NTTドコモが発表した「ポータブルSIM」は、SIMカードの入っていないスマートフォンにかざすと、電話やメールなど通信機能が利用できる小型の認証デバイスです。現在商品化に向け検討作業が行われているところですが、7月23日、NTTドコモ・ベンチャーズにおいてこのポータブルSIMに関するアイデアソンを開催中です。その模様を速報でお伝えします。
概要
ポータブルSIMは、端末に内蔵したSIMカードがSIMカードの入っていないスマートフォンやタブレット端末と相互認証し、SIMカードの差し替えなしでネットワーク接続できるというシャープ製の小型認証機器です。
対応するスマートフォンやタブレットとは、NFCでデバイス情報をやりとりし、Bluetoothでペアリング、Bluetoothで常時接続することで、その間SIMカードなしでも回線認証した状態になります。ポータブルSIMをほかの対応機器にかざせば認証が解かれ、かざした機器と回線認証します。
1つの携帯電話番号で複数の端末を利用したり、複数の携帯電話番号を1台のデバイスで利用する際などに、電源をOFFにしてバッテリーカバーを開けSIMカードを差し替える、そんな手間がなくなります。
本体の大きさは約80 x 40 x 5.6mm、重さは約20g。なお、ポータブルSIMに対応するにはスマートフォンやタブレット側が対応している必要があります。ドコモではハードウェアの変更は不要でソフトウェアの書き換えでサポートできるとしています。
アイデアソン
まずはNTTドコモ 移動機開発部 システム企画 担当部長 油川雄司氏が挨拶。「移動機開発部はデバイスを作っているが何か新しいことをやろうとしている。開発したばかりのものでアイデアソンをやるのはドコモでははじめて。オープンにアイデアをだしていこうと思っている。頭がちぎれるほど考えて欲しい」
アイデアソンの進行説明につづいて、ドコモ移動機開発部のスタッフが本日の主旨を説明。「我々もカタカナの部署名にしようとしたが社長に断られた」と笑いを誘いました。
担当者「ポータブルSIMはインフラが広がらなければならない。ドコモだけでなく大きく外部の人に広げていった方がいいだろう」とコメント。たとえば車のカーナビ認証など、いろいろな可能性があるのではないか」と話しました。
続いて技術的な話。担当者「機能をそぎ落としていくとSIMが残った。そこにNFCとBluetooth」と説明。今のところ開発試作機ですが、ポータブルのイメージではリストバンド型のSIMデバイスなどを想定しているそうです。
「マルチデバイスのユースケースが広がるのではないか。その時々に有効なデバイスを選択する。もう一つはデバイスシェアの考え方、たとえば家族でタブレットを使うような。また、公共の端末で使うようなシーンも考えられると思う。また、ビジネスとプライベートの番号を使い分けるといった使い方が利用できると思う」
試作機の連続稼働時間は約3.5時間で,充電が必要。担当者はもう少しバッテリーが持つようにしたいと話していました。
まずは付箋紙を使って参加者がポータブルSIMの可能性を書き出していきます。さらに各テーブルの自己紹介時間も。テーマは「スマホは不要、かざせば使える」、2020年がターゲット。司会者は「頭のかたいドコモには考えつかないようなこと考えていきましょう」
ちなみに今回のイベント参加者はWebサイトで募った53名。エンジニアが多いとはいえ、デザイナーやプランナー、学生など職業はバラバラだそうです。
個人でアイデア出し。きっかけがなければアイデアはなかなか出にくいので、司会者は週末は何をするか、家族それぞれの視点、出かける場所などきっかけになるような言葉やシーンを出しています。何か思いついた発想を発端に、シーン毎の課題や困ること、思うことなどとにかく書いていきます。昨今アイデアを出すグループ作業の常套手段と言える手法で展開。
ちなみにEngadget でも電子工作部を実施していますが、ポータブルSIMのアイデア出しはそれと比較すると
ポータブルSIMは試作機で現時点では裏側はネジ止めし、SIMカードが取り出せない仕様になっています。
参加者が二重の輪になってアイデアを語り合う時間。それが終了するとメモしたアイデアを元にアイデアを書き出していきます。自分のアイデアにこだわらず、良さそうと思ったものをヘッドラインと捕捉説明で書き出していきます。
続いて書いたアイデアを参加者同士で投票していきます。投票の基準は「面白い」と「なんだか可能性を感じる」。アイデアの段階なので実現性は問わず、アイデアに対して否定してはいけません。
投票数の多かった参加者がプレゼンテーション。一番多かったのは採寸不要な仕立屋さん。体型とポータブルSIMを結びつけて、店に行くとすぐに自分にあった服が手に入ります。
つづいて多かったのは墓参りポータブルSIM。誰がお墓に来たかわかるというもの。得票数3位はMy Pepperくん。ロボットPepperにかざすと自分好みのロボットになってくれるというものです。
オフラインの「いいね!」機能というのもありました。博物館の展示1つ1つに「いいね!」ができるような、また路上アーティストに「いいね!」して投げ銭できるようなアイデアです。
ストレス発散用公衆トイレは、トイレの個室に入ると好みに合わせて個室が変化するもの。参加者の方いわく「ミリタリー好きの人はまるで戦場でトイレができるようなもの」と説明。
次いで、入れ歯型のポータブルSIM。噛む力で発電し、1日何回租借したのかをカウントして健康管理も。「マスターいつもの!」は券売機で購入すると好みのオーダーができるもの。ラーメン次郎で「ましまし」などが言わずに注文できるというもの。このほか写真を撮られると、それがすぐに自分のスマホに届くというアイデアも得票を得ました。
得票率が高いアイデアの中で班分け、アイデアのおもしろさを語り合い、さらにそれを高めるようなアイデアを膨らませられるような方向に持って行きます。続いてより具体的なユーザーターゲット、ユーザーが得られる体験、感情の時間軸などを想像します。
その後、10班が持ち時間1分30秒でプレゼンテーションを実施。1分は短いものの、活発な意見が飛び交っている模様。イベントは22時終了予定ですが延長決定です。
なお、プレゼンテーションの審査はドコモのスタッフが行います。冒頭、頭のかたいドコモから出ないアイデアを求めるとしていましたが、はたしてその審査は頭のかたい人が担当するのでしょうか。
採寸不要の仕立屋さん:採寸は面倒ではずかしく、サイズもよくわからない。海外に行けばさらにその状況が如実にあらわれます。ポータブルSIMのクラウド機能で自分の採寸データを出します。
お墓にポータブルSIM:かざすとお墓にホログラムが現れ、先祖の顔が表示され、亡くなった場合もそこに自分の情報が入り、未来の子どもに自分のデータが受け渡します。
ドコモのPepperくん:外国人など言葉がわからないユーザーに対し、かざして情報を取得してコンシェルジュサービスを提供します。ドラえもんのようなロボットでおもてなし。ユーザーの利用は基本的に0円。ちなみにPepperくんはソフトバンクが提供するものです。オープンマインド!
オフラインいいね!:博物間や美術館の企画展において、展示個別にいいね!できユーザーの動向がわかります。良ければ会期を延長。
癒やしのdトイレ:公衆トイレを自分の空間にできます。健康管理も可能で、トイレのインプットとアウトプットをポータブルSIMで管理。飲食店ではその健康にあった食事も提供されるそうです。トイレで快適なアウトプットができると。
入れ歯型ポータブルSIM:咀嚼回数かむことで充電、ダイエット中は自動的にアラート、食後には薬も出る。入れ歯のバリエーション。癒やしのdトイレとの連携もできそうとアピール。
マスターいつもの!:ターゲットはラーメンユーザー。同じメニューを何も言わずに提供でき、マスターは「あるよ」と言うだけ。いつものばかりだと、身体がこわす可能性があるため、マスター側が健康に配慮したメニューも提供できます。
観光地で写真:デバイスにポータブルSIMを搭載。観光地で顔ハメをやると、自動撮影しポータブルSIMにかざして自分のスマートフォン側に画像が転送可能。スマート顔ハメ看板。1回500円。
俺がSIM:本が読みたいな、あれ? でも何が読みたかったんだっけ? それをポータブルSIMを利用してクラウドでサジェスト。SIMを生体認証して利用するようなイメージです。
足跡サービス:旅行に行くとハイタッチで自動的に認証、足跡が残せます。言葉が通じなくても認証して外国人をおもてなしできるというもの。
プレゼンテーション終了。PCのバッテリーが10%を切り、ここから先はチキンレースになりますが、審査に入ります。ドリーム賞、グッドセンス賞、オーディエンス賞決定。
イベントの最後、ドコモベンチャーズの秋元信行COOが登壇。
「ポータブルSIMは大きな可能性を秘めていると思います。アイデアソンを行うだけでなく、この後アイデアがひょっとすると形を微妙に変えながらビジネスになっていくかもしれません。何かしら事業にする意欲があるので、話を深めたいと思います。アイデアで終わらない形にしたい。また、ポータブルSIMアイデアソンのワールドツアーをやろうと計画しています。日本に留まらずやりたい」と語りました。
イベントのラストは記念撮影。バッテリー残量1%、更新を終了します。