戻る

このページは以下URLのキャッシュです
http://elephant.2chblog.jp/archives/52088309.html


ベルモット「一つだけゲームをしない? 脱出、ゲーム」 コナン「脱出ゲーム?」|エレファント速報:SSまとめブログ

TOP

ベルモット「一つだけゲームをしない? 脱出、ゲーム」 コナン「脱出ゲーム?」

1 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:02:55 ID:xD7DEO7x6

 その日、俺、こと工藤新一……いや江戸川コナンはものすごく機嫌が悪かった。
 前日の夜に蘭に言われた言葉。
 それが引っ掛かってムカついて、ずっともやもやしているのだ。
「ごめんねコナン君。明日は私、帰り遅いから……お父さんと出前取って晩御飯にしてくれない?」



2 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:03:17 ID:xD7DEO7x6

【第一話 女子高校生誘拐事件】

 言うまでもないことだが蘭は花真っ盛りの女子高生だ。
 初めは部活の関係の集まりでもあるのかと思ったが、どうも様子を伺っていると部活関係ではなさそうだった。
 友達と二人で出掛ける、と言う。

 俺がもし工藤新一のままで蘭と常に行動していれば、おっちゃん辺りが「あーん? あの探偵小僧とどっか行くつもりかぁ?」なんて軽口を言っていただろう。
 ……だけど工藤新一の中身である俺は、思い切りここに居る。
 なら蘭は誰と出かけるのか。

 園子。一番わかりやすく、かつ安心出来る相手は彼女だ。
 でも園子が相手なら友達、なんて曖昧な言い方はしないはずだし、とにもかくにも蘭の反応がいつもと違う。

『蘭姉ちゃん、どこにお出掛けするの?』
 と尋ねれば。
『あ、……うん、ちょっと、ね』
 なんて頬を赤らめられたものだから堪らない。
 あんな顔すんのはいつも蘭が「コナン」に「新一」の話をする時だけだった。



3 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:03:32 ID:xD7DEO7x6

「くっそ……」
 良くわからねぇけど悔しくて、授業中に頭を掻いていたら休み時間元太に「なんだよコナン、風呂入ってねぇのか?」などと言われてしまう。
「そうね江戸川君、汗臭いわよ」
 灰原まで調子に乗ってからかってくる始末。
「バーロ、昨夜ちゃんと入ってる。……考え事してただけだ」

「考え事ってなーに、コナン君」
 歩美が興味津々で乗り出してきた。
 何と答えようか迷っていると
「きっと新たな事件のことですよ!」
 いつも通りの光彦の反応。



4 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:03:52 ID:xD7DEO7x6

 はー、と息を漏らし、ふと灰原に目をやるとこちらをじっと見ていた。
「事件、じゃないわね」
「……ああ」
「例の怪盗さんが予告状を出した訳でもない」
「……ああ」
「となると、あなたがそんなに頭を悩ませるような事柄ってあの子のことしかないわね」
「……ああ。……って、あ、いや、そ、そのっ」

 しまった誘導された。
 うっと詰まって決まり悪く灰原を見ると、彼女は呆れた顔をしている。
「あの子に何か言われでもしたの?」
 観念して、俺は頬杖を付きながら話すことにした。



5 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:04:08 ID:xD7DEO7x6

「今日、遅くなるから出前ですませろってさ……」
「それだけ?」
「それだけ……」

 俺の言葉に、灰原はますます「呆れた」と肩を竦めた。
 しかし横から反応してきたのがちびっ子3人組だ。
「これは事件の匂いがしますよコナン君!」
 意気揚々としている光彦に、
「そうかなあ、事件かなあ? 歩美は蘭姉さん、デートなんじゃないかと思う」
 歩美が余計なことを言う。



6 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:04:27 ID:xD7DEO7x6

 さすが小さくても女の子……といいたいところだが、歩美の意見は俺が一番考えたくなかった、しかし一番考えてしまった物なので何だかダメージがデカい。
「そっかあ? 俺は一人でうな重食いに行ったんだと思うぜ! だからコナンには出前で済ませろって言ったんだ!」
「それなら出前でみんなでうな重食べた方が早いじゃないですか」
「あ、そっか」
 光彦と元太の漫才もほどなく、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴ってしまった。
 慌てて席に戻る面々。



7 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:04:44 ID:xD7DEO7x6

 と、
「で? 尾けるんでしょう?」
「バ、バーロ、蘭のプライベートいちいち詮索しても仕方ねぇだろ」
「デートなんでしょ。あなたが気にしないはずないものね」
 いちいち見透かされてんのはものすごく困る。

 けど確かにそうだ、はっきり言って気になって仕方ない。
「……とにかく尾行はしねぇからな」
「それで帰ってきた彼女の雰囲気がいつもと違って艶っぽくなってて、あなたが更に機嫌が悪くなってるって展開が読めるわ。別に彼女が誰と付き合おうが構わないけど、それで八つ当たりされるのは少し迷惑かしら」
「…………」



8 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:05:01 ID:xD7DEO7x6

 灰原を睨むとそしらぬ顔をしている。
 俺は思い切り息を吸い込んで、でも小声で
「ぜっ・て・え・び・こう・は・し・ねー・か・ら・なっ!」
と強く念押しした。
 灰原はもはや聞いていない、と言わんばかりに次の授業の道具を出していた。



11 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:06:51 ID:xD7DEO7x6




 尾行じゃねぇ。
 外でたまたま蘭を見かけただけだ。
 たまたま、俺の行く先々に蘭が現れるだけだ。
 だからこれは尾行じゃない。

 ポアロの……外がよく見える位置に席を陣取っていた俺は、いそいそとおめかしして出掛ける蘭の姿を確認するとそっと後を尾け、じゃない、同じ方向に歩き始めた。
 ……明らかにめかしこんでる。アイツのお気に入りのワンピースにショルダーバッグ。
 ムカムカしつつも付いて行ってみると、そこは複合商業施設の……中にある噴水の前。

 ここでその相手と待ち合わせしてんだな。
 物陰に隠れてそっと見守る。



12 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:07:43 ID:xD7DEO7x6

 相手が来たら、さてどうしようか……。
 何も知らない振りをして通りがかりを装い、「蘭姉ちゃん僕も付いていっていい?」が王道か?
 いや、それだと追い返される可能性がある。

 じゃあ相手を麻酔銃で眠らせて、そこに出て行って救急車を呼ぶ。
 蘭一人なら相手に付き添いかねないが、俺がいるなら置いては行けないはずだ。
 よし、プランは固まった。
 なんて考えていると

「あっ」
と蘭が声を上げた。



13 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:08:11 ID:xD7DEO7x6

 相手が走ってくる。
 さっそく時計型麻酔銃を起動し、照準を合わせようとしたところで……。
 俺は大きくため息を洩らして銃を下ろした。



14 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:08:29 ID:xD7DEO7x6

 相手は、女性だった。
 蘭と同じ歳くらいの、……いやちょっと待て。

 同じ歳、どころじゃねぇ、……彼女、蘭に似すぎてる……。
 二人揃って何か話し合っているのを見たら、まるで双子みたいだ。
 こんなことってあるのかよ……驚いてまじまじと相手を見てしまう。

 まさか蘭には生き別れの双子の姉妹がいて、…………ないな。もしそうなら蘭の母さんが引き取っているはずだ。
 いや、病院の段階で他の赤ん坊と彼女だけ取り違えられて、最近やっと発見された、とか?
 ……それも無い。そんなこと、おっちゃんや蘭の口から出ないはずがない。

 ってことはだ、残る可能性は従姉妹か、……他人の空似?
 でもなあ。従姉妹に会うならそう言わないか?
 でも他人の空似って言ってもここまで似てると……。
 何だかごちゃごちゃ考えていたら二人が歩き出したので、慌てて着いていく。



15 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:09:46 ID:xD7DEO7x6

「うん、快斗にはマジックに使えそうなハンカチにしようと思ってて。あと快斗甘い物好きだから何かお菓子も一緒に買わないと!」
「そうなんだ。新一なんか甘い物苦手だから、バレンタインでも簡単なチョコしか渡してないのよ」
「でもその簡単なチョコには蘭ちゃんの愛が複雑に詰まってるわけね!」
「ち、ちょっと青子ちゃん……わ、私はえっと、何買おうかな? 新一のことだし派手なアクセサリーは嫌がるわよね」

 照れる蘭の顔を見てなんだかこっちがドギマギしてしまう。
 ……って、え?
 出掛けた目的って、……まさか俺へのプレゼントを買いに来た、……友達と?

 あ、ああそっか、最近事件が少なくてちょっと息抜き出来そうだったから、灰原にものすごく頼み込んで、急ごしらえの解毒薬貰って一日だけ戻るって……蘭に連絡したばかりだった。
 ったく、あの顔はやっぱいつも通り「コナン」に「新一」のこと話す時の顔だったのか。
 なんだ、なぁぁああんだ!
 昨日からの胸のつかえが一気にスーッと取れていく。

 冷静になればそう言えば園子は珍しく誘ってねぇんだな、なんて考える余裕も出てくる。
 しっかし、友達と買い物するってなら出掛ける、なんて曖昧な言い方じゃなくて最初からそういや良いのに。
 いやでも待てよ。



16 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:10:19 ID:xD7DEO7x6

 友達と買い物に行くの
→園子ねーちゃんじゃないの?
→違う人よ
→じゃあ誰?
→コナン君の知らないお友達
→っていうか何買いにいくの?
→うん、ちょっとね

 あーダメだ、どうしても同じエンドにしか辿り着かねぇ。



17 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:11:03 ID:xD7DEO7x6

 と。
「園子ちゃん来られなくて残念だなぁ、会いたかったのに」
「うん……誘ったんだけど園子、わたしはいいわ、って」
「まあなかなか帰って来ない彼氏待つのも大変だよねー……」
 青子、と呼ばれた少女の言葉に俺は自分のことを言われたかのようにドキリとしてしまった。

 が、蘭は困ったように笑って首を振る。
「それがね、違うの。電話で話してて口喧嘩になっちゃったらしくて……口喧嘩って言っても園子の事だから、一方的に怒ってただけみたいだけど」
「そうなの? そんなの青子、快斗といっつもしてるけどなぁ……」

 青子が不思議そうに首を傾げる。
 口調などから、青子は蘭に似ていても性格は少し幼いようだ。
 しかしこの二人……いや園子も含めて三人か、一体どこで知り合ったんだ。
 工藤新一時代の交友関係を思い出しても彼女の存在は浮かんでこない。
 ……ま、いいけどよ。



18 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:11:37 ID:xD7DEO7x6

「誘ったけど京極さんのこと思い出して、腹が立つから行かないって言うもんだから……」
 相当怒ってたから京極さんのことで一日中愚痴言ってそうだし、なとと蘭は苦笑しながら言う。
「そういう時こそプレゼントして仲直りした方がいいのになぁ。今度園子ちゃんにも一緒に遊ぼうねって言っといてね。……あっ蘭ちゃん、あのカフスとかどう? すっごい綺麗!」
「いいかも! でも少し高いかな」
「じゃあもう少し見て回ろっか」



19 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:13:05 ID:xD7DEO7x6

 そんなこんなでうろうろし始めて3時間が経過した。
 空はすっかり暗くなってしまっている。
 女の買い物ってのはどうしてこう長いんだ……と言っても買い物の目的が目的だし、勝手に尾けてるのは俺だから文句も言えない。
 途中で出ていこうか迷ったが、想い人へのプレゼントを選ぶ場面に、……しかも俺宛だし……混ざるのは少し気が引けた。
「もう6時か……いい加減帰らねぇのかな、アイツら……」
 そう思う俺こそ帰ればいいはずなんだが、何故か目が離せないのでずっと付いて歩いてしまう。

 しばらくして。
 二人共買う物がやっと決まったらしく、ああやっと帰るのかと思ったら。
 二人でレストランに入ってしまった。



20 :1◆rrvt.lGSAU 2014/06/20(金)20:14:00