯れ私自身を貶めていたのでしょうか。長考したわりに鍵の正体が早く発覚しました。


11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:46:10.54 ID:EL6qIFfR0


梓『ごめんなさい……』



 どうして梓ちゃんはソチラにいるの?梓ちゃんの両脇をモブキャラ、いえ敵役が固めているの?


 私に微笑んでくれた梓ちゃんはドコに隠れてしまったの?



 梓『レ……レズなんて気持ちわるい……です』



 聞こえない。両脇のあんたたちは黙ってて。梓ちゃんの声を正確に聴き取れないじゃない。


 一喝してクラスのざわめきを静めた。クラスの悪意が私に集中した。それがなんだというのか。


 私は独りじゃない。梓ちゃんが本当の気持ちを話してくれれば証明できる。二人で協力すればあんたたちの悪意に屈したりしない。



 梓『レズと関わりたくありません……もう近寄らないでください……』


 クラスメイト『正直に言えましたね~あずさちゃ~ん』


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:48:44.66 ID:EL6qIFfR0


梓の両脇のクラスメイトたち『あっはっはっははあはははっははああははははははっははっはっはははははああああああああはははははははあああああははあははあっはははははっははははははあははははははあっはははははっはははあはははははははははっ
 あははあはははっははははははっああああはあはははははっははははは』


 窓際のクラスメイトたち『ハハハハッ!!!!!!ハハハハハ!!!!ハーーーーーーハハハハハハハッハハハハ!!ハハハッハハハハハハハハハッ!!!ハハハハハハハッハハハハハ!!!!!ハーーーーーハハハハッハハハハハハハ!
 ハーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!ハハハハハハハハハ!!!!!!!!』


 廊下側のクラスメイトたち『キャーーーハハハハッ!!!!!!!!ハハハッ!キャハハハハハハハハハハハハ!!!キャハッ!キャハハハハハハ!!!!!!ハハハッハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!!!!!!!!
 ハーーーーーーーーハハハハッ!!!』


 中央のクラスメイトたち『はははは!!!!!wwwwwwwwははははっwははwwwwwwwwwwwwwwははは!!!!!あーっははははは!!!!wwwwwwwひゃははははっwwwwwwあはははははは!!!!wwwwwwはっwwははっwwwwwwwww
 あっははははは!!!!!wwwww』


13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:50:03.83 ID:EL6qIFfR0


中学以来の友達(過去形のようだ)『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ
 ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ』


 ドアから顔を覗かせる同級生たち『ひゃひゃひゃっ!!!ひゃーーはははははははっ!!!!!!ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!はーーーーーーひゃひゃひゃ!!!ふひひひひwwwwwひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!
 ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ』


 窓から覗く陰たち『気持ち悪い!!!気持ち悪いわ!!!!!キモイイイイイイイイイイイイ!!!!!!キモイ!!!!キモイ!!キモイ!!!!!気持ち悪い!!!!!気持ち悪いヨオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!キモイ!!!
 気持ち悪い!!!!!気持ち悪いわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』


 クラス中の机『レズだああああ!!!!!!!しねレズ!!しね!!!しね!!!しねえええええ!!しねしねしねしねしねえええええ!!!!レズはしね!レズはしね!!!!しね!!しね!!しねしねしね!!しね!!しね!!!
 しねえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!』 


 憂『??????????蛙???????驫鸞鬱爨靏驪鸚唖钁鸛鑿欟鸙纜驩鑽顳驤黷鑼鑾鱸???婀欝??????矚???????讚?噫?鑵?鑷嗟?????????欝驢???????鱶?黶???????鑾
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14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:53:01.32 ID:EL6qIFfR0


あれから私は家に閉じ籠りました。外界へと通じる隙間やガラスはあらゆる手段で塞ぎきり、可能な限り外界の音を遮断しました。薄暗い家の中を徘徊することはあっても玄関の扉には決して近寄りません。
 そうまでしてもインターホンの鳴る音に錯乱して機械を壊してしまったことがあり、インターホンも鳴らないようにせざるを得なくなりました。


 マリオネットの糸が切れた人形のように脱力し虚空を眺める毎日。薄暗闇に思い描くのは在りし日の幸せな瞬間でした。


 梓ちゃんが私を裏切った事実は心を抉りました。信用できるのは家族のみ。他人は私たちを罵る悪意で、外界から響く音は全てが私たちを嘲る声に思えました。心的外傷は芯まで深く刻まれてしまったのです。


 あの時教室で意識を失くして、それからのことは覚えていません。朧げに覚えている最初の記憶はあなたの部屋であなたに抱きかかえられていたことでした。あなたは私をベッドに下ろすと私の耳を両手で覆って唇を重ねました。


 あなたの体温と吐息の熱で意識がはっきりしてくると教室での出来事がフラッシュバックしました。全身に暴力的な衝動が走りました。四肢が布団を激しく打ちました。両腕が容赦なくあなたの背中や肩を打ちました。
 声にならない呻き声が塞がれた唇から零れました。瞼の裏の闇にはクラスメイトや梓ちゃんが笑みをたたえておりました。


15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:55:08.41 ID:EL6qIFfR0


あなたの温もりに快楽を覚える余裕はなかったのです。肌の温もりや香り、吐息の熱っぽさ、口内を蹂躙する舌のぬめり、耳を介さず聞こえる水音、と知覚はできるのに。私を支配する感情は恐怖と息苦しさだけでした。


 身体が一層ベッドに沈む感覚を覚えました。体幹を抑え込まれ胸を押しつぶされて両脚をばたつかせることさえままなりません。やがて四肢に疲労が溜まり自由がきかなくなるとあなたの手が耳から離れていきました。


 『なにも怖いものはいないよ』と耳元で囁きが聞こえました。求めていた声だ。あなた以外の声はもう聞こえてきません。瞼の裏にはあなたの顔が浮かんでいました。その瞬間全身の緊張の糸がプツリッと切れました。


 私が落ち着きを取り戻した後のあなたは私の身体を労わるように優しく触ってくれました。『のしかかってごめんね』と情事の最中に囁いていたけど、私はあなたに無理矢理……てシチュエーションでも嬉しかったよ?  


 時間を忘れてたっぷりと愛してもらった後、余韻に浸りながら学校での出来事を話しました。学校中にあなたとの特別な関係がばれてしまったこと、梓ちゃんが裏切者であったこと、クラスの笑いものにされてしまったことを。
 話すのが辛くて声が震えてしまっても、涙がこみあげて話を中断しても、あなたはそのたびに私をぬいぐるみのように抱きしめてくれました。


 事情を把握したあなたはすぐに行動しましたね。脱ぎ捨てられた制服から私の携帯電話を取り出して画面を確認すると梓ちゃんへ電話をかけました。一言二言の事務的挨拶を済ませて聞き手に徹しているようでしたが突然顔を引き締めて、強い口調で言い切りました。



『言い訳は聞かないよ。私たちはあなたたちを赦さない』



 絶対に、と言い残して携帯電話を逆パカしてしまいました。


 私は思い切りの良いあなたの行動に唖然としましたが、あなたが『やっちゃった☆』とばかりにテヘペロとするので自然に笑みが零れました。別人のような行動をしてもお姉ちゃんはお姉ちゃんなのだと安心しました。


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:57:04.92 ID:EL6qIFfR0


また、あなたは私の怖がるものを知っては対処してくれました。窓から誰かが覗いてると告げるとカーテンを閉め切り、家の外に出たくないと呟くと代わりに外出して、誰かに嘲られていると泣きつけば耳を塞いで唇を重ねてくれました。


 私たちが身体を重ねる時間は依然より格段に長くなりました。いじめの被害者という認識だけを共有した両親は私の不登校を容認しました。
 一時は共に涙を流してくれました。しかしやはり私と同じ空間にいるのは苦しいのでしょう。両親の外泊期間も伸びて、長いときは二ヶ月に及びました。


 されど心的外傷が癒えることはありません。どんなに愛撫されても心の傷には指が届きません。あなたのベッドに横たわるのが生活の基本となってしまい、徐々に筋肉は衰え痩せ細っていきました。
 マリオネットの糸が繋がれることはなくなりました。あなたの手を借りてぎこちない動作をするばかりです。『憂のお世話が苦痛なわけないじゃない』という慰めの言葉が惨めな思いを払拭しました。


 姉妹とは何でしょうか。誰かが血の繋がった間柄と結論付けましたが、それだけでは人の情に欠けると思います。心も繋がってこそ本当の姉妹でしょう?仲の悪い姉妹なんてそれは本当の姉妹とは言えません。血は繋がっても
心が切り離されています。


 恋人とは何でしょうか?性欲処理の道具、などと心無い者がいつか言いました。人の情に欠けていると思います。私とあなたが歩んだ人生の糸を手繰り寄せればそんな戯言は汚い泡粒のごとく弾けて消えます。


 恋人との情事には愛があります。愛は相手と共に生きたいと思う心であり、互いの心を紡ぐ鍵です。情事は心も身体も一つにするのです。愛には温もりがありますから、相手の愛を肌と心で受け止める最上の手段であることになります。


 それなら姉妹であり恋人関係にある私たちは『最強!』なのではないでしょうか。姉妹の絆と恋人の繋がりを兼ね備えた特別な関係。加えて同じ女の身体を持つためお互いの身体を全て知り尽くしています。
 生まれてからずっとお互いを見つめてきたのでお互いの過去も癖も趣味嗜好もぜーんぶ知っています。愛の価値に差を見出そうとは思いませんがどうしても、一般的なカップルに対して優越感を隠せません。


 そう、愛は不変の価値を持ち全て平等なのです。カップルとはそれぞれに固有の色彩を持ち合わせた宝石たちが出逢いと別離の群像劇を繰り広げ、やがて誰かと添い遂げていく人生のハッピーエンドです。
 十人十色と言うけれどどの組み合わせでも宝石である限り一組の輝きは皆一様に美しいのです。


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 20:59:04.94 ID:EL6qIFfR0


それなのにこの大空の下では愛の価値に差があるのです。同性愛者だからと私を虐げたクラスメイトたちは人の情を持ち合わせていません。


 私は彼女等に危害を加えていません。無論梓ちゃんにもです。一方的に攻撃してきたのは彼女等なのです。


 彼女等はただの石ころに違いありません。宝石ではないから宝石の輝きに嫉妬するのです。手にとる者の目を楽しませることが出来ずにそこらへんに捨てられてしまう存在です。
 彼女等は舗道に独り取り残されて雨に流され下水道で燻る惨めなバッドエンドを迎えるのです。


 身の内に溜まるどす黒い感情は止まることなく肥大していきました。不運にもこの感情が爆発して錯乱する事態を招いたことがしばしばあり、そのたびにあなたに慰めてもらいました。


 ある日錯乱して慰撫を受けた後汗を流すためお風呂に入れてもらったとき私はあなたに謝りました。『何もしてあげられなくてごめんね』。普通の恋人であれば持ちつ持たれつの関係を築けたでしょうに、私たちは一方が一方に尽くすのみの歪な関係でした。
 この事実は私の心に劣等感を居座らせました。私という存在はあなたがいなければ動くことのない花嫁人形でした。


 ただの石ころたちだって人並みの異性恋愛をするのでしょう。男の人に生計を立ててもらう代わりに家庭を守る責務を全うする、普通の恋人たち。そう考えると再びどす黒い感情が沸き立ってしまいます。
 いつしかどす黒い感情はクラスメイトたちだけでなく全世界へ向けられました。あんたたち異性愛者が虐げるから同性愛者は肩身の狭い境遇を強いられるんだ。私はあなたたちを赦さない。


 私は無力だ。鳥籠の中で給餌を催促するしかできない鳥だ。籠の外ではたくさんの番が大空を謳歌しています。伴侶を求め川を飛び越える鳥もたくさんいます。
 彼等の中には私と同じく宝石を首飾りにするものもいるけれど、粗末な石ころを飾った鳥たちの嫉妬を買い地へ突き落とされるのです。


 私、いや私たちの同族を救いたい。苛められていれば味方したい。孤独ならば私たちが手を差し伸べたい。共に罪深い異性愛者を断罪したい。しかしそれは叶わない。私はぬいぐるみの鳥だから。


 せめて雨が降り続いてほしい。あんたたちが大空の下へ繰り出すたびに全身を濡らしてしまえ……!


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:01:02.42 ID:EL6qIFfR0














 とても不思議な出来事によって私は鳥籠を出ることが叶い、あなたと共にその野望を遂げようとしました。


 しかし、私たちの活動は失敗に終わりました。元々私に悪い所業は向いていなかったのでしょう。どんな理由があろうと人を傷付けることは正当性できません。私は、'私たち'はあの日のクラスメイト等と同じ穴の貉に堕ちてしまっただけでした。


 愛は不変の価値を持ち全て平等です。同性愛者と同じ輝きを異性愛者も持っているのです。それもまた摂理であると気づくには遅すぎました。鳥籠を出てからの私はその摂理に背を向け続けたのです。


 私は活動の全てを悔やみました。異性愛者に対しても、彼等への復讐を唆してしまった同性愛者に対しても。


 そしてこの大空の下に、私は己にケジメをつけました。世界から私の痕跡を掬っていくだけの簡単な仕事でした。


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:03:12.21 ID:EL6qIFfR0


――こうして私の物語は完結しました。世界から見ればハッピーエンドで私から見ればバッドエンド、と世界は評価するでしょう。


 私はそうは評価しません。私の物語を評価するのは作者である私自身です。読者の判断で区分しないでもらいたいな。


 『んん…………うーいー……?』


 ようやくお姉ちゃんが意識を取り戻しました。おはようお姉ちゃん。あなたが目覚めるのをずっと待っていましたよ。


 お姉ちゃんは自分に起きたことを思い出したのか、一度目を合わせると胸元で首をよじって私をくすぐりはじめました。無邪気なお姉ちゃんは子供のようで、つられて私も子供のように笑いながらお姉ちゃんの身体をくすぐりました。


 ありがとうお姉ちゃん。私が生を頑張ってこれたのはお姉ちゃんのおかげだよ。お姉ちゃんが私のそばにいてくれた。今にして思えばそれだけが私の全てでした。


 でも、もう頑張らなくていいんだって。私たちの頑張り物語の主要人物がそう言うんだから間違いないよ。ここでずーっと、ずーっと一緒にいようね。


 ありがとう梓ちゃん。あなたを目の敵にしていた私たちを赦してくれてありがとう。私たちを生かしてくれてありがとう。


 ありがとう天使。


20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:05:04.96 ID:EL6qIFfR0


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王様「おおー勇者パーティーよ!よくぞ魔王を討伐した!」

召使い達「おめでとうございます!」

勇者梓「はい…………」



21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:07:01.78 ID:EL6qIFfR0


魔法使い澪「…………」

闘士律「…………」

僧侶紬「…………お言葉ですg」

澪「ムギ、言わなくていい」

紬「…………」

王様「そなたらのおかげで世界は救われた!褒美はそなたらの望むままに授ける!我が国から英雄が生まれたことをわたしは誇りに思う!」

楽器隊「われわれは勇者ご一行を心から祝福いたします」

姫「ありがとう!みなさま!!」

民「キャー勇者様よー!かわいいー!」

さわ子「よくやったなおめえらああああああああああああ!!このあとの宴会でわたしらデスデビルが凱歌演奏してやるよおおおおおおおおおおお!!」

楽器隊「ちょ、ちょっとそれは困ります!」


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:09:01.92 ID:EL6qIFfR0


梓「王様、お言葉ですが私たちは長旅ですっかり疲弊してますので、催し物はまた後日に……」

王様「ほむぅ。それもそうじゃな。勇士らにはしばし休息が必要じゃ。こちらで宿を手配しておくぞい、勇士らにふさわしい豪勢な」

梓「いえ私たちは各々の我が家に戻ります」

姫「梓様……」

梓「王様のご厚意を無下にして申し訳ございません」

王様「良い良い。おぬしらは魔王から世界を救ったのだ。むしろもっとなんなりと注文して良いのだぞ?あっ、王の位はさすがに譲れぬ。王座は長男、もし男の子が生まれぬ場合は長女の姫が継ぐと憲法に定められておるしな」

王様「いくら勇者といえど系譜の掟は絶対じゃ。たとえ姫が男に嫁ごうとものぅ。同性はもってのほかだ……おおふっ、考えるだけでも気持ち悪い」

姫様「お父様!もうホモなんていません!!この世界は救われたのです!」

王様「うぉっほっほっほ、そうじゃったの」


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:11:25.66 ID:EL6qIFfR0


梓「……ほんとうにお世話になりました」

梓「澪先輩、テレポートを」

澪「んっ」

王様「お、おい梓よ……帰ってしまいおった」

姫「よっぽど急ぎの用でもあったのかしら……」

召使い「今夜のために晩餐の準備をしたのに……どうします姫様?」

姫「……梓様」

王様「はむぅ。主賓不在なのは残念じゃが……よいよい!。今日を国家の祝日とし、国総出でお祭りをするぞおおおおおおおおおおおお!」


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:13:06.07 ID:EL6qIFfR0


海風「ひゅるるるるるるる……ひゅるるるるるるるるるるるる」


カモメ「キャー……………………………………」


梓「……………………」


梓(テレポートで展望台へ降り立つと喧騒が風に乗って届いた。この国の民は皆城下に集まっているようで、展望台内には職員含め誰もいなかった。)


梓(国を見下ろすと見知った店や諸外国からの出店が見受けられた)


梓(掲揚された国旗が翻し、至る所で紅白の幕が高所から垂れ下げられていた。私たちを讃える文句を記した垂れ幕も飾られていた。このような祭りがきっと世界中で行われ、口ぐちに私たちを賞賛しているにちがいない)


梓(私たちの心中に届くことはなかったが……)


梓(魔王は魔族と共に地球上からいなくなった。世界の覇権は人類が掌握し、残された人類が人類の未来を築いていく)


梓(10年、100年、1000年後、……人類史上初の対人外闘争としてこの大戦は語り継がれていき、人々の胸には勝利の矜持が宿り続けるだろう。それが歴史というものだ。
  結果が重視され、過程を勝者の言い様に描き、真偽の不確かな原因と結びつける。そんなだから人の愚かさはこの世界から淘汰されない)


25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:15:10.21 ID:EL6qIFfR0


冒険の書「……パラ……パラ……」


澪「…………………………………」


梓(物憂げに澪先輩は冒険の記録のページを手繰っていく。王様から与えられて以来喜怒哀楽を共にした書物は土色に朽ち始めていた)


梓(そのような記録を辿らずとも瞼を閉じればその闇に、私はこの数年の軌跡を昨日のように思い巡らすことができる。澪先輩も同じだろう。律先輩も、ムギ先輩も。
  私たちは単なるバンドメンバーの集まりではなく、ここ始まりの国を出発する前から今日まで共に一つの思いを掲げ死闘を乗り切った間柄なのだから)








梓(闇を濃厚な記憶が幾つものシャボン玉の流れを形作り横切っていく。大小様々なシャボン玉は美しいが触れてしまえばいとも容易に割れてしまいそうに儚げだ。表面は七彩が形を変え続け、映像が再生されている)


梓(大学生に成りたての頃、頻発した殺人事件や失踪事件の犯人がUMAであるとマスメディアが騒ぎ立てた。新聞やテレビが頻りにUMAの想像図をとっかえひっかえしていることを面白がり、私の周囲でもオリジナルUMAを描くブームが到来していた。
  私自身はゴシップネタに興味が無く冷めた目をしていた)


梓(世界が異常を来していることを理解したのはそれからすぐだ。同級生の何人かが超能力に目覚めたと触れ回り、澪先輩も指先から蝋燭の火程度の焔を点火して響く周囲の目に負けて失神した。
  カラクリがあるのなら手品だろうけど、澪先輩がそのようなわるふざけをする人でないことは明白だ。超能力の存在を信じるほかなかった)


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:18:13.17 ID:EL6qIFfR0


梓(そのころに唯先輩と憂の失踪を知らされた。二人の両親が彼女等を三ヶ月も自宅に放置していたことにも驚いたが失踪のニュースは私たち軽音部を脱力させた。依然として私たちは彼女等と仲直りできていなかったからだ)


梓(つけくわえると、彼女等と最後に連絡を取った澪先輩が言うには、依然として彼女等は私を恨んでいる、のみならず軽音部全員を信用しておらず世界への恨み辛みを叫んで携帯電話を壊したらしい。日付は私が唯先輩に赦しを乞いてから一月後。
  以来彼女等とは音信不通だったが、まさか世間を騒がせている失踪事件の被害者に加わるとは思いもよらなかった)


梓(私の中を流れる時間は彼女等の失踪を機に速く流れていった。ある厄日にUMAの正体とされる異形の集団が世界同時多発テロを仕掛けた。
  加えて異形の集団の正体について宗教的対立が勃発し、異形を信仰する新興宗教までもが出現するという混沌を極め、世界が宗教戦争に明け暮れた。さらには混乱に乗じ利己的野心を発揮した人々が村や町を襲い暴虐の限りを尽くしたともラジオで聴いたことがあった)


梓(テロや戦争失踪事件も合わせると世界人口は10億人にまで減少、世界の趨勢に呑まれ統治のままならない国家は解体され、中央集権制の国家は地方分権を進めていった。こうして同胞と認めた者同士が手を取り合い、世界の至る所に新興国家が建国されていった)


梓(絶え間なく変動していく環境で離れ離れになるまいと、私たちバンドメンバーは懸命に適応していった。終末を迎える前触れのようなこの世界での過ごし方を模索していった。発現した超能力を各々に磨いて武器に用いときに他人のために用いた。
  ただ唯一超能力を持たなかった私はどうしたって先輩方の足手まといになることが多かった。それでも先輩方は私を蔑むことなく、和やかに私に接してくれました。時代が変遷しても軽音部の空気は不易のものだった)


梓(そんな状況に一石が投じられた。神の啓示とやらで私は無能力の弱者から世界の救世主へと変貌したのだ。『異形の化け物は魔族と呼ばれる魔界の生物であり人間界を巣食おうとしている。
  魔族を統べる魔王を打ち滅ぼせば世界を救済できる。しかし魔王を打ち滅ぼす力を持つのは勇者、貴女しかいないのです』これはお偉いさんの口から紡がれた言葉だ。無能力者で優れた体術を持ち合わせない私には荷が重かった)


梓(使命を受け入れきれない私は一晩悩み寝落ちした。その晩で夢を見た。夢の中で私は簡素な戦闘服を纏い立派な剣を左腰に携えていた。なんとはなしに、遥か遠方に見える地平線へ腕を突き出すと五指の先からギターの弦が生えてきた。
  驚愕して思わず尻餅をつくと弦は引っ込んでしまった。己の掌をまじまじと眺め、もう一度念じると五指から生えた弦が額に刺さった)


梓(額の痛みに悶絶していると固いものが背中に当たった。何の変哲もない、私のムッタンだ。懐かしい私の分身は埃を被り弦が古ぼけて今にも切れそうだった。
  『ごめんなさい……』口から謝罪の言葉が零れ落ちた。指から生えた弦で張り替えてあげた。埃まみれのボディに新品の弦の光沢がよく映えている。戦闘服が汚れるのもかまわず、ムスタングを抱きしめた)


27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:20:21.58 ID:EL6qIFfR0


梓(そこで視界が輝き白く塗り潰されていった。まぶしい中目を開けると朝陽が割れた窓から差し込んでいた。夢の内容を思い返す。もしかしたらと上体を起こし、指先が天井を向くよう掌を開き念じるとやはり五指から弦が生えた。
  直後に玄関のドアがノックされ開くと、先輩方の姿が揃っていた)








梓(連なっていたシャボン玉が忽然と連鎖破裂を起こした。冒険の末路を知ってしまっては思い出すのが辛い……。これ以上は私の心が自身の呵責に呑まれてしまう)


律「見てみなよ……魔界への入口が崩壊していく……」


紬「本当に何も残さないのね……」


梓(魔界への扉はここ始まりの国に数年前から存在していた。記録に残されていないがたしかなのは、私の冒険が始まる頃には一般人に存在が知られていたことか。しかし注目されることはなかった)


梓(石作りの扉状に石像が鎮座しているだけだった。海食崖に寄り添う形で佇む石像に近づくのは興味本位子供や浮浪者くらいだった。私たちも冒険の始めにこの国を一周りするときぐらいしか寄ったことがなかった)


梓(その石像がああして魔界扉の役割を終えて朽ち果てていく。ある意味であの扉もまた長い冒険を象徴する証だった)


28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:22:24.37 ID:EL6qIFfR0


梓(石像には円状の凹みが6つほど掘られていた。逆正五角形を形作る5つの凹みと、その中の下端の凹みと接する凹みが一つ。地球上にはそれぞれの凹みに対応する紋章の刻まれた石板が散らばっていたが、今崩壊しかかっている魔界扉には全ての紋章が揃っている)


梓(雫の紋章、ヒトガタの紋章、悲劇の紋章、泡沫の紋章、絆の紋章、そして雫の紋章の傍には堕天使の紋章。いずれも魔族が管理していたものだった)


澪「…………グスッ………………」


冒険の書「………………パサッ……」


梓(冒険の記録を読み返す澪先輩の目には涙が溜まっていた。土で汚れたページを横目に覗けば、紙面上には使命感に煌めいていた頃の私たちがいた。冒険の終わりを目指して勇み続けていく)


梓(そうだ……物語を終わらせないといけない。この人類に刻まれた歴史は都合の良い解釈のものだ)


梓「先輩、冒険の書を完結させましょう」


澪「うん……………………」


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:24:10.13 ID:EL6qIFfR0


梓(本当の歴史はこの冒険の書であり歴史書だ……。それがあの二人への贖罪になると信じる)


梓(そうとでも自分に言い聞かせないと自分が壊れてしまいそうだから…………)








憂『へ~?その眼はやっと魔王の正体に気づいたってことだよね?遅っ!』


憂『アッハハハハハハハハハハハ!!ばっかみたい!!ていうか馬鹿っ!!!!ハハハハッハハハ!!!!ばーかばーか!!ハハハハハハハハハ!!ハーーーーーハハハハハハハッ!!!!!!ハハハハハ!!
  ヒャハハハハハッ!!!!!!!ばか!ばか!ばか!ハハハハハハハハ!!!ばーーーーーーーーーーか!!!!!ばーーーーーーーーーーーーーーーーーーか!!!!!!ハハハハハッ!!!!!』


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:26:00.41 ID:EL6qIFfR0


憂『バッカみたい!さっきまでお姉ちゃんと戦ってたくせに、側近がお姉ちゃんだってことにも気づけないなんて!アハハハハ!!!』


紬『そんな……!?』


律『憂ちゃん……唯……』


梓『憂……ごめんなさい。悪いのは私だけだから!私にだけ傷付けて!こんなこと、もうやめよう?拉致した人々を解放してよ?ねえ……』


唯『あず…………ッ』


憂『なにそれ?私たちの幸せな日々を歪ませておいて今更謝罪!?あんたが裏切らなきゃ私たちは誰にも迷惑かけずひっそりと生きていけたのにっ!!遅いよ!遅すぎるよ!』


澪『違うんだよ憂ちゃん!梓は脅』


憂『おそい!!!おそい!!!ああああああああああああああああああああああああああ!!!!遅い!!!!どの面下げて私たちの前に現れたのよ!!』


憂『……遅すぎたんだよ』


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:28:23.69 ID:EL6qIFfR0


律「あずさっ!!」


梓「ハッ…………」


紬「平気?目をつむったまま固まっちゃってたの。ムリなら私が代筆しても……」


梓「いえ…私にやらせてください……」


律「あっ……冒険の記録が終わる前に魔界の入り口が瓦礫になっちまったよ……」


澪「うぅ……………………」


梓(筆が止まっていた。回想に浸りすぎていた)


梓(冒険の書が最後に更新されたのは魔界扉へ踏み入る前の日だった。この場で記す内容は魔界へ侵入してから世界の救済、そして始まりの国への帰還までとしよう……)


梓(そうだ、冒険を終えての総括も記そう。後世に残す書物にするなら私たちの願いを聞いてもらいたい。こんな冒険が人類の武勇伝として語り継がれることには納得できない)


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:31:55.14 ID:EL6qIFfR0


梓(気分は眼下の海原とは裏腹にちっとも晴れない。宙を飛び交うカモメの群れが心任せに海岸に降り立っていく。町から楽しそうな祭囃子の音がここ展望台にまで響く。ああ平和とは何なのだろう)


梓「みなさん、一つ相談があります」


律「お、おう?」


紬「なにかしら?」にこっ


澪「…………………………」


梓「この冒険の書は今日まで私たちの目で見てきたことを書き残してきました」


梓「しかしここで今、事実を一つだけ捻じ曲げようと思います。死闘の末『魔王は討伐された』と。よろしいですね?」


律「それって……」


紬「なるほどね……」


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:33:40.25 ID:EL6qIFfR0


澪「そうしてくれ…………」


梓「はいっ」


梓(平和とは何か。脅威となる存在が排除された平穏、と愚かな人類は定義するらしい。ならば私たちの記した虚構もまた平和に必要だ)


梓(事実を知るのは私たちだけ。『魔王討伐』の証に魔界と魔族の消滅を示せば人類は納得するはず。これ以上この大戦について追究することはないでしょう)


梓(人類は己の矜持を保てればどんな物語でも構わないんだから)


梓(ああ人類はなんて愚かだろう。己の理解できないものを虐げ排除することに悦楽を得る残虐さよ。思い返せばいつだって人間は自分が一番可愛かった。自分が虐げられるくらいなら、と仲間を差し出す非情さを誰もが持っていた。
  異性愛者も同性愛者も同朋じゃないか。何故異性愛者は同性愛者に手を差し伸べようとしなかった)


梓(その報いがこの世界の異変だった。一時の反道徳的快楽が不幸を呼び寄せるのだ。世界の真理だ。それなのに私は人類が幸福を取り戻すことに躍起になってしまった。
  憂や唯先輩が与えてくれた正当な裁きを私という罪人が薙ぎ払ってしまい、世界の真理が真理たりえないものとなった)



梓(人類に己が悪業への報いを与えたい。世界の真理を成すためにその身を捧げた彼女等の意志を受け継いで私が……。そのためにも私は冒険の書を完結させ真実を世に広めるんだ。人類に己が過ちに気づいてもらうんだ……)


梓(それとも、ほかにあるのですカ?人類ニ悲シミノ雨ヲ降ラス方法ガ……)


35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:36:14.36 ID:EL6qIFfR0


――数時間前、魔王城にて


憂『――やさしかったんだね、あずさちゃんって。じぶんをずーっと、ずーっとうらんできた相手なのにやさしくてしてくれて……ぷっ、ふふふ……』


梓『笑わないでよ……』


36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:38:06.67 ID:EL6qIFfR0


憂『ごめんね……あのときのじぶんがバカらしくおもえちゃって』


憂『うぐっ……ゲホッ、ゲホッ……』


梓『一緒に帰ろう?憂たちの生存は世界の人には黙っておくから!』


憂『んーん。それはむり』


梓『ムリじゃない!!』


憂『もう身体も魔力も限界なんだ……。魔族の人はね……存在するだけで魔力を消費する。魔力が空になったら…その身は蒸発してしまうの……』


梓『じゃ、じゃあ魔力を補給すれば……!』


憂『あはは……魔力の根源って人間は知らないのかあ……カハッ…アッ…!』


梓『……もしかして、人の生命……?』


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:40:11.77 ID:EL6qIFfR0


憂『んーん……。それはね、人への憎悪なの』


澪・紬『えっ……』


梓『憎悪……?』


憂『正確に言うと異性愛者への復讐心…グフッ……はぁ…!』


梓『ご、ごめん!苦しいよね……治療する方法を探そう!』


憂『無いよ……。魔族の人が人間を襲う理由は復讐心を持ち続けなければならないから…。それ以外の方法で魔力を補充することはどうしてもできないの…。私もお姉ちゃんも例外じゃない……。人間を襲うことで復讐心を燃やし続けないと、魔力枯渇を起こして蒸発してしまう』


梓『そんな…………なら私を恨んで!!憂たちに死なれたら私……私……うぅ……』


38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:42:10.06 ID:EL6qIFfR0


憂『こんなことをいまさら言うのはおかしいけどもう……誰かを恨みたくないの………疲れちゃった』


梓『っ…………!』


紬『…………魔族にお祈りを捧げてもいいのかしら…』


梓『ムギせんぱいっ……不謹慎です!』


憂『つむぎさんもやさしいですね…。おねがいします……』


梓『どうして諦めるのよぉ……!!』


律『梓!』ギュッ


梓『やだあ…!やっと再開できたのに!やっと謝罪できたのに…!やっと…仲直りできたの…に!!どうして死に別れなきゃいけないのよおおおおおおおおおおおおおおお』


憂『……人の行いには、報いが返ってくるもの……善行も…悪行も……』


澪『……憂ちゃん。一つ確認したい。存在するだけで魔力を消費するということは、時が進まなければ消費を抑えられるのか?』


40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 21:45:04.26 ID:EL6qIFfR0


憂『…もちろんです。時が止まれば、抑えるもなにも…消費しませんから。しかしそれがいったい…』


澪『ありがとう。そういうことならいける…か』


梓『憂たちを救えるんですか!?』


澪『……梓の望むような形にはならないけど』


梓『…それってどういうことですか』


憂『…聞かせてください……といっても魔力量的にあまり時間が無いようなので手短に……』


澪『憂ちゃんたちを時の座標が一定の異次元空間に封印する。空間内で魔力を使わない限り魔力枯渇を引き起こすことはないよ……』


梓『封印って……それじゃあ二人が世界から追放されるみたいじゃないですか!そんなのイヤです……』


澪『でももうこれぐらいしか憂ちゃんたちを生かす手段が……!』


42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 22:00:13.39 ID:EL6qIFfR0


憂『…生きるのもいい……かなあ…』


梓『憂…………でももう会えなくなるんだよ…』


憂『うん…。でも生きてればみんなの顔を思い出せるから。……ふふっ…魔王現役時代はあんなに憎かった…のに、梓ちゃんのあんな顔やこんな顔も今じゃ愛しい…』


梓『どんな顔よぉ…………』


憂『でも…っ』ぐいっ


梓『わっ…ひゃっ!?』


憂『こうやって梓ちゃんの顔を引き寄せれ…ば、梓ちゃんの顔を間近で見れる…。ああ…数年前の梓ちゃんの面影がある…目、鼻、口、……』


梓『う…憂こそ昔と変わってないところあるよ?目も鼻も口も…手の温もりも』


43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 22:02:00.66 ID:EL6qIFfR0


憂『……ねえ、一度だけ抱きしめていい、かな……?』


梓『この距離で言うこと?』


憂『それもそっか…』ギュッ


梓『あっ…………温かい』ギュッ


憂『…うん……』


憂『お姉ちゃんよりは体温低いね』


梓『あっ、やっぱり?』


憂『だから…温めてあげるね♪』頬スリスリ


梓『んあぁぅああぅ……』


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 22:03:50.65 ID:EL6qIFfR0


唯『わたしもハグする~!』ギュッ


梓『グエッ!!』


律『あっ起きた』


唯『あっずにゃん分あずにゃんぶ~ん♪どうしてこんなに愛しいんだ~い♪』頬スリスリ


憂『あっ、梓ちゃんの体温上がってきた…』頬スリスリ


梓『ひゃたぁひみゃえへひょ……!!///』


紬『あらあらあらあらあらあら』


律『変わんないなーおまえら……』


澪『準備終わったよ……ぜんぜん元気そうじゃん二人とも』


45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 22:07:40.23 ID:EL6qIFfR0


一時だけの和やかな時間が六人の空間を過ぎていった。数年ぶりに集結した放課後ティータイムは教室から魔王城に代わろうと、紅茶やお菓子がなかろうと放課後でした。
 唯先輩が憂のギターとギー太で結婚ごっこをし始め、途中ムッタンを貸したら三角関係の修羅場ごっこを繰り広げられたので全員が大笑いしました。


 私たちはこれからの行動を打ち合わせました。憂が異次元へ封印されてしまえば魔界は存在を維持できず崩壊しまうらしい。事が済んだら私たちはすぐに魔界を脱出しなければならないのでした。
 自分たちの残酷な運命を前提としているにも関わらず、二人が旅行の計画でも練っているかのように明るかった。胸が痛んだ。


 打ち合わせを終え、みんなで永別の挨拶を交わした。唯先輩と憂を四人は交代で抱きしめた。さようならと。私の場合は再び平沢サンドに挟まれるはめになったが、暑苦しさの中に人の愛しさを見出した。
 彼女等は二度と目覚めの朝を迎えることはない、だけれど二度と悲哀と復讐の明日に怯えることもない。


 澪先輩が異次元へのゲートを開いた。この魔法を発動するのに相当の魔力を消費するらしくムギ先輩の協力が不可欠だった。二人の顔には疲労の色が見え、汗と涙でくしゃくしゃだった。


 憂がゲートの開門を確認すると掌を天へ掲げた。すると四方八方から青白いエネルギーの塊が飛んできて、彼女の掌の真上にエネルギーの小球を作り上げていった。あれが、魔族の命の灯火……か。なんて美しい輝きを放っているんだろう。そして……なんて儚いのだろう。
 魔界中の魔族も人間界の魔族も分け隔てなく、憂は彼等を連れ添っていく。唯一、自身の姉だけは生身のまま連れていくようだ。


 魔族の姉妹が別れの言葉を告げた。四人の中で律先輩だけは声を張って返事をした。澪先輩とムギ先輩はすすり泣いた。最後の最後で私は彼女等に何をしてあげれば良いかわからず、言葉を選んでいられなかった。



梓『うい!!今日ね、あなたのお誕生日だったの!!おめでとう!!』


憂『…………魔界にいたから知らなかったや』


憂『ありがとう……ほんとうにありがとう!!!』


46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 22:09:22.07 ID:EL6qIFfR0


こうして二人の平沢は二つのギターを携え異次元ゲートの向こうへ旅立っていった。


 茫然と佇んでいるとゲートの閉まる寸前、澪先輩が慟哭を上げながらゲートへ駆け出した。静止の声を上げる律先輩とムギ先輩の劈く悲鳴が響き渡る。その様子をただ眺めているだけだった。
 澪先輩は残酷な運命を提案した本人だけれど、その気持ちには本当の気遣いがあったのか……、と無気力の中に僅かな安心が在った。


 ところが、まもなくゲートを越えようとする澪先輩が弾かれて倒れた。直後魔力の残滓を捉えた。尻餅をつく澪先輩に律先輩が飛び掛かる。愛のある罵倒が慟哭の中に飛び交う中、ゲートは閉じて消えていった。


 二人に飛び掛かるムギ先輩を視界の端に捉えた。三人の声がこの広い空間に響き渡った。一方で私の視線は先程までゲートの存在していた場所を向いていた。ありがとうございます……。


 全てが終わったことに全身の力が抜ける。冒険の始まりは希望の光陰が差し込んでいたのに、どうして絶望に満ちた終わりを迎えてしまったのか。どうしたら私たちはハッピーエンドに終わっていたのでしょうか。
 これから訪れる平和な世界から爪弾きにされたような錯覚に陥る。『勇者の役目は終わった。もう用は無い』と言われているようだった。


 手が首元を優しく撫でる。そこにはキスの跡が刻まれていた。先程の平沢サンドの際に口づけされたのだろう。二人の生きた証は此処に遺っている……よ。だから泣いてはいけないんだ…………。
 そうだ…国に帰ったら二人の曲を作ろう…。二人の温もりにふれた最期のときを思い出せるような、やさしい曲を…。


 どんなフレーズにしようか…。あっ…学校をイメージしようかな……唯先輩も憂も卒業式を迎えなかったっけ……私たちが代わりに卒業式を挙げてあげようかな……?
 卒業して…世界へ羽ばたく鳥たち……そんな二人にしてあげたい……。『力が欲しいか』どこからかそんな声が聞こえた気がした……インスピレーションが足りない…。またあとで考えよう。まずは崩壊を始めた魔界から脱出しなきゃ……。


 さようなら平沢唯、平沢憂。世界があなたたちへの憎しみを歴史に刻もうと、わたしたちは願います。あなたたちが永劫結ばれていることを――。


おしまい!


48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 22:10:09.98 ID:lYuI2r2P0





49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/23(日) 22:18:03.56 ID:RsmIYpRtP


おつ




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鈴乃「ルシフェルが…バイトだと!?」
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