無色透明な太陽電池が実現間近: 米大学が透明LSCの開発に成功
ミシガン州立大学のRichard Lunt氏らはこのたび、集光型太陽電池の透明化に大きく寄与する、無色シースルータイプの集光器(Solar Concentrator)を開発したと発表しました。
集光型太陽電池は、文字通り太陽電池の発電部に向けて太陽光を集中的に集めることにより、従来のものよりも効率的に発電を行うことを可能とする太陽光発電の方式です。
この集光型は、レンズ構造を利用して虫眼鏡のように発電部に光を集束させる方式と、色素膜や量子ドットなどを用いて特定波長の光を効率的に選別する方式とに大別されますが、今回の研究でターゲットにしているのは後者になります。
この方式では、発光型集光器(Luminescent Solar Concentrator, LSC)というものを用いることで、太陽光に含まれる様々な波長の光を太陽電池が発電しやすい波長の光に変換し、発電効率を高めようというものです(以下図)。
▼LSCの模式図。波長変換された太陽光は、導波構造によって側面の発電部に到達する。
(画像引用元: University of Central Florida)
▼実際のLSCの構造。表面の赤い部分が色素層で、側面に貼り付けられている茶色い部分が電極(発電するところ)。
(画像引用元: Wikipedia)
これまでのLSCでは、波長変換のために色のついた材料を用いていましたが、Lunt氏らは今回、可視光がほぼ完全に透過(=見た目が透明)する一方で、近赤外領域の光を補集することができる材料を開発することに成功。現在の波長変換効率は1%程度であるものの、今後最適化を進めることで最大5%にまで向上させることができる見込みであるとしています(従来の有色LSCの効率は7%程度)。
また、現在は研究の初期段階とのことですが、すでに商用・工業規模への応用を見据えた低コスト化の目処は立っている(※)とのこと。また、この材料は柔軟性を備えていることから、将来的にはビルの壁面(ガラス窓の表面)や携帯端末などでこの技術を利用することが可能になるだろう、としています。
▼例えば、ガラス窓の表面に視界を遮ることなく太陽電池を敷き詰めることも可能になるかも。
実際にユニット化させてみた状態での発電能力が気になるところですが、いずれにしても、今後の展開が楽しみな技術と言えそうですね。
2014/8/21 13:11 追記
本技術に関して、特許がすでに取得されていました。請求項の上の方を見る限りでは、有機物フィルムにハロゲン化金属の微粒子を練り込んでいる感じでしょうか。
Transparent Luminescent Solar Concentrators For Integrated Solar Windows (Google Patents)
[Advanced Optical Materials via Sciencedaily]
(※)LSC単体でのコストかユニット全体でのコストかは判りませんが、(残念ながら)文脈的には恐らく前者かと思われます。
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著者
企業の研究所でR&D業務に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。Techinityはソース明示のポイントを抑えた解説を、Cul-Onはちょっとした小ネタ紹介的な内容にしていければと思っております。
スマホにつけよう
スマートウォッチにつけよう
クルマにつけよう
近赤外線か
紫外線を変換できるようになれば窓ガラスとして最高になりそうだけど、難しいかな
全太陽光エネルギー中の紫外光の割合は、赤外光の数分の一だから
あまり旨味がないだろうね