人間の孤独と闇。認知症の老人などをモデルに皺の1本1本まで克明に描いた鉛筆画家・木下晋
鉛筆画家・木下晋さんの作品をご紹介します。上の作品「ゴゼ小林ハル像」は瞽女(ごぜ)・小林ハルさんをモデルにした作品です。瞽女とは江戸時代から昭和の初めごろまで、三味線を手に有縁の村々を流し歩く目の不自由な女性のことで、小林ハルさんは102歳で吉川英治文化賞を受賞しており「最後の瞽女」と呼ばれた人物です。皺の1本1本まで克明に描かれておりただならぬ存在感を放っています。肌の手触りまで感じられる精緻な画面ですね。小林ハルさんの他にホームレスや認知症の老人、ハンセン病患者などの人々を描いています。
この春、木下は一枚の大作に挑んだ。昨年末87歳で亡くなった詩人・桜井哲夫さんの肖像画。ハンセン病の療養所で生涯を過ごした桜井さんと木下は、長年交流を重ねてきた。亡くなる半年前、桜井さんが木下に言った。「自分が“合掌する姿”を描いてほしい」。木下から東日本大震災の話を聞いた桜井さんからの願いだった。これまで人間の深い闇を見つめてきた木下、しかし今回は“光”に浮かび上がる桜井さんの姿を描こうと決めた。 重い宿命を背負いながら生き抜いた桜井さん。木下は記憶をたどりながら、どう鉛筆を走らせるのか。制作の現場を密着ドキュメントする。
日曜美術館より(2012年5月27日放送 )
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