勇者「ボランティア……?」 戦士「ああ」
- 1 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:00:53 ID:fVRHDIJPg
- ここはよくある剣と魔法のファンタジー世界
物語は島国、エンパイア帝国から始まる
――退魔連盟
魔法使い「修練を終えて、今日から正式に君は退魔連盟の一員になったわけですが」
魔法使い「まあ、引き続き私が君の上司として指導をしていくんで。これからもよろしく」
勇者「はーい。よろしくお願いします」
魔法使い「さて、では最初に、もう一度退魔師としての心構えを確認しておこうか」
魔法使い「我々の使命は帝国内の魔物を討伐することであるわけだけど、その際に最も重要となることは何かな?」
勇者「はい、それは隠密性です。一般人は魔物の存在を知らないため、秘密裏に始末することが重要となります」
魔法使い「よろしい。まあ、とは言っても政府もマスコミも抑えているから、そこまで神経質になることはないけどね」
魔法使い「あまり派手にやり過ぎるなってことだね」
勇者「了解です」
勇者「……で、魔法使いさん。今日は何をすれば?」
魔法使い「うーん、正直仕事が入らない間は暇なんだよね」 - 2 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:02:06 ID:fVRHDIJPg
- 魔法使い「大抵は修行したりダラダラしたりしてるんだけど、初日からそれはちょっとアレだしなあ」
魔法使い「パトロールでもする?」
勇者「なんか、随分と緩いですね」
魔法使い「うちはお役所じゃなくて古くから続く秘密組織みたいなもんだからねえ」
魔法使い「今は魔王軍もあまり騒がないよう魔物を統制してるから戦闘もそれほど無いし」
勇者「平和ですねえ」
魔法使い「この国は世界でも格別に魔物や魔力を持った人間が生まれやすいから、数百年前までは結構激しく戦ってたらしいけどさ」
魔法使い「今ではお隣のフェデレ連邦に比べれば天国ってくらい安定してるよ」
勇者「ああ。内戦状態なんでしたっけ、隣」
魔法使い「そうみたいだねー。連盟の中にも海渡って連邦に行った奴がいたよ。ボランティアするとか言って」
勇者「へえ。それはまた結構なことですね」 - 3 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:03:25 ID:fVRHDIJPg
- 魔法使い「あ、そうだ。君のお父さんも連盟の人だよね。お父さんも勇者?」
勇者「いえ、父は戦闘系じゃないので隠滅部門のマスコミ対策室に勤めてます」
魔法使い「あー、そっちか。隠滅部門の方はあんまり知り合いいないんだよねー」
魔法使い「連盟の人間は代々魔力を持つ家系出身者が大半だから、狭い世界ではあるんだけど、ほとんど関わらない部門もあるからなー」
ピーッピーッ
魔法使い「あ、通信だ。喜べ新人君、仕事が入ったっぽいよ」
勇者「はあ」
魔法使い「もしもし……はい。はい……え、マジですか? はい、はい……わかりました」ピッ
魔法使い「なんか城門前広場で魔物が通行人を食べ荒らしたんだって」
勇者「うわ、酷いですねそれは……珍しいんですか、こういうことは」
魔法使い「人食いの魔物自体は結構いるんだけど、こんなに派手に暴れ回る奴は珍しいねー」
魔法使い「もしかしたら、最近魔物に変化した元人間かも。滅多にないケースだけど」
勇者「なるほど」
魔法使い「とりあえず現場に向かおうか。新参なら魔力の跡もバンバン残してそうだし、楽に討伐できると思うよ」
勇者「はい」 - 5 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:07:07 ID:fVRHDIJPg
- ――裏路地
魔物「へへ……へっへっへっへ。人間がこんなに旨いとはなあ」
魔物「目が覚めたら牙と爪が生えてた時はどうしようかと思ったが、こんな楽しい思いが出来るなんてな」
魔物「この力があればマフィアなんて目じゃねえし、警察どころか軍だって怖かねえ!」
魔物「これからあの偉ぶったボスをぶっ殺して、俺が新たなボスになってやる!」
「おい」
魔物「あ?」
ガンッ
魔物「ガハッ……!?」ドガッ
魔物(な、何だ……殴られた!?)
魔物(殴られただけで何でこんなに痛いんだよ……さっきは剣で斬られてもほぼノーダメージだったんだぞ!?)
魔物「な、何なんだテメェらッ!!」 - 6 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:08:53 ID:fVRHDIJPg
- 「我々は魔王軍の者だ」
魔導士「私は魔導士で、いま君を殴ったこの男はゴーレム」
摩導士「乱暴してすまなかったね。彼はどうも粗暴でいけない」
ゴーレム「ふん」
魔物「ま、魔王軍……? 何、言ってやがる……?」
魔導士「ああ。やはり新参、か」
魔導士「つまりだね、君のような存在は君が考えているよりも遥かに大勢存在していて、独自の組織も作っているということだよ。それが魔王軍だ」
魔物「お、俺の同類ってことか……? 人間にしか見えねえぞ……?」
魔導士「姿を人間に変える魔法があるんだよ」
魔導士「ところで、だ。あまり時間がないから本題に入ろう」
魔導士「我々魔王軍は世情の混乱を望まない。人間社会を活用しつつ、出来るだけ快適に魔物が暮らせるようにするのが我々の目的だ」
魔導士「だから、君のように無軌道に暴れ回られると非常に困るんだよ」
魔導士「魔力の無い者に我々を傷つけることは出来んが、中には魔力を持って我々を殺せる人間達もいる」
魔導士「このような騒ぎが頻発すれば、彼らが大規模な魔物狩りに動き出しかねない」
魔導士「君一人の身勝手が、魔物全体の迷惑となるわけだ……理解してくれたかね?」
魔物「…………」 - 9 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:14:16 ID:fVRHDIJPg
- 魔物(……ち、畜生! この力を持ってんのは俺だけかと思ったのに!)
魔物(俺が新参者だと!? しかも、俺たちを狩る人間がいる? 冗談じゃねえぞ!)
魔導士「それで、どうするかね。我々と共に来るかい?」
魔物「なに?」
魔導士「魔王軍に加われば食うには困らないし、人間社会に溶け込む術も得られる」
魔導士「一人が良いというならそれも自由だ。大きな騒ぎを起こさない限り、我々は干渉しない」
魔物「……お、俺は人間だったときマフィアの下っ端だったんだ」
魔物「せっかくこんな力を手に入れたってのに、また下っ端になるなんてごめんだ! 俺は1人でやる!」
魔導士「……まあ好きにしたまえ。ただし、今度また同じような騒ぎを起こした時は、人間だけでなく我々からも狙われることになるぞ」
魔物「チッ」ダダッ
ゴーレム「……ありゃダメだな。気配を隠すことすら出来てねえ。すぐに連盟に見つかって殺されるぞ」
ゴーレム「今ここで殺っときゃ良かったんじゃないか」
魔導士「人間が殺すというのなら奴らにさせれば良い。一応は同胞なんだ、わざわざ我々の手を汚すこともないさ」 - 10 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:18:26 ID:fVRHDIJPg
- 魔物(クソが! せっかくすげえ力を手に入れたってのに、どうしてこう上手くいかねえんだ俺の人生は!)
魔物(だが、これからどうする……人間を食うにしても、派手な動きをすれば殺されちまう)
魔物(夜中に路地裏にでも潜んで地道に狩るか?)
魔物「! そうだ!」
魔物(売春させる為の不法移民共を匿う組織のアジトがあったはずだ!)
魔物(不法移民なら消えたところで発覚もし難い。見張りの連中も今の俺なら簡単に皆殺しにできる)
魔物(ククク、冴えてるぜ! 見張りも移民共もまとめて腹一杯食ってやる!)
――マフィアの縄張り
魔物(入り口には見張り、か。確か女共は二階にいたな)
魔物(ここは窓から侵入するか。騒いでりゃどうせ見張りが上がってくるから、死体を中に入れる手間が省ける)
魔物(楽しみだぜ。剣を持っただけで強くなったと勘違いした馬鹿共に、本当の強さってもんを教えてやるのがなあ) - 13 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:20:15 ID:fVRHDIJPg
- シュタッ
チンピラ「ん?」
魔物「よお」ニヤニヤ
チンピラ「あ? 誰だお前……」
ヒュンッ
チンピラ「ぎッ!」ブシュッ
魔物「くっくっく。爪で引っ掻いただけで一撃かよ」
ガチャ
三下「どうかしたか……ヒッ!?」
魔物「おいおい、どうした? マフィアのくせに死体にビビってんのかよ?」
三下「う、ああ……て、テメェ! 何しやがった!?」ダッ
キンッ
三下「は!?」
魔物「そんなナマクラで俺を殺せるとでも思ったのかァ?」
三下「ひ……ひいい……」 - 14 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:20:57 ID:fVRHDIJPg
- 「何事だ?」
『不明です。二階で騒ぎがあったようで見張りが中に入っていきました』
『おそらく、移民が反抗したか、構成員同士の喧嘩でも起きたのではないかと』
「……混乱に乗じる好機、か。よし」
「連中は既に剣を抜いているかもしれん。抵抗するようならば迷わず殺して構わんが、女共には被害が出ないよう気をつけろ」
『了解』 - 15 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:25:04 ID:fVRHDIJPg
- 魔物「さーて、ゴミ共の掃除はこんなもんか」
魔物「女どもの部屋はこっちかな?」
『突入!』
魔物「ん?」
バンッ!
魔物「なっ!?」
隊長「動くな! 移民管理局、だ……!?」
隊員A「ま、マフィア共が、死んで……!?」
隊員B「ば、化け物ッ!!」
隊長「貴様!! 何者だ!?」チャキッ
魔物「い、移民管理局だと……」
魔物(よりにもよって今日、強制捜査なんて……クソッ、ついてなさ過ぎだろ!)
魔物「クソがああああ!!」ググググッ
隊長「く、来るぞ! かかれっ! 殺せェ!!」
隊員A「ああああああ!!」ダダダ
ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ
隊員A「」ドサッ
隊員B「」ガクンッ
隊長「……は」ガクガクガク
魔物「移民管理局だろうが何だろうが、俺様の前では雑魚なんだ……」
魔物「ここまで来て腹も満たさず逃げてたまるかァッ!」 - 16 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:27:05 ID:fVRHDIJPg
- 隊員C「た、隊長……」
隊長(ぶ、部下の半分を一瞬で……な、何だこの化け物は……どうすれば、どうすれば良い)
ピリリリッ
隊長(!! 通信! しかも、これは撤退の合図!)
隊長「撤退だ! 総員撤退せよ!!」ダダッ
魔物「あ?」
ダダダダダダダッ
魔物「……逃げやがった。まあ当然か」
魔物「だが、援軍を連れてくるに決まってる。とっとと食えるだけ食っておさらば……」
キイイイイ
魔物「……? 何の音だ」
キュンッ!
ピキ;ィンッ
魔物「ぎゃあああ!」ドガッ
魔物「な、何だ……急に衝撃が……!?」
魔物「……!? う、腕……腕が! 凍って……!?」
魔法使い「あらら。足を狙ったのに外しちゃった」
魔物「!?」
勇者「これが魔物なんですね。生きている奴は初めて見ます」 - 19 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:31:08 ID:fVRHDIJPg
- 魔物「……だ、だれ……誰だてめえら!? 俺の腕に何しやがった!?」
魔法使い「私たちは君を退治しに来た者で、それは氷雪魔法だよー」
魔法使い「まったく、大騒ぎにしてくれちゃってさ。隠滅部門は何日か徹夜だねこりゃ」
勇者「うちの父はもう中年なんで徹夜はキツそうだなあ」
魔物(ま、魔法……まさか、こいつらが魔王軍の言っていた……)
魔法使い「どうする? 念のため、足も凍らせとく?」
勇者「いえ、大丈夫だと思います」
魔法使い「そう? 怪我だけはしないでよね。危なそうだったら手出すよ?」
勇者「了解」チャキッ
魔物「……く、くそが」
魔物「舐めんじゃねえええこのボケが」
シュンッ
魔物「ああぁぁぁ……?」コロン
魔物(頭)「あ?」
勇者「やっぱり生命力強いんだな」ザクッ
魔物(頭)「ぎゅ」 - 21 :名無しさん@おーぷん 2014/07/31(木)11:32:46 ID:fVRHDIJPg
- 勇者「終わりました」
魔法使い「やるねー。接近戦なら私でも負けるかも」
勇者「はい。この距離なら魔法使いさんを殺せる自信があります」
魔法使い「そういうことは言わなコメント一覧
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- 2014年07月31日 21:15
- 面白い。まさかの展開やったわ
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- 2014年07月31日 21:30
- 某虐殺RPGのオマージュかと思ったけど全然違った
-
- 2014年07月31日 21:51
- フリーダムウォーズかと
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- 2014年07月31日 22:14
- レッツ貢献?
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- 2014年07月31日 22:18
- 戦士良い奴だと思ったのにめっちゃ基地外だった
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- 2014年07月31日 22:22
- 名前に退魔って入ってるとエロい事しか頭に浮かばない
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- 2014年07月31日 22:27
- 対魔だろそれは
退魔はありきたりな単語だから対魔忍にしてんだろうに間違えてやんなよ
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- 2014年07月31日 22:28
- 中々良かった。
-
- 2014年07月31日 22:34
- ※5
言ってること自体は間違ってない。部外者なのに国越えてまで追いかけてんのはどうかと思うが。
-
- 2014年07月31日 23:51
- 退魔も普通にry
-
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