「猫耳パーカーとフーセンガム」
- 2014年06月19日 10:40
- SS、神話・民話・不思議な話
- 8 コメント
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- 1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 02:13:21.44 ID:OIe+ZWtGo
「ニャー」
「にゃーにゃー」
どこからか猫の声と、猫を真似た人の声がした。
河川敷の下、声のした方を覗き込んでみるが誰もいない。
ここの河川敷には大きな水道橋があり、死角はいくらでもある。
わざわざ河川敷を降りてまで声の主を探しているのは、僕が猫好きという事もあるし……
「にゃーにゃっ……」
先程の声が、僕の好みにどストライクだったのもある。- 2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 02:13:37.14 ID:OIe+ZWtGo
「……もしゃもしゃ」
機嫌、直してもらえたかな……?
正座した僕の膝の上で猫が丸くなり、その猫の喉をゴロゴロと触る少女という不思議な構図。
少女は懐から取り出したフーセンガムを口の中でもしゃもしゃさせている。
どうやら、完全にご機嫌ナナメらしい。
「んーっ……」
少女が小さな体を大きく逸らせて口に力を込めると、ぷくーっとピンク色の球体が膨らんだ。
そのままの体勢でしばらく少女は固まっていたが、パンッと球体が弾けると同時にこちらを向いた。
- 3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 02:14:14.21 ID:OIe+ZWtGo
口元に付いたガムをペロペロと舐めて口に戻し、再びそれを咀嚼しながら
「……あんた、誰?」
と、先程聞いた僕好みの声で尋ねてきた。
とりあえず僕は自分の通う学校と自分の名前少女に答えると、膝を崩して尻餅を付く。
猫が抗議のようにフニャーと鳴いて飛びき、そのまま少女の隣にぴょこんと着地した。
少女は「ふぅん」とあまり興味なさ気に呟くと、僕の鼻先まで顔を近づける。
思わずドキドキしてしまう僕。
- 4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 02:15:06.57 ID:OIe+ZWtGo
「ここで見たこと、忘れろ」
鼻先まで近づいた顔が離れると同時に少女の手が伸びてきて、完全に不意を突かれた僕の顔を少女の爪が掠める。
すんでの所で躱せたか、と思った矢先に少女の隣の猫がコンビネーションアタックと言わんばかりに飛び上がり、僕の顔に一文字を作る。
い、いててっ!?
顔の痛みに思わず手を当てると、微かに血が滲んでいた。
いくらなんでもこの仕打ちは無いのではないか、と今度はこちらから抗議しようと顔を上げると
- 5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 02:15:55.42 ID:OIe+ZWtGo
……あれ?
少女の姿も、猫の姿も無くなっていた。
まるで狐に……いや、猫に摘ままれたような顔で僕は茫然としていたが、ぴゅーっと一陣の風が吹いた所で平静を取り戻し
……帰ろう
と誰に言うでも無く呟くと、帰路に付いた。
それが僕と少女の、いいとも悪いとも言えないファーストコンタクト。
- 6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 02:28:15.01 ID:OIe+ZWtGo
「……」
やぁ、元気?
また出会えるとは思っていなかったので、出来るだけ平静を装いながら声を掛ける僕。
もしかしたらもう一度会えるかも、と帰路をこちらメインにしてみたのだ。
昨日今日の事なので、警戒されて現れないかと思っていたら、あの声が聞こえたのだ。
正直、嬉しい。
「……また来たの、あんた」
「ニャー」
僕が胡坐をかいて座ると、猫がそこにぴょこんっと飛び乗る。
前回の件でてっきり嫌われていると思っていたが、少なくとも猫には好かれているらしい。
「……」
そんな猫を一瞥し、僕に恨めしそうな視線を向ける少女。
僕としては、そんな顔をされると実に悲しいので
こっち来て、撫でてあげたら?
昨日はそうしてたのに、と声を続けようかと思ったが、今の少女の機嫌を考えると藪蛇になりかねないので黙っておく。
- 7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 02:54:26.67 ID:OIe+ZWtGo
「……むむむ」
唸りながら少女が僕の方へとにじり寄り、限界まで僕に近づかないようにしながら猫の方へと手を伸ばした。
猫は少女の手に頬を当て、気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らしている。
そんな仕草が可愛くて、僕もついつい手を伸ばしてしまい
「……っ!」
少女の手に僕の手が触れた瞬間、少女がバッとその場から飛んだ。
その直後、膝元にいた猫の奇襲で前回とは反対側に一文字が刻まれた。
いぎゃっ……!?
完全に不意を突かれた僕はゴチン、と頭を打ち付けのた打ち回る。
そんなこんなしているうちに、予想通りと言うかなんというか、少女と猫の姿は無くなっていた。
(……また、会えるかな?)
- 13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 11:56:45.45 ID:OIe+ZWtGo
やぁ、元気?
「……ん」
「ニャーゴ」
もう何度目になるか分からない挨拶を、少女と交わす。
胡坐をかいて座った僕の膝上に猫がぴょこんと乗り、それに合わせて少女も僕の目の前に座る。
そうだ、今日はいいものを持ってきたんだ
「?」
僕の言葉に、少女がキョトンとした顔でこちらを見る。
万を持して、と言った感じで僕が取り出すのは、学校の近くで拾った猫じゃらしだ。
- 14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 12:16:48.13 ID:OIe+ZWtGo
膝の上の猫に猫じゃらしをぴょこぴょこと振ると、猫もそれに合わせて足をぶんぶんと振る。
取られないように、だが興味を失わないように、絶妙な感覚で僕は猫じゃらしを振り続ける。
「……」
先程から気になっていたのは、少女の視線も猫じゃらしに合わせて揺れている事だ。
試しにくるくると回してみると、少女の眼球が所狭しとぐるぐる回る。
その様子が微笑ましくて、しばらく猫じゃらしを回しながらそれを眺めていたが
「……っ」
やがて僕の視線が自分に向いていることに気付くと、少女はぷいっとそっぽを向いてしまった。
前までならここで猫の爪が飛んできていただろうな、と僕は猫の頭を撫でる。
ゴロゴロと喉を鳴らす猫に、僕の頬が緩む。
少女の事も好きだが、それと同じぐらい猫も好きだ。
というか少女が猫の様だから好き、なのか?
- 15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 12:30:58.25 ID:OIe+ZWtGo
あ、もうこんな時間か
河の色がほのかな紅色に変化したのを見て、僕はそう呟く。
少女と共にいると、時間が進むのが早くて仕方ない。
僕は猫じゃらしをしまうと、膝上の猫を持ち上げ地面に降ろす。
「ナーゴナーゴ」
猫が名残惜しそうにじたばたとしたが、ずっとここにいるわけにはいかない。
少女も少し不満げにこちらを見ていたのが僕の後ろ髪を引くが、名残惜しいのは僕も同じだ。
というか聞いていなかったが、少女は普段どこにいるのだろう?
ねぇ、キミって……どの辺りに住んでるの?
「……」
僕の質問に、少女が押し黙る。
少し困ったような、戸惑いを帯びた視線が僕の視線と重なる。
完全に虚を付かれる形で、そんな僕と少女の視線の間に黒い影。
その影が僕の顔に覆いかぶさり、シャッと僕の額に一文字が作られた。
初めてだった。
猫が少女の指示ではなく、自発的に飛びかかってきたのは。
……逃げられた、か
額の血を拭い、僕は夕焼けを見上げる。
まだ少し、踏み込むには早かったようだ。
- 16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 12:59:36.04 ID:OIe+ZWtGo
や、やぁ……
「……」
次に少女と会えたのは、しばらく経ってからだった。
毎日通っていたのだがなかなか姿を見せてくれず、もう二度と会えないと思っていたので、やっと見つけた少女の背中に僕は慎重に声を掛ける。
そんな僕の心情を知ってか知らずか、少女のじっとりとした目とがこちらを向く。
いつものように胡坐をかいて座るってみるが、猫は少女の隣を離れなかった。
やはり、嫌われてしまったのだろうか……
「……何しにきたの」
言葉はいつもよりトゲトゲしいが、言葉の雰囲気は弱弱しい気がする。
何しに、と言われても困ったものだ。
答えは一つしかないのだから。
そりゃ、キミに会いに
当たり前じゃないかと言わんばかりの僕の言葉に、少女はパーカーの帽子をぐっと引いて顔を隠した。
その行動に何の意味があるのか、僕には分からなかったが……少なくとも嫌悪は感じないのでよしとしよう。
- 17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 13:07:53.39 ID:OIe+ZWtGo
「ニャー」
猫が少女を心配するように一鳴きすると、少女はそれに答える様に猫の頭を撫で、そのまま手を下にずらして行って猫を持ち上げた。
少女が持ち上げると、猫は鳴き声一つ漏らさないらしい。
そのまま猫を運ぶと、少女は僕の目の前にポスンと腰を降ろした。
いつもの逆パターンと言った感じで、少女の膝の上に猫が乗り、その目の前に僕がいる。
これはつまり、そう言う事なのだろう。
……よしよし
僕は手を伸ばし、猫を撫でる。
猫を撫でていた、はずだったのに。
「……っ!」
「ナーゴ」
僕の手は真っ直ぐと、自分の思っていなかった場所へと伸びていた。
少女の頭を優しく撫でると、ふかふかの猫耳パーカーの感触。
これはやってしまったな、またしばらく会えないのかな、などと考えていた僕の想像と少女の反応は少し異なっていて、恥ずかしそうに上目使いにこちらを見ていた。
猫も今日は邪魔をする気は無いらしく、少女の膝上にごろんごろんと頭を擦り付けている。
しばらくそうして、時間が過ぎていった。
- 18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 13:28:46.52 ID:OIe+ZWtGo
あんなことがあって、またしばらく間が開くかと思っていたのだが、案の定次の日も少女はいつもの場所にいた。
今日は珍しく、初めて出会った時に噛んでいたフーセンガムを膨らませている。
なんだか憂いを帯びたその佇まいに、僕は声を掛けられずにいた。
「……ん」
声を掛けられずにはいたのだが、比較的近くにいた僕に少女の方から気付いたようで、視線と共に少女がこちらへ近づいてきた。
僕の手前まで来て立ち止ると、少女は懐からガムを取り出してこちらへ差し出してきた。
「膨らませてみてよ、それ」
僕は少女の隣に座って、ガムをもしゃもしゃする。
そういえば今日は猫の姿が見えないが、どうしたのだろう?
少女に聞いて見ようかと思ったが、前回の事を考えるとまだ踏み入る勇気が無い。
- 19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/06/18(水) 13:35:49.67 ID:OIe+ZWtGo
「……あいつがさ、あたしを引っ掻きやがったんだ」
相手を責める口調で、少女が呟く。
だが僕はその言葉の端に感じた自責の念も見逃さない。
「だからさ、謝るまで許してやんないんだ」
弾けたフーセンガムを口の周りにつけたまま、少女が言う。
実を言うと僕はフーセンガムを膨らませるのがあまり得意ではないので、さっきからずっと噛んでいた。
だがものは試しだ、僕も膨らませてみる。
「あははっ、何それっ」
少女に笑われてしまった。
これでも相当真面目にやった方だったのだが。
少しムッとした表情をしていたのか、少女は笑いながら再び懐からガムを取り出した。
今度は箱ごと。
「あげるよ、それ。次会うときまでに練習しておいてね」
それだけ言い残し、少女はササッと走って行ってコメント一覧
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- 2014年06月19日 12:15
- のっけからきもい
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- 2014年06月19日 12:37
- イチャラ分が足りぬ
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- 2014年06月19日 13:49
- 俺的にかなり高評価
後日談にさらなる期待
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- 2014年06月19日 14:21
- 猫耳パーカーミニスカニーソってすばらしいよね、セット装備で補正がつくレベル。
猫耳パーカーって黒だけかと思ったけど意外と色々種類あるのね
-
- 2014年06月19日 14:36
- ここまでキモいものを最後まで書ける>>1は相当な精神力の持ち主だ
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- 2014年06月19日 16:58
- すばらしい
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- 2014年06月19日 17:12
- なんかデジャヴを感じる内容なんだよなぁ
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- 2014年06月19日 23:05
- [あめがふるとどこかへ消えたくなるの。]みたいな名前のフリゲの内容を書き替えた感じ
-
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