噴火した北極圏の「ゴミ火山」
ゴミの分別って大事なんですね。
その火は、カナダの北極圏にあるゴミ処理場の地下で静かに燃えはじめました。そして5月に噴火し、炎と有毒ガスをイカルイト市にまき散らしたのです。フットボールのフィールドに匹敵する規模のゴミ火災に、市は220万ドル(約2億2千万円)をかけた鎮火を決定しました。そもそも、どうしてゴミ火災が発生したのでしょう? そして鎮火するのに何故ここまで高額な費用がかかるのでしょうか?
ゴミ火災は意外と頻繁に発生します。アメリカだけでも年間推定で8,300回起こると言われています。しかし、イカルイトが異常なのは火災規模と燃えている期間の長さ。消防長がゴミ処理場を火山にたとえて以降、dump(ゴミ)、とvolcano(火山)を足した造語「dumpcano」が誕生し、ツイッターでもアカウントができるほど広まってしまいました。
Toxins are not harmful after 70 meters. #Dumpcanoproverbs pic.twitter.com/GEuqNvHrGn
— Iqaluit #Dumpcano (@yfbdumpcano) 2014, 6月 11
もちろん、ゴミ火山は自然発生するものではありません。この規模に至るまでには運の悪さと稚拙な政策が絡んでいます。
ゴミ火山の誕生
イカルイトはゴミ火災が噴火した数少ない例の1つです。ここが運の悪さですね。突如発火する原因はいくつかあります。たとえば、生ゴミが腐って発熱する、バッテリのショート、火がくすぶっているゴミがうっかり捨てられる…などです。
しかしイカルイトのゴミ火災は12月以来4件目。運の悪さだけでは片付けられない何かがあるはずです。リポーターであり現地住人でもあるPeter WordenさんがViceに書いたところによると、それはゴミ処理の不徹底であることがうかがえます。2002年までイカルイトでは露天焼却を処理場で行っていたのですが、この方法に危機感を覚えた市民が市を訴えて止めさせました。これによって大気汚染は改善されたものの、ゴミは溜まるいっぽう。火災の燃料や発火の原因がどんどん積まれていくことになったのです。
Wordenさんによれば、イカルイトにここまでゴミが溜まるのはリサイクルがほぼ行われていないからだそうです。市があまりに離れた場所にあるため、リサイクル施設へ向かうと燃料費がかさんでしまうのです。そのため、ダンボールや布団、余ったペンキにバッテリ、生ゴミなどが処理場に捨てられ、現在炎をあげているわけです。
あるエンジニアは、「燃えやすいダンボールや木、紙などを分別し、クリーンに焼却することで火災の燃料を減らすのが最善」とViceで語っていましたが、今回の火には手遅れのようですね。
ゴミ火山の死
イカルイトの消防署は当初、「ゴミが燃え尽きるのを待つ」方針をとっていました。いつ崩れるかわからないゴミの山は消防士にとって危険なうえ、市にとって貴重な水資源を大量に使ってしまうからです。しかし、ご覧の通りこの作戦は失敗に終わりました。
現地時間先週の水曜日、ついに市議会は220万ドルの鎮火計画を承認しました。14人の消防士が1ヶ月間、1日あたり12時間作業して鎮火にあたります。力づくの策ですが、他のハイテクな手段よりも安上がりだったのです。
当初あげられていた策は、先述のものよりコストが2倍かかるうえ、無謀な挑戦のようでした。それは塩水のタンクを建設し、燃えているゴミをクレーンでひとつかみずつ水につけていくというものです。他にも泡や不活性ガスを使って酸素を奪う方法も模索されました。
1ヶ月におよぶマンパワー作戦でゴミ火山が鎮火するのを願うばかりです。
Sara Zhang - Gizmodo US[原文]
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