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女の子「ん?今何でもするっていったよね?」男「命の恩人だからね」|エレファント速報:SSまとめブログ

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女の子「ん?今何でもするっていったよね?」男「命の恩人だからね」

1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 16:34:27 ID:U/K68SPk

俺の目の前に車が迫ってくるのがスローモーションのように見えるが、体が動かない。

きっと、寝不足なのがいけなかったんだ。もっと言うなら、友達から借りたラノベをほぼ徹夜で読み耽ってたせいだ。

ちょっと寝て、起きて登校したらこれだ。くそっ……友達のこと呪ってやる、 末代まで舌の先に口内炎できろ……



4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 16:42:55 ID:U/K68SPk

ぎゅっと目を固く閉じた、その時だった。

女の子「危ない!!」ドンッ

尋常じゃない力で横方向に吹きとばされる。

男「……?」

目を開いてみると、車は行き過ぎてゆく。どうやら交通事故にはならなかったらしい。

女の子「大丈夫!?」



5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 16:48:08 ID:U/K68SPk

男「君が助けてくれたのか…?」

女の子「よかった…大丈夫みたいだね…!!」

女の子は可愛らしく笑った。地面にへたりこんだ俺を見下ろしながら。

どうやら、この娘が助けてくれたらしい。

女の子は俺に手を差し伸べる。

女の子「立てる?」



6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 16:52:59 ID:U/K68SPk

男「うん…」

女の子の腕を借りて立つと、衝撃の割りに、体は案外大したことはなさそうだった。

男「……えっと、ありがとう」

女の子「どういたしまして」

やっぱり可愛い笑顔だった。こんなに可愛い娘があんな威力のタックルをかますなんて、世の中よく分からない。



7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 17:04:08 ID:U/K68SPk

男「…君は?」

女の子「ん?」

女の子は小さく小首をかしげた。綺麗なパッツンに揃えられた前髪が揺れる。

男「君は大丈夫?」

女の子「ピンピンしてるよ?」

そう言ってくるりと回った。遠心力でゆるりと広がるセーラー服は、近くの高校のものだ。

女の子「でも、これで私遅刻確定だよね」



8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 18:08:54 ID:U/K68SPk

俺「ごめん…」

女の子「あーあ、私、皆勤賞狙ってたのに」

女の子は横目で俺を見る。

女の子「どうせ遅刻ならさぼっちゃおうかなぁ」

俺「ほ、本当にごめん!お礼に、俺にできることなら何でもするから!」



9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 18:15:33 ID:U/K68SPk

俺のことばを聞くと、女の子はじっと俺の顔を覗きこんだ。

女の子「ん?今何でもするっていったよね?」

男「う、うん…」

女の子「じゃあねぇ…」

女の子は手を口元にあてて何かを考えている。

女の子「……それじゃあ、私の暇潰しに付き合ってよ」

男「え?」

女の子「私、今日学校休むことにしたから」



10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 18:28:10 ID:U/K68SPk

女の子はいたずらっぽく微笑んだ。
向日葵のような、夏の強い日差しに眩しい満面の笑みだ。


…………違う。そんな話じゃない。

男「えっと、あの…」

女の子「何?私とじゃ嫌?」

そんなわけない。こんなに可愛い命の恩人の頼みなら本当になんだって叶えなくてはいけないと思う。
思うけど、普通は赤の他人をいきなり暇潰しに付き合わすか?



11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 18:36:01 ID:U/K68SPk

礼儀とかそんなのとは別に、見ず知らずの人と一緒に過ごして楽しいものだとは思わない。俺は別にかまわないけど…

女の子「…無理には言わないけど」

女の子はくるっと背を向けてしまう。
この際、俺の考えなんてどうでもいいことだった。

俺「君がそれでいいなら…」

女の子「…本当?」

一拍置いて女の子は振り向いた。本当によく笑う娘だ。



12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 19:07:13 ID:U/K68SPk

女の子「それじゃあついてきて、こっちこっち」

女の子は視線を向こうに戻して歩き出した。あわてて追いかける。

俺「どこに行くんだ?」

女の子「近くにちっちゃい遊園地あるでしょ?そこ行こ!」

俺「ゆ、遊園地…」

まんまデートじゃねぇか。マジかよ…
めっちゃ心臓ばくばくしてる…!!

女の子「あなたの奢りだからね!」

俺「お、おう…」



13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 19:10:52 ID:U/K68SPk

初対面なのに、こんなに心が落ち着かないのはきっとこの娘が可愛いからだと思う。
こんなに可愛いかったら、人生イージーモードで皆優しくしてくれるんだろうなぁ…羨ましい。

俺「……」

女の子「……」

……何か、話しかけた方がいいのか?沈黙が息苦しい…。



14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 22:55:14 ID:U/K68SPk

俺「……本当に俺でいいのか?」

女の子「はい?」

声をかけても、三歩先を行く女の子は振り返らず歩く。

俺「赤の他人と遊園地なんて、楽しいか?」

女の子「んー…」

女の子の歩みが、少しだけ減速する。

女の子「あなたとなら、楽しそうじゃない?」

不意に女の子が立ち止まり、こちらを見た。



15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 22:58:34 ID:U/K68SPk

女の子「あなたも、そうは思わない?」

もちろん、美少女との遊園地なんて楽しいに決まっているけれど。
だけど多分、この娘が言ってるのはそういう事じゃない。

俺「……?」


女の子「なんだかね、赤の他人とは思えないの」



16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/11(金) 23:04:23 ID:U/K68SPk

女の子は探るような視線を俺に向けた。
煩い蝉がぴたりと鳴き止み、暑苦しい風が途絶える。


女の子「私達……どこかで会ったことない?」

俺「え……?」

また蝉が鳴き出し、熱風が頬を叩いた。

女の子「…気のせい、か」

独り言のように呟いて、女の子はまた歩き出した。



18 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/12(土) 09:55:12 ID:LOGiJxNk

俺「俺たち、会ったこと……」

俺が言葉を返そうとした、まさにその時だった。

一瞬で視界の全てに陰が落ちた。足下の影が紛れて消える。

俺(にわか雨か…?)

歩みを止めて空を見上げると、俺たちの真上に『何か』が浮かんでいた。



19 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/12(土) 10:08:16 ID:cdmW/gtE

白く流線型を描く『それ』は、最初は馬鹿でかい気球か何かに見えた。あまりの大きさに圧迫感を感じる。

俺「なんだ、あれ…」

『それ』は上空でゆったりと旋回し、真夏日の町に木枯しを巻き起こす。
肌がざわめくような感触は、寒さのせいでも圧迫感のせいでもない。

女の子「…………」

女の子も空を見上げたまま肩を震わせていた。



20 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/12(土) 10:17:03 ID:cdmW/gtE

『それ』が旋回を終えかけ、こちらに頭を向けた時にようやく『それ』が何なのかを理解した。

『鮫』だった。

何と比較していいか分からないほど大きな鮫が、ぽっかり浮かんでいた。

ゆらゆらと空中を泳ぐ『鮫』は俺たちを気にも止めないでいるようだった。



21 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/12(土) 10:24:43 ID:cdmW/gtE

『鮫』が俺たちの真上を通り過ぎ、また太陽の光があたる。

俺は、小刻みに震える女の子の腕を掴んだ。

俺「アレから、離れるぞ」

言葉では上手く表せないが、『鮫』から一刻も早く離れたいと思った。
それは女の子も同じようで、彼女はコクコクと小さく何度も頷く。

女の子「う、うん。早く逃げよう…!」



22 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/12(土) 10:30:10 ID:cdmW/gtE

俺たちは小走りに『鮫』から遠ざかってゆく。

振り替えると、『鮫』の全体が見えるほどには離れていた。女の子が、息をつくのが聞こえる。

俺「よかった、あっち行……」

俺は最後まで言えなかった。またあの木枯しが吹いたからだ。
嫌な感じがして足が止まる。

振り返らず走ればいいのに、俺たちは立ち止まって後ろを見た。



23 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/12(土) 10:36:37 ID:cdmW/gtE

案の定、『鮫』はゆるりとこちらへ向き直す。小さな目は、たしかにこちらを見ていた。

『鮫』と、目が合う。
どくん、と思い出したように心臓が動いた。


女の子「……早く!」

今度は、いち早く我に帰った女の子が俺の手を掴み走り出す。



26 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/13(日) 17:51:16 ID:qc7dR2.6

木枯しを吹かせながら、『鮫』は凄まじい勢いで迫ってくる。

上空に浮かんでいた『鮫』は、腹が民家に擦れるほど降りて来ていた。電信柱が、家が、木が、町があっと言う間に瓦礫へと変わってゆく。

女の子「はぁっ、はぁっ……!」

いくら走っても『鮫』との距離は縮まるばかりだ。

どうすればいい……あんなの、近づいただけで風圧で飛ばされちまう!



27 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/13(日) 17:55:12 ID:qc7dR2.6

ほとんど働いていない頭を使って考えても、答えは見つからない。その間にも『鮫』は近づいてくる。

女の子「……っ」

俺「お、おい!?」

何を思ったか女の子が路地を右に逸れた。手を掴まれて走る俺も後に続く。



28 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/13(日) 17:58:52 ID:qc7dR2.6

女の子「真っ直ぐ逃げてもすぐに追い付かれるよ…」

肩を上下させながら女の子は言った。

俺「……」

時間稼ぎにしかならないじゃないか。

そう言おうとしてやめた。今の俺たちに出来るのは時間稼ぎしかない。

俺も黙って走る。



29 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/13(日) 18:13:28 ID:qc7dR2.6

ちら、と振り替えるとちょうど『鮫』が方向を変えようとしていた。

やっぱり、俺たちを狙ってやがる…!
……いや?

女の子「あれ見て!」

『鮫』は、俺たちを見失ったように見えた。
辺りを見渡すように、くるりと回る。

尾をこちらに向けて、空中で止まった。

俺「よし…!!」



30 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/13(日) 18:17:35 ID:qc7dR2.6

俺たちの歩みが止まる。
女の子は限界だと言うように膝に手をついた。小さな肩が大きく上下する。

女の子「えへへ…やったね…」

苦しそうながらも俺に笑顔を向ける女の子。俺も笑い返した。

俺「はは…」


俺たちは完全に油断していた。
『鮫』が、てっきり俺たちを見失ったとばかり思っていた。



31 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/07/13(日) 18:21:54 ID:qc7dR2.6

だから、『鮫』が尾で勢いよく地面をなぎはらった時、わけが分からなかった。

俺「あ……」

何も言う暇がなかった。体が宙に舞う。

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      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年07月30日 23:49
      • みんなチェーンソーは持ったか!?

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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