幼女「さーさーのーはーさーらさらー♪」
- 1 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 20:26:24.21 ID:R4YabZMDo
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笹の葉 さらさら
軒端にゆれる
お星様 きらきら
金銀砂子
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「さーさーのーはーさーらさらー♪」
楽しそうに歌う娘の声を聴き、今日は七夕であったと思い出す。
帰宅したばかりの私には彼女が何故この童謡を歌っているのか知る術は無いが、その手にあるミニサイズの笹の枝を見れば、今日は幼稚園で七夕を題材にした行事でもあったのだろう。
- 2 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 20:28:44.17 ID:R4YabZMDo
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「さーさーのーはーさーらさらー♪」
歌詞は未だうろ覚えなのか、ひたすら同じフレーズを繰り返す娘をみて無意識に破顔してしまう。
自分で言うのもなんであるが、今日が七夕であると思い出すのは中々に困難ではないかと思う。
勤めから帰宅した私を出迎えてくれた妻が今まで見ていたのであろうニュース番組では、日本列島に上陸したばかりの台風を現場中継するキャスターが映し出されている。
画面内の彼は、激しい横殴りの風雨に晒され、着込んだレインコートは最早、意味を成していない。
毎年の事であるが、『七夕』とはこの台風等によって大荒れの気候で迎えることが多いのだ。 - 3 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 20:30:10.60 ID:R4YabZMDo
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どこもかしこもが、やもすれば人死にすら出かねないこの自然災害に注目している。
私とて、七夕に天の川を見たことなど無い。やがて興味も失い、今日が七夕であったことすら忘れてしまう。
それでもこうして台風などに見向きもせず、ひたすらに七夕の歌を唄う娘を見ると、彼女にはいつか『天の川』を見せてあげたい、などと思う。
「沙織、願い事は書いた?」
思わず、そう聞いてしまう。純真な彼女が一体どんなことを書いたのか、気になる。
近頃の彼女は話せる言葉が急速に増え、一人で出来ることも多くなり、その成長振りは親の我々から見て眼を回すようであり、また楽しみである。
- 4 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 20:31:04.54 ID:R4YabZMDo
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「パパ、おかえりなさい!ようちえんでかいたー!」
元気な返事だ。それだけで明日も頑張れる気がする。
「そうか……なんて書いた?」
いずれこんなことも聞くことが出来なくなるのだろうか?彼女はまだ五歳だというのに、彼女が思春期を迎えることを今から恐れている自分に自嘲しつつも彼女に聴いた。
「これー」
そうして彼女は、色とりどりの飾りや短冊の吊るされた笹の葉をこちらに突き出す。
- 5 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 20:32:52.22 ID:R4YabZMDo
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短冊に何が書かれていても、彼女の成長が見れるであろうことに私は喜びを得られるであろう、しかし、いやらしい話かも知れないが、
『こういうことを書いてくれないか』、平たく言えば『この父の健康など願ってくれぬものか』そんな浅ましい望みが私にもあった。
しかし、彼女が短冊に書いていた『願い』は思いもよらぬものだった。
『あした、てんきにしてください』
彼女は明日が天気になることを願っていたのだ。
「あー、今日は雨だもんな、早く晴れるといいね」
「それだけじゃないの」
「え?」
- 6 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 20:33:53.19 ID:R4YabZMDo
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当たり障りなく、彼女の願いを肯定しようとした時、彼女はさらに思いもよらないことを言うのだった。
「おりひめさまとひこぼしさま、あえないから」
「そうか……沙織は優しいね」
「おねえちゃんがおしえてくれたの」
「おねえちゃん?」
今日は幼稚園で七夕の行事があったことはこの笹の葉を見ても間違いないだろう。
『牛郎織女』の伝説は絵本にもなっているから、その行事の際、娘が『雨が降っていると織姫と彦星が会えない』という発想に行き着くのは想像に難くない。
しかし、私が気になるのは、その『おねえちゃん』なる存在であった。 - 7 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 20:35:53.69 ID:R4YabZMDo
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「今日はおねえちゃん先生が来たの?」
幼児教育学科などの短大に在籍する学生達が教育課程で実習に来ることは多い。
特に多いのはこの時期で、夏休みなどの期間を利用するのであろう実習生達を、彼女等園児は『おねえちゃん先生』と呼んでいた。
「ちがーう、おねえちゃんとあそんだ」
だがそうでは無いらしい。妻に顔を向けてみるも、首を横に振るばかり、知らないらしい。
「……団地のお姉ちゃんかな?」
そう勝手に結論付けたところで、未だ仕事帰りのままの服であることに気付き、妻に促されるまま部屋着に着替えるのであった。
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- 8 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 20:52:04.64 ID:R4YabZMDo
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『私達、離れ離れだね』
『……やだ』
これは、誰だ。
『仕方が無いよ、時々会えるだけいいじゃん』
『……やだ』
少女と、少年。
少年は私だ。それはわかる。
でもこの少年の私より、5歳ほど年上の少女は誰だ。知っている気がする。
『お……ちゃんといく……』
『……じゃあさ、こうしよう』
思い出せ、いや、思い出さねばならない。この少女が誰であったか。
- 9 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 20:52:55.02 ID:R4YabZMDo
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『七夕の日に、この橋で会おう』
『え……?』
『お父さんとお母さんには内緒でさ、夜に会うの』
『夜に……』
『そ……』
誰かは思い出せない。だがこの子は、この人は、私にとって掛け替えの無い人だった。
『一年に一回』
『いちねんに、いっかい……』
『……織姫と彦星みたいだね、私達』
『おりひめ……ひこぼし……』
貴女は……私の……
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- 10 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 21:12:01.11 ID:R4YabZMDo
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「パパ、おきてー」
「ん……」
夕食後、寝転がっていたらどうやらそのまま眠ってしまっていたらしい。もう入浴も済ませ、寝巻きに着替えた娘に起こされる。
「ごめんごめん、沙織、もう寝るか?」
「ハミガキした」
「……仕上げ?」
「うん」
- 11 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 21:13:28.41 ID:R4YabZMDo
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彼女がハミガキをした後に、磨き残しが無いように仕上げをするのは私が主にやっていた。
そうして彼女の一日のスケジュールは終わり、床につく。つまり私が起きて彼女の歯を磨かねば、彼女は寝ることが出来ないのだ。
「ごめんよ、さあ、おいで」
「しあげはおとうさん」
「はいはい」
教育番組で流れる『ハミガキの歌』の影響で、この仕上げを行うときは、私は『パパ』から『おとうさん』になる。どちらの呼び方も捨てがたいものだ。
胡坐をかいたところに娘は頭を乗せ、エサを待つツバメの雛よろしくパカッと口を開き、こちらを認める。
そうして私は娘専用のピンクのハブラシでブラッシングしていく。お互いに慣れたものだ。
- 12 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 21:14:56.10 ID:R4YabZMDo
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「うひゅ、こひゅ」
「動かないで」
とはいえ、時折歯茎にあたるブラシが娘はくすぐったいらしく、妙な声で笑い堪える。それもいつもの事。
その気持ちが私にもよく解る。私も昔、こうして母に……母に?
「あれ……?」
「んー?」
「ああ、ごめん、もういいよ、ぺってしておいで」
「んー」
私は、母にブラッシングなどしてもらったことは無い。第一、母は私が幼い頃に父と離婚する前から夜遅くまで働く生粋の仕事人間だった。
今でこそ和解した父も頑健な性格で、そんな事をしてくれるような人ではない。
では誰が私にブラッシングをしてくれたのか。
しかし確かに記憶はあるのだ。
だが……誰だったのか……それが……
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- 13 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 21:15:53.41 ID:R4YabZMDo
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『うひゅ、こひゅ』
『暴れんな』
『んー』
『はい、終わり、ぺってしてきな』
『んー』
ああ、まただ……そして、この人だ、この人が……
『ほれ、短冊書くよ』
『ねぇねはなにかく?』
『そうね……』
スラスラと字を書く貴女に憧れていた。いつも貴女の背中を追いかけていた。
- 14 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 21:17:16.12 ID:R4YabZMDo
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『あ、し、た、てん……さ』
『「き」』
『き……に、して、く、だ、さ、い』
『よく読めました』
『「あした、てんきにしてください」?』
『そ、明日は七夕だからね?』
『……ぼくもかく』
どうして忘れていたのか、父以上に父で、母以上に母であった貴女を。
『毎年書くんだよ……』
『まいとし?』
『そう、空が晴れてたら、織姫と彦星は会えるの』
『ふーん』
『私達も……約束だよ?』
『……うん』
ねえ……さん……
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- 17 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 22:58:47.81 ID:R4YabZMDo
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「姉さんっ」
望む姿はそこになかった。
横には妻と娘が安らかに寝息を立てている。
滴るほどの寝汗がひどく気持ち悪い。
雨は既に止んでいるようであるが、天気予報では、台風は今夜中に東北までいく見通しであった。
にもかかわらず、この静けさは、今は丁度、『目』の中か。
枕元に置いた充電しっぱなしの携帯電話を掴むと、妻と娘を起こさぬよう、ひっそりと寝室をでる。確認しなければならないことがあった。
「起きてるかな……」
そう独りごちたものの、その心配はしていなかった。これから電話をかける人物の行動は知り尽くしている。
彼女はいつでも夜遅く、朝早く起きる。息子としてはその不健康的な彼女のスケジュールにいささか不安を覚えるが、今日ばかりは感謝した。
- 18 :おじさん ◆nlCx7YJs2Q 2014/07/07(月) 22:59:46.68 ID:R4YabZMDo
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1コール、2コール、3コール……でた。
『もしもしっ!?』
「うわっ」
いきなりの大声に自然とそんな愚にも付かない返事をしてしまう。
『うわっじゃないわ!?何!?何があったん!?』
「何も無いよ……どうしたの?」
『こっちのセリフよ!こコメント一覧
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- 2014年07月08日 19:04
- 既視感あるのに、どうしてもこの手の話は涙腺にくる
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- 2014年07月08日 20:26
- 小説家ぶんな
キモいクズ
世界のゴミがキモいんだよセンスねぇから二度とss書くなよ気色悪くて反吐出る、まじで終わってるよお前キモい!キモい!
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- 2014年07月08日 21:11
- 世にも奇妙なの感動回を見てる気持ちになった
セリフがもうちょい少なければこの人の違うSS読んでみたいな
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- 2014年07月08日 21:12
- ※2 うわぁ……
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- 2014年07月08日 21:12
- 普通に感動した
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- 2014年07月08日 21:23
- いいね。。
はじめて他の読みたいとおもったは。。
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- 2014年07月08日 21:44
- ※2
評論家ぶんな
キモいクズ
世界のゴミがキモいんだよセンスねぇから二度とコメント書くなよ気色悪くて反吐出る、まじで終わってるよお前キモい!キモい!
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- 2014年07月08日 21:48
- 感動した
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- 2014年07月08日 22:58
- ※2
嫉妬乙
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