ニコンはデジタル一眼レフカメラD810を発表しました。35mmフルサイズのイメージセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラの中級機で、2012年発売のD800/D800Eの後継機です。
D800との主な違いは、撮像素子、画像処理エンジン、内部機構の刷新、動画記録性能の向上、連写コマ数の増加、液晶モニターの高精細化、AFモードと露出モードの追加、光学ファインダー内表示光源の変更。
発売時期は7月中旬で、価格はオープンプライス。ニコンダイレクトではボディ単体で税込34万8300円、標準ズームレンズAF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5G ED VRのレンズキットが40万5000円。
旧機種D800/D800E関連の記事は
こちら。
撮像素子はローパスレス仕様。画素数はD800/D800Eの3630万画素から3635万画素に変更し、常用感度もISO100~6400からISO64~12800に伸長しました。
画像処理エンジンはEXPEED 3からEXPEED 4に高速化しており、これに伴い、連続撮影コマ数が約4コマ/秒から約5コマ/秒に増加したほか、動画記録も1920×1080/60pに対応しました。
内部構造では、ミラーやシャッターユニットなどのメカ駆動による振動を軽減する「ミラーバランサー」を刷新。カメラ内部の振動の抑制を図っています。Q(静音撮影)とQc(静音連続撮影)モードでは、内部振動に加えて動作音も抑制します。さらにミラーアップ撮影時には、シャッターをメカニカル先幕シャッターから電子先幕シャッターに切り替え、ミラーだけでなくシャッターの振動も抑えられる設定を備えています。
液晶モニターは、3.2型のTFT液晶モニターを採用する点で変更はありませんが、RGBにW(白)を足したRGBW配列とすることで、約92万ドットから約122.9万ドットに大幅な高精細化を果たしています。
AFモードには、複数の測距点で同時に測距するグループエリアAFを追加しました。この機能は、フラッグシップ機D4Sにも搭載しています。また、露出モードにはハイライト重点測光を搭載。画面内のハイライト部分を基準に露出を設定することで、撮影画像の白とびを抑える効果があります。
光学ファインダー内の表示パネルには有機ELを採用し、視認性の向上を図りました。これまではLEDなどの光源から透過光を表示する方式でした。
このほか、画作りの調整が可能なピクチャーコントロールシステムには画像のクリア感を調整できる「明瞭度」のパラメータを追加しました。さらに、白とび、黒つぶれ、色飽和が起きにくい「フラット」モードも新たに搭載しています。
注目のポイントはISO感度の伸長とメカ駆動の刷新です。
ISO感度が伸長するメリットは、シャッタースピードの自由度が増える点。高感度では暗い場所でも速いシャッタースピードで撮影できるようになりますが、低感度では逆に、明るい場所でスローシャッターを使いたい場合に役立ちます。
シャッタースピードはイメージセンサー(フィルム)に光を当てる時間ですので、光が当たりすぎると画像が真っ白になってしまいます。例えばスローシャッターを使って流れた像を撮影したい場合、暗い場所ならそのまま撮影できますが、明るい場所ではNDフィルターを使って減光するのが一般的です。NDフィルターは、日食など極端に明るい被写体を撮影する場合にも使われます。
D810では拡張設定でISO32まで減感できますので、NDフィルターが必要になる場面を減らせるというわけです。
また、いわゆるミラーショックやシャッターショックといったカメラ自身が発するブレは、内部機構が原因となるため、完全に対策することは不可能です。それもセンサーの画素数が少なければあまり問題になりませんが、3000万画素を超えるような細かい画素のセンサーではわずかなブレが目立ちやすく、約3630万画素のセンサーを搭載するD800/D800Eでもしばしば指摘されていました。
駆動系が原因となるブレは、手ブレと異なり比較できないのでなかなか実感できませんが、D810ではこの点に配慮してユニットを刷新したことを売りのひとつとしています。こうした変更は地味ながらユーザーメリットの高い改善と考えられ、玄人好みの変更点と言えます。また、そのほかの部分でも旧機種の弱点をことごとくつぶしてきた印象です。近いうちにはD800/D800EとD810の実写比較が出てくるはずなので、写りの違いに注目したいところです。