3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:29:18.67 ID:Ik5SkNqH0

店員「見ない顔だな。少年は今日が初めてか?」

男「はい。少し、興味があったもので」

店員「こんな寂れたバーに一人で来るというのは、物好きなのだな」

男「そんなことないですよ」

店員「少年は、高校生くらいか?」

男「はい、高三です」

店員「受験生か。もう決めているのか?」

男「まあ、一応。僕にはレベル高いですけど」

店員「そうか。頑張ってくれ」

男「他のお客さんはいないんですね」

店員「寂れた、と言っただろう。この店は店長がずっと前からやっていたものでな。たとえ人が来なくても、私は、この店が好きなんだ」

男「僕も、この店の雰囲気、好きですよ」

店員「そうか、ありがとう」
元スレ
店員「はい、コーヒー」男「ありがとうございます」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406554007/


 
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:30:37.17 ID:Ik5SkNqH0

店員「はい、コーヒー」

男「ありがとうございます」

店員「まさか連続で来てくれるとはな」

男「たまの気分転換も含めてなので」

店員「そういえば受験生だったな」

男「それに、居心地もいいし、店員さんと話すのも楽しいです」

店員「……フフ」

男「店員さんは、何歳ですか?」

店員「無闇に女性に年齢を聞くでない」

男「そうですね。すいません」

店員「まあ、まだ二十歳過ぎだ。大学にも通っている」

男「なんて大学ですか」

店員「そこまでは教えない」





5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:31:48.76 ID:Ik5SkNqH0

店員「はい、コーヒー」

男「ありがとうございます」

店員「少年は、金があるんだな。ここ最近毎日来てる気がするが」

男「アルバイトしてるんです。土日だけですけど」

店員「そうか、体を壊さないようにな」

男「それはもちろん。店員さんと話せないのは辛いですし」

店員「それはありがとう」

男「そういえば店員さんは髪綺麗ですね」

店員「ちょっとした自慢なんだ」

男「触ってもいいですか?」

店員「またいつか、な」





6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:32:52.90 ID:Ik5SkNqH0

店員「はい、コーヒー」

男「ありがとうございます」

店員「今日も来たのだな」

男「このコーヒーは店員さんが淹れているのですか?」

店員「いや、奥で店長が淹れている」

男「一度、店員さんが淹れたのを飲みたいです」

店員「私はまだ店長に認められてないんだ。だから淹れることはできない」

男「店員さんは料理ができるんですか?」

店員「私はこれでも一人暮らしだからな。家事は一通りできる」

男「僕も大学から一人暮らししようと思ってます。難しいこととかありますか?」

店員「いまは慣れたからね。最初の方は炊事とか全然できなかったよ」

男「今度手料理食べていいですか」

店員「コーヒーでいいかな」

男「では店員さんの部屋へ行きましょう」

店員「少年は私の家で食べるつもりだったのか」





7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:34:10.12 ID:Ik5SkNqH0

店員「はい、コーヒー」

男「ありがとうございます」

店員「少年は疲れているのか?そんな顔をしているぞ」

男「あ、分かりますか?勉強とアルバイトで結構ギリギリなんです」

店員「それでも、ここへは来るのだな」

男「店員さんの顔を見ると、疲れなんてへっちゃらです」

店員「……フフ、嬉しいことを言うじゃないか」

男「あ、ちょっと照れてますね」

店員「さぁ、ね。どうかな」

男「店員さん、可愛いですよ」

店員「む」

男「ほんとに可愛いです。毎日通いたいくらい」

店員「少年は毎日来ているだろう」

男「だって、店員さん可愛いですし」

店員「う……」//

男「あ、赤くなってる」

店員「あー、もう、この話終わりっ」//

男「ハハハ、いいものが見れました」





8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:35:04.22 ID:Ik5SkNqH0

店員「はい、コーヒー」

男「ありがとうございます」

店員「毎回コーヒーで飽きはしないのか?」

男「一番安いので」

店員「結構な守銭奴だな」

男「店員さん、疲れてないですか?」

店員「む、そうか。最近は大学の方が少し忙しくなっているからな」

男「休んだ方がいいのでは?」

店員「それは少年に言おう」

男「僕は大丈夫ですよ。店員さんと話すだけで元気百パーセントです」

店員「少年は面白いな」

男「よく言われます」





9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:36:16.38 ID:Ik5SkNqH0

男「あ」

店員「あ」

男「え、て、店員さん?なんで」

店員「少年こそ、何故ここに?」

男「僕はバイト帰りに参考書を買いに」

店員「奇遇だな、私も大学から帰るところだ」

男「まあ、寄れる所と言ったらこのショッピングセンターしか無いですしね」

店員「考えることは同じようだな」

男「ちょっとした運命のような気も……」

店員「私から見ると少年はストーカーなんだが」

男「たまに酷い事言いますね」

店員「冗談だ。私も少年をからかいたいんだ」





10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:37:28.77 ID:Ik5SkNqH0

男「そうだ、今度一緒に来ませんか、ここに」

店員「それは何故だ?なぜ私と」

男「そりゃ、店員さんの事が好きですし」

店員「……少年は羞恥心が無いのか?」

男「え、僕なんか変な事言いましたか?」

店員「む。今なんて言ったのか覚えてないのか?」

男「え、好きです」

店員「……」//

男「あ、やっぱり赤くなる」

店員「それは、そうだろう」//

男「では、今度一緒にいいですか?」

店員「大学に受かったら、かな。今の少年では厳しいのだろう?」

男「あーと、はい」

店員「受かったら、どこへでも行ってやる」

男「お、約束ですよ」

店員「当然だ」

男「あ、そうだ。番号教えてください」

店員「アドレスだけ教えよう」

男「く、まあいいです。次は番号を教えて下さいよ」

店員「約束が増えて困る」





11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:38:32.56 ID:Ik5SkNqH0

男「…………」カリカリカリカリ

友「よーっす男」

男「…………」カリカリカリカリ

友「なんだよ、勉強して。つれねぇなあ」

男「…………」カリカリカリカリ

友「おーとーこー」バンバンバン

男「いっ、いたっ、痛いっ」

友「お、復活した」

男「痛ぇなあ、友。少しは優しくしてくれ」

友「わりぃわりぃ」

男「で、どーしたんだ」

友「いやぁ、朝から男がずっと勉強してっから、らしくねぇなと」

男「いやいや、もう俺ら受験生じゃねえか。そろそろ勉強すべきだろ」

友「う、まあそうだが、でもお前昨日までやってなかったじゃん」

男「う」

友「なんかあったんか?」

男「……いや、なんも」

友「女?」

男「っ!」

友「お、ビンゴ」

男「……、はぁ」

友「まあ、女絡みなら俺は口出ししねえよ」

男「……助かる」

友「誰かの為に本気になる奴は結構カッコ良く見えんぜ」

男「サンキュ、やる気出た」

友「で、誰よ」

男「それとこれとは話が別だ」カリカリカリカリ





12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:39:44.43 ID:Ik5SkNqH0

店員(今日も少年、来なかったな)

店員(きっと、勉強でもしているのだろう)

店員(私が約束したのだ)

店員(だが、さすがに、会えないのは寂しいな)

店長「……ちゃん、店員ちゃん?」

店員「え、あ、は、はい!」

店長「どうしたの」

店員「あ、その、考え事を」

店長「……今日はもう上がっていいよ」

店員「え、でもまだ時間が」

店長「いいからいいから、大学が忙しいんだろう?」

店員「え?」

店長「君の疲れたような顔を見れば分かる。君には少し休養が必要だろう」

店員「あ、の、えーと」

店長「ゆっくり休みな」

店員「……すみません、ありがとうございました」

店長「いいよ、今日は忙しくないしね。いや、毎日忙しくないけど……」ブツブツ

店員「失礼します」





13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:41:08.40 ID:Ik5SkNqH0

店員(私は、そんな疲れた顔をしていたのか)

店員(確かに、最近は寝れていない)

店員(大学が、卒業に向けて忙しいのもある)

店員(だが、だが今は……)


――――え、好きです


店員(…………)//

店員(あの少年が大学に受かる頃、)

店員(私は、この街にいるのだろうか)





15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:44:27.12 ID:Ik5SkNqH0

店員「はい、コーヒー」

男「ありがとうございます」

店員「最近は来てなかったが、勉強でもしていたのか?」

男「そのとおりです。学校でずっと」

店員「で、今日からはここでやると」

男「はい。分からない所があったら教えてくれると嬉しいです」

店員「ふむ、まあ少しばかりはな」





16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:45:51.89 ID:Ik5SkNqH0

店員「そこは、数?でやらなかったか?」

男「え、あ、そうか。この定理を使って」

店員「そうそう。であとは足し算だけだ」

男「ありがとうございます」

店員「数学だけは得意だからな」

男「いや、それより教え方が上手いですね」

店員「塾講師のバイトをしたことがあるんだ」

男「どおりで」

店員「高校生の頃は部活が忙しかったな」

男「何部ですか?」

店員「弓道部だ」

男「あー、似合いますね。袴姿」

店員「まあ、成績は残せなかったがな」

男「僕も引退したので、前までやってましたよ。茶道部ですけど」

店員「少年は運動はあまり似合わないからいいな」

男「いやぁ、そんなことないです」

店員「別に褒めてないんだが」





17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:47:03.20 ID:Ik5SkNqH0

男「…………」カリカリカリカリ

店員「…………」カチャカチャ

男「…………」カリカリカリカリ

店員「…………」キュッキュッ

男「…………」カリカリカリカリ

店員「…………」

男「…………」カリカリカリカリ

店員「…………フフ」

男「…………」カリカリカリカリ





18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:48:09.14 ID:Ik5SkNqH0

店員「はい、コーヒー」

男「ありがとうございます」

店員「…………」

男「…………」カリカリカリカリ

店員「…………」カチャカチャ

男「…………」カリカリカリカリ

店員「…………」キュッキュッ

男「…………」カリカリカリカリ





19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:49:19.19 ID:Ik5SkNqH0

店員「もうすぐ」

男「え?」

店員「センター試験、だな」

男「ああ、はい。そうですね」

店員「私は去年、センター試験で失敗してしまったから、少年には頑張って欲しい」

男「……店員、さん?」

店員「できる限りのことはしてやるから」

男「…………」

店員「頑張って、くれな」

男「……当然ですよ。絶対合格してやりますよ!」

店員「…………」

男「倍率四倍近くの大学です。一筋縄ではいかないです」

店員「…………」

男「合格まで本気出します」

店員「…………」

男「次は、合格証明書を持ってここに来ますので、絶対、ぜーったい待っててくださいね!」

店員「フフ……楽しみに待っているぞ」

男「はい!」





20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:50:43.56 ID:Ik5SkNqH0

店員「それと、少し遅いがクリスマスプレゼントだ」

男「え?」

店員「私の手料理。食べたかったのだろう?軽いものだが、どうかな」

男「……あ、ありがとう、ございます……」

店員「……美味しいか?」

男「もちろんです」

店員「それはよかった」

男「じゃ、腹も膨れたので、もうひと頑張り」

店員「体に気をつけなよ」





21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:51:52.37 ID:Ik5SkNqH0

男「では、明日からは家で頑張ってきます!」

店員「当日は落ち着いて、な」

男「ありがとうございます!では!」

ガチャ

バタン

店員「…………」

店長「店員ちゃん」

店員「は、はい?」

店長「君も、もうすぐ卒業だろう?」

店員「……はい」

店長「卒業したら、どうするつもりなんだい?」

店員「…………」

店長「君は、ここを辞めるつもりだろう」

店員「っ」





22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:53:19.26 ID:Ik5SkNqH0

店長「わたしには、彼は君に好意を持っているように見える」

店員「…………」

――――え、好きです

店長「彼のことをどうするか。先に決めておくことだね」

店員「…………」

――――受かったら、どこへでも行ってやる。

店員(なぜ私は、あんなことを言ったのか)

店員(あの時私は、少しばかり少年と行きたいと、思っていた)

――――絶対、ぜーったい待っててくださいね!

店員(…………)

店員「……私も、少年のことが――――」





23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/28(月) 22:54:38.45 ID:Ik5SkNqH0




好きなのだろうか








29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:29:06.45 ID:bVIOi4aS0

――センター試験当日

男「うわぁ、人多すぎ」

男「こんな中でやるとか、緊張感やばいな」

友「よっす」

男「おお、友」

友「俺人混み苦手なんだよなぁ。勘弁してほしいわ」

男「明日もだぞ」

友「えぇー」

男「ま、今日はお互い頑張ろうぜ」

友「明日もな」





30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:30:54.29 ID:bVIOi4aS0

男(皆が頭良く見える不思議)

男(だ、大丈夫大丈夫。錯覚錯覚)

男(数学はあれから頑張ったし、国語も、まあ大丈夫だ)

男(あ、でも、やってない問題だったら)

男(英語もリスニング少ししかやってないし……)

男(あ、やべ真っ白だ)


――――当日は落ち着いて、な


男(……そうだ、落ち着いて)


――――誰かの為に本気になる奴は結構カッコ良く見えんぜ


男(……店員さんの為なら)


――――受かったら、どこへでも行ってやる。


男(本気になれるっ!)


教授「では、はじめ!」

ペラッ!





31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:32:35.62 ID:bVIOi4aS0

店長「君もついに大学卒業か」

店員「あの、明日は」

店長「うん、休みにしておいたよ」

店員「ありがとうございます」

店長「彼は今頃、二次試験に向けて勉強中だろう」

店員「…………」

店長「それで、これからどうするか決めたのかい?」

店員「……はい、私は――――」





32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:33:59.08 ID:bVIOi4aS0

ガチャ

男「店員さん!僕やりました!合格し――――」

店長「ん、あぁ、君が彼女がいつも話してた少年くんか」

男「こ、こんにちは。あの、店員さんは……」

店長「彼女は、昨日辞めたよ」



男「え?」




―――― 店員「私は、ここを離れようと思います」









33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:36:09.11 ID:bVIOi4aS0

男「は、う、え、昨日?」

店長「うん、昨日をもってね」

男「は?は?なんで」

店長「彼女が卒業する丁度いい時期だからね。あぁ、どこに行ったからとかは口止めされてるから」

男「卒……業……」

店長「人は誰しも事情があるものだ」

男「……そ、そうだ、メール」

店長「しても無駄だよ。彼女は君に会わないと言っていた」

男「…………」

店長「潔く、諦めるべきだと思うな」

男「……く……」





35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:39:47.44 ID:bVIOi4aS0

――一昨日

店長「……仕事を見つけるため上京、か」

店員「すみません。それで、ここも辞めることにしようと」

店長「あぁ、いいよいいよ。考えた結果だから、仕方が無い」

店員「……すみません」

店長「ただ、彼のことはどうするつもりなんだい?」

店員「……それは、まだ」

店長「じゃあ、君は彼に会うつもりなのか?」

店員「……いや、少年とは会いません」

店長「そりゃまたどうして」

店員「私は少年と約束しました」

店長「約束?」

店員「はい」


―――― 店員「受かったら、どこへでも行ってやる」


――――男「お、約束ですよ」


――――店員「当然だ」


店員「少年が次にここに来て私に会うと、私はその約束を守らなければならない」

店長「…………」

店員「だから、少年とは一度離れます。その間に、考えます」

店長「考える?」

店員「今はまだ、気持ちの整理がついてないんです」

店長「ふぅん」

店員「なので、申し訳ありませんが、辞めさせていただきます」

店長「うん、分かったよ。でも、気が向いたらまた来てね?今度は、客として」

店員「それはもちろんです」





36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:42:41.75 ID:bVIOi4aS0

男「…………」

店長「大学、頑張ってね」

男「…………もう」

店長「もう?もう、なんだ?」

男「っ」

店長「君には、君の生き方がある。なにも彼女が全てということはない。いや、この世界にはそれを強いられている人もいるけど……」

男「…………」

店長「でも、君は違う」

男「…………」

店長「君はまだ何も知らない。君がこれから会う人、そして離れていく人。彼女はその中の一人だろう」

男「……それは、ち、違います」

店長「それは今だから言えることだ。現に君は、小学校や中学校で出会った人の中で、今も付き合いがある人は何人だい?」

男「っ…………」

店長「分かったかな?」

男「……でも」

店長「あと、あれだ。店員ちゃんは怒るんじゃないかな?」

男「!」

店長「合格証明書、見せるんでしょ?」

男「……はい」

店長「じゃ、行くね?」

男「……はい」

店長「よし。あ、言っておくけど、彼女、いつか来るから、また会えるよ」

男「……ホントですか」

店長「うん、彼女自身が言ってたからね」

男「……あの、一つお願いが」

店長「ん、なんでも言ってよ。できる限りならできる」


―――― 店員「できる限りのことはしてやるから」


男「っ……」

店長「ん?どうしたんだい?」

男「いえ、ちょっと思い出しただけです」

店長「……そうか。で、お願いって?」

男「……あの――――」





37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:43:56.90 ID:bVIOi4aS0

友「よっす」

男「おう」

友「久しぶりだな、センター以来か?」

男「あぁ、そうかもな」

友「それにしても、お前よく受かったな。あそこレベル高いのに。俺には無理だったわ」

男「まあ、な。頑張れたから」

友「いや本当すごいよお前は」

男「まあ、とりあえずそれは置いといて。今日は楽しもうか」

友「卒業&合格パーティてか」

男「そんなとこ。まぁ安い焼肉だけどな」

友「かまわんよ。その方が俺ららしいし」

男「じゃ、卒業と」

友「合格を祝して」

男友「 「 乾杯!! 」 」





38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:45:36.75 ID:bVIOi4aS0

友「お前こんなとこ知ってんなら早めに教えてくれよ……」

男「悪いな」

友「てか、すげぇいいバーじゃん。なんで人いねえの?」

男「それは分からん。けど、これから増やしていくよ」

友「俺はその一人目だな」

男「いや、二人目だ。俺が一人目」

友「いや、お前はこれからは『そっち側』だろ?」

男「ん?あぁ、そうか」




店員(男)「そうだったな」









39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:47:13.56 ID:bVIOi4aS0

――ちょっと前

男「あの、ここで働きたいです」

店長「いいよ。丁度人いなくなったし、君なら尚更」

男「え、そんなあっさりいいんですか」

店長「いいのいいの」

男「なんか、簡単ですね」

店長「あ、そうだ。実際に働くのは卒業してからね。それまで仕事の内容教えるから」

男「はい、分かりました」





40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:48:46.92 ID:bVIOi4aS0

店員「ありがとうございましたー」

店長「今日もよく働くねえ」

店員「段々お客さんが増えているのが、単純に嬉しいんです」

店長「大学は大丈夫なのかい?」

店員「もう三年です。ほとんど慣れましたし、それに僕にとってはこのバーの方が大事です」

店長「そうか。そういえば彼女はできたのかい?」

店員「ぶふっ……分かって言ってますよね」

店長「はっはっは!早めに楽しまないと、後々後悔するぞ?」

店員「後悔はしませんよ。ただ僕には……」

友「よっす」

店員「お、友。おう」

友「なんか似合うな」

店員「また言うか」

友「毎回恒例だな。あ、店長さん、こんにちはっす」

店長「ああ、こんにちは、友くん」

友「いいなあ、優しい上司で」

店員「そういや、友もバイト始めたんだっけか」

友「家の近くのコンビニだよ。先輩が短気ですぐキレるんだよ」

店員「それは酷い」

友「だよなあ。俺もここで働きたかったぜ」

店員「悪いな、ここは一人だけなんだ」





41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:51:20.41 ID:bVIOi4aS0

店員「てか、友は彼女いたよな」

友「ああ、まだ付き合ってんよ」

店員「俺にはそっちの方が羨ましいぜ」

友「お前の方は彼女は出来ないんか?」

店員「……まあな」

友「あ、悪い。聞いちゃいけなかったな」

店員「かまわんよ」

友「あれだ。楽しめよ」

店員「んなもん分かってる」

店長「じゃ、友くん。そろそろ……いいかな」

友「え、もうそんな時間でしたか」

店員「うわ、結構遅い時間だった」

友「じゃ、また来ます」

店長「うん、待っているよ」

友「男も、じゃな」

店員「おう、またな」

ガチャ

バタン

店長「じゃ、その食器片付けて」

店員「はい、分かりました」

ガチャ

店長「あ、すいません。今日はも……!」

店員「どうしたんですか」

店長「……失礼しました。どうぞ」

店員「え、もう時間ですけど」

店長「いいのいいの!じゃ、接客よろしく!」

店員「は、はぁ」





42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:53:16.64 ID:bVIOi4aS0

店員「いらっしゃ…………」

女「…………」

店員「え」

女「…………フフ」

店員「な、なんでここに」



元店員「久しぶりだな、少年」



男「ひ、あ、お久しぶり、です」






43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:54:48.10 ID:bVIOi4aS0

男「えっ、超大手企業じゃないですか」

元店員「まあ、そうだな」

男「へぇー、すごいところによく就職できましたね」

元店員「少年の方は、どうなんだ?」

男「あ、そうでしたそうでした。ちょっと待っててください」

元店員「…………フフ」

店長「やぁ、久しぶりだね」

元店員「お久しぶりです。店長さん」

店長「彼、ずっと待ってたんだ。約束を守るためにね」

元店員「約束、ね。忘れてました」

店長「嘘だろう。君は楽しみな顔をしている」

元店員「う…………」

店長「やっぱり、君には彼がお似合いだ」





44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:56:22.50 ID:bVIOi4aS0

男「あった!」

元店員「何だ?」

男「前に言いましたよね?受かったらどこへでも行ってやる、って」

元店員「懐かしいな」

男「はい、合格証明書です」

元店員「……そうか、受かったのか」

男「なので約束通り、一緒にどっか行きましょう」

元店員「フフ、ああ、いいぞ。少年と一緒なら、楽しそうだ」

男「まだ場所は決めてないですけど、夏休みくらいに」

元店員「海外はダメだからな」

男「もちろんです」

元店員「楽しみだな」

男「ええ、楽しみです」

元店員「さて、ではコーヒーをもらおうかな」

男「分かりました。コーヒーですね」

元店員「む、少年が淹れるのか?」

男「はい、店長に許可もらいました」

元店員「私は結局許可貰えなかったな」

男「お、僕の方が一歩前ですね」

元店員「そうだな」





45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 22:58:49.89 ID:bVIOi4aS0

男「髪、切ったんですね」

元店員「ああ、ちょっと前にな」

男「どっちも似合いますよ」

元店員「おや、ありがとう」

男「前の方が可愛かったですけど」

元店員「それは聞き捨てならん」

男「冗談です。今も可愛いですよ」

元店員「っ……少年もやるようになったな」//

男「お、やっぱり赤くなってる」

元店員「くぅ……」//

男「やっぱ僕、あなたのことが好きです」

元店員「あ、あぅ……あ、ありがとう」////

男「あなたは、どうですか?」

元店員「……す、好き、だ」////

男「あ、すいません、聞こえなかったんで、もう一回いいですか?」

元店員「……卑怯者だ、少年は」//

男「で、どうなんです?」

元店員「……す、あぅ、す、好きです……っ」////

男「……ありがとうございます!」

元店員「あー、もう」////





46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 23:00:26.74 ID:bVIOi4aS0

男「あ、コーヒーできたみたいです」

元店員「少年のコーヒーを飲むのは初めてだが……不味くないか?」

男「酷いですね、ちゃんと店長に認められた味です」

元店員「うむ、ならばいい」

男「あ、今、前と立場逆ですね」

元店員「フフ、そうだな」





47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 23:02:14.76 ID:bVIOi4aS0

―――― 店員「見ない顔だな。少年は今日が初めてか?」


あの日から、僕は変わった。

いや、変われた。

誰かとの出逢いは、それほどまでに人生に関わる。

これからは、大事にしていこう。

そう、思った。





48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 23:03:21.13 ID:bVIOi4aS0



店員「はい、コーヒーです」



女「ありがとう」












49: 1 2014/07/29(火) 23:05:09.57 ID:bVIOi4aS0


自分の拙いSSを見て頂きありがとうございます。

これから、頑張っていこうと思います。

ありがとうございました。




54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/07/29(火) 23:44:17.44 ID:mrIy6pMGo

おもしろかった





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