戻る

このページは以下URLのキャッシュです
http://elephant.2chblog.jp/archives/52089585.html


男「見られてない?」イケメン「…」じぃー【後半】|エレファント速報:SSまとめブログ

TOP

男「見られてない?」イケメン「…」じぃー【後半】

関連記事:男「見られてない?」イケメン「…」じぃー【前半】





男「見られてない?」イケメン「…」じぃー【後半】






291 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 22:06:09 ID:y6fnUqb2

コンビニ

男「店長。お疲れ様っした」

店長「はいお疲れさん。今日もがっぽり稼いでくれちゃったね」

男「俺はもう上がりですけど、店長は?」

店長「なにせ店長だからね。残らないとね、仕事だからねウフフ」

男「…そうですか、じゃあ自分はこれで」ペコリ

店長「来週もよろしくぅ~」

男(……。店長今日は非番なのにな、なんで居るんだろう?)ウィーン

男「え、暗っ」

店長「そうだよねぇ~最近はめっきり日が落ちるのも早くなっちゃったからねぇ~」

男「そ、そうですね…季節の変わり目って、ヤツですか」

店長「ウフフ」

男「……なんですか?」

店長「いやね。うんとね、君とこうやって季節のお話ができるなんて、夢みたいだよねってと思いましたね」



292 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 22:17:35 ID:y6fnUqb2

男「うぇ、そんな節操ない人間だと思われてたんですか?」

店長「ウフフ。逆よ逆、信念やら固定概念が強うそうに見えて、店長話しかけづらいなって思ってたのよね」

男(ソッチの方が立ち悪そうに思える…)

店長「けれど、君ってば近頃とんと親しみやすくなっちゃったから、店長嬉しくなっちゃってよく話しかけちゃうのよね」

男「嬉しいだなんて、まぁ、その、ありがとうございます」

店長「良いってことよぉ~」クネクネ

男(いい人だなぁ。ムキムキマッチョの見事な逆三角形を所持し、立派な髭を蓄えた人だと忘れてしまうぐらいに…)

男(いやいやいや、人を見かけで判断するのは良くない。このような人で良いんだ、自分が言えたものじゃないしな)

店長「時間は遅くないけれど、表通りに出るまでちょっとばかしデンジャラスな通りだからね。気をつけて帰るようにね、それとも家来るぅ?」

男「えっ? いや、晩御飯作らないといけないんで。また今度お願いします」

店長「いやだもぉ~振られちゃったのねぇ~ウフフ、じゃあ気をつけてね」

男「? じゃあお疲れ様です、店長」

店長「お疲れ様~」



293 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 22:31:54 ID:y6fnUqb2

~~~~

男「…親しみやすくなったか」

男(バイトは入学当初から続けていた。かれこれ一年以上の付き合いの人も居る。店長なんかがそうだ)

男(けれど付き合いと言っても仕事場で顔を突き合わせるだけ。自分が出来る限り支障をきたさないよう気を張っていたから)

男(会話もせず。口にするのは業務上の内容だけ、終始無言に徹し、無駄なものは極力排除していた)

男「まさにバイトマシーンと化していた──なんて、今だからこそ分かることだけど」

男(当時の自分は、それが酷く歪だと言うことも気づかなかった。周りから見れば、ただ単に取っ付きにくい奴。面倒そうなやつ、だなんて)

男(まさに店長が言ってくれた通りのこと。なんか頑固そうなやつ、面白みが無さそうで、関わった分だけ損をしそう)

男「…分かってた、わかってるんだけども。何も出来ないのが自分だった」

男「ふぅ…」

男「変われたんだろうか。あの日から自分は昔の自分よりも、明るくなった……とか」


そう、あの日のことは忘れられない。

凝り固まった世界を割って入ってきた、不躾な視線。

己でさえ怖くて手を出されなかった、新しい自分を欲しがる輩。



294 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 22:42:31 ID:y6fnUqb2

男「…………」

その変な契約から生まれた──新しい人間関係。

男「ははっ。そりゃ変わりたくなくても、変わっちゃうか」

男(楽しいんだろうな。きっと、これが楽しいってことなんだろうな)

男(ずっとずっと続いたら良い、残りの学校生活が全て同じように続いたら、さぞ──)

男「──ううっ…それはちょっと高望みし過ぎか…?」

イケ友「タカノゾミ? なにそれ、AV 女優?」

男「どぉっうわっ!?」

イケ友「ちぃーす。男ちゃんこんな時間に、こんな場所で何やってんのー? ナハハ」

男「いっ、イケ友!」

イケ友「そうです私がイケ友さんです! なは!」

男「っ…びっくりした、急に後ろから話しかけるなよ…!」

イケ友「イっケ友さんったらイっケ友さん。ん? おーごめすごめす、久しぶりにこの通り歩いたら見覚えある背中が見えたからさ~」



295 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 22:53:35 ID:y6fnUqb2

男「…。心臓止まるから、今度からは止めて」

イケ友「了解ぃ~! んで、どしってここに居るの? 男ちゃん、夜遊びにはお馬鹿の原因になるぜ~?」

男「ならないならない」

イケ友「おお? その感じ、信じてないだろ? じゃあ証拠材料として──おれを進呈する!」

男「え、それはちょっと怖いかも…信じざる負えない…かも」

イケ友「そうそうそう! だからこれからは気をつけるようにって、まってーい!」

男「あはは。冗談、冗談だよ」

イケ友「あの目はガチだったさ!? こっわー男ちゃんすぐにマジで受け取るんだもんよ、こっわー」

男「……」

イケ友「およ? どったの?」

男「いや、普通に俺はバイトでこの通りを使っただけなんだけど、イケ友の方はどうして…」

イケ友「ん? あー前にバイトしてるって言ってたっけ。じゃあ男ちゃんと一緒だわ。おれもバイト帰り」

男「……」

イケ友「…どったの? そんな見つめて、惚れちった?」



296 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 23:00:54 ID:y6fnUqb2

男「…じゃあ、なんで」

イケ友「?」

男「あ。そうだ、確か店長から貰った奴が──」ガサゴソ

イケ友「なによどしたのよ。急に黙りこくっちゃって、おれにも分かるように言ってちょ?」

男「黙ってて。良いから」ヒョイ

イケ友「おぇ?」

ぴとっ

男「…血が出てる。こめかみ部分、気づいてないのかよ」ポンポン

イケ友「………」

男「バイト先で余ったポケットティッシュ持ってきてよかった…ふぅ、じゃあこれ全部あげるから。垂れてきたら使って」

イケ友「………」

男「………」

イケ友「………」

男「な、なに? 貰わないの? …余計なお世話だったら、ごめん、謝るけど…」



298 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 23:10:56 ID:y6fnUqb2

イケ友「あっ。いや、すまん……ありがたく頂戴いたしまする、ははーっ」

男「お、おう」

イケ友「いやーまいっちんぐマチコ先生だわ。変な所見られちまったぜ、ナハハ」

男「…そっか」

イケ友「そうとも! んー男ちゃんすげーな、ほんっと。マジでリスペクトもんだわ」

男「え、なにが?」

イケ友「なんも聞かねーで、すぐさまティッシュ取り出して、他人の血なんて気にせず拭いてくれたじゃん?」

男「…いや、気にせずなんてことないけど」

イケ友「けれど手を出してくれた。だろ?」

男「まぁ、うん、だけど…気になるのは嘘じゃない。なんで血が出てるのかって、怪我した理由も聞きたいけど」

イケ友「うんうん。けど男ちゃん、んなこと咄嗟にできるやつはそう居ねえのよ。
    つかおれの周りには居なかったね、まるで祭りごとかとやんややんやと騒ぎ出すのが、目に見えてるぜ」

男「それはそれで凄いと思うけど……咄嗟というか、」

ただ単に怖くて聞けなかったのが、本音だ。
沈黙は美徳。なんて、そんなたいそれた心構えを持ってるわけじゃない。



299 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 23:23:26 ID:y6fnUqb2

人気の少ない路地裏から、血を流して歩いてきた。
バイトは多分うそだ。そして怪我に対して無頓着な態度。

男(いくらでも想像することは出来る。けど、)

どうしたものかと、思い悩む。
けれど結局は答えなんて導き出せない。滞って、停滞するだけ。

男(あれ? そういえば…)

なにか、思い出そうと、した気がする。

けれど手がかりはするりと滑り落ちて、暗闇の中へ消えていく。
そういえば俺って、人と関わることをやめた理由は───


イケ友「こりゃお礼も兼ねて説明しなきゃだめかーふぁぁ~調度良かった、誰かに聞いて欲しかったし」ポリポリ

男「えっ?」

イケ友「ここから近くにベラボウ美味いたこ焼き屋あるんだけど、ちょっと時間ある? 無いなら断ってちょー、全然構わないからよ」

男「……教えてくれるのか?」

イケ友「あったりまえじゃん。聞きたくないなら別に構わないぜ? ナハハ」

男「…なんかその言い方は卑怯だ」



300 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 23:33:45 ID:y6fnUqb2

イケ友「ええっ!? そおっ!? マジかー…うーん…」

男「ははっ。わかった、聞かせてもらえるなら是非とも無いよ」

イケ友「おっ? マジで! じゃあ早速行こうぜ! ほらほら!」ぐいぐいっ

男「ちょ、ちょっと押すなって…!」


~~~~


イケ友「ここよここ。これがまた美味いのなんのって、すんませーん」

店員「はいはーい。やってるよーって、何よ、あんたか」

イケ友「なによとは何だなによとは。客だぜこっちは」

店員「ろくに金払わずツケしまくってる奴が客なわけ無いっしょ。泥棒と変わんねーよアホタレ。ったく───」チラリ

男「あの、どうも」

店員「……」

男「…?」

店員「おっおっおおおおおおっ!? この前の子だぁああああああああああああ!」



301 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/26(月) 23:43:25 ID:y6fnUqb2

男「ええっ!?」

イケ友「んあ、知り合いなん?」

男「えっ? いやっ! 俺は全然見当も…っ!」

店員「あれれー? 覚えてないっ? ほらほら、駅前での!」

男「あ──もしかして、クレープ屋の?」

店員「そう! 昼間はクレープ作ってんのよ! 夜はたこ焼き!なになになに!?
   今日はどったの?! どったの?! この前の超絶イケメン君は!? まだ関係は続いてる!?」

男「えっ、あのっ、えっと」

店員「きゃーマジかぁ~再度会えるなんて思わなかった、あのねあのね、あれから知り合いとかに君たちのことを話して、」

店員「あ。知り合いってのはとある同人作家なんだけどね、こりゃまた腐りまくってるのってなんの面白いやつなんだけど──」

イケ友「ハイハイ。ストップストップ」ぐいっ

店員「むごぉ!? むぃー! むぃー!」

イケ友「姉ちゃん。明らかに姉ちゃんのトークが男ちゃんのキャパ超えちゃってるから、わかってるかー?」

男「」

店員「ぷうはぁ! あ、ごめん。ちょい興奮しすぎた、いやー参った参った。んふふ」



302 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/27(火) 00:06:21 ID:GSKQWHVQ

イケ友「大丈夫か男ちゃん? 姉ちゃん何時もこんなかんじだからよ、気にしたら負けだぜ」

男「リョウカイシマシタ」

イケ友「ほらみろ怖がってるじゃん。つーこって、今回はタダにしてちょ」

店員「なにが、つぅーこってだよ。テメーはさっさとツケ分両耳そろえて払え馬鹿野郎。あ、君はいいよ。むしろサービスしちゃうから」