希「えりちがウチのことを好き?」
- 1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/08/19(火) 00:43:10.63 ID:2NHq3KGG0
希「……」
凛「希ちゃーん?」
花陽「ど、どうかしたの……?」
希「えっ?あ、なんでもないんよ、なんでも……」
ウチは慌ててやって来た下級生の二人に首を振った。
出来るだけ生徒会室の中を覗かせないようにしながら。
それに気付いているのか気付いていないのか、二人は心配そうな顔をしながらも「早く部室行くにゃー!」と
ウチの手を引いていく。
花陽「り、凛ちゃん!そんなに引っ張っちゃだめだよ」
凛「でも練習始まっちゃうよー」
希「ん、そやな。急がな」
ウチは答えると、大人しく凛ちゃんについていくことにした。
生徒会室の扉は、まだ開かれる様子はない。それを確認してからはもう振り返らなかった。振り返れなかった。
- 6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/19(火) 00:54:04.00 ID:2NHq3KGG0
◆
――あー、ほんまびっくりした。
えりちが、ウチのこと……。
そんなはずあるわけない、と思いながらもどうしたって考えてしまう。
だって、それくらいびっくりしてもうたんやもん。
希「……」
全て立ち聞きしたわけではない。
一部を聞いただけだ。だから間違いだったのかもしれない。しれないけども。
『さっさと告白しちゃいなさいよね』
『にこには言われたくないわよ……』
『うっ。にこは皆のアイドルだからぁ』
『好きなんでしょ』
『……あんただって、希のこと』
『……好きよ』
うう、思い出しただけで赤くなってきてもうた。
そもそもにこっちが生徒会室に来ていること自体が珍しいというのに、あんな会話をしているなんて想像つくはずもないし。
聞くつもりはなかった。なかったのに、扉に手をかけた瞬間聞こえてきたのだから仕方ない。
- 8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/19(火) 01:02:41.13 ID:2NHq3KGG0
海未「希?どうかしましたか?」
パンパンパンというリズムをとる手拍子の音がふっと消える。
どうやら穂乃果ちゃんたちの練習が終わったようだ。
希「いや、なんもあらへんよ」
海未「でもすごくぼーっとしてますよ」
希「こ、これはその、な……」
なんと誤魔化そうか。
考えるより先に、勝手に手は動いてウチは持っていたペットボトルを海未ちゃんに差し出した。
海未「えっ」
希「疲れたやろ?それでも飲んで休み」
海未「でもこれは……」
希「凛ちゃーん、真姫ちゃんも。次練習するよー」
逃げるように屋上の影に敷いていたシートから立ち上がると、海未ちゃんが困っている様子にも気付かない振りをして
ウチは凛ちゃんたちの名前を呼ぶ。
はーいという声が返ってきて、「ほな、がんばろか」と少し遠くで音楽を聴いていた真姫ちゃんを連れて日向へと出ていこうとした。
その時、屋上の扉が開いた。
それと海未ちゃんが「あの、これっ」と声を上げたのは同時。
- 9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/19(火) 01:12:23.02 ID:2NHq3KGG0
希「うん?」
海未「これ、希のものじゃ――」
海未ちゃんはさっきウチが渡したペットボトルを指して言う。
開いた扉から入ってきたにこっち――と、もう一人、えりちの体がぴくりと固まったのが見えた気がした。
希「えっ、そうやったっけ?」
海未「希、やはり今日は少し変じゃ」
希「そんなことないって!あ、にこっち、えりちっ」
あ、しもた。
今のとこは「ウチの希パワーがばっちり海未ちゃんに行き渡るんよ?」なんてふざけるところやったやろか。
でもそんな余裕もなくて、しかも思わずいつものように扉の前の二人に声をかけてしまった。
今はえりちとちゃんと目を合わせられる気すらしないというのに。
穂乃果「絵里ちゃん、生徒会のお仕事お疲れ様ー!」
絵里「あ、えぇ」
ことり「にこちゃんはなにしてたの?」
にこ「絵里の仕事手伝ってたのよ」
花陽「えっ、にこちゃんが?」
凛「そんなのにこちゃんじゃないにゃー……」
にこ「ちょっと、なによその反応!」
あ……。
えりちが一瞬こちらを見て、すぐにそのあと話しかけた穂乃果ちゃんたちのほうを向いてしまった。
海未「……希?」
真姫「なに?どうしたの?」
海未「あっ、希が」
希「ええの。ほら真姫ちゃん、練習するよ」
- 11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/19(火) 01:24:16.82 ID:2NHq3KGG0
真姫「ちょっと」
音楽を聴き終えたらしい真姫ちゃんが会話に参加してくると、ウチはいよいよ話がこじれないよう(ウチのせいなんやけど)真姫ちゃんの手を引いて屋上の広い場所へ。
ウチのグループと、今さっき練習していたグループが交代するように、穂乃果ちゃんたちがこちらへ向かってくる。
その中にえりちもいて、すれ違いざま、ウチは思い切ってえりちに声をかけてみた。
希「あっ、えりち。えっと、お仕事お疲れ様。今日は手伝えなくてごめんな」
絵里「希。いいわよ。今日はにこも珍しく手伝ってくれたから」
にこ「絵里までなによ!あえて珍しくっていうのを強調する必要はないでしょ!」
牙をむくにこっちに、えりちが少し笑って。
ウチはいつもと同じえりちの様子に少し安心した。
あー緊張した……。
えりちと話すのなんて当たり前のはずやのに。
えりちがウチのことを好きかもしれない。
そう思うと、やっぱりウチだって気になってしまう。緊張だって、してしまう。
しばらくこんな状態が続くのかもしれない、と思うとなんとなく気が重くなった。
- 13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/19(火) 01:35:08.62 ID:2NHq3KGG0
◆
μ'sの練習を終えて、皆で帰り支度を済ませて帰路につく。
いつもの流れ。
皆でわいわいと話しながら歩いている時間が、ウチはとても好き。
その中に混じっていられる嬉しさを、いつだって噛み締めている。
けれど今日はその嬉しさは半分で、少し前を歩くえりちのことばかりを目で追いかけていた。
時折えりちがこちらを向いて目が合うのはやっぱりウチのことを好きやから?なんて考えてしまう自分自身に赤面してしまったり、時々振られてくる会話なんかまともに聞いていられるはずもなく、散々だ。
海未ちゃんには「やはり何かあったのですか?」と心配されてしまうし。
絵里「なに?希、どういうこと?」
希「えっ、どういうことって別に。なーんもあらへんよ?」
えりちが目ざとくウチと海未ちゃんの会話に入ってきた。
ウチはドキリとしてしまって、慌ててそう答えた。海未ちゃんが何か言いたげな顔をするのをなんとか引きとどめて、ようやく分かれ道。
いつもは早いと思うのも、今日ばかりはとてもありがたかった。
神様に感謝したい気分だ。
一人、また一人と人数が減っていく。
でも、そこでウチは気付く。
ここからはえりちと二人だけになるのだと。
- 14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/19(火) 01:43:21.48 ID:2NHq3KGG0
絵里「希、ほんとに大丈夫なの?」
えりちと一緒に穂乃果ちゃんたちを見送ってから歩き始めると、心配げなえりちがウチの顔を覗き込んできた。
綺麗なえりちの顔が思わず近くにあって、ウチはどうしたらいいのかわからなくなった。
希「大丈夫やからっ」
ぱっと顔をそらす。
今のえりちはきっと不思議そうな顔をしてウチを見ているはず。
けれど、そっとえりちのほうを見てみるとまた少し、胸の奥が疼くような感覚を覚えた。
希「あの、えりち。ほんまに、大丈夫やし」
バツが悪くなって、ウチは言葉を付け足した。
不思議そうな顔。思ってたとおりの顔をしていたえりちだけど、その表情はどこか悲しそうで。
それは、ほんの少しの違い、だと思うけども。
三年間もえりちと一緒にいるのだから、わからないわけはなかった。
それとも単純にウチがえりちのことを気にしすぎてるから――?
うぅ、やっぱりわからへん……。
頭を抱えなくなったけども、それでもえりちが「そっか」と笑ってくれてウチは明らかにほっとしていた。
- 16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/19(火) 01:49:43.28 ID:2NHq3KGG0
絵里「希はなんでも一人で抱え込んじゃうから」
希「えりちには言われたくないわあ」
絵里「なによ。私は大丈夫――」
希「意地っ張り」
絵里「どっちがよ」
同じペースで歩く。そして、いつものような会話が続いた。
なんや、大丈夫やん。なにも意識しなければ。
……なにも、意識しなければ。
ずっと、緊張しているわけにはいかない。
ずっと今日のようなままじゃ、えりちだって辛いだろう。
かといってえりちに「ウチのこと好きってどういうこと?」なんて聞くわけにもいかないし。
気にしなければいい。
それにモテモテの我らが生徒会長、絢瀬絵里がウチなんかのことを好きなはずないのだ。
やっぱりなにかの間違いやった。そうに決まってる。
希「うん、それが正しいんよ」
カードで確かめなくたってそれがきっと正解なのだ。
絵里「えっ、なに?」
希「なーんでも?あ、えりち。なんか食べにいこ」
絵里「なんか食べに行こうって、今から?」
希「たまにはええやん」
絵里「いいけど……」
困ったようなえりちの表情は可愛い。
えりちは、こんなに可愛いのだから。
手が触れた。差し伸べた手を、えりちが控えめに握ってきたから。
その温かさに、少しだけ心が弾んだ。
- 22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/19(火) 02:07:45.31 ID:2NHq3KGG0
―――――
――――― ――
にこ『……で?』
希「うん?」
にこ『話を振ってきたのは希なんだから、さっさと答えなさいよ』
希「なにを?」
にこ『わかってるでしょ!絵里のことどう思ってるか!』
電話の向こうのにこっちの大声に思わず携帯を耳から離し、右手に持っていたそれを左手に持ち替えた。
ウチは今、にこっちに今日あの話を聞いてしまったことを話していたのだ。
あのときあの場にいたにこっちに話すのはどうかと思ったが、こんな話ができるのはにこっちだけだとも思った。
自分の中できちんと整理をつけたかった。
希「そりゃ、えりちはウチの大事な大事な親友よ』
にこ『……なんとも感じないの?』
希「……なんとも感じないって、そもそもウチら女同士なんよ?」
ぽつりと溢れ出た言葉。
にこっちが電話の向こうではあっと息を吸い込んだのがわかった。
怒鳴られるやろうか。ふとそう思ったけども、いつまでたってもにこっちの大声は聞こえてこない。
希「それに、やっぱりえりちがウチのこと好いてくれとるんは、なにかの間違いやと思うんよ」
にこ『そんなわけないでしょ』
希「ううん。今日その、すき、って……答えたのも、別に大した意味やなかったんちゃう?」
にこ『そこで照れないでよ』
希「なんでバレたん……」
にこっちからの返答はない。
ウチは一旦咳払いをすると続けた。
希「……ともかく、ウチはそう思ってる」
にこ『……だったらいちいち私に連絡してこなくても良かったんじゃないの?』
希「うーん、勝手に聞いちゃってたんやし、懺悔みたいなもんやと思っといて」
- 27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/19(火) 02:18:35.70 ID:2NHq3KGG0
懺悔ねぇ。
にこっちがどこか呆れたような声をしてつぶやいたのが聞こえた。
部屋の時計はそろそろ0時を回ろうとしていた。
希「ほなそろそろ」
にこ『あ、ちょっと待ちなさいよ』
希「どうしたん?」
にこ『絵里もだけど、あんたも相当面倒くさいわよね、希』
希「……褒めてるん?」
にこ『自分で考えなさい
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