ワシが、おしぼり評論家「搾崎 水絞」(しぼりざき すいこう)である。
食の始まりはまず「おしぼり」から。
そして食の終わりもまた「おしぼり」なり。
これほどグルメが持て囃される昨今ではあるが、飲食業界においておしぼりの地位が低いままなのは実に嘆かわしい。
みなさんは飲食店でこのような経験はないだろうか?
ふ~、今日も1日疲れたわい。1日の労をねぎらうのはやはりこれに限る。
さあ、早速おしぼりで顔を拭かせて頂こう。
む、なるほどなるほど。
塩素系消毒液の強い臭いが鼻をつく。にも関わらずキチンと消毒されていないのか、鼻孔でやけに生臭く不快な青臭さが暴れる。
さながら、カメムシ小学校のプールで搾ったおしぼり、というわけか。拭けば拭くほど自分の顔がどんどん臭くなるのがわかる。この状態で転校したらアダ名は即「顔面くさ夫」確定だわい。
うんうん、今すぐ自分の「鼻」という器官をもぎ取ってやりたいわ。
わあーっはっはっは!
って、地獄見せたろか、このボケ!!!!!!!!!!
このおしぼりを搾ったのは誰じゃあああああああああああい!!!!!!!!!
こんなん嗅がされてメシ食えるかああああああ!!!!!!!!
お前は頭おかしいんか?!?!?!?!?!?!?!!!!
不愉快だ!! 帰る!! もう帰る!!! 家帰って、フルーツグラノーラ食って、Huluで視聴中の海外ドラマ見て、寝る!!! ベネディクト・カンバーバッチ様を見てから寝るもん!! もうヤだ!!! マヂ無理だし!!!! これわマヂない!!!!!
かような悲しい体験を二度とせぬため、日本の正しいおしぼり文化を守っていかねばならぬ。
そのため、ワシは本日、うどんの名店 六本木「つるとんたん」にやって来た。噂によるとここはうどんも絶品だが、おしぼりも絶品であるようだ。
うむ、落ち着いていて非常に良い店構えである。これは期待できそうだ。
ではご主人、早速だが、シボリ一丁。
ほほう、おしぼりに「つるとんたん」と店名を冠すとは、よほど自信があると見える。
その自信、虚仮かそれとも本物か…。お手並み拝見といこうではないか。
む、感触はミディアムボディか。
タオル地の粗さを残しながらもきめ細かい、心地良い感触だ。湿り気もちょうどよい。
温度はややヌルめ。しかし、この酷暑ではそれも嬉しい心遣い。熱過ぎもせず、かといって冷やし過ぎもしない絶妙な温度である。
喉が渇き、茶を所望する秀吉に対して、一杯目は大きな器にぬるめの茶を差し出し、二杯目を欲すると一杯目より湯の量を少なくし、先ほどより少し温かい茶を。さらに三杯目を欲すると、次は小さな器に熱い茶を入れて差し出した、という石田三成の「三献の茶」を彷彿とさせる心遣いではないか。
しかし問題はここからよ。
顔を拭く時こそが、おしぼりの真価が問われる時なり。
では、参る…。
おお…、うんうんうんうんうん…。
はいはいはいはい、うん…。はいはいはいはいはいはい。
うん、はいはいはいはいはいはいはいはいはい。
そうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそう。
うん。はいはい。そうそう。そうそうそうそうそうそうそう。そのままそのまま。うんうんうんうんうんうん。そうそうそうそうそうそうそう。はいはいはいはいはいはいはいはいはいはい。あるあるあるあるあるあるあるある。そうそうそうそうそうそうそう。いや、ちがっ…、うん、そう。そうそうそうそうそう。うん。そう。それそれそれそれ。うん。
そうそうそうそうそう。うんうんうんうんうんうん。そうそう。そうです。うん、そうそう。そうです。うんうんうんうんうんうんうんうんうんうん。そうそうそうそうそうそう。うん。はい。そう。そうです。はいはいはいはいはいはいはい。うんうんうんうんうんうんうん。そうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそう。そうです。うん、あるあるあるあるあるあるあるあるあるある。それそれそれそれそれそれそれそれ。そうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそう。そうです。これこれこれこれこれ。そうそうそうそうそう。うん、はいはいはいはいはいはいはい。そうそうそうそうそうそうそう。うん、そう。そうです。
~~~~んまっっ!!!!!!!!!!!!
な、なんちゅうパワーじゃ…。
まるでブラックホール。あまりの気持ち良さに顔を離すことができん…。
危うく窒息するまで意味のない相槌を繰り返すところじゃった…。
ああ、この極上の香り、いつまでも嗅いでいたい。
一生こうやっておしぼりを鼻に当てた状態で暮らしたい。「お宅のご主人、いつもおしぼりを鼻に当ててらっしゃいますね」と妻が自治会でバカにされても構わん。
決して主張し過ぎず、しかし確かに鼻孔をくすぐるこの優しく甘い香りはどうだ?まるで天女の羽衣…。いや、もっとわかりやすく言うと、めっちゃめちゃイイ女がマイバッグから出したハンカチ。お菓子作りが趣味の27歳OL、交際経験は2人、現在彼氏募集中(しかし自分からは「募集中」とは決して言わない)の、ハンカチのごとし。
つるとんたんのおしぼりは間違いなく人類の宝じゃ。政府はいち早くこれを重要無形文化財にすべきである。警告する、政府はいち早くこれを重要無形文化財にすべきである。
全宇宙をくまなく探しても、これほどの眩い恒星には今後出会えるかどうか…。
「この広い宇宙でキミに出会えた奇跡に感謝」そんなクソのJ-POPみたいな歌詞にも今は共感できる。ありがとう、おしぼり。ありがとう、つるとんたん。ありがとう、父と母。
店員さん「あの~、すみません…。お食事のご注文はお決まりでしょうか?」
おっと、失敬。
ワシとしたことが、大変失礼致した。
ごっそさん。
▼店舗情報
店舗名:つるとんたん 六本木店
住所:東京都港区六本木3-14-12六本木3丁目ビル
六本木駅3番出口から徒歩5分
営業時間:昼11:00 ~ 翌朝8:00(ラストオーダー 翌朝7:30)
TEL:03-5786-2626
※おしぼりは夜のみの提供
●株式会社バーグハンバーグバーグ
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