豊音「薬売り?」薬売り「ええ、まぁ」
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●漆原「ベルが遊びにやってきた」鈴乃「『面倒を見に来た』だ」
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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:27:02.32 ID:A4hLVa3y0
豊音「はぁ……、はぁ……、はぁ……」
暗い夜道の中を、背の高い少女が走る。
その顔は恐怖や混乱が混ざり合ったような顔で、少女が非常の事態にいることを窺わせる。
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:32:07.48 ID:A4hLVa3y0
???「……」
その少女を追う、これまた背の高い女性。
いや、それはもはや背が高いというものではなく、巨大と表すべきものだ。
暗闇でも不自然に白い服を着た女性は、少女を追う。
豊音「いや、来ないで……」
???「……」
少女の懇願に、しかし女性は反応しない。
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:35:28.44 ID:A4hLVa3y0
豊音「来ないで……」
???「……」
重ねて懇願。
豊音「来ないでえぇぇ!!」
少女の叫びに、女性は一言。
???「ぽぽぽ」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:37:10.51 ID:A4hLVa3y0
豊音(はぁ、昨日はちょー怖かったよー)
部活の仲間との約束で休日に学校に向かう豊音。
いつもなら軽い足取りが、今日はひたすらに重い。
豊音(夜道を歩いてたら白い服を着た人に追いかけられて)
豊音(途中で消えるようにいなくなっちゃったけど、いったいなんだったんだろう)
豊音(でも大きい人だったなぁ、あの人……)
豊音(私が見上げるくらい大きかったんだし、かなりの身長だよね)
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:39:36.71 ID:A4hLVa3y0
豊音(これから皆に会うし、誰か知ってるか聞いてみようかな?)
豊音は一瞬悩んだが、すぐに決断する。
豊音「いや、皆を怖がらせるかもしれないし、このことは黙っていよう」
そうして、ふと街道に立っている時計の時刻が目に入る。
豊音「ってもうこんな時間!? 約束の時間まで少ししかないよー!?」
言ったが途端、その身を走らせた。
遠くで雲が蠢いている。
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:42:55.66 ID:A4hLVa3y0
豊音「うう、途中で雨が降ってきて濡れちゃったよー」
豊音「仕方ない、部室に行ったら乾かして……、ん?」
豊音(学校の前に誰かいる?)
学校の入り口に、雨宿りのためか珍妙な人物が立っていた。
豊音(派手な着物に大きい木箱を背負って……、何だか不思議な恰好の人だよー)
藍色の頭巾と灰色の髪、極彩の蛾を思わせる着物に背負うは大きな木箱。
一見して尋常の者ではないという考えが、豊音の頭に浮かぶ。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:45:30.96 ID:A4hLVa3y0
豊音(あの人も濡れてるみたいだし、大丈夫かなー?)
しかし生来の人の良さがその考えを押しやり、豊音には雨に濡れているその人物が気の毒に思えてきた。
豊音(うん、困ってる人を放っておくのは駄目だもんね)
豊音「あのー、何でしたら中に入ります?」
豊音の呼びかけに対し、背を向けていた人物はゆるりと振り返る。
振り返った顔は白塗りの男のもので、隈取のような化粧が施されている。
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:49:40.47 ID:A4hLVa3y0
豊音(わ……、ちょ、ちょー美形だよー。 芸能人さんかなー?)
必要以上に整った男の顔に豊音が内心動揺する。
そんな豊音を男は数秒ほど見つめ、ささやくように、しかし雨音には紛れぬようなしっかりとした声で尋ねた。
男「……よろしいので?」
豊音「え、えっと……、私ここの生徒なんで、一緒なら大丈夫だと思います」
男「そいつぁありがたい」
存外にくだけた口調で言う男に、豊音は不思議な親しみを覚えた。
男が纏う独特の空気のようなものが、そう感じさせるのかもしれない。
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:53:33.87 ID:A4hLVa3y0
豊音「いつまでもここにいたら冷えちゃいますし、とりあえず中に入りましょうか」
男「では……、お言葉に甘えて」
そう言うと、二人は揃って学校へと入っていく。
二人が去った後も、雨は降り続く。
ピチャピチャ、チャプチャプ。 ピチャピチャ、チャプチャプ。
ジャラジャラ、ギチギチ。 ジャラジャラ、ギチギチ。
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 00:56:53.44 ID:A4hLVa3y0
豊音「もしかして、芸能人だったりします?」
部室へと向かうなか、雑談をかわしながら二人は歩く。
少々目をキラキラさせながら、豊音が男に対して質問する。
それに対して男は、小さくかぶりを振る。
男「いえいえ、そんな大層な者じゃ、ありませんよ」
男「ただのしがない、薬売りですよ……、私は」
豊音「薬売り?」
薬売り「ええ、まぁ」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:02:16.32 ID:A4hLVa3y0
薬の訪問販売の者にしては服装がいやに派手ではと、豊音が首を傾げる。
豊音(私が住んでる所にも薬を売りにくる人はいるけど、普通のスーツだったような?)
そんな疑問を浮かべる豊音に、薬売りの男が答えを放つ。
薬売り「今日日、こんな恰好でもしないと、薬を買ってくれないんですよ」
豊音「へー……、色々大変なんですねー」
確かに良い悪いかはともかく、この恰好ならば興味は湧くだろう。
豊音はその理由に納得し、なんとなしに窓の方を見る。
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:06:54.46 ID:A4hLVa3y0
窓の外には鳩がおり、隣の薬売りと同じように雨宿りをしていた。
視線を感じたのか、鳩が豊音を見て一鳴き。
ぽぽぽ。
その瞬間、豊音の顔が恐怖に引き攣る。
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:10:05.77 ID:A4hLVa3y0
豊音「ひっ!!」
意図せず豊音は、薬売りの体に抱き付く。
突然抱き付かれたにも関わらず、薬売りは眉ひとつ動かさない。
薬売り「ただの鳩ですよ」
豊音「え……? は、と?」
薬売りのその言葉に、豊音が途切れがちながら返す。
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:13:45.23 ID:A4hLVa3y0
そして自分の現状を認識した途端、顔が真っ赤に火照りだした。
豊音「ご、ごごめんなさい! いきなり抱き付いたりなんかして」
豊音(どうしよー……、会って少ししか経ってない人に思いっきり抱き付いちゃったよー……)
薬売り「お気になさらず。 ……それよりも、どこへ向かうので?」
薬売りのその疑問に、豊音が火照る顔を抑えながら答える。
豊音「私、部活で麻雀やってて……、ほら、そこが部室です」
豊音がそう言って指さすと同時、その部室のから一人の少女が出てきた。
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:19:24.36 ID:A4hLVa3y0
塞「あぁ、豊音遅かったじゃ……って、誰?」
赤い髪の少女、塞が豊音の隣にいる薬売りを見て思わず口走る。
豊音「塞、この人は薬売りさんで、雨宿りして寒そうだったから一緒に来てもらったんだー」
薬売り「ご厄介になります」
頭を下げながら言う薬売りに、塞も慌てて頭を下げる。
下げながら塞はしかし、薬売りの男に僅かばかりの不信感が生まれた。
見た目的にも怪しさ満点の人物だが、塞が感じた不信感はそこではない。
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:25:11.70 ID:A4hLVa3y0
男の中身というか、内面というか、なにか普通ではない何かを隠し持っているような感じがするのだ。
それが悪い感じではないので、塞もはっきりと男を疑えないのだ。
豊音「塞―? 廊下で立ってるのも寒いし、早く中に入ろうよー」
塞「え? あ、あぁそうね」
豊音の言葉にハッとし、塞はとりあえずは保留という形で疑問を打ち消した。
塞(まぁ、悪い人じゃあなさそうだし、大丈夫かな?)
塞「狭い所ですけど、どうぞ」
そう塞が言って、三人は部室へと入っていく。
外では、まだ雨が降っている。
ピチャピチャ、ジャラジャラ。
チャプチャプ、ギチギチ。
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:30:52.12 ID:A4hLVa3y0
豊音「あれ、他の皆は?」
部室で豊音が発した声は、疑問であった。
塞と自分以外の三人が部室には見当たらない。
塞「なんか皆来てないのよね。 運悪く携帯は充電切れちゃってるし」
豊音「なら私が……、って私も充電切れてるよー」
豊音がガックリと腕を下げる。
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:37:35.54 ID:A4hLVa3y0
そんな二人を見て、薬売りが一言発す。
薬売り「失礼ですが、今日この部屋には誰が入りました?」
薬売りのその質問に、塞が怪訝な顔をする。
塞「どうしてそんなことを?」
薬売り「いえ、少し気になったもので……」
それ以上は追及してこない薬売りに、塞は隠す理由もないかと答える。
塞「今日この部室には、私たち以外入っていないと思いますよ」
薬売り「ほう、誰も?」
塞「ええ、私がここの鍵を昨日から預からせてもらってて、私以外には豊音とあなたしか来てません」
薬売り「……なるほど」
薬売りは塞の答えに満足したのか、しばし口を閉ざす。
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:46:05.97 ID:A4hLVa3y0
それから数秒後、いつの間にか手になにか紙のようなものを薬売りは握りながら、
薬売り「……なるほど、すでに来ているか」
そう呟いた。
塞がその言葉に、どういうことかと言おうとした瞬間
部室の中を紙で出来た札が飛び交った。
塞「は? え、ちょっと一体……」
豊音「最近の薬売りさんはこんなこともできるんだー。 すごいねー塞」
二人がそれぞれの反応を起こしているなかで、札は部室の壁という壁に貼りつく。
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 01:52:29.62 ID:A4hLVa3y0
やがて札がすべて貼りつくされると、なにも書かれていない札に文字が浮き上がる。
文字は生きているように蠢き、その形を一つ目の絵に変化させていく。
塞「何これ、札に赤い目が……」
豊音「ちょ、ちょっと怖いかも」
怯える豊音を安心させるように腕を絡ませると、塞は元凶の薬売りを睨み付ける。
塞「どういう事か、説明してもらえますか? いきなりこんなことして……」
問われた薬売りは平然としたもので、どこ吹く風と涼しい顔だ。
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:02:50.24 ID:A4hLVa3y0
薬売り「驚かせてしまったのは、申し訳ありません」
薬売り「しかし、……もう随分と迫ってきていたものですから」
薬売りの要領を得ない話に、少し強めに塞は問いただす。
塞「何が迫ってるって言うんです、この部室に」
豊音が更に腕を強く絡めてきたのを感じながら、薬売りの答えを待つ。
気付けば外の雨は酷くなっており、窓をたたく雨風の音が部室に響く。
ピチャピジャ、チャプチャプ。ピチャギチャ、チャプチャプ。
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:15:30.45 ID:A4hLVa3y0
その音が部室を暫し占拠した後、薬売りの口が開く。
薬売り「もう、すぐそこまで来ているんですよ……」
ラチャピジャ、チャギチャチ。ピチャピチャ、チャプチャプ。
雨風の音にしては何かが変だと、塞がふと窓を見る。
聞こえてきた音の中に、なにか金属が擦れあうような音が混じっていたのだ。
そうして塞の目に、音の正体が写った。
薬売り「……モノノ怪がね」
雨が降っているのに傘も差さず、2mは超えるであろう女性が、こちらを見ていた。
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:31:08.20 ID:A4hLVa3y0
豊音「いやああぁあ!!」
聞いたことのない豊音の悲鳴で、塞は我にかえった。
幸運なことに、その悲鳴で塞は叫ばずにすんだ。
怖いという感情よりも、豊音を守ろうという想いが勝ったのだ。
塞「豊音、大丈夫よ。 落ち着いて」
豊音「で、でも塞、外に、外にぃ!」
少し尋常ではない豊音の怯え方に、塞が戸惑う。
豊音は泣くことはよくあるが、その実強い精神の持ち主だ。
確かに窓の外にあのような人物が立っていれば恐ろしいが、それにしてもこの怯え方は豊音にしてはおかしい。
豊音を安心させるように塞が優しく背中をさすっていると、薬売りが窓際に移動する。
そして手を窓に突き出すように向けると、女性は何かに弾き飛ばされるように飛んでいった。
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:33:23.79 ID:A4hLVa3y0
女性が消えると、部室中の札が真っ白に変わっていく。
薬売り「……あっさりと退いたな。 しかしなぜ……?」
どこか腑に落ちないといった様子で、薬売りが呟く。
塞「ちょっと、今のはなんだったのよ! いきなり現れて、いきなり消えて……」
薬売り「言ったでしょう、……モノノ怪ですよ」
塞「はぁ? モノノ怪って……、ふざけないでくれる?」
薬売り「そうは言っても、いきなり現れたり消えたり、そんなこと人に」
豊音「出来るわけが……」
薬売り「ないでしょう?」
しぼり出すような豊音の言葉に続く形で、薬売りが答える。
塞「それはまぁ、確かに……」
認めたくはないが、たしかに人があんなこと出来るはずがない。
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:39:49.56 ID:A4hLVa3y0
しかし、あれが薬売りの言う
塞「モノノ怪だっていうの?」
薬売り「まぁ、そうですね」
塞の疑問に、薬売りが軽く答える。
豊音「私のせいだ……」
塞「豊音?」
豊音「私が、私が連れてきちゃったんだ! 私を追いかけて来たんだ!」
半狂乱で叫ぶ豊音に、塞が落ち着くように宥める。
塞「落ち着いて豊音! 大丈夫、豊音はきっと悪くないから」
座り込んでしまった豊音を抱きながら、塞が優しい声で言う。
豊音「うう、塞ぇ」
塞「大丈夫、大丈夫だよ豊音、私がついてる」
その塞の言葉に、豊音の震えが収まっていく。
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:42:17.76 ID:A4hLVa3y0
豊音「塞、私ね、昨日あの人に会ったの……」
塞「それ本当!? 昨日の何時!?」
豊音「たぶん……、午後9時くらいだと思う」
恐怖に耐えるように手をぎゅっとしながら、豊音が話す。
薬売り「それは、確かに先ほどのモノノ怪でしたか?」
豊音「は、はい。服装も一緒だったし、それに……」
薬売り「それに?」
豊音「あ、あの目……、奥の奥まで見られてるようなあの目が……」
豊音の体がまた震えだす。
塞「豊音、無理しなくていいから!」
豊音「大丈夫……、塞が居てくれるから、私は大丈夫だよー」
無理に作ったと分かる笑顔で、豊音が塞にほほ笑む。
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:43:46.16 ID:A4hLVa3y0
塞「豊音……」
無理をしないで、という言葉を寸前で塞は飲み込む。
怖くても必死で伝えようとする豊音にかけるべき言葉はそうではない。
いまの豊音に伝えるべき言葉を、塞は口にする。
塞「頑張って、豊音。 何があっても、私が豊音を守るから」
豊音「塞……」
塞のその言葉に、豊音も決心する。
我が身に起こった奇怪な、恐ろしい昨夜の内容を語る。
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:44:38.03 ID:A4hLVa3y0
豊音「昨日、私が夜道を一人で歩いてたら、さっきの人がいきなり現れて……」
豊音「目の前に現れたからちょー怖くて、急いで通り過ぎようとしたんだ」
豊音「そしたら後ろからゆっくりとついてきて、走ったんだけど全然距離が離れなくて」
豊音「最後のほうに思わず叫んじゃって……、気付いたら消えてたんだよ」
薬売り「叫んだら、消えた……」
豊音「あ、そういえば」
薬売り「どうかしたので?」
豊音「あの時は必死で気が付かなかったけど、あの人、鎖が体中に巻き付いてたよー」
塞「鎖?」
薬売り「それはさきほどのモノノ怪にも?」
豊音「はい……、というか薬売りさんにも見えてたんじゃないんですか?」
豊音「あの人のすぐ近くまでいってたし、結構はっきりと見えてたんじゃ……」
豊音のその言葉に、薬売りは考え込むように押し黙る。
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:49:07.47 ID:A4hLVa3y0
豊音「えっと、薬売りさん?」
薬売りの様子に、豊音が訝し気に尋ねる。
塞「ねえ豊音、本当に鎖が見えたの?」
豊音「どうしたの塞? 本当もなにも、あんなにギチギチに巻き付いてたんだよ?」
塞「……」
薬売りと同じように塞は口を閉ざし、それから少しして豊音にたいして口を開いた。
塞「あのね、豊音、落ち着いて聞いて欲しいの。 私にはその鎖は」
薬売り「貴方が見えたという鎖、私たちには見えませんでした」
豊音「……え?」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:51:50.61 ID:A4hLVa3y0
呆けた声を出したあと、豊音は塞に歩み寄る。
豊音「塞? 塞は見えてたよね、あの鎖」
塞「豊音、落ち着いて。 もっとちゃんと話し合って」
豊音「落ち着いてるよ!!」
塞の肩を掴みながら、豊音が叫ぶ。
豊音「あんなに全身ギチギチに巻き付いてたんだよ!? 見えないはずないよ!!」
豊音「体中を鎖でギチギチ、私はちゃんと見た!!」
豊音「鎖でギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ!!!」
ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:54:38.06 ID:A4hLVa3y0
豊音「ほら、こんなふうに!!」
豊音「……え?」
豊音の傍ら、あのモノノ怪が立っていた。
薬売り「なに!?」
目を見開き動揺を表す薬売りだったが、体はそれとは関係なしに動いていた。
豊音と塞の周りを札で囲み、モノノ怪との接触を断つ。
次いでモノノ怪の周りにも札を用意し、閉じ込める檻となす。
薬売り「どういうことだ……、なぜ結界が反応しなかった」
モノノ怪「……」
飛び回る札を気にするでもなく、モノノ怪はただじっと豊音を見続ける。
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:56:18.29 ID:A4hLVa3y0
その視線に、限界寸前だった豊音の心はいともたやすく決壊する。
豊音「いったい、いったいなんなのあなたは!? 私が、私がなにかをしたって言うの!?」
モノノ怪「……」
豊音「黙ってないで答えてよ! いったいあなたは誰なの!?」
モノノ怪「……」
豊音の叫びにたいしてか、モノノ怪が手を帽子に動かす。
酷く緩慢なその動作で、深くかぶった帽子を取る。
塞「どう……して……?」
露わになったモノノ怪の顔を見て、塞が呆然としたふうに呟く。
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:57:33.52 ID:A4hLVa3y0
モノノ怪「……」
塞が呆然としたモノノ怪の顔、それは塞がよく知る人物の顔に似ていた。
そのモノノ怪の顔は……
豊音「……私?」
モノノ怪「……」
姉帯豊音、その人の顔とそっくりであった。
塞が呆然としたモノノ怪の顔、それは塞がよく知る人物の顔に似ていた。
そのモノノ怪の顔は……
豊音「……私?」
モノノ怪「……」
姉帯豊音、その人の顔とそっくりであった。
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:58:35.18 ID:A4hLVa3y0
豊音「どういうこと……? なんで私と同じ……」
理解が及ばない豊音の口から、そんな言葉がもれる。
呆けた顔の豊音を、無表情の豊音が見つめるという奇妙な状況が、部室で発生していた。
塞は驚きのため、薬売りは思案のために口を閉ざしている。
見れば見るほど両者の顔は似ており、顔だけならば見分けがつかないほどだ。
服も豊音が黒、モノノ怪が白と、色の違いだけでデザインはまったく同じものだ。
豊音がいう鎖も体のどこにも見当たらず、見分ける点は服の色と身長くらいのものだろう。
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 02:59:54.12 ID:A4hLVa3y0
豊音「あれ? その髪飾り、どこかで……」
モノノ怪の頭部に艶やかに飾られた髪飾りが、豊音の視界にはいる。
豊音「それってたしか……、っうぅ!?」
言葉を紡ごうとした豊音が、突然頭に手をあてながら座り込む。
豊音「い、痛い! 何これ、頭が……」
突然の頭痛に襲われる豊音と同時に、モノノ怪にも変化が現れた。
それまでピクリともしなかったモノノ怪が、嘘のような速さで豊音に手を伸ばしたのだ。
まるで札の結界など存在しないかのように近づくモノノ怪の手が、豊音に触れようとし
塞「それ以上、豊音に近づくなぁ!!」
裂帛の声をあげ、塞が豊音を守るようにモノノ怪の前に立ち塞がる。
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:02:10.74 ID:A4hLVa3y0
眦を決して塞がモノノ怪を睨み付けると、その動きが不自然に止まった。
薬売り「これは……」
結界をものともしないモノノ怪の動きを止めてしまった塞を、薬売りが驚きの視線で見る。
塞「ふふ、実は私もちょっと変わった力を持ってるんですよ」
冗談めかして笑う塞だが、その顔には余裕の色は見られない。
それに目敏く気付いた薬売りは、塞に聞くべきことを聞く。
薬売り「どれほど抑えておけますか?」
塞「さぁて、あと2~3分はいけると思うけど……」
塞のその言葉を聞くがはやいか、薬売りは手に何かを握った。
それは朱色の装飾過多な筒のようなものだった。
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:06:39.17 ID:A4hLVa3y0
塞「何、それ……?」
頬に汗を滑らせながら塞が尋ねる。
薬売り「これは剣だ」
塞「剣……? もしかしてあれを斬れるの!?」
薬売り「そう、モノノ怪を斬るための、退魔の剣だ」
塞「なら早い所こいつを……!」
そう言う塞に薬売りは首を横に振る。
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:08:18.89 ID:A4hLVa3y0
薬売り「退魔の剣を抜くには条件がある」
塞「条件?」
薬売り「形、真、理の三つが揃わなければ退魔の剣は抜けん」
薬売りが示した条件に、塞は荒い語調で返す。
塞「何なのよ、その三つの条件は!?」
薬売り「モノノ怪の形を成すのは人の因果と縁」
薬売り「真とは、事の有様」
薬売り「理とは、心の有様」
そう言って薬売りは、退魔の剣を眼前に横に構える。
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:09:52.67 ID:A4hLVa3y0
リイィンと、剣に付いた鈴が鳴る。
薬売り「よって皆々様の、真と理」
姉帯豊音、臼沢塞、モノノ怪。
三者そろいし部室で響く、鈴の音と薬売りの声。
薬売り「お聞かせ願いたく候」
次に響くは、誰の声か……。
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:13:14.53 ID:A4hLVa3y0
書き溜め分、これにて終了です。
遅くまで付き合って頂き本当にありがとうございました。
今夜にまた立てさせてもらい、そこで最後まで投下させて頂きます。
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:14:26.65 ID:3ppcUp300
乙
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/12(水) 03:31:27.57 ID:6gDZezR0O
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