P「障がい者アイドル星井美希……?」
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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:15:10.84 ID:WqmxEtvG0
俺は765プロの新人プロデューサー。
ここ、765プロは普通のアイドル養成機関ではない。
障がい者専門のアイドル養成機関なのだ。
今、俺が担当しているのは星井美希という女の子だ。
この子は、脳の障害のせいで精神遅滞を起こしているのである。
美希「ぷろでゅーさー。ミキねー、おりがみでおはなつくったのー」
P「そうかそうか、良く出来たなー」
美希「えへへー」
精神遅滞といっても、会話はできるし判断力もある。
中~軽度の障害なのだと社長から貰った紙に書いてあった。
障がい者に関してはある程度本を読んだが、不安はまだまだ沢山ある。
これから上手くやっていけるのだろうか……。
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:16:26.15 ID:WqmxEtvG0
小鳥「ほら美希ちゃん、ダンスのレッスン行きましょうねー」
美希「わかったのー! ダンス♪ダンス♪」
P「それじゃ送っていきますね」
小鳥「はーい。いってらっしゃい」
イッテキマース
小鳥「ふう……さて、机の上片付けなくっちゃね。紙が散乱しまくりだわ」
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:18:50.81 ID:WqmxEtvG0
ダンスレッスン場
P「美希、今日は新しいダンスやってみようか」
美希「……」
P「ん? どうしたんだ? 不安そうな顔して」
美希「やだ」
P「え?」
美希「やだやだやだやだやだー!!」
新しいことに挑戦しようとするといつもこうである。
おそらく、新しいこと、今までと違うことが不安なのだろう。
ものの本では、知的障がい者達は決められたことが変化することに耐えられないという。
例えば、一日のスケジュールを決めたがそれが何かの拍子に狂ってしまった場合、
知的障がい者は多大なストレスを感じてしまうそうだ。
まあ、健常者だって同じなのだが。
障がい者は、そういうことのストレスへの耐性が弱い。
だから、反復する。同じことをすれば、不安はないはずだから。
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:20:54.90 ID:WqmxEtvG0
美希の場合もそうなのだろう。
いままで反復して、安心したところで、変化が訪れる。
だから嫌がる。執拗に今までと同じことをやろうとする。
だが、そのままではいけないのだ。
美希には才能がある。
その美貌のさることながら、ダンスの覚えの速さである。
歌は正直ダメだが、ダンスと外見でカバーできる。
普通のアイドルではどれもこなさなくてはならないが、765プロのアイドルならば話は別だ。
全てを平均的にこなすのでは健常者と変わらない。
いや、障がい者が健常者と同じことをできる時点で話題性は狙えるだろう。
だが、それでは決してトップアイドルにはなれない。
健常者の真似事ではダメなのだ。
その上を行かなくてはならないのだ。
P「ほら美希、足遅れてるぞ」
美希「ううううううううううう」
トレーナー「きゅ、休憩にしましょうか」
P「わかりました。ほら美希、ジュース飲むか?」
美希「うん!」
トレーナー「あの、プロデューサーさん、ちょっと」
P「? はい。ちょっと行ってくるな、美希」
美希「♪♪」ズズズー
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:24:58.17 ID:WqmxEtvG0
P「なんでしょうか?」
トレーナー「プレデューサーさん、少し美希ちゃんに厳しすぎじゃないですか?」
P「そうですかね? トップアイドルになるには……」
トレーナー「たしかにトップアイドル云々も大切ですが、美希ちゃんの負担が増すと色々と……」
P「大丈夫ですよ。そこらへんはしっかりと俺が管理してますから」
トレーナー「そうですか……」
若干不服そうだったが、なんとか納得してもらい休憩は終了した。
P「さぁ、練習再開だぞ! 美希!」
美希「はーい☆」
それに美希はダンスが好きなようだし、大丈夫だろう。
その日のダンスレッスンは無事に終わった。
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:29:35.41 ID:WqmxEtvG0
数日後
P「美希! 小鳥さん! 仕事だ! 小さいけど仕事が入ったぞ!」
美希「♪~♪~」カキカキ
小鳥「本当に! すごいじゃないですか!」
P「ほら美希! キラキラできるんだぞ! 美希!」
美希「! ほんとっ、ミキ、キラキラできるの?」
P「そうだぞ! やったな!」
美希「わぁーい!!」
小躍りする俺達三人。
異様な光景に見えるだろうが、これが俺達の精一杯の感動を表している。
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:33:59.61 ID:WqmxEtvG0
P「それじゃあ早速ダンスレッスンだ! 行くぞ!」
美希「れっすんはいちじかんあとだよ?」
P「そんなこと言ってる場合じゃないだろ。さあ行くぞ!」
美希「やー、いやー!」
P「わがまま言ってるんじゃない!」
小鳥「プロデューサーさん、落ち着いてください」
P「しかし……」
美希「ううううううううううううう」
小鳥「美希ちゃんも落ち着いてねー、大丈夫だからねー」
P「……」
確かに、少し興奮してしまったかもしれない。
反省反省。
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:38:16.05 ID:WqmxEtvG0
P「じゃ、行こうか!」
小鳥「全然反省してないじゃないですかー! 落ち着いてくださいっ!」
こいつっ、俺の心の中を……っ!
それより確かに俺は落ち着いてないようだ。
初仕事が入って舞い上がってるんだろう。
落ち着け落ち着け……。
そんな感じで俺が落ち着くまでに一時間を要した。
しかし、いままではレッスンの時間も遊ぶ時間も帰宅時間も一定にさせることが出来たが、これからはそうは行かないだろう。
仕事が入ってくると、時間が変わる。
果たして美希にそれが耐えられるのだろうか。
不安が過ぎる。
そしてそれは的中した。
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:42:14.74 ID:WqmxEtvG0
美希「ううううううううううううううううううううううううううう」
P「大丈夫か? 本当に大丈夫か??」
美希「だいじょうぶ」
P「本当だな? 本当に大丈夫だな??」
美希「うん」
P「お腹抑えてるけど大丈夫だな?」
美希「うん」
P「顔真っ青だけど大丈夫だな?」
美希「うん」
P「体を揺らしてるけど大丈夫だな?」
美希「うん」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:46:27.50 ID:WqmxEtvG0
P「トイレ大丈夫じゃないだろ?」
美希「うん」
P「じゃ、行ってこーい! 早く! 素早く!」
美希「うん!」
P「小鳥さん付き添いお願いします!」
小鳥「アイアイサー」ピヨピヨ
走り去っていく美希と小鳥さん。
人手不足の765プロでは小鳥さんにも色々と手伝って貰っている。
主にうちのアイドル達の下のお世話をしてもらっている。
俺が女子トイレに入るのはヤバイからな。
そんなこんなで時間が経つ。
美希が帰ってこない。
俺は女子トイレの外に立った。
この絵面は多少ヤバイがそれどころではない。
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:51:38.76 ID:WqmxEtvG0
P「小鳥さん? 美希まだ出れませんか?」
ドア越しに小鳥さんに話しかける。
小鳥「それが、美希ちゃんお腹の調子が頗る悪いみたいでして……」
P「ええええええ! 美希? 大丈夫なのか!?」
美希「うううううううううううううう」
P「大丈夫じゃないっぽい!?」
色んな意味で大丈夫じゃないよ! 仕事始まっちゃうよ!
小鳥「それが美希ちゃん。お腹下してるみたいで」
P「え、それじゃステージ立てないじゃないですか!」
原因は!? 悪いもの食ったか!
P「まさか、昼飯の梅干おにぎりが!?」
小鳥「え? おにぎりがなんですか?」
P「いや、適当に言っただけです。なんでもありません」
それに昼食は俺も同じ食事したし、恐らく違うだろう。
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:55:33.52 ID:WqmxEtvG0
小鳥「そ、そうですか……」ナンダカヨクワカラナイ
小鳥「とにかく、今日のミニライブどうしましょう」
P「取り敢えず出番を後に回してもら……」
小鳥「美希ちゃん前座ですよね?」
P「」
どうすりゃええっちゅうねーん!!
P「美希ー! 大丈夫かー!!」ドンドンドン
美希「ううううううううううう。だいじょうぶ」
P「本当だな? 本当に大丈夫だな?」
美希「うん」
小鳥「大丈夫なの!? 美希ちゃん!?」
美希「うん」
P「……不安は残るが、致し方ない。美希! 早くトイレから出てきてくれ、準備するから!」
美希「うん!」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 19:58:54.02 ID:WqmxEtvG0
初めての仕事はどうにか無事に終わった。
今日のお客さんは美希に惚れてしまったようで、ファンレターが大幅に増えた。
仕事もだんだんと増え、美希は軌道に乗り始めた。
それと同時に問題も浮き彫りになっていったのだが。
P「ストレス性かー……」
美希は仕事の直前になると、必ずと言っていいほど腹を下す。
医師に罹った結果、原因は過剰なストレスだと判明した。
過剰な、ストレスか。
美希はキラキラしている今を楽しんでいる。
変化する日常に戸惑いながらも、輝いている。
だが、このままでは美希は身体を壊してしまうかもしれない。
ただでさえ、ダンスは水分と体力を消費する。
このままでいいのだろうか……。
P「いつ仕事中に暴発するかも心配なんだよなぁ……」
いまのところそれはないが、奇跡はいつまでも続かないだろう。
もっと仕事が増えたときはどうなる。想像したくない。
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:04:37.01 ID:WqmxEtvG0
P「美希に、このままアイドルを続けさせていいのだろうか」
結局そういう結論に至ってしまう。
美希の為を思うなら、アイドルは止めさせたほうがいいのだろう。
……いや、これは俺のためだ。会社のためだ。
美希のスキャンダル、失敗によって会社や俺の権威が落ちるのを恐れているのだ。
自分勝手なんだよな、大人ってさ。
美希「プロデューサー、ミキねー、ツルさんおったのー! みてみてー」
P「そうか」ナデナデ
美希「えへへー」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:07:18.23 ID:WqmxEtvG0
美希「ミキねー、ぷろでゅーさーや、ことりや、しゃちょうがだいすきなの!」
P「……そうか」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:11:32.79 ID:WqmxEtvG0
決めた。
俺は美希を引退させる。
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:14:47.53 ID:WqmxEtvG0
色々と理由はあった。
だが一番の理由は、美希が体を壊したら、彼女は今までのように笑えなくなってしまうだろうから。
彼女の純粋な笑顔を、守りたい。
社長や小鳥さんには美希がストレスにより身体を壊す可能性を説き、納得してもらえた。
彼らも美希のことを一番に考えてくれている。
問題は美希だ。
美希は、今の状況を楽しんでいる。
キラキラ輝いている今を、喜んでいる。
どう説得したものか……。
P「ほら美希、ちゃんと手をつないで帰ろうな」
美希「うん!」
美希と手を繋ぎ、スタジオから事務所に歩いて帰る。
俺は美希にどう引退のことを切り出そうか迷っていた。
意識が美希に向いていなかった。
それがいけなかった。
美希「あ、ねこさんだ~」
俺の手が緩んでいたのだろう。
美希と手が離れた。
美希「ねこさんねこさん~♪」
美希が道路へ向かう。
その瞬間車が。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:19:10.44 ID:WqmxEtvG0
P「美希危ない!」
美希を道路から突き飛ばす。
視線が回る。
衝撃
痛み
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:22:09.61 ID:WqmxEtvG0
小鳥「なに無茶してんですかぁー!」
小鳥さんに叱られた。
俺は美希を助けるため、身代わりになり車に轢かれたのだ。
幸い骨折だけで命に別状はない。
小鳥さんには意識が戻った瞬間叱られた。
そういえば美希の姿が見えない。
P「ほんとにすいませんでした。美希の具合はどうですか」
小鳥「まぁったくもう! 美希ちゃんは大丈夫ですよ。怪我も擦り傷程度です」
P「よかったぁ……」
小鳥「良くないですよ!」
P「すいません」
小鳥「まったく。これから大変ですよ、プロデューサーさん」
P「え?」
そんなことを話していると、病室のドアが開く。
社長と美希が入ってきた。
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:24:58.86 ID:WqmxEtvG0
社長「具合はどうかね?」
P「はい、大丈夫です。この忙しい時にすいませんでした」
社長「いや、仕方がないさ。それより早く元気になって、仕事場に復帰してくれ」
P「はい……」
美希は珍しくさっきから黙ったままだ。
いつもは甘えてくるのに。
P「どうしたんだ、美希? 具合悪いのか?」
美希「……ごめんなさい」
P「え?」
美希「あのね、ミキね、ぷろでゅーさーさんに、いけないことしちゃったなって。ごめんなさい」
驚いた。
美希がたどたどしくも謝ってきたのだ。
P「謝らなくていいよ。たまたま運が悪かっただけだ」
俺が美希としっかり手を繋いでいなかったのが悪い。
美希は、悪くないよ。
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:27:59.24 ID:WqmxEtvG0
美希「う、う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛
う゛わ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
P「ど、どうしたんだ! 美希!」
美希が泣きながら抱きついてくる。
美希「よ゛がっだあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! はにーいなくて寂しかったぁぁぁぁぁぁ!」
P「は、ハニー?」
美希「う゛ん゛」
なんでも、俺が意識を失っている間、小鳥さんは美希を元気づけようと読んだ本がたまたまお姫様を助ける王子様の話しだったという。
そのおかげで、俺は美希の王子様になったのだとか。
それで、はにーらしい。
小鳥さんなぜその本をチョイスしたし。
小鳥「ふふふ、プロデューサーさん、実はいいニュースがあるんですよっ」
P「? なんですか?」
小鳥「それはですね……」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:31:50.00 ID:WqmxEtvG0
数箇月後
P「それじゃ、仕事行っていきます!」
美希「いってきます!」
小鳥「はい、いってらっしゃーい」
美希は腹を下さなくなった。
俺が休んでいる間に、腹を下す頻度も減っていたらしい。
今では大勢の人前に出ることに関して、特に心配は無くなった。
引退の話しはもちろん帳消しだ。
今では障がい者アイドルのトップ直前で頑張っている。
P「今日もテレビ出演あるが、大丈夫か?」
美希「はにーがいてくれたらー、ミキだいじょうだよ!」
P「そうか、それは良かった」
いつも通り美希はベタベタと俺にくっついてくる。
それが最近は愛おしく感じる。
トップアイドルへの道は困難だけれど、俺たちならきっと越えられる。
健常者を抜きさり、その先へ。
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:32:48.38 ID:WqmxEtvG0
美希「ミキねー、はにーのことだいすきなの!」
P「俺も大好きだよ。美希」
美希「えへへー」
END
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:40:33.30 ID:sSiuKfTE0
乙
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:50:32.47 ID:Ijc1OYUT0
乙
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/10(火) 20:59:45.17 ID:iRmaCX470
乙
こんな美希も可愛い
でも普通な美希もみたいなーと思いました
こんな美希も可愛い
でも普通な美希もみたいなーと思いました
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●ちなつ「あかりちゃんキスの練習しよ?」