阿良々木暦「きらりホッパー」
- 1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/20(金) 18:19:19.59 ID:tw15P9Cl0
- ・化物語×アイドルマスターシンデレラガールズのクロスです
・化物語の設定は終物語(下)まで
・ネタバレ含まれます。気になる方はご注意を
・終物語(下)より約五年後、という設定です
関連作品
阿良々木暦「ちひろスパロウ」
阿良々木暦「ののウィーズル」
阿良々木暦「あんずアント」
阿良々木暦「ふみかワーム」
阿良々木暦「になショウ」 - 4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/20(金) 18:29:39.84 ID:aUpPVcxlO
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001
冒頭から突然かつ唐突な展開なのだが、僕は絶望に打ちひしがれていた。
森久保との一件でノノウイルスが感染したのか、最近、自然と物事を後ろ向きに考えることが多くなったのだ。
絶望、というその言葉自体を明らかにするのは簡単だ。
表記通り、望みの絶たれた状態。
絶望に冒された者は世の中に存在意義を失くし、自殺すら考えるという。
僕は流石に自殺を考えることはないが、それでも酷い鬱と倦怠感に襲われ、眠れない夜もあったことは確かだ。
「ク……クククククク……ハハハハハハハハハハ!!」
身に余る負の感情に身体が拒絶反応を起こし、自らを嘲るかのように笑いが堰を切って溢れ出す。
傍から見たら、自棄になって気が触れてしまった人間に見えることだろう。
僕の絶望の根源は、あまりにも理不尽な事実からだ。
何故、こんな理不尽な事がこの世に起こり得るのだろうか。
神がいるとしたら、あまりにも非情じゃあないか。
僕は、何のために今まで人として生を受け生きてきたというんだ。
- 5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/20(金) 18:31:21.62 ID:aUpPVcxlO
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「ク、クククク……終わりだ……もう何もかもおしまいだ……ッ!」
事務所において、額に手首を当て、部屋の隅に崩れ落ちるようにもたれかかり、ずるずると腰を降ろし耽美系堕落を表現してみる。
厨二病丸出しな僕の行動を渋谷が物凄く可哀想なものを見る目で見ているが、こういうのは気にしたら負けだ。
更に涙を流して完璧な装い。
これなら神崎にも五分で勝てる。
「暦ちゃん大丈夫? ぽんぽん痛いの?」
そんな僕を膝折りしゃがみ込み、顔を覗き込んでくる一人の少女がいた。
しゃがみ込んでなお通常の女の子とは思えないタッパを持った彼女の名前は諸星きらり。
その身長、なんと約186cm。
僕としては一寸法師になった気分だ。
「諸星……」
「うゅ?」
というか、僕がこんなにも絶望しているのは、元を正せば諸星のせいなのだ。
僕の身長は実に中途半端だ。
高すぎでもなく低すぎでもない。
軒並み上昇傾向にある最近の平均身長を考えたら、男としては小さい方にカテゴライズされるだろう。
何しろひたぎに微差で負けている。
僕が今いちひたぎに逆らえないのには身長差という要素も少なからずあるのだ。
そんなことを考えていたら、事務所内を初期OPのガハラさんのように歩く諸星を見て絶望の谷に突き落とされた、という経緯だ。
なんだよ女の子なのに185cm越えって。
エアマスターより高いって君。
僕は立ち位置的に屋敷俊あたりだろうか。
いや……ルチャマスターだな。
- 6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/20(金) 18:33:34.58 ID:aUpPVcxlO
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「諸星……お前(の身長)が欲しい」
「にょわ!?」
「あー、プロデューサーが担当アイドルナンパしてるー」
双葉がお気に入りのウサギ人形を引きずってだるそうにやって来た。
この二人は同い年で入った時期も近いためか仲が良いのだ。
まぁ、傍から見たら嫌がっている双葉に諸星が懐いているようにしか見えないが。
「いっけないんだー、ちひろさんにチクってやろ」
チクられたくなければ飴を寄越せ、と脅迫してくる双葉。
脅迫内容はともかく、双葉の口に御用達のフルーツ飴を放り込む。餌付け餌付け。
「んー♪」
「何を馬鹿な。僕はただ諸星に身長を分けて欲しいだけだ」
「ああ……確かにプロデューサー、男の人にしたら小さいもんね」
「小さいって言うな! 小さいって言うな! あと世界中の誰よりもお前だけには言われたくないよ!」
双葉は怠惰のあまり成長期をどこかに置いてきてしまった哀れな少女だ。
初対面の時なんか小学生かと思ったが、実年齢十七と聞いてビックリしすぎて鳩胸になるかと思った位だ。
「プロデューサー、なんか失礼なこと考えてない?」
「んー、あげられたらあげたいんだけどにぃ……」
「是非ともくれ。10cmくらいいいだろう」
10cm。素晴らしい響きだ。
ひたぎも見下ろせるようになるじゃないか。
「っていうか何食ったらそんなにでかくなるんだよ」
「ごはんだよ!」
- 7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/20(金) 18:35:36.76 ID:aUpPVcxlO
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「むう……成長期にあまり食べなかったのが失策だったのか……?」
成長期をとっくに終えた僕にはもうこれ以上の成長は望めない。
いや、望めないも何も、半吸血鬼化した時点で成長は止まっているわけだから望むべくもないと言った方が正しいが。
なお、諸星は今も現在進行形で成長期らしく、出会った時には182cmだったのが遠い昔の出来事のようだ。
これからもまだ土筆のように伸びるのかと思うと恐ろしいことこの上ない。
「身長はあげられないけど、代わりにきらりん☆ぱわーあげちゃうにぃ!」
「きらりん☆ぱわー……?」
疑問符を浮かべる僕に対し、諸星は胸元でハートマークを作って溜めを作る。
何をするのかと身構えていると、その手を僕の胸辺りに突き出してきた。
「ほわあああぁぁぁ……にょっこいしょー!」
「ふぐうっ!?」
予想以上かつ予想外の衝撃に、思わず神経毒持ちの魚類を連想させる変な声が出てしまった。
諸星は軽く押したつもりだったのだろうが、その身長差と僕が壁を背にしていたことから思いの外ダメージを受ける。
イメージとしては肺を握られて空気が飛び出した感じだ。
「暦ちゃん元気でた?」
「あ、あぁ……バッチリだ諸星」
「うきゃー☆ 暦ちゃんも元気でハピハピだね!」
諸星きらりはアイドルだ。
ただ、出ている杭を打つよりも先に没個性が沈んでいく芸能界において、アイドルに必要不可欠な『キャラ作り』を素で完成させている、ある意味アイドルをやるために生まれてきたとも言える少女である。
初見では確実について行けないミラクルハイテンションに、その性格にそぐわない男性だとしても高すぎる身長。
加えて周囲の環境にまるで揺れないダイヤモンドの心を持った、非常に稀有なアイドルだ。
個性的な面子が多いシンデレラプロの中でも一際異彩を放っている。
- 8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/20(金) 18:37:09.08 ID:aUpPVcxlO
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ともかく、諸星と対等に付き合うにはそれ相応の精神力を要する。
諸星について行けるテンションと体力が必要なのだ。
そしてそれは僕の得意分野だ! 任せろ!
「ようし諸星、きらりん☆ぱわーも注入したことだし、仕事へ行こう! 今日は双葉とデュオライブだ! 気合入れて行くぞ!」
「いぇーい☆ きらり、最近バリ絶好調だからがんばるゆー☆」
「えぇー……めんどいよ……休む」
「諸星! 双葉と合体だ!」
「にょわっ! 了解であります!」
ビシッと敬礼をして常時倦怠期の双葉を持ち上げる諸星。
ガチョーン☆、と間の抜けた効果音と共に双葉を抱っこする。
「やめろ! 杏は働きたくないんだ!」
「さぁ出撃だ諸星!」
「れっつらごー☆」
「おろせえええぇぇぇ!」
双葉の叫び声が残響となり谺する中、僕を含めた三人は事務所を後にするのであった。
- 9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/20(金) 18:38:54.75 ID:aUpPVcxlO
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002
「にょわー♪ にょーにょわー♪」
仕事帰り。
本日の予定を消化し切った僕と諸星は、散歩も兼ねて夕暮れの中を歩いていた。
本来ならばアイドルに歩かせることはあまりしないのだが、諸星がどうしても、と言うので現在の状況に至る。
にょんにょわソング(命名・僕)を口ずさみながら両手両足を大きく振って歩く諸星の後方を、少し離れた場所から追う。
ちなみに双葉はライブの最中にダンスで力尽きて寝転びながら歌っていた。
それが許される辺りが彼女のキャラの恩恵と言うべきだが。
その後は一歩も動きたくない、との事だったので置いてきた。
双葉は星になったのだ。
犠牲になった彼女のためにも僕はプロデュースを続けなければならない。
……いや、ちゃんとタクシー呼んだよ。
「あっ、見て見て暦ちゃん! あの子とってもかわうぃー!」
「……ん?」
青空に双葉の幻影を見ていると、諸星が片腕を風車の如くぶんぶん回しながら遥か前方を指差している。
かなりの距離を空けて、小さな人影が見える。
視力いいな諸星……。
眼を細めて人影を注視する。
吸血鬼の視力により、豆粒大の人影が望遠鏡のように鮮明に見えてゆく。
- 10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/20(金) 18:41:12.93 ID:aUpPVcxlO
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「あれは……」
歩く度に上下に揺れるツインテール。
小さな身体にそぐわない大きなリュックサック。
「八九寺じゃないか」
僕が八九寺を見間違える訳がない。
「かわゆいよね! 暦ちゃんスカウトすゅ?」
「いや、あの子供は危険だ。下がっていろ諸星」
諸星を制して足を止める。
はぁ。
うーん、どうしようかな。
正直なところ、八九寺を見つけたらダッシュで近付いて色々する、というのが僕の恒例みたいになっちゃっているからなぁ。
お笑いの世界で天丼は必要だが、やり過ぎても鬱陶しいだけなんだよね。
それに僕ももう二十歳を過ぎた大人だ。
そりゃあ高校生の頃は若気の至りもあって法に触れるギリギリのこともしたさ。
ああ、しましたよ。認めましょう。
けれど人間は否が応でも成長する生物だ。
確かに何割かは人間ではない僕だけれど、万物の霊長を名乗る程の種族の枝先である僕が五年間、一切成長していないだなんてことがあってはならない。
ただでさえ八九寺はもう身体的にも成長できない、人に非ぬ神という存在だ。
そこに時間の経過と共に差が出来てしまうのは残酷に思えるが致し方ないことだろう。
それに今だからこそ言うけど、八九寺との絡みは半ば義務みたいなところがあったからね。
例えどんなに嫌いな相手でも、カメラや他人の前では仲良く。
それが社会人でありプロの心得。
芸能界に限らず、人間社会ではよくあることだ。
そういう意味では僕はニーズに応えていただけであり、別に八九寺のことなんて好きでも何でもないんだよね。
そりゃあ嫌いじゃないよ?
年齢の割には口が達者で会話の内容も飽きないし、友人としては好きな部類に入るさ。
けれども、そんな毎回抱き付いてキスをして、ってお前どれだけ八九寺が好きなんだよ、って話になるだろう?
あり得ないあり得ない。
働き者の双葉、ボランティアに行く貝木くらいあり得ない。
ここは常識人溢れる大人の対応として、軽く肩を叩いて『よう八九寺、久し振りだな』とでも声を掛けよう。
さて、と。
- 11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/20(金) 18:43:37.59 ID:aUpPVcxlO
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「はちくじいいいいいいいい!」
「暦ちゃんまってー!」
腹の底から叫ぶと共に、全力で駆け出した。
100メートル走で十秒を切るんじゃないかと思われる速度で八九寺に向かう。
なぜか諸星も一緒だ。
近づくにつれ流石にコメント一覧
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- 2014年06月20日 22:14
- おはよう
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- 2014年06月20日 22:22
- 今、俺を笑ったな?
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- 2014年06月20日 22:30
- 変身
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- 2014年06月20日 22:49
- なんでライダーが沸いてるんですかねぇ...
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- 2014年06月20日 22:56
- お前はいいにょわー☆
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- 2014年06月20日 23:11
- ヘジン!!
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- 2014年06月20日 23:33
- BLACKかな?
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