キョン「日曜日の午後?」
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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 21:50:16.99 ID:e4Yt0MRe0
「キョンくんあたしもオレンジジュースちょうだい!」
日曜日の昼下がりのことである。
ちょうどコップにオレンジジュースを注いでいるところに妹がやってきた。
部屋着ではなく私服を着ていることから、この後どこかに出掛けるようだ。
「ミヨちゃんの家に行ってくるから、シャミの面倒見ててねー」
オレンジジュースを勢いよく飲み干し、そう言い残して妹は家を出て行った。
相も変わらず元気なこって。週末の元気は毎週土曜日に使い果たしてしまう俺には、
日曜日というものは安息日であり、その午後ともなれば最も心安らぐ一時であると言っても過言ではない。
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 21:54:19.75 ID:e4Yt0MRe0
「君は可愛いにゃー」
コップを持って部屋に戻ってくると、中から声がする。いつぞやみたいにシャミセンが話し出したのかと思われるが、
あの時以来シャミセンがしゃべっているのをみたことはない。
つまりは、だ。シャミセン以外の誰かがシャミセンに向かって話しかけているということだ。
……こんなこと誰でも気付くだろうに、俺は一体全体誰に向かって説明しているんだろうね。
「それにしても随分とご機嫌だな」
ベッドにシャミセンと一緒に寝そべっている佐々木に声をかける。
「それはもう。僕はこう見えて猫派だから」
こう見えるもなんも初耳だ。
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 21:58:58.14 ID:e4Yt0MRe0
「そうだったかい?まぁ、キョンとペットについて語り合ったことはなかったかもしれないね。
いい機会だ、僕が猫派ということを覚えておいてくれ」
「へいへい」
気のない返事を返し、コップをテーブルの上に置く。佐々木はシャミセンを抱いてベットに座り直し
、俺はベットに持たれかかり、その横に座り込む。その際、シャミセンと目があったが、
それ程嫌がっているわけではなさそうである。まぁ、普段から妹の相手をしているだけがあって、構われるのは慣れている。
ましてや、妹ほど雑に扱われるわけでないから尚更であろう。
「それはそうと。佐々木でも『にゃー』なんて言うんだな」
先日、偶然にも1年ぶりの再会を果たした俺達ではあるが、中学時代に佐々木がそんな可愛らしい言葉を使っているのには、
ついぞお目にかかったことはない。
「おや、キョンは何か勘違いしてないか?猫と話すときは語尾ににゃーをつけるのが礼儀ってものじゃないか」
さも当然に言い放つ佐々木。猫派ではそれが当たり前なのであろうか。俺個人としては犬も猫もどちらか一方に傾注することはないので、
そういうことは聞いたことがなかった。
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:03:18.52 ID:e4Yt0MRe0
「冗談だよ、キョン」
佐々木が楽しそうにくつくつと咽を鳴らす。そこでようやく俺はからかわられていることに気が付いた。
やれやれ。
「キョンのそういうところは相変わらずだね」
「佐々木のそういうところも相変わらずだな」
1年ぶりの再会ではあるが、昨日もあったような感覚。再会するまでの時間など関係ない。
俺と佐々木はそんな関係である。
佐々木に撫でられ、シャミセンがごろごろと咽を鳴らす。佐々木も笑う際に咽を鳴らす。
妙な共通点がある。いや、ほんとどうでもいい。
「猫はいいよね。こうやって膝の上に乗っているだけで、こんなにも癒やしてくれるんだから」
「そうか?うちの妹の膝の上に乗せられた時は大抵面倒臭そうな顔してるぞ」
シャミセンからしてみれば随分な迷惑である。その点佐々木の膝の上ならリラックスできて気持ちいいのではないだろうか。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:08:21.96 ID:e4Yt0MRe0
「キョンも試してみるかい?」
「……遠慮しておく」
「まぁ、そう言わずに」
やたら楽しそうな佐々木。というか、有無を言わせない。そういのははた迷惑な団長さんだけで十分である。
「ほら、そこに座るんだ」
指示されるがままベットに腰掛ける。そして、俺の膝の上にぽふっと佐々木が頭を乗せる。
そして、シャミセンは佐々木のほっそりとしたお腹の上に鎮座している。
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:13:07.19 ID:e4Yt0MRe0
いや、ちょっと待て。お前が猫のほうかよ」
「おや?逆のほうが良かったかい?」
再び咽を鳴らす。もはや、何も言うまい。
「ほら、キョン。僕を撫でるんだにゃー」
クールなキャラははるか一万光年先にでも行ってしまったのか。軽く嘆息し、
しょうがないので佐々木の顎から喉を撫でてやる。
佐々木は気持ちいいのか、猫がそうするようにすっと目を細めた。どう表現していいのかわからんが、
今ならなんとなく猫派の気持ちがわかるような気がする。
「にゃー」
そんなわけで、俺の安らかな日曜日の午後は佐々木を膝に乗せ、撫で続けることで過ぎていくのであった。
そして、それを帰ってきた妹に発見され、赤っ恥をかいたことを追記しておく。
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:15:40.83 ID:e4Yt0MRe0
終わり
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:23:55.77 ID:e4Yt0MRe0
キョン「眼鏡?」
普段と少し違った髪型にするだけでガラリと印象が変わったりすることがある。漫画や小説の中でなら、
それだけで急に美少年や美少女になったりするもんだから、いろいろお得だなと思ったりする。
しかしながら現実は厳しく、髪型を変えただけで印象は変わることはあっても急にもてたりすることはない。
それとよく似たものに、眼鏡からコンタクトにすると印象が変わるというのもある。その逆もまた然りで、
普段掛けない眼鏡を掛けるだけでかなり知的に見えることはある。さらには、最近はお洒落眼鏡なるものもあるらしく、
ファッションの一部として眼鏡を掛ける人もいるらしい。まぁ、俺には関係のない話ではあるが。
さて、どうして俺がそんな話をするのかと不思議に思うかもしれない。原因は単純明快である。
と言うよりも、原因を作る人物は限られているわけであり、厳密に言うと一人に固定される。
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:29:31.48 ID:e4Yt0MRe0
「どう似合う?」
クイッとフレームの縁を持ち上げて眼鏡のズレを直すのは、もちろん涼宮ハルヒその人である。
今日のハルヒはいつもと違って眼鏡を掛けて来た。何でもこれも研究のためらしい。俺には何の研究かさっぱりだが、
どうせ禄でもないことになるのが目に見えている。頼むから厄介事を持ってくるのは勘弁してもらいたい。
「ちょっと、無視してないで何とか言いなさいよ!」
眼鏡ハルヒが眼前に迫る。その口の悪ささえどうにかすれば、知的な雰囲気を漂わせるインテリ系に見え無くもないだろう。
「……まぁ、似合ってるぞ」
「そ、そう?」
思ったままの素直な感想を述べると、ハルヒは若干照れたように口元を綻ばせた。
中身がどうであれ外見だけで言えばかなり可愛いハルヒである。眼鏡に関しろ、他のアクセサリーにしろ、
たいていのものは似合うだろう。似合う似合わないと別として、俺には眼鏡属性は無いわけであって、
特にどうこうなるわけでもなぃがな。
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:34:03.67 ID:e4Yt0MRe0
「……ほ、惚れ直したでしょ!団長様の眼鏡姿を目に焼き付けときなさいよ」
胸を張ってやたら偉そうに訳の分からない冗談を宣うハルヒ。まったく面白くないぞ。
「惚れ直さないし目にも焼き付けるか。……ったく、もうちょいマシな冗談は無いのか?
そもそも、俺には眼鏡属性は無い」
「え、そうなの?」
「ああ」
ツッコミを入れるのも面倒だったので、有りのままの真実を伝えるとハルヒはキョトンとした表情で俺の顔を見る。
「でも、似合ってるぞって言ったじゃない」
「確かに言ったが、俺は客観的に見た容姿を述べたまでだ」
明らかな事実を告げると、ハルヒは機嫌の良さそうだった顔を曇らせてしまった。いったい何が気に入らなかったというのだろう。
眼鏡属性がある連中にしてみれば、ハルヒの眼鏡姿というのは写真にして残しておきたいと思うくらいであろうに。
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:39:56.33 ID:e4Yt0MRe0
「それじゃあ、キョンがコレ掛けなさいよ」
理屈としてはまったく理解が不能である。しかし、眼鏡に興味がないと言えばそれも嘘になる。
少しは面白そうと思ってしまうのは仕方がないことだろう。そんなわけで、ハルヒから眼鏡を受け取って掛けてみた。
「どうだ?」
「知的なキョンってのもなかなか良いわね……」
鏡を持ち合わせていない俺は、ハルヒにどんな感じか訊ねたのだがハルヒは何やら一人でぶつぶつと呟いている。
「……今日1日は眼鏡を掛けときなさい」
その結果、そんなことになってしまった。何でも眼鏡の俺が面白いだとかなんとか……。もちろん、拒否したのだがハルヒに通じるわけもなく、
俺は眼鏡を掛けたまま1日を過ごすことに。やれやれだ。
そんなこんなで放課後になった。度が入っていないとはいえ、眼鏡を掛けることのない俺は掛けていることに違和感があり、どうも馴染めずにいた。
普段慣れないことをするもんじゃ無いとは思うのだが、俺の意見が通るわけもなく世の中の非情を知るだけである。
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:44:05.76 ID:e4Yt0MRe0
「おやおや、これは……」
古泉が何やらニヤニヤとした笑顔を俺に向ける。言いたいことがあるなら言いやがれ。
「いえ、なかなかに似合ってると思いましてね。新たなる一面を発見したとでも言いましょうか」
男に似合ってると言われても全然嬉しくないし、新たなる一面を発見されても困る。
朝比奈さんや長門にそんなことを言われるのは嬉しいけどな。
「それは残念です」
少しも残念そうで無い古泉を軽く睨んで、文芸部に相応しい文芸少女に目をやると、いつもと違うことに気が付いた。
ある事件をきっかけに掛けることがなくなった眼鏡を掛けているではないか。いったいどうしたというのだろう。
「お揃い」
言われた意味がよく分からずに、思わず長門をまじまじと見つめてしまう。こめかみに突き刺さるハルヒの視線が痛々しい。
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:47:53.10 ID:e4Yt0MRe0
「あなたとお揃い」
そう言われ、眼鏡を掛けていることがお揃いだと言いたいのだと気が付いた。
意識していなかったせいか、そんな風に思われていることがこそばゆい。
「何デレデレしてんのよ。返してくれる?」
睨むハルヒの意図が判らないが、逆らわないほうが賢明である。素直に眼鏡を返すと、ハルヒがそれを掛けた。
「これで有希はあたしとお揃いってことね」
「……」
ハルヒが満足そうにしたのを、長門は確認して眼鏡をしまった。
「……彼とお揃いでないと意味がない。それに、彼に眼鏡属性はない」
呆れたような長門の淡々とした言葉に、ハルヒが笑顔で眼鏡を外し地面に投げつけて踏み潰した。
その後は、言うまでもなく修羅場が繰り広げられるのだった。
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:50:51.83 ID:e4Yt0MRe0
終わり
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 22:57:45.66 ID:e4Yt0MRe0
キョン「授業中?」
授業中、どうにもこうにも暇で暇でしょうがないという状況に陥ることはないだろうか。俺はある。睡眠学習に励もうにも、
前の時間に寝すぎてしまい目が冴えており、どうも上手く寝ることができない。ならば、授業を真面目に受ければいい話だが、
それはパンが無ければケーキを食べればいいと言っているようなものだ。そんな時に窓際の席というのはいくらか重宝したりする。
景色を眺めることによっていくらか暇が潰せるからな。しかし、それにすら飽きてしまったらどうすればいいのだろうか。
どうすることもできない。ただ時間が早く過ぎ去ることを願うだけだ。
さて、今まさにそんな状況なわけなのだが、何も俺だけがそう暇を持て余しているわけではない。
俺の後ろの席に座るハルヒもどうやら暇を持て余しているらしい。さっきから指で俺の背中をこねくり回しているのがいい証拠だ。
うっとうしいからやめろ。
「何よ。せっかくこのあたしがキョンの背中で暇を潰してあげてるんだから、キョンがあたしに感謝することはあってもやめろって言われる筋合いはないわ」
いったいどういう論理でそういう結論に行き着くのだろう。きっと俺にはハルヒの思考を読むなんてことは一生できないんだろうね。
そもそも、ハルヒの感情を読んだりするのは俺の役目ではない。にやけ面の超能力者の仕事だからな。
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:00:56.25 ID:e4Yt0MRe0
「まぁ、どうしてもって言うなら無意味にいじるのだけはやめてあげなくはないわよ。どう?」
「どう?じゃない。いいからやめろ。気が散ってしょうがない」
「集中もしてないのに気なんか散ってもいいでしょ」
確かにハルヒの言う通りである。授業に集中してないから俺もハルヒも暇を持て余しているわけだ。
だからといって、背中をいじられてもいいことにはならないだろう、確実に。
「器が知れるわよ。キョンはケチなんだから」
ケチだとかそういった問題でもないだろう。
「しょうがないわね。じゃあ、キョンも楽しめるようにしてあげるわよ」
そう言って、ハルヒはおもむろに俺の背中に指を這わし始めた。不規則なようで規則的に動く指。
これでどうして俺の暇が潰せるというのだろう。
「どう、わかった?」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:04:24.33 ID:e4Yt0MRe0
「何がだ?ただお前が指を這わせただけだろうが」
「ただ指を這わせたわけじゃないわよ。ちゃんと文字を書いたでしょうが」
言われてみればそんな感じもしなくはなかった。そうならそうと言ってくれればいいのに。
「もう、それぐらいだいたいわかるでしょ?」
そういうものか?
「そういうものよ。ほら、もう一回書くから前向きなさいよ」
言われた通りに前を向く。再びハルヒの指が背中を這っていく。何やら艶めかしい気がしないでもない。
そういうことは深く考えないように、背中を這う指の動きに集中する。
バ…カ…キ…ヨ…ン。おいこら、バカキョンって何だよバカキョンって。振り向くと、ハルヒは楽しそうに笑っていた。
「ふふっ、正解。ほら、次行くわよ、次」
ハルヒに促されてしぶしぶ前を向く。気を取り直して行くわよとハルヒが背中に書いたのはアホキョンだとか、
エロキョンだとかわけのわからない悪口ばかりだった。
「なぁ、一旦俺の悪口から離れないか?」
いい加減うんざりなので、ハルヒに勘弁してくれと頼み込む。俺とは対照的に、
ハルヒは何やら楽しそうだったりするわけで、いささか不満なようだ。
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:09:59.66 ID:e4Yt0MRe0
「わかったわよ。じゃあ、次は変えていくわ」
やれやれと小さく肩を竦めて前を向く。
「ほら、書くわよ」
ハルヒの細い指そろそろと背中を這う。…す…き…好き?
おい、ちょっと待て。
慌てて振り向くと、にやにやとハルヒが意地悪な笑みを浮かべていた。何やらとてつもなく嫌な予感がするのは、
気のせいではないだろう。既にその予感は現実のものとなってるんだからな。
「ほら、なんて書いたか言ってみなさいよ」
「いや、それは…」
「あら、なんて書いたかわからなかったの?しょうがないわね、もう一回書いてあげるわよ」
「ぐっ…」
すべてわかっているはずなのに、ハルヒは敢えてそう提案する。まったく勘弁してほしい。
結局、逆らうこともできずに俺は『好き』と囁いた。そしてその後もハルヒのセクハラまがいの行動は続き、
『愛してる』だとか『俺はお前を放さない』などといった赤面必死な言葉を囁くことになるのであった。
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:12:23.13 ID:e4Yt0MRe0
終わり
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:31:34.16 ID:e4Yt0MRe0
キョン「鶴屋さんと?」
「ほら、キョン君こっちだよっ」
俺の手を握って元気いっぱいな御方がにこりと笑う。
もうこれでもかというような程美しいポニーテールをなびかせた鶴屋さんと俺は人混みを抜けていく。夏真っ盛りなこの季節、
走るには少々躊躇われるのだがそれもお構い無し。ハルヒにだって負けやしないその元気さを少しは分けていただきたいくらいだ。
「おんや、キョン君。もう疲れちゃったのかな?」
「いえ、疲れたというわけではないんですけどね、走り回って暑いといいますか……」
「そっかそっか。それじゃあ、どっかその辺の喫茶店にでも入ろうかっ」
ニコニコと汗一つ掻いていないような御様子で、近くにある喫茶店を指差される。ここは鶴屋さんの好意を素直に受けよう。
そんなわけで俺たちは喫茶店の中へ。中はよく冷えており、それだけど生き返った気がする。文明の利器のありがたさをしみじみと実感してしまう。
アルバイトであろうウェイトレスに案内されて窓際の席へ。注文したアイスコーヒーは殆ど待たされずに運ばれてきた。それを一口飲んでほっと一息を吐いた。
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:37:02.39 ID:e4Yt0MRe0
「ごめんねっ、キョン君。今日はずっと走ってたから」
「いえ、さっきも言いましたがそれは構いませんよ。そういうのには慣れてますから」
思わず苦笑を浮かべてしまう。ハルヒに連れ回されたおかげで、それなりのことではへこたれないようになった。
しかし、どうにもこの暑さには参ってしまう。地球温暖化の影響もあるのだろうか、ここ数年で一段と暑くなったような気がする。
ハルヒの力でどうにかならないものか。いや、いつぞやのように季節外れの桜なんかは止めてもらいたい。少し暑さを軽減してくれればいいのだ。
「キョン君はつまんないかい?」
「えっ?」
少し驚いて鶴屋さんを見る。たははと笑う姿はいつもの元気さからいうと三割減といったところか。
「そんなことないですよ。楽しいです、はい」
照れ臭さはあるものの、偽りのない気持ちを口にした。鶴屋さんと一緒にいて楽しくないはずがないし、
そもそも楽しくないなら鶴屋の買い物に付き合おうとも思わないだろう。
「そ、そっか。それは良かったにょろ」
言った俺も照れ臭いが、言われた本人も照れ臭いのだろう、にははと恥ずかしそうに俯いている。
鶴屋さんがこんな表情をするなんて知らなかった。いつもいつも元気いっぱいな姿からは想像するのがちょっと難しいくらいだ。
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:40:18.00 ID:e4Yt0MRe0
「それじゃあキョン君、午後はどうするにょろ?何処か行きたいところはあるかいっ?」
「いえ、特には」
アイスコーヒーをまた一口飲む。程よい苦さと冷たさが体に染み渡る。
「じゃあ、さっきみたいに気になったお店にブラブラ寄る感じで構わないかいっ?」
「ええ、もちろん」
この暑さの中歩き回るのは普通なら勘弁したいところなのだが、鶴屋さんとなら歩いてもいいと思えるのだから不思議なものだ。
案外ハルヒの探している不思議なものってのはこんなものではあるまいか。
「でも、そんなラブコメ的な展開は認めませんから」
「……認めない」
聞き覚えのある声に驚いて、声のした方を見ると、通路を挟んで反対側に朝比奈さんと長門がいた。
いったいいつから居たのだろうとか、そういった疑問よりも、朝比奈さんと長門の言った意味がわからずに首を捻る。
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:44:20.49 ID:e4Yt0MRe0
「鶴屋さんのことは大切なお友達と思っています」
「ありがとねっ、みくる。あたしもそう思ってるにょろよ」
「それでも!それでもキョン君のことは渡しません!」
両の手をぐぐーっと握り締め鶴屋さんを真っ正面から睨み付ける。まぁ、そう形容するにはあまりに可愛らしいのだが。
「おおっと、みくるっ!それは宣戦布告なんだねっ!でも、キョン君は渡さないのさっ!」
鶴屋さんも鶴屋さんで朝比奈さんに対抗するかのごとく立ち上がりびしーっといった感じに指先を向ける。
俺はというと、現状に頭がまったくついていかずにただただその様子を眺めているだけであった。
何故かはわからないが朝比奈さんと鶴屋さんは俺が関係することで覇権を争っている。
まさかハルヒの命によってSOS団の活動を優先するよう説得しに来たのかもしれない。
いや、でも俺は昨日の不思議探索には参加したし、平日の団活にだってきちんと顔をだしている。
となると、いったい朝比奈さんと鶴屋さんは何を争っているのだろう。
わーわーぎゃーぎゃーと普段の二人からは想像もつかないようなはしゃぎっぷりだ。やっぱりこの二人は仲はよろしいようである。
そこで長門の視線に気が付いた。
「どうした、長門?」
「……すき」
長門の口が何かを伝えようと動くも、よく聞き取れない。
「すまん何だって?」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:48:32.41 ID:e4Yt0MRe0
そう聞き返すとあからさまに落胆の色を見せる。いや、無表情には違いないのだが、
そんな顔をしている。
「キョン君はあたしのものなのさっ!いくらみくるでも譲らないんだよっ!」
と、いきなり鶴屋さんに抱き締められた。俺を誰かから守るようにきつく頭の後ろに回された腕に力が込められる。
ナニカヤワラカイという漠然とした感覚。これはいったい……。冷静に状況を把握しているようであって実はそうではない。
脳ミソの1割程度が活動しているだけで、その他9割は機能停止中。
「キョン君は誰にも渡さないんだねっ!」
チュッと額で柔らかい感触。
「あー!」
「―――ッ!」
朝比奈さんの叫び、長門の息を呑んだ。つまり、俺は、その、あれだ、所謂、デコチューというものをされたらしい。
鶴屋さんの腕の締め付けがきつすぎてブラックアウトする寸前、俺はそんな結論に達するのだった。
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/28(金) 23:50:51.99 ID:e4Yt0MRe0
終わり
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/03/29(土) 00:28:25.80 ID:hUdK1WdcO
佐々木短かった(´・ω・`)鶴屋さんのとも合わせて乙
朝倉涼子さんはいらっしゃいませんかね
朝倉涼子さんはいらっしゃいませんかね
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●夜空「な、なぜ私の股間から男性器が・・・・・・」