藤原「今日はお前たちにはシュテルンビルトを守るヒーローとして働いてもらうで」【前編】の続きです。
先にこちらをお読みください。
浜田「お前な、こんなでかい会社のビルやで? 誰もいなくなるなんてありえへんやろ」
山崎「ほんまに、ひとっこひとりいないんですって!」
(ピッ)
松本「? おい、見てみ。テレビ、勝手についたで」
田中「……どこ映してるんでしょうね?……暗くてよう見えへんわ……日付と時間が下に出てますねぇ……これ、今日の……! 今ですよ!」
遠藤「なんか、めっちゃはよ動いてるのが……ふたつ……?! これ!」
松本「あれ? さっきの奴らやん」
田中「オリガミサイクロンとロックバイソンですよ!」
浜田「なにしてんねんこいつら」
田中「どう見ても……戦ってますよね……ヒーロー同士で」
松本「ケンカか?」
山崎「それにしては、激しすぎるような……」
遠藤「!? この場所、このビルの屋上ちがいますか?!」
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松本「なんでそんなんわかんねん?」
遠藤「あれです! ちょっと見えにくいですけど、あれ、菅さんの像が挙げてる手ですよ!」
浜田「ほんまやな、両手グーのガッツポーズやわ。手だけ見えとんな」
田中「確かに、あんなふざけた像はここだけですよね……」
松本「いや、それはええねんけどさ、なんでさっきまであんな仲良かったヒーロー達がここの屋上で本気でケンカしてんねん」
山崎「ロックバイソンはドリルガンガン使ってるし……オリガミサイクロンなんか刀抜いてますもんね」
遠藤「なんでやろ……暴走、とかかな?」
松本「ネクストって、暴走したりするんか?」
田中「そんなん、聞いたことないですけどね……」
山崎「でも、実際あのふたり、本気でやりあってたみたいやで」
浜田「とりあえず、止めといた方がええんかな?」
遠藤「いやでも……ネクスト同士の戦いに割って入るなんて」
浜田「危ないけど、ほっとく訳にはいかんやろ。あんなええ奴らがお互いにやり合うなんて、絶対なんかがおかしいわ。まぁ俺らのスーツの防御力は高いみたいやしな。おら、行くで!」
遠藤「(キィィィン)ちょっと待ってくださいよ! なんかおかしいですって! スタッフ全員消えるってだけでおかしいのに、このタイミングでケンカを映すモニターが動くなんて」
浜田「…………まぁお前が考えてることはなんとなくわかるで」
遠藤「…………」
山崎「絶対誰かが仕組んでるよな……」
田中「ふたりにケンカさせて、僕らに止めに入らせる……ヘタしたら死にますよね……」
浜田「誰かが仕組んだ罠かなんか知らんけど、ほっとかれへんやろ!」
松本「はぁ、ほな行こか」
(ガチャ……ゾロゾロ)
遠藤「……」
浜田「なんや、まだ考えてんのかいな」
遠藤「……いやだって、変ですよ。スタッフがいなくなったことと、あのふたりの戦闘、偶然とは思えないんです」
松本「まぁめっちゃええ方に考えたら、ドッキリやろな」
田中「スタッフの指示がない場合、どんな風に動くかを見るってことですか?」
山崎「ヒーローとしての適性を問う、みたいなコーナーですかね?」
遠藤「確かに……それなら辻褄は合うんです……ガキのスタッフもアポロンメディアの社員も仕掛け人で……ほかのヒーローが割って入らない……これが企画で、知らんのが僕らだけやったら、辻褄は合うんです……でも、なんか引っかかるんですよ!」
浜田「…………とにかく行くで。行ったらなんかわかるわ。死なんようにだけ気いつけとこ」
遠藤「…………はい」
(……ゥゥウーン)
松本「誰もおらんのに、エレベーターは動くんやな」
(ゥゥウーン……チンッ)
松本「屋上階に着いたな……お! あっこから外出れるんちゃうか?」
田中「行きましょう!」
(ダダダダダッ……ガチャ)
山崎「……こ、これ」
浜田「なんやねん……ここだけ……戦争でも起きたんかいな」
遠藤「あちこち穴だらけですよ……これが、ヒーロー同士の戦いですか……」
田中「! あそこ!」
(ドォォォォォォンッ…………ガギィィィィィーンッ)
松本「もー! めっちゃ戦ってる音してるやん!」
浜田「だから来たんやろ! はよ行くぞ!」
(ダダダダダッ)
(ガィィィンッ……ギィィンッ……ガッ……)
バイソン「(ギリギリッ)やるじゃねぇかオリガミ! へへ、トボけた顔してやがるが、実は一番実力を隠してたの、知ってんだぜ……」
オリガミ「(ギリギリッ)くっ……あなたこそ……ヒーローいちの装甲は伊達じゃありませんね……」
(バッ!……スタッ)
バイソン「死ねぇぇぇぇぇ!(ダダダダダッ)」
オリガミ「破ァァァァァァ!(ダダダダダッ)」
(ドォォォォォォンッ)
遠藤「……うそやん」
山崎「どうしたん?」
遠藤「(キィィィン)いや、ふたりが戦ってんのは、誰かにはめられたと思ってたんです……例えば、記憶や認識を操作する能力を持ったネクストなら、それができる……あるいは、何らかの形で脅されてやらされてるとも、考えました……でも」
浜田「どっちもちゃうよな……明らかに、お互いを仲間と認識した上で、自分の意思で本気で殺し合ってる……」
遠藤「そうなんですよ……こんなん、ありえへん」
バイソン「ハァ……ハァ……へへ、どうした? もう手詰まりか? 刀も手裏剣も、刃物の類は俺には効かないぜ」
オリガミ「くっ……拙者の武器では……」
バイソン「……仲間のよしみだ……おとなしくしてりゃあ、苦しまねえように殺してやるよ」
オリガミ「!(バッ……スタッ)」
バイソン「最後まで、あがくか……」
オリガミ「忍法! 斬殺大手裏剣!!(バシュゥゥゥンッ……ギュルルルルルルルッ)」
バイソン「効かねえとはわかってても……背中の大手裏剣投げるしか、手は残ってねえよな……」
オリガミ「拙者の大手裏剣に! 切れないものはござらん!」
(ギュルルルルルルルッ)
バイソン「へへ、いいぜ、受けて立ってやる!(ザッ)」
(ギュルルルルルルルッ)
オリガミ「逝けぇぇぇぇぇぇぇ!」
バイソン「ここだぁっ!」
(ガキィィィンッ…)
バイソン「ふんっ……?! な?!」
(ドォンッ! ドォンッ! ドドドドォンッ! ドォォォォォォンッ)
田中「?! 手裏剣が!」
松本「爆発したで……」
バイソン「ぐっ……は……てめぇ……やりやがったな……」
オリガミ「忍法……爆殺影手裏剣でござるよ」
松本「え? なに? どないしたんや?」
遠藤「多分……大手裏剣を投げるのと同時に、爆薬を仕込んだ手裏剣をいくつも投げてたんです……大手裏剣の陰になって、相手からは見えないように……」
山崎「でも、斬殺とか、切れないものはないとか」
浜田「だから……それもフェイクやったんや……大手裏剣に注意を向けさす為のな」
バイソン「くっ……いまさら爆薬ごときで……?! なんだ……立てねえ……」
オリガミ「ハァ……ハァ……ヒーロースーツや、皮膚の硬化による高い防御力……刃物ではあなたに傷をつけることはできません……でも、爆発による脳震盪は、どんな装甲でも防げません……」
バイソン「てめえ……これを狙って……へへ……やられたな……てめえの作戦勝ちだよ(ピッ……シュコッ)」
山崎「! マスク取ったで!」
オリガミ「潔し……(スラッ)せめて幕引きは……華々しく……」
バイソン「……ありがとよ」
松本「ほんまに殺すんかいな!」
オリガミ「お命……頂戴!」
浜田「ええかげんにせえよお前らこらぁぁぁぁぁぁ!!(バシィィィィィィンッバシィィィィィィンッ)」
オリガミ「あだ!」
バイソン「いてっ!」
遠藤「(タタタタタッ)浜田さん! 危なすぎますよ」
山崎「遠藤! お前まで近づくなって!」
松本「お前ほんま、勢いでどつくんやめえw」
田中「とりあえず、おふたりとも、もう戦うんはやめてください! どんな理由があるのかは知り」
バイソン「まぁそりゃ、やめるけどなぁ?」
オリガミ「ええ、戦う理由はないですからね」
山崎「は?」
松本「いやいやいや、え? なにそれ?」
バイソン「いや、だから、もう戦う気はないんすよ」
浜田「…………ほんなら、なんでおたくら殺し合いしとったんや」
オリガミ「…………それはちょっとわかりません……なにかこう、しなければいけなくなったとしか」
遠藤「戦ってた時のことは覚えてるんですか?」
バイソン「ああ、はっきり覚えてるよ、俺はオリガミを殺すつもりだった」
オリガミ「僕もです……」
浜田「いったいなんやっちゅうねん」
遠藤「どういうことや……はっきりした意識を持ちながら、普通なら絶対にしないことを」
(ピッ)
遠藤「?……なんの音すかね?」
山崎「あそこ! モニターついてるで!」
浜田「考える暇なしかいな……今度はなんやねん」
(ゾロゾロ)
松本「……またや」
田中「これ、ワイルドタイガーとバーナビーと、スカイハイまで!」
バイソン「なにやってんだこいつら」
浜田「殺し合いや……おたくらがさっきまでやってたことや」
遠藤「今度は……2対1みたいですね」
松本「ほんまやな、そんでもスカイハイが押してるようにも見えるな」
田中「いや、ワイルドタイガーとバーナビーのふたりはまだ能力発動させてませんよ……温存してるんやと思います」
浜田「ていうか、ここどこや」
オリガミ「ここは……第4シミュレーションルームです」
遠藤「シミュレーションルーム?」
バイソン「ああ、犯罪者確保のシミュレーションをするトレーニングルームだよ、かなり頑丈なつくりになってる。見てみな、ドームになってる壁に4って書いてるだろ? 40階にはこれしかないんだ」
オリガミ「止めに行きましょう!」
浜田「そやな、ほんなら行こか」
バイソン「え? あんたたちも行くのか?」
遠藤「おふたりが浜田さんのツッコミで正気に戻ったってことは、このふたりも何らかの能力で操られてると思います……だから僕らが行かんと」
松本「だいたい自分らもうほとんど戦えへんやろ」
オリガミ「だからって、民間人にそんな危険なことさせられません!」
バイソン「だいたいあんたら、ヒーローの前に芸人だろ!」
浜田「前は芸人かもしらんけど、今はヒーローや。企画とはいえ、仕事として引き受けた以上は、な」
遠藤「ポーリー捕まえたポイントももらっちゃいましたしね」
松本「まぁ、ついて来るだけついといでや、歩くぐらいできるやろ?」
オリガミ「ッ……そうですね、ここで待ってるわけにはいきませんし」
遠藤「…………浜田さんのツッコミで正気に戻るってことは、遠隔操作の能力なんやろうけど、なんかおかしい……お互いを敵と認識させるでもなく……しかも今回はワイルドタイガーとバーナビーには協力させてる……そんな複雑な操作させるには、何か条件がないとおかしいけど……」
山崎「遠藤、行くで、寒いし」
(ゾロゾロ……ガチャ……バタン……)
……ヒュゥゥゥゥ……
???「ヒーロー同士の潰し合い……あのときとは少し、違うようだが……」
(ゥゥウーン……チンッ)
バイソン「着いたな」
オリガミ「この先の、あの扉の向こうがシミュレーションルームです……」
浜田「ほな行こか」
(ゾロゾロ……ウィィーン)
遠藤「!」
(ドォォォォォォォン! ヒュンッ! ガガガガッ! ガッ! ガッ! シュゥゥゥン……ドシュッ! ドォォォォォォォン!)
山崎「もー! さっきの比じゃないですよ!」
松本「なんかもうえげつないな。笑けてくるわ」
バーナビー「ハァァァァ!(ガゴッ!)」
スカイハイ「くっ……スカァァァァァイ(シュゥゥゥン)ハイッハハァァァァァイッ(ドォォォォォォォン!ドォォォォォォォン!ドォォォォォォォン!)」
タイガー「いって! クッソ……ちょこまかと……ワイヤーでふんじばってやる! (ドシュンッ!)」
スカイハイ「甘いッ! 爆風障壁!(バヒュゥゥゥゥンッ!)」
タイガー「だぁー! んだよクソッ!」
バーナビー「……前キングオブヒーローというだけありますね」
松本「……これもう……割って入るん無理やろ」
オリガミ「3人中2人が先代と現役のキングオブヒーローですからね……」
バーナビー「? あれは? ガキのメンバーと……」
松本「お、こっち気づいたで」
タイガー「ちっ……殺さなきゃいけないやつらがまた増えたじゃねーか」
田中「!?」
浜田「やっぱりあいつらも操られとんなぁ」
スカイハイ「(スタッ!)皆殺し! そして、皆殺し!」
松本「ンフフフフw全然爽やかちゃうなwww」
山崎「めっちゃ怖いわぁ!」
タイガー「ま、やるっきゃねぇな」
バーナビー「ちょっと待って下さい! 全員を殺すことには賛成ですが、僕は乱闘は好みじゃありません」
タイガー「んじゃどーすんだよ?」
バーナビー「キースさんはずいぶん乗り気のようですから、キースさんが彼らと戦って、勝った方が僕らと戦う、というふうにしてはどうですか?」
スカイハイ「なるほど、私と戦うにしても、消耗させてから、というわけだな!」
バーナビー「…………今、なんて?」
スカイハイ「ハハハッ! 気にするな! 君の相手は後でする! 今は君の提案通りにしようじゃないか!」
バーナビー「待って下さい……やはり逆にします。彼らは僕が殺します。キースさんはこの下の、第3シミュレーションルームで待っていて下さい」
タイガー「んぁー! もー! ムキになんじゃねーよ! バニーちゃん!」
スカイハイ「私は構わなぞ。まぁ、彼らとの戦いが、私に負けた時の言い訳になるかどうかは分からないがね」
バーナビー「…………」
スカイハイ「ワイルドタイガー、君はどうするんだ?」
タイガー「あー、まぁ、相棒だからな、一緒にあいつらの相手するさ」
スカイハイ「なるほど……それじあ、私はひと足お先に、第3シミュレーションルームで待っているよ」(スタスタスタ……)
バイソン「おい! お前ら! なにやってんだ! ヒーロー同士で殺し合いとかバカやってんじゃねーよ!」
タイガー「うるせーよ! お前も殺すんだから黙ってろ!」
オリガミ「?! ……なんで?」
遠藤「……ロックバイソンさん、あの3人の口ぶりって、普段通りですか?」
バイソン「ん? ああ、殺すなんて冗談でも言う奴らじゃないがな、口ぶり自体はあんなもんだ」
オリガミ「クールに見えて頭に血がのぼりやすいバーナビーさん、お気楽に見えて仲間思いのワイルドタイガーさん、悪気なく人をイラつかせるスカイハイさん……紛れもなく、いつも通りの彼らですよ。いつもと違うのは……」
遠藤「……そこに明確な殺意があるだけ、ですよね?」
バイソン「……そんなとこだ」
バーナビー「それじゃあ、行きますよ……(ダッ!)」
タイガー「いきなりかよ!(ダッ!)」
田中「! 来ますよ!」
バーナビー「ハァァァァッ!(ビュンッ)」
浜田「あぶな!(バッ)」
バーナビー「?! 避けた?」
タイガー「オラァァァァ!(ブンッ)て、あれ?」
遠藤「おっわぁ! めっちゃ危なかったー!」
バーナビー「ならこっちから!(ダッ!……バババババッ!)……また?」
松本「あっぶなぁ……何発蹴ろうとしてんねん! 死ぬわ!」
タイガー「デェェェェイ!(ブンッ!)って、こいつもかよ!」
山崎「もー! ほんま怖いわぁ!」
田中「芸人やっててよかったですねぇ、反射神経鍛えられてますもんね」
オリガミ「す、すごい……」
バイソン「げ、芸人って、すげえんだな……」
バーナビー「くっ! あと少しなのに、当たらない!」
タイガー「なぁ、もうこのへんで能力使っちまってもいいんじゃねーか?」
バーナビー「……そうですね(キィィィィン)」
タイガー「……(キィィィィン)」
田中「! やばいですよ! ちゃんと避けてくだブッ……うそやん……(バタッ)」
バーナビー「……まずひとり」
山崎「田中!」
遠藤「今の動き、見えました?」
浜田「いや、あかんわ」
松本「どうすんねん、こんなん」
オリガミ「とにかく! 1分は避けることに専念して下さい! タイガーさんの能力が切れればなんとか切り抜けグッ……ハ(バタッ)」
バイソン「グッ……てめぇ……(バタッ)」
タイガー「……1分もかからねえよ」
山崎「オリガミさん! バイソンさん!」
バーナビー「……(ダッ!……ガガガガガッ!)」
松本「いたたたたたっ!(ドォォォーンッ……ガラガラ)いったいわぁー!」
バーナビー「?!」
タイガー「オラァッ!(ゴッ!)」
浜田「(ドォォォーンッ……ムクッ)いっ! ったいのおー!」
タイガー「あれ? なんだよ、手加減してねぇぞ」
バーナビー「あのスーツの性能は、本物のようですね」
遠藤「よかった、ふたりとも無事みたいやな……露出してる頭さえ守ってれば1分はもちそ(ゴッ)……うそやん(バタッ)」
バーナビー「あなたは露出してる部分が多すぎです」
山崎「遠藤! くっそー!」
バーナビー「次はあなたですか?」
タイガー「おい! バニー! 時間ねぇんだ、ダウンタウンのふたりから片付けるぞ! そっちのヘタレは、俺達の能力が切れてもどうとでもなる!」
バーナビー「……そうですね」
(ガァァァンッ! ドォォォーンッ! ガガガガガッ! バキィッ!)
松本「ちょー! もー! ほんま痛い!」
浜田「我慢せぇ! ちゃんと頭守ってちょっとでも避けてるから痛いで済んでんねん!」
バーナビー「確かに……ヒーロースーツにあの反射神経は厄介ですね」
タイガー「んじゃ、各個撃破といくか?」
バーナビー「そうですね、残り20秒ちょっと……」
タイガー「(ダンッ!)」
バーナビー「(ダンッ!)」
松本「おわっ! あぶなかったぁぶっ!……(バタッ)」
山崎「え? 今の……」
浜田「……時間差で来よったんや……1人目を避けるルートを狙って2人目が動いてんのに、1人目の攻撃から次まで、ほんまに一瞬や……あのコンビネーション、反則やろ……」
山崎「……そんなん、どうしたらええんや……」
浜田「! 来るで!(バッ!……ガッ!ゴッ!……バタッ)」
山崎「……は、浜田さん……」
浜田「…………」
山崎「…………」
タイガー「残り10秒、なんとか間に合ったな……」
バーナビー「あとひとりですし、久しぶりに、あれ、やりませんか?」
タイガー「いいねぇ! あの挟み撃ちだろ? 時間もちょうどいいし、最後は派手にいくか! んじゃ、いったん距離を置いてから、突撃だな」
山崎「……兄さんも後輩もやられて……俺は……なにしてんねん……」
バーナビー「(バッ……スタッ)」
山崎「浜田さんは……田中がポーリーに刺されたとき……ちゃんと助けた……」
タイガー「(バッ……スタッ)」
山崎「遠藤も……屋上で浜田さんがツッコミに飛び出したとき……すぐにフォローに駆けつけた……」
バーナビー「(ダンッ!ー『Good-Luck MODE』)」
山崎「……俺は……」
タイガー「(ダンッ!ー『Good-Luck MODE』)」
山崎「俺は……俺はッ!」
バーナビー「ハァァァァァッ!」
タイガー「オラァァァァッ!」
山崎「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ! やっぱ怖いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
山崎「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!(キィィィィン……)」
バーナビー「(ブンッ!)」
タイガー「(ブンッ!)」
山崎「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!(キィィィィン…………ツルンッ!)」
バーナビー「?!」
タイガー「?!」
(ッッッズガァァァァァァァァァァァァァァーンッ……………………)
……………………
バイソン「……つっ……んんっ……あ、あれ? どうなってんだこれ……おい! オリガミ! 起きろよ!」
オリガミ「ん……?! え、これ……」
バイソン「とにかく、みんなの息を確認するぞ」
オリガミ「え、ええ」
山崎「……はっ!」
松本「あ、起きたで」
山崎「え? みんな、あれ? 大丈夫なんですか?」
浜田「山ちゃんやるやん!」
田中「あ、ワイルドタイガーとバーナビーさんは気絶してる間に浜田さんがちゃんとツッコんどいてくれましたから、もう大丈夫ですよ」
バーナビー「すみません……多大な迷惑をかけてしまいましたね……」
タイガー「いやほんとすんません! ヒーローともあろう者が、民間人を手にかけるなんて……」
遠藤「いや、もうええですよ、あちこち痛いですけど、みんな生きてますしね」
田中「邦正さんほんまにすごいですね! バーナビーさんから聞きましたよ、まさかあんな倒し方するなんて!」
山崎「え? いや、ほんま、なにそれ?」
バーナビー「フッ……完全にやられましたよ……あの場で山崎さん自身の摩擦係数を0にすることで、挟み撃ちから逃れるだけでなく、僕らにも同士討ちをさせた……」
タイガー「俺らの最高のコンビネーションが、完全に逆手にとられたよな」
オリガミ「掴もうと強く握れば握るほどすり抜けるウナギみたいなものですね」
バイソン「まさに神業だな……少しでも怯んで逃げたりしてたら、成功してないぜ」
松本「やるときはやるねんなぁ」
田中「ほんま、頼りになりますよね!」
山崎「……まぁええか」
浜田「ほんなら次は……第3シミュレーションルームやな」
バーナビー「ええ! 早く行きましょう! ……っぐ」
バイソン「無茶すんな、お互い渾身の一撃が直撃だったんだ……まぁ、俺らも歩くぐらいしかできないけどな」
(ゾロゾロ……)
タイガー「しかしいったい誰が俺らを操ってたんだ? そもそも、目的はなんなんだ?」
バーナビー「ヒーロー全員を操るという条件を満たすには、あのパーティー会場しかない……僕や虎徹さんが感知できなかった薬品を使ったとしたら……でもそれだと、同じくパーティーに出ていたガキの皆さんが操られていないことが、説明できない」
遠藤「ビル内に誰もいないってことは、やっぱりあのパーティー会場で全社員が操られることになったってことですもんね」
オリガミ「それにしても、どんな目的で僕たちを操ったにせよ、ガキのメンバーだけを操らない理由がない……特に浜田さんの能力は、操っている方からすれば、厄介なはずです」
松本「実際、操作を解除できてるしな」
田中「操作条件か……僕らだけが満たさなかった条件が……ある?」
バーナビー「あるいはあなた方だけが満たした解除条件がある……」
田中「あ!!」
山崎「どうしたん?」
田中「もしかして、僕ら浜田さんからツッコまれてません? パーティーの後、控え室で」
バーナビー「ほんとですか?」
松本「おお! ほんまやな!」
オリガミ「そうなんですか? じゃあやっぱり、あのパーティーの時に何か仕掛けられたというわけですね。そこでガキのメンバーを含む全員が操られる条件を満たした……しかしガキのメンバーは浜田さんのツッコミによって操作を解除された」
遠藤「(キィィィィン)いやいやでも、それやと浜田さん自身が操られてないことを説明できませんよ。浜田さんだってパーティーに出てた以上、操られる条件を満たしてるはずです」
浜田「ほんまやな、誰が黒幕か知らんけど、操ってる奴が一番されたくないのは、それを解除されることやもんな。もし俺を操れるなら、まずツッコむことをさせへんよな」
山崎「浜田さんは自分をツッコんでないですもんね」
タイガー「だぁぁー! 結局分からずじまいかよ!」
(ゾロゾロ……ピタ)
遠藤「ここですね、ま、とにかく、ほんなら行きましょか」
オリガミ「黒幕の正体や目的が何にせよ、スカイハイさんは止めなきゃいけませんしね」
松本「スカイハイってやっぱ強いんやろな」
バイソン「あぁ、スカイハイもそうだが、俺たち4人と、他の4人は能力の質が違うんだ」
田中「質?」
オリガミ「僕たちの能力は擬態、皮膚硬化、身体強化……でも、スカイハイ、ファイヤーエンブレム、ブルーローズ、ドラゴンキッドの能力は自然の力を使います。エネルギーが桁違いなんです」
松本「ロギア系みたいなことやな」
バーナビー「そんなとこです」
浜田「まぁでも、止めなあかんねんから、行くで」
バーナビー「浜田さんはくれぐれも気をつけてください……満身創痍の僕たちにとって、あなたが切り札なんですから」
タイガー「ツッコミさえすれば一発逆転だもんな」
浜田「気をつけろ言うても、あいつの攻撃めちゃくちゃやろ」
バイソン「盾くらいにはなりますよ! んじゃ行くか!」
(ウィーン)
スカイハイ「……よく来たな! そして、よく来たな!……バーナビー君、彼らを殺してから来ると言っておきながら、なんとも頼りないことだ!」
浜田「相手にせんでええで、なに言うても通じへんねんから」
バーナビー「……ええ、でも、僕たちも、あんなことを言ってたんですね、普段なら絶対に言わないことを」
浜田「かまへん、ツッコんだらそれでしまいや」
スカイハイ「ハハハッ! そうはいかないぞ、ワイルドツッコミ! 第4シミュレーションルームでの一部始終は記録用カメラからの映像で見たからね!」
遠藤「! あ、僕らもその映像で屋上とかに駆けつけたんですもんね、各所にカメラがあんのか」
スカイハイ「私はこの様に(シュウゥゥゥゥン)君たちの手の届かない空中から攻撃させてもらう!摩擦係数だかなんだか知らんが、私には通用しない! ツッコむこともできまい!」
松本「うわっ! せこ!」
バイソン「全然ヒーローらしくねぇな」
スカイハイ「なんとでも言いたまえ! それでは改めて……皆殺し! そして、皆殺し!」
オリガミ「! 来ますよ!」
スカイハイ「スカァァァァイ……(シュウゥゥゥゥン……)ハァァァイッ!(ドォォォォォォンッ!)」
田中「……いっ……たたたた……みんな無事ですか?」
山崎「もー! めっちゃ痛いわー!」
松本「直撃したら痛いじゃ済まんぞ!」
スカイハイ「まだまだ行くぞ! スカァァァァイ……(シュウゥゥゥゥン……)」
オリガミ「来ますよ!」
スカイハイ「ハイッハイッハイハハァァァイッ!(ズドドドドドドォォォォォォンッ!……ガラガラガラ……)」
浜田「ったぁ……ほんまめちゃめちゃやな……って、おい!お前なにしてんねん!」
バイソン「……へへ、盾になるって言ったでしょーよ……(グラッ……ドサッ)」
オリガミ「痛ゥッ……バイソンさん! クソ!」
スカイハイ「スカァァァァイ……(シュウゥゥゥゥン……)」
松本「?! またや! あいつが溜めるたんびに吸い込まれそうになんの、なんやねん?」
バーナビー「彼は風を操るネクストなんです、風を集めてそれを弾にして、着弾による衝撃と爆風で攻撃しているんです。……風、というか空気が一箇所に集まると、こうなるんですよ。しかも厄介なことに、空気は使ってもなくなりませんから、何度でも使い放題です」
田中「そうか、風を操るって、つまり空気の流れを操るってことやもんな」
遠藤「(キィィィィン)…………空気の、爆弾……」
スカイハイ「ハァァァイッ!(ドォォォォォォンッ!)」
オリガミ「! 遠藤さん!(ドォォォォンッ)グッ……ハッ……」
遠藤「?! オリガミさん!」
尻シバキさんが入れない状況だな……
まだ、だれも笑ってないなw
オリガミ「…………」
浜田「ボケっとすんな! 気ぃ抜いたら死ぬぞ! ていうか身代わりになったオリガミが死にそうやんけ!」
遠藤「すんません! でも、今、なんか引っかかって」
浜田「考えんのはあとにせえ! 攻撃力高いうえに、あんな高いところやとこっちの攻撃は届かんねんぞ!」
タイガー「……ワイヤー飛ばしても風の壁で弾かれちまうしな」
山崎「攻撃が来るってわかってて、防がん奴もおらんもんな」
遠藤「……あ!」
松本「ん?」
遠藤「あ、いや、その……勝てそうです」
浜田「ほんまか? どうすんねん!」
遠藤「えーと、じゃあ……」
スカイハイ「? 作戦会議かね? なにかするつもりのようだな。ならば待とう! 死ぬならば! 死力を尽くしたその後で!」
……………………
浜田「(ザッ)」
スカイハイ「……準備ができたようだね……どのように僕にツッコむのか興味があるが、手加減はしないよ! 風が私とともにある限り、私は決して負けない!」
浜田「ええからはよせえ、風なんかなんぼ集めても所詮風や。そんなもんで殺せるんやったらやってみぃ。こっちこそなんぼでも待ったるわ」
スカイハイ「! ほっ、ほほぉぉぉぉ……それはそれは大きく出たね、ワイルドツッコミ! いいだろう! 私の風の威力! 思い知るがいい!」
バーナビー「珍しく怒ってますね」
タイガー「分かりやすい奴には分かりやすい挑発が効くなぁ」
スカイハイ「行くぞ! スカァァァァイ……(シュウゥゥゥゥン……)」
田中「来ますよ!」
スカイハイ「まだまだまだまだぁ……(シュウゥゥゥゥン…… シュウゥゥゥゥン…… シュウゥゥゥゥン……)」
松本「おわ! すごい風や! また空気があいつんとこに集まっとるで!」
遠藤「松本さん! 今は集中してください!」
スカイハイ「まだまだまだまだまだまだまだまだぁ……(シュウゥゥゥゥン…… シュウゥゥゥゥン…… シュウゥゥゥゥン……)」
タイガー「おわっ! くッ、あいつ、この部屋の空気全部集める気かよ!」
バーナビー「よっぽど浜田さんの挑発が効いたんですね」
スカイハイ「(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…………)さぁ! 受けてみよ! 母なる風を愚弄せし小虫達よ! 風の偉大さにいだかれて……死ねぇぇぇ!」
遠藤「今です! 松本さん!」
松本「お前が…………死ねえェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」
スカイハイ「?!」
(ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ)
浜田「ハァ……起きろあほ(バシッ)」
スカイハイ「ッハ! 私は……負けたのか」
タイガー「ああ、松本さんの能力で、な」
バーナビー「僕たちも知りませんでしたよ……『口に入れたものを爆弾にする能力』なんて」
スカイハイ「爆弾……そうか、あの時、手元で起きた大きな爆発は……まさか、空気を?」
遠藤「松本さんにおもっきり深呼吸しまくってもらったんです。スカイハイさんには普通の攻撃は届かないし、届いても防がれますから」
山崎「空気なら、攻撃が届かなくてもそっちが勝手に引き寄せるし、細工しても見えませんしね」
スカイハイ「なるほど……浜田さんはそれで、あんなことを言ったのか……僕に本気で攻撃させるよう、それこそ部屋中の空気を集めるよう仕向けたわけだ」
浜田「まぁそんなとこや……でもな、おい、お前もうちょい爆発小さできへんかったんか? ヘタしたら全滅やぞ」
松本「そんなもんしゃあないやんけ! ショボい爆発やってみぃ? 二回目は絶対通用せえへんねんぞ!」
遠藤「まぁ、そうですね……でもここに来てみんなの能力めっちゃ役立ってますね!」
浜田「お前らはどやねん、田中の能力なんかどないもできんぞ」
松本「遠藤なんか能力が何かも分かってへんやんけ」
タイガー「あ、そうなの?」
遠藤「ええ、さっぱり。田中は『不快指数の操作』っていう、ちょっと不潔な能力です」
浜田「ンナハハハハハハwww」
松本「ンフフフフフwww」
田中「僕、ほんまに役に立ってないですよね。こんな能力やったら、この先、足引っ張るだけですよ……」
スカイハイ「くっ……そんなことは……ない!」
田中「? スカイハイさん……」
スカイハイ「私にも経験のあることだが……ネクストの能力というのは、表層的な事象にとらわれていてはその本質が見えなくなるんだ」
遠藤「表層?」
山崎「本質?」
スカイハイ「私は最初、自分の能力を『好きな方向に風を吹かせる能力』だと勘違いしていた……しかし、浮いたり、空気を一箇所に集めたり、カマイタチを起こしたりできることに気づいて、自分の能力の本質に気づいた……」
田中「空気の流れる方向や、流れ方を操ることができるってことですか?」
スカイハイ「そうだ! ワイルドタイガーだってそうだ。彼は元々『筋力を100倍にする能力』だと勘違いしていたが、筋力はもちろん、視覚、聴覚、嗅覚など、人間のあらゆる機能を100倍にする能力なんだと気づいたんだ」
田中「でも、不快指数を操るって、具体的にどういうことなんですかね?」
スカイハイ「ん……それは、分からないが、つまり空気中のだな」
(ピッ)
松本「なんや? ! あそこのモニターだけついたで!」
(ダダダダダダッ)
オリガミ「え?……これ……なんで?」
浜田「今度はまたえらい違う雰囲気やな」
田中「オリガミさんの話からしたら、これは……そうとうヤバいんと違います?」
松本「ロギア系3人揃っとるで……」
山崎「スカイハイひとりでめちゃめちゃやったのに……」
タイガー「それにしても、あの3人、なにやってんだ?」
バーナビー「なにもしてませんよ」
バイソン「そこが変なんだよ! なんで俺たちの時みたいに戦ってないんだよ!」
遠藤「操作してる奴の能力……相当複雑な操作ができるんでしょうね」
山崎「とにかく、行くしかないんですよね?」
バーナビー「ええ、あの場所はこのビルのエントランスホールです」
タイガー「ちょうどいいじゃねえか、あいつら正気に戻したら一旦ここから出よう」
遠藤「そうですね……」
(ゾロゾロ)
オリガミ「……ッたた」
松本「大丈夫かいな?」
スカイハイ「本当に、みんな満身創痍だな」
山崎「次の相手ってほんまにヤバいん違いますか? 一発でも食らったら全員即死ですよ」
バイソン「しかもそれが3人ときてる」
バーナビー「そうですね……なにか手を考えないと……」
タイガー「手っつってもよ、結局隙をついて浜田さんにツッコんでもらうしかねぇだろ」
バーナビー「ええ、ですから、そのツッコミまでどうやって隙を作るかってことですよ」
浜田「……なんや田中、まだ考え込んでんのか……」
田中「はぁ、だってほんまに役に立ってないから……不快指数の操作って、ようは湿度、つまり空気中の水分量を操作するってことですよね? それが一体なんの役に立つんですか?」
遠藤「(キィィィィン)ワイルドタイガーは……操作できるのは筋力だけやと勘違いしてた……」
バイソン「あいつらの攻略法だけどよ、ヒーロースーツがあれば多少のダメージには耐えられないか?」
バーナビー「特攻ですか? 相手がひとりならともかく、3人同時では、成功の可能性は低いでしょうね」
スカイハイ「それに浜田さん自身もかなり危険だ……ツッコむのは相手を無力化してからの方がいいだろう」
浜田「ワイルドタイガー、ねぇ……ほんなら田中の能力も……水分量の操作だけじゃないかもしれんなぁ……」
田中「水分量以外にも操作できるもんがあるかも……ってことですか?」
バイソン「ブルーローズの相手は虎徹がすりゃいいんじゃねえか? あいつはどうも虎徹が苦手らしいしな」
浜田「まぁその、空気中のなんか、
ってことやと思うけど」
バーナビー「おそらくダメですよ……僕たちはお互いに仲間と認識したまま殺し合いをしてたんです……ですからカリーナさんが虎徹さんに対してどれだけ、その、何と言うか、苦手意識を持っていても、今回は利用できません」
田中「空気なんか意識したことないですよ!」
松本「まぁ敏感に空気読むタイプでもないしな」
田中「………………フフッwww」
遠藤「ちょっと待ってください! とにかく今は、あの3人に対抗できる作戦を立てましょう! (キィィィィン)」
タイガー「そうだな」
遠藤「…………こんなん、どうすか?」
バーナビー「…………」
浜田「…………」
遠藤「…………やっぱり、あんまり良くはないですよね?」
浜田「いや、めっちゃええやろ」
バーナビー「ええ、初弾では相手の意表も突けるし、タネがバレても通用しますよ!」
オリガミ「遠藤さんってものすごく頭の良い方なんですね」
松本「まぁどっかでみたような戦法やけどな」
タイガー「それじゃあ、俺とスカイハイと松本さんがひとかたまりになって……」
バイソン「俺が盾になる、でいいか?」
浜田「大丈夫でっか? さっきもかなりダメージ受けてたでしょ」
バイソン「大丈夫ですよ! ほかのメンバーも撹乱してくれますからね!」
松本「なんか俺の負担がでかすぎへんか?」
浜田「我慢せえや! 攻撃力で言うたらお前が一番強いねんから!」
山崎「あの3人相手やったら、僕もできることあんまりないですしね」
(ゾロゾロ)
バーナビー「……このエレベーターで、エントランスホールまで行けます」
浜田「準備ええか? ほんなら、行くで」
(ゥゥウーン……チンッ)
ファイヤー「……遅かったわね」
キッド「……待ちくたびれちゃったよ」
ローズ「悪いけど、さっさと終わらせてもらうわよ。ここまでのことは映像で見てるから、あんた達の状況はほとんど分かってるわ」
浜田「……ほんなら、打ち合わせ通り頼むで」
遠藤「ええ」
タイガー「任せてください!」
ローズ「何かするつもりなの? 奇抜な能力を持ってることは知ってるけど、私たち3人揃ってることの意味が分からないの?」
ファイヤー「ヒーロー女子チームの全員を一度に相手にすることの怖さを教えてあげるわ」
ローズ「え、いや……女子チームって」
キッド「あ……ごめんね、僕がボーイッシュだから……」
ローズ「いや、違う、でも、うん、もういいわ」
バイソン「……やっぱり、いつもの感じだよな……」
タイガー「隙だらけだぜ! 先手必勝! 行くぜ!(ドシュンッ!)」
バーナビー「隙をつくならわざわざ言わないで下さい!」
ローズ「! ワイヤー!?」
ファイヤー「その距離から当たると思ってんの? 余裕で避けられるわよ!(スッ)」
キッド「?……何かある! ファイヤーエンブレム! ギリギリで避けないで!」
ファイヤー「?」
タイガー「今だぁ!」
松本「死ねェェェェェェ!」
(ドォォォォォォォォォンッ)
ファイヤー「ッ! ぐゥッ!」
松本「ぃよっしゃー!」
キッド「ワイヤーが……爆発した!?」
ローズ「! ワイヤーの先端を……松本さんが口に含んでいたのね!」
キッド「ギリギリで避けても爆発でやられる……厄介だね」
ファイヤー「……ってぇぇなぁ! のやろぅがぁ!」
遠藤「こわっ!」
ローズ「落ち着いて、ファイヤーエンブレム。距離をとって余裕を持って躱せば大丈夫よ」
キッド「そうだね……ワイヤー自体は直線的な動きしかできないから」
スカイハイ「今だ!」
松本「死ねぇ!」
(バァァァァァァァァンッ!)
ファイヤー「ぐあっ!」
キッド「?! なに!? 何もないところで爆発した!?」
ローズ「いえ……空気があるわ……今度は、松本さんの吐息をスカイハイが固めて飛ばしたのよ」
スカイハイ「ふふっ……ぐっ……ダメージが残っていてまだ風を強く操れないが、空気を固めて動かすくらいはできるぞ! すでにそこら中に仕掛けているから、気をつけたまえ!」
ローズ「まさに、見えない機雷ね……」
ファイヤー「……それが……どうしたぁぁぁぉぁぁ!!(ボワァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッッ!!)」
田中「うわっ! めっちゃ燃えた!」
浜田「めっちゃおこってるやん」
ファイヤー「くそがァァァ!! マジで頭に来たぜっの野郎どもがァ! ケツの穴から高熱チ○コ突っ込んで直腸まで火傷させんぞオラァァァァ!!」
松本「ンフフフフwww」
スカイハイ「むむっ!」
遠藤「? スカイハイさん、どないしたんですか?」
スカイハイ「いや、さっきのファイヤーエンブレムの炎上で、せっかく仕込んだ空気爆弾が飛ばされてしまった……」
タイガー「はぁ!?」
遠藤「そうか! 強い火が作る気流で流されたんや!」
スカイハイ「今から仕込み直す! 少し時間を稼いでくれ!」
ローズ「ふーん、そんな防ぎ方があるのね……良いこと聞いたわ」
浜田「……スカイハイさん、全部聞かれてたわ。もう通用せえへんみたいやで」
タイガー「ちっくしょお! 松本さん! もっかいワイヤーを!」
キッド「……もういいよ(キィィィン)」
田中「!!」
(バリバリバリバリバリバリ!!)
バイソン「みんな危ねえ! 俺の後ろに!(バッ……キィィィン)ぐわぁぁぁぁぁ!」
遠藤「バイソンさん!」
浜田「皮膚の硬質化が……きかんのか?」
バーナビー「そうか……電撃だから、いくら硬かろうが人体である以上、感電のダメージは避けられない」
キッド「最初からこうしてればよかったんだよ……圧倒的な力でねじ伏せる……」
ファイヤー「それもそうね……」
ローズ「それじゃ、さっさと片付けちゃいましょ」
(ザッザッザッザッ)
オリガミ「くっ!」
スカイハイ「……打つ手なし、か」
タイガー「(ヒソヒソ)おいお前ら、協力しろ。俺は浜田さんを、バニーは松本さん、キースは田中さん、イワンは遠藤さん、アントニオは、おい! 起きろ! お前は山崎さんを……」
バーナビー「?」
タイガー「このエントランスホール内、どこでもいい、ぶん投げてバラけさせろ……すんませんね、皆さん……芸能人の扱いにしちゃ荒っぽいですが、我慢してくださいよ」
(ザッザッザッザッ)
浜田「お前、そんなんしてどうすんねん」
タイガー「へへ、その口調、仲間として認めてくれたってことですかね……多分今の俺たちじゃそれが限界です……あとはまぁ、うまく逃げてくださいや」
浜田「違うがな! お前らはどうすんねん!」
バーナビー「ヒーローたるもの、市民の安全の為に命を懸ける……ですね?」
タイガー「ああ、俺らはまぁ、何とかしますよ……あいつら操られたまま外に出しちゃ、どうなるか分かりませんからね」
オリガミ「……皆さんは、窓とかドアとかから、とにかく逃げ切ってください!」
遠藤「そんなんダメでしょ!」
スカイハイ「失礼!(ガシッ)」
田中「うわっ?!」
タイガー「(ガシッ)いっくぞぉぉぉぉぉぉ!!」
バーナビー「(ガシッ)うぉぉぉぉぉ!」
ローズ「!?」
(ブンッブンッブンッブンッブンッ)
キッド「な?! 投げた!?」
ファイヤー「んもぅ! ほんとにこっちの嫌がることばっかりするのね!」
(ドサッドサッドサッドサッドサッ)
田中「いたたた……! 皆さん!」
浜田「ボケっとすんな! はよ逃げるぞ!」
山崎「え? でも……」
浜田「でもちゃうわ! 今の俺らで何ができんねん! とりあえず逃げなあいつらの命無駄にすんねんぞ!」
松本「おお、ほんまやな! て、あれ? なにこれ?」
遠藤「え? これ……どこの窓もドアも……浜田さぁん!! 外側から固められてますよ!」
田中「ブルーローズの氷でもない……緑色の、半液体が固まったような……ベークライトみたいな」
(バリバリバリバリバリバリバリバリ!!)
タイガー「だぁぁぁぁぁぁ!」
バーナビー「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
スカイハイ「がぁぁぁぁぁぁ!」
バイソン「ぐわぁぁぁぁぁ!」
オリガミ「あぁぁぁぁぁぁぁ!」
田中「! 皆さん!」
遠藤「! ヒーロー全員を一撃で……ドラゴンキッド……やっぱり一番えげつない能力やな」
キッド「さてと、残りは、まずは……浜田さんからだね」
(バリバリバリバリ!)
浜田「ぉわぁぁぁぁぁ!(バタッ)」
遠藤「浜田さん!」
田中「……え? あれ? これ、なんや?」
ファイヤー「次は、彼ね」
(ボワァァァァンッッ)
松本「あっつぅぅぅぅぅ!(バタッ)」
田中「またや……空気が……」
山崎「田中! ボケっとすんな!」
田中「いや、なんか、これ、見える……空気の……変化が、見えてんのか?」
ローズ「あんたは……今すぐ消えてほしいわ……」
(ガキィィィィィィンッ)
遠藤「ッ…………」
田中「……またや……雷も……火も……氷も……全部……空気を使って……伝ってる……」
山崎「ど、どうすんねんな」
(バリバリバリバリ!)
山崎「あだだだだだだだだだっ!(バタッ)」
田中「……全部……見える……空気を……利用してる」
ファイヤー「あとは、あんただけね、田中」
キッド「ほんと、あんまり手間取らせないでよね」
田中「もし……もし……空気がなかったら……何も……伝わら……ない?」
ローズ「それじゃあね……ヒーローもどきの芸人さん」
田中「空気が……なかったら……(キィィィン)」
キッド「死ねぇぇぇぇ!(バリバリバリバリ!)」
(バリバリ……フゥッ)
キッド「え!? 電撃が……田中さんに届く前に……消えた?」
ファイヤー「何やってんのよ!(ボォォォォッ……フゥッ)!? え? なんで私の炎も消えちゃうのよっ!」
ローズ「?(ビシュゥッッ……フゥッ)なに? あたしの攻撃も……届かない!」
田中「空気が……なかったら……(キィィィン)」
ファイヤー「ぐっ……なに……こ……れ……(バタッ)」
キッド「……っ……はぁっ……え……(バタッ)」
ローズ「……ぃ……ぃ……ぃきが……(バタッ)」
田中「はっ! あ、あれ?」
田中「え? 皆倒れて……え?……今ので……勝ったんか? ! はっ! そや! 浜田さん! 起きてください!」
浜田「…………いやいや……シビれて動かれへんがな……」
田中「ホンマにちょっとでいいです! あの3人引きずってくるんで、ツッコんでください!」
……………………
キッド「はっ!……あ、あれ?」
松本「気ぃ付いたか、こいつで最後やな」
キッド「一体……何が……」
ローズ「あたしもさっき聞いたばっかりよ……田中さんにあんな力があるなんて、ほとんど詐欺よ」
田中「いや! 知らなかったんですって!」
キッド「?」
遠藤「不快ハイの能力は『不快指数の操作』じゃなく、『大気組成の操作』やったんです」
バーナビー「不快指数、つまり空気中の水分量の操作というのは、その能力のほんの一部だったわけですね」
キッド「じゃあ……僕たちの攻撃が届かなかったのも……急に気を失ったのも?」
オリガミ「ええ、田中さんが女子チーム3人との間に作り出した真空層のせいで、攻撃が届かなかった……皆さん3人の能力は全て、空気中の酸素や水分、電子を利用するものですからね。そしてその真空層をそのまま3人の方に広げたことで……」
ファイヤー「息ができなくなって気を失ったってわけよ」
タイガー「ま! とにかくだ、一旦ここから出ようぜ!」
バイソン「出ようたってよ、外側から固められてるらしいじゃねえか」
遠藤「女子チームの3人は無傷ですから、なんとか壊せたりしませんかね?」
ファイヤー「そうね、迷惑もかけたし、ここからは存分に働かせてもらうわ」
???「それはやめていただきたいですね」
バーナビー「!? この声!」
タイガー「やっぱり黒幕は……あんただったのかよ! あんた! いったいどういうつもりだ!」
黒幕、一体誰なんだ…?
気になる…
石破「…………」
タイガー「なんとか言えよ! 石破部長よぉ!」
バーナビー「……元防衛大臣で、今はアポロンメディアの部長職に就いているあなたが……なぜこんなことを!」
松本「ていうか、石破さんもネクストやったんかいな?」
田中「いや、黒幕が石破さんやから言うて、皆を操っていたのも石破さんやとは限りませんよ」
石破「いろいろと、説明しなければならないことが、あるようですが、説明は、後ほどでも、よろしいでしょうか?」
ローズ「今すぐしてほしいわねぇ!」
バイソン「あぁ! こっちは今すぐにでもあんたをぶっ飛ばしたいんだからな!」
石破「ご心配なく。後ほど、と言っても、時間で言えば間もなくです。皆さんが全員が地に伏してから、という意味ですから」
山崎「自信満々や……」
浜田「ていうことは、あんたもやっぱりネクストなんやな。そんなすごい能力なんかいな?」
石破「いえいえ、私の能力は、皆さんお察しの通り、皆さんを操作していた能力ですよ。どのように操作していたのか、と言うと……(ドロドロドロドロ)」
松本「結局説明するんかい」
キッド「!? あれは?」
オリガミ「体が……液化した?」
遠藤「いや、あれは、半液体というか、ゼリーみたいな……緑色しとんな」
石破「私の能力名は、『デス(死)ゲル』……自身の体をゲル状に変えることができる……そしてこのゲルが少しでも体内に入った者は……能力者への絶対服従を強いられる」
ファイヤー「絶対……服従」
遠藤「そうか! そうじゃないと、記憶の操作とかでは、仲間と認識させたままの殺し合いなんかさせられへんもんな」
田中「その能力で、ヒーローと俺ら以外の人間をビルから出したんやな」
石破「そしてこのゲルは、体内に入らずしばらく空気に触れると……岩よりも硬くなる性質を持っています」
スカイハイ「!? まさか、このビルの出入り口を全て塞いでいる緑色のは!」
石破「はい、全て私の、ゲルです」
遠藤「あれ? ちょお待って!体内に入れるってことは、やっぱり仕込んだのはパーティーの料理とかですよね? バーナビーとワイルドタイガーが見つけられへんかったんは何でなんですか?」
石破「ゲル状になると言っても、体組成自体は変わりません……つまりゲルの成分はほぼ水とタンパク質です。異物として検出することはできません」
オリガミ「それじゃあ……どうして浜田さんだけが、操られなかったんだ?」
松本「ほんまやな、浜田以外の俺らはパーティーの後、すぐに控室でツッコまれたから、石破さんの能力が解除された、で通るけど、浜田が無事なんはなんでや?」
石破「……浜田さん、いかがですか? 体内に入った緑色のゲル……心当たりはありませんか?」
浜田「………………………………あ!」
タイガー「え? あるんですか? 心当たり」
浜田「俺……出してるわ……自分で」
松本「は?」
バーナビー「自分で……ですか?」
石破「ひとりトイレに走ったあなたを操っていればよかった……まさか自分で吐き出すとは思いませんでしたよ……トイレで、痰のようにね」
遠藤「めちゃめちゃですね」
松本「育ちの悪さが幸いしたなぁ」
浜田「ンフフフフwwwうるさいアホ」
タイガー「まぁそりゃいいけどよ、石破さん。あんたの目的はなんなんだ? 答えによっちゃ、出るとこ出てもらうぜ」
石破「ですから、ここからは、皆さんが、倒れてから、お話します」
ローズ「バカ言わないでよ! デス(死)ゲルだかなんだか知らないけどね、こっちの3人はまだ十分戦えるのよ!」
石破「ええ、あなた方の能力は、脅威ですので、これを使わせていただきます(ピッ)」
(バッ)
キッド「上から! 人影?!」
タイガー「助っ人か!?」
ローズ「たったひとりの助っ人でどうしようってのよ!」
ファイヤー「……!? あれは!」
(スタッ……)
???「…………」
タイガー「おいおい……マジかよ……」
バーナビー「!?……どうして……ここに」
石破「予想以上に、驚かれていますね、特に、バーナビーさん」
タイガー「俺らが……ぶっ壊したじゃねえかよ……」
H01「…………」
石破「あなた方が破壊に成功したH01は、たったの1体ですよ。その他の多数のH01は、セーフティーモードの起動により、動かなくなっただけです……1体だけ再起動が間に合ってよかったです」
バーナビー「くっ!」
浜田「なんや、あの黙ってるワイルドタイガーみたいな奴、そんな強いんかいな?」
オリガミ「あれは、戦闘用アンドロイドなんです……あの1体を破壊できたのはタイガーさんとバーナビーさんです……僕たち6人は、あっけなく捉えられてしまったんです」
石破「今動けるのは、ブルーローズ、ファイヤーエンブレム、ドラゴンキッドの3人のみ……さて、何分もちますかね」
ローズ「くっ! なめんじゃないわよぉぉぉぉぉぉ!!(ビシュゥッッ)」
ファイヤー「最大火力でいくわよ!(ボワァァァァァァァンッ)」
キッド「はぁぁぁぁぁ!(バリバリバリバリッ)」
H01「…………」
……………………
H01「…………」
石破「ほう、意外な奮闘ですね……4分弱、ですか」
ローズ「ぅっ……ぅぅ……」
ファイヤー「…………くっ……反則よ」
キッド「……もぅ……動けない……」
石破「長くもった方ではないですか? 」
浜田「ったぁぁぁ……ほんま、そばで見てるだけでこんなダメージあるんないな」
田中「ほんますね……てて……あかん、動けませんわ……」
タイガー「ここに来るまでのダメージがデカすぎだ……」
オリガミ「このままだと……全員殺されますよ……!」
石破「?……そんなことはしませんよ」
バーナビー「!?……あなたの目的は……一体」
石破「さて、ようやく皆さん全員、地に伏して動けなくなりましたね。それでは、そろそろ説明しましょうか? 私の目的を……」
スカイハイ「我々を殺すつもりがない、と言ったな……」
石破「ええ、私の目的は、簡単に言えば、あなた方を……と言うより、ネクストを軍で管理することです」
田中「え? なんで?」
石破「元防衛大臣の立場から、言わせて頂くならば、あなた方ネクストの能力は魅力的なんです……軍事力として、ね」
キッド「僕たちが……軍事力?」
石破「そうです、ネクストは、軍事兵器であるべきなんですよ。H01という、戦闘用アンドロイドは、量産と維持に、莫大な資金が必要ですが……ネクストは、どうですか? 脅威的な戦闘力を持ちながら、維持費は軍人ひとり分、量産の必要もなく、勝手に生まれてきます。これを軍事兵器として、利用しない手は、ありません」
ローズ「くっ!……あんたねぇ!」
石破「それに対して、前政権からの防衛に関する施策をご覧なさい……兵器に関して無知な者達が防衛に携わっているばかりに、C国やK国に好き勝手されています……防衛とは、国家の、ひいては国民の尊厳の防衛でなければならないのです」
浜田「……最後んとこだけ賛成しといたるわ」
松本「ほんで、その目的があって、なんでこんなこと仕組んだんや?」
石破「……ネクストを軍事兵器とするためには、ネクストは危険で強力な存在であるため、軍で管理することが望ましいと、国民に認識させなければなりません……その為に、国民に見せなければならないのですよ、ヒーロー同士の殺し合いという映像を……そして、5人の民間人が殺される様も」
遠藤「! まさか! 各所で記録用カメラが動いてたのは……」
石破「ええ、もちろん、放送用ですよ……映像はすでに外部の編集用機材に転送されています……あとは都合よく編集して放送すれば……あなた方は軍の管理下、ということです」
山崎「今、俺たちは殺すって言いましたよね?」
石破「ええ、あなた方の能力も、非常におもしろいのですが、世論に影響力のある方々が、真相を知ったまま生きているのは、都合が悪いので……ここで死んでいただきます」
ファイヤー「……相当……タチが悪いわね……」
バイソン「だが、ほとんど達成できてやがるぜ……」
石破「ふふ……これで兵器産業にも、また特需を招くことができます……そうなれば、防衛大臣に返り咲いて、その地位を保つことも、可能です……戦争特需からの政治献金により、政治活動もしやすくなりますよ」
タイガー「くっ……あんたらはッ……いつだってそうだッッッ!!!」
バーナビー「! 虎徹さん!?」
石破「……」
タイガー「いつだって自分達のォォッ ……ぁぁと…………あれ……ばっかり考えてッッッ!」
バーナビー「…………」
石破「…………『あれ』?」
タイガー「あ~…………その…………得するっつーか……オイシイ感じの……」
バーナビー「利権ですか?」
タイガー「そう! それ!」
石破「……産業全体としては、必要なことですよ?」
タイガー「政治家の仕事っつーのは、そうじゃないだろ! これ以上世界の戦争が増えたらどうなる? あんたらにだって、家族や友達がいるんだろ? 戦争の恐ろしさは、兵器に詳しいあんたならわかるだろ!」
石破「…………」
タイガー「だから今は! 自分の……あれは置いといて」
バーナビー「利権」
タイガー「そうそれ!」
バーナビー「……虎徹さんの言い分、ビシッと決まりませんでしたけど、正論だと思いますよ」
石破「……正論だろうが、何だろうが、言葉は、言葉でしか、ありません。満身創痍で立つことさえできない、あなた方には、言葉しか、残されていないでしょうが、それで私を止められると、本気で思っているわけでは、ないでしょう?」
タイガー「……ぐっ」
バーナビー「……」
石破「後はガキのメンバー全員をH01が殺せば、それで終わりです」
山崎「ヤバイですよ!」
浜田「分かっとるわ!」
石破「念の為、皆さん全員をゲルで固めさせていただきますよ……ヒーローの皆さんは、軍の管理下になることが決定するまでは、秘密裏に拘束しなければなりませんしね……(ズルズルズルズルズルズル……)」
(ガキィィィィィィン……)
石破「……さて、それではH01、5人を殺してください」
H01「…………(ザッザッザッ)」
タイガー「……くそったれがぁ!」
ファイヤー「……あんたね、ガキのメンバーを殺して、私達が軍の管理下になると決まったとして、おとなしくあんたの言うこと聞くと思ってんの?」
石破「……見え見えですよ、時間稼ぎはおやめなさい……それとも、今この場で、まだ私から何か聞きたいことがありますか?」
ルナティック「否、事足りた」
(ボヒュゥゥンッ!……ドォォォンッッッボワァァァァァァァンッ!)
石破「!?」
H01「!(バッ……スタッ)…………」
石破「あなたは……」
バーナビー「!……ルナティック!?」
ルナティック「(スタッ)……これが貴様らの最期なのか?」
ローズ「私達を……助けるの?」
ルナティック「真の罪人を裁きのしるべに導くことこそ私の正義……翻って、今貴様らが偽りの正義の手に委ねられること、それを看過するのは、私の信条に反する……」
バイソン「あ……あぁ?」
ルナティック「ヒーローどもよ、貴様らの正義とは……こんなところで潰えてしまうものなのか?」
タイガー「へへっ、前もそんなこと言ってたな……そうやって、俺を助けてくれたぜ……」
ルナティック「……勘違いするな……貴様らとは正義を異にする者同士、相入れることはない……私はタナトスの声に……従うまで!(ジャキンッ)」
石破「!」
ルナティック「貴様に政は荷が勝ちすぎる……タナトスの声を聞け!(ボヒュゥンッ!)」
H01「!(バッ!……ドォォォンッ)…………」
ルナティック「……主人を守るか、論理の奴隷よ」
石破「何とでも言いなさい、このH01を倒してから、ね」
H01「……(ダンッ!)」
ルナティック「……(バヒュンッ!)」
(バヒュンッ! バヒュンッ! ドォォォンッ! ドォォンッ! ガラガラガラガラッ! バヒュンッ!)
山崎「……なんか、速すぎて何してんのかよう分からん……」
バーナビー「ルナティックは青い炎を操るネクストです。最大火力はファイヤーエンブレムより上で、それをボウガンで撃ち出して攻撃したり、ジェット噴射して高速移動するんです」
バイソン「あいつに助けられんのは癪だが、相当強えんですよ……実際、俺らの内、誰もあいつを捕まえられていませんからね」
遠藤「すごい……3人がかりで手も足も出なかったH01が、ルナティックのスピードについていけてない……攻撃が全然当たらへんで」
(ジャキンッ! ボヒュンッボヒュンッボヒュンッ! ドォォォンッボワァァァァァンッ!)
ルナティック「……」
H01「……」
田中「でも……ルナティックの炎も
、効いてないみたいやで……すごい装甲やな」
(バヒュンッ! バヒュンッ! ドォォォンッ! ドォォンッ! ガラガラガラガラッ! バヒュンッ!)
タイガー「おいおい! 決着つくまでこのビルもつのかよ!?」
……………………
(バヒュンッ……ドォォォンッボワァァァァァンッ!)
遠藤「戦い始めて、もう10分は経つで……」
ルナティック「…………ッ」
H01「…………」
石破「そろそろ違いが明らかになってきましたね……攻撃を全て躱せる者と、攻撃が全く効かない者……一見して同じようですが、長時間戦い続けると……」
H01「……(ダンッ! ガシィィッ!)」
ルナティック「くっ!」
石破「こうなります」
浜田「! 捕まってもうたで!」
石破「振りほどこうとしても無駄ですよ……H01は相手を捕らえたら絶対に放さないようプログラムされています。トドメは私がさせばいいのですからね」
ルナティック「……フッ、そうか、手を放さないのならば好都合だ」
石破「?」
ルナティック「(ジャキンッ! ボヒュンッボヒュンッボヒュンッボヒュンッボヒュンッ……ドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォォォンッ……ガラガラガラガラ)」
浜田「なんや? 炎を真上に撃って、ビルの最上階まで突き抜けて空見えとるがな……逃げんのか?」
バーナビー「いえ……逃げるならば普通に壁を壊すはずです……どうして上に……まさか!」
ルナティック「……このアンドロイドは私の炎では燃やせない……ならば暫くの間、退席願うしかあるまい……」
バーナビー「やっぱり! ルナティックは自分ごとH01を離脱させるつもりです! おそらく……地球の引力圏外に!」
石破「!?」
松本「いやいや、自分ごとって、そんなんしたらあいつも宇宙さまよって死ぬやんwww」
石破「…………それより早く、あなたが大気摩擦で燃え尽きそうですよ……」
遠藤「でも、攻撃の効かないH01には、そうするしかないんかも……」
バーナビー「なぜそこまで……」
ルナティック「……私は正義の名の元に罪人を裁いてきた……故に、私は証明し続けなければならないのだ……私の正義が正しいということを……私自身の命を懸けて!」
ファイヤー「あんた! 私達の為に死ぬ気!?」
ルナティック「否! 私はタナトスの声に……従うまで!(ボヒュンッボヒュンッ!……ボヒュンッ……ボヒュンッ…………ボヒュンッ……………………ボヒュンッ)」
石破「くっ……!」
浜田「……行ってもうたな」
……………………
(ボヒュンッ…………ボヒュンッ…………ボヒュンッ…………)
H01「…………」
ルナティック「(ギュゥゥゥゥゥゥーンッ)……間もなく地球の引力圏外だ……この先、私達が引力圏外に出るのが先か……あるいは大気摩擦で燃え尽きるのが先か……あるいは私の炎が尽きるのが先か……いずれにせよこの高度だ……どちらも命を拾えはしまい」
H01「…………(スッ)」
ルナティック「!? 手を……放した?」
H01「…………」
ルナティック「……観念したとでも言うのか……論理の奴隷がごとき人形が……フッ……電子頭脳に魂が宿るなどということが、まさか本当にあろうとは!」
H01「…………」
ルナティック「良いだろう……ならば全ての炎を……貴様だけをより高みへ飛ばすことに費やそう!(ジャキンッ)」
H01「…………」
ルナティック「タナトスの声を……聞けぇ!(ボォォォォォォォォォンッッッ!)」
(ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッッ……………………キランッ)
ルナティック「そこならば貴様にも聞こえよう……タナトスの声が……貴様のことは記憶に留め置こう……炎を失った私が、地面に激突するまでの……ほんの数分の間だがな」
浜田「……行ってもうたな」
バーナビー「しかし……H01がいなくなっても、事態は一向に好転していませんよ!……石破だけでも私達を殺せそうですし」
山崎「どうにかならないんですか?! 火とか電撃でやっつけてくださよ!」
ファイヤー「……駄目よ……私達は炎や電撃を出せても、その方向は指や腕で決めてるの……ゲルで頭以外を固められてる状況では、攻撃できないのよ」
遠藤「……! 田中! さっきみたいに真空層を石破さんの方に!」
田中「! そっか! よし!(キィィィィンッ)」
石破「無駄ですよ……(ズルズルズルズルズルズルズルズル)」
キッド「! 全身からゲルが!? ……いや、あの人が、ゲルそのものになってる……」
松本「……完全にスライムみたいになってもうたがな」
石破『フフフ……私自身がゲル化してしまえば、呼吸器などもなくなりますからね……空気があろうがなかろうが関係ありませんよ』
田中「くっ……くそ!(フゥッ)」
石破『さぁ……それではガキの皆さん……私の体で窒息死していただきますよ……』
松本「もー……めっちゃ嫌な死に方やん」
遠藤「あかん、ホンマに打つ手なしちゃうか……」
石破『せめてもの思いやりです……皆さん同時に口と鼻を塞いであげますよ……仲良く一緒に死んでください』
浜田「お前だけはほんまに殺したかったけどな……ここはお前の勝ちや……化けて出たるから覚えとけよ」
石破『何とでも言ってください……これで、これで……フフフフフフフフフフフヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……これで私の望みが叶います! 防衛大臣の座を奪われた屈辱! 間もなく晴らせます! 間もなくね!』
キッド「あんな奴に……大臣なんかさせちゃいけない!」
石破『何とでも言いなさい! それではガキのメンバーの皆さん! 私の全身で苦しめてあげますよ!(ビュルルルルルルッ)』
田中「うわぁっ! 来たぁ!!」
石破『ッ!?』
(ボァァァァンッ! ドジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ)
石破『ッッグァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!』
タイガー「!?」
遠藤「? な、なんや? 燃えてる……んか?」
石破『ヒィィィィッ……ぐっ……あ、熱い…………き……貴様かぁぁぁぁ!』
山崎「(キィィィィンッ)」
バーナビー「山崎さん!?」
浜田「え? 山ちゃん何したん?」
オリガミ「……まさか!山崎さん!」
遠藤「……! まさか! た、大気摩擦を起こしたんですか!?」
ファイヤー「空気中の摩擦係数を極限まで高めたのね! そして、高速で動いた石破に火がついた……ほんと、デタラメな能力ね……」
バイソン「もしかして……ルナティックの時の会話からヒントを!?」
山崎の活躍率高いな
山崎「僕達が固められて動けなくて、動けるんがあんただけやからこそできたんですよ……用意周到なんが裏目に出ましたね」
石破『ぐぅぅぅ…………?! なんだ? 体についた火が……消えない……いや、逆に……勢いを……増して……(ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ)ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
田中「(キィィィィィンッ)邦正さんの機転……無駄にはしませんッ!」
ファイヤー「……やるじゃない……酸素濃度を上げたのね……当然火も強くなるわ……」
石破『ぐぅぅぅぅぅ……貴様ら……貴様らぁぁぁぁぁッ!!』
タイガー「……終わるな……もうすぐ燃え尽きそうだ……」
バーナビー「ええ……彼の野望は、これで終わりますね……」
石破『……こんな……所で……終…………らない……終…………ない……は……』
ローズ「……もう……諦めなさいよ」
山崎「僕達が固められて動けなくて、動けるんがあんただけやからこそできたんですよ……用意周到なんが裏目に出ましたね」
石破『ぐぅぅぅ…………?! なんだ? 体についた火が……消えない……いや、逆に……勢いを……増して……(ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ)ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
田中「(キィィィィィンッ)邦正さんの機転……無駄にはしませんッ!」
ファイヤー「……やるじゃない……酸素濃度を上げたのね……当然火も強くなるわ……」
石破『ぐぅぅぅぅぅ……貴様ら……貴様らぁぁぁぁぁッ!!』
タイガー「……終わるな……もうすぐ燃え尽きそうだ……」
バーナビー「ええ……彼の野望は、これで終わりますね……」
石破『……こんな……所で……終…………らない……終…………ない……は……』
ローズ「……もう……諦めなさいよ」
石破『終…ら………ない…………スは』
バーナビー「……?」
石破『……ロスは………………ウロボロスは…………終わらない…………』
バーナビー「!? おい! 今なんて!?」
石破『…………らな……ぃ……』
バーナビー「おい! 今お前!! なんて言った!!! ウロボロスと言ったのか!! おい!!! なんとか言え!」
タイガー「落ち着けバニー! もう燃え尽きてんじゃねえか!」
バーナビー「…………ッ……マーべリックに続き、彼までも……ウロボロスに関わっていたのか……」
ファイヤー「……ウロボロス……ただの裏組織じゃなさそうね……シュテルンビルトと深く関わっているのかしら……」
バーナビー「……ッ……」
タイガー「バニーちゃんよ、悔しがるのはいいけどよ、これどうすんだよ……全員動けねえじゃねえがよ」
(…………バラ……バラバラ……バラバラバラバラバラバラバラバラッ!)
キッド「……!? ヘリ?」
オリガミ「もしかして!」
タイガー「まぁそうだろうな……おい! 遅えぞ!」
アニエス『Bon soir! ヒーロー諸君!』
ファイヤー「ほんと今回は遅かったわねぇ……マーべリックの時は良いタイミングだったのに……」
スカイハイ「なんでもいい……早くこのゲルを取ってくれ……」
松本「固まったゲルは石破さんが死んでも消えへんねんなぁ……厄介やわ……でもほんま、アニエスさん、今更やで……しかもまたスピーカーから声だけって」
アニエス『ごめんなさいね、訳あって今までここに来られなかったのよ』
遠藤「そうか、アニエスさんも石破さんに操られてたから……だから石破さんが死んで、絶対服従が解けたんや……」
アニエス『あ、それは違うのよ、ブルー遠藤。私は全部知ってたのよ、石破部長の計画を……』
遠藤「え?」
浜田「? どういうことや?」
タイガー「知ってたって、何だよ?」
アニエス『何って、言葉の通りよ。私も黒幕のひとりなの』
ファイヤー「…………それ、ほんとなの?」
アニエス『んー、正確には、私が石破部長をそそのかしたと言うべきかしら……』
浜田「……あんたもネクストの人達を軍事兵器にしたいんか? そんなことしても、テレビ局のプロデューサーには何の得もなさそうやけどな……」
アニエス『私はね……ネクストの軍事利用なんてどうでもいいの……私がしたいのは……彼の計画の一部よ……』
遠藤「石破さんの計画って、えーと……ヒーロー同士を戦わせて、それに僕らを巻き込んで殺して、それを放送してネクストを危険視させて、軍事兵器にするって流れを作る……」
アニエス『ええ、よく覚えてるわね……その後半よ……私がしたいのは……番組放送でネクストを危険視させることよ……』
遠藤「そう言えば石破さん、カメラで撮った映像を都合良く編集して放送するって……それは外部に転送済みって……まさか!」
アニエス『Exactement! あなた本当に冴えてるわよ! 貴方達の殺し合いの映像はここ……ヘリの中のレコーダーに転送されていたのよ!』
バーナビー「……どういう……つもりですか?」
アニエス『私はただ、自分の欲望に従いたいだけよ……そう、人間の根源的な欲求でありながら、多くの人間がその魅力…いえ、その存在にさえ気づくことのできない欲求……』
田中「……」
アニエス『支配欲よ』
松本「……」
アニエス『ヒーローTVのプロデューサーとして仕事をしている内にね、妙な感覚を覚えたわ……でも間もなくそれが何なのか、はっきりと分かったわ……快感よ』
田中「世論を…支配する…」
アニエス『Exactement!不快ハイ! ヒーローの活躍の生中継! プライベートのドキュメンタリー! ンフフ……映像の作り方見せ方ひとつで、視聴者は私の導きたい方向へ向かうのよ! 数えきれない個体を、同じ個体でありながら、意のままに動かす快感! ハァ……これはね、どんなにお金を積んでも味わうことのできないものなのよ!』
アニエス『一番たまらなかったのはねェ……ハァ… …前社長を出し抜いたときだったわァ……』
バーナビー「?! マーべリックの、あの時……」
浜田「?」
アニエス『あなた方は見てなかったんでしょう? ……残念だわ……シュテルンビルトの全市民を騙してるつもりだったのに……いいえ、あの時点では、全市民を騙していたのにね……ハァ……私のようないち社員にまんまと出し抜かれたあの男の顔……普段は頭が上がらなかったからなおさらよ……そして私の意図した通りにアッ……ハァ……動いてしまう衆愚……ダメッ……思い出しただけで…』
浜田「あかんわこいつ」
タイガー「だからって……なんでこんなことを仕組んだんだ! ヒーローがいなくなったら、ヒーローTVは終わっちまうぞ! あんたが一番愛してる仕事じゃないのか?!」
アニエス『それは違うわワイルドタイガー…… 私が終わらせるのよ……愛しているからこそ、ね』
タイガー「……?」
遠藤「どういうことですか?」
アニエス『ヒーローTVはね、華やかな人気番組のようで、様々な団体からの圧力を受けているのよ……人権擁護団体や、あるいは正反対に、ネクストなんて変異体を英雄扱いするなんてけしからんなんて団体もあるのよ』
浜田「……」
アニエス『団体と揉めるなんてね、業界では絶対に避けるべきことなのよ……でもね、終わらせ方にも色々あると思うの……団体にケチをつけられて終わるなんて、それこそ私の経歴に傷がつくわ……私が考える理想的な終わりはね……ヒーローTVの後発番組が出てこず、且つ私の経歴がより輝かしくなる終わり方よ!』
キッド「アニエスさん……嘘でしょ?」
アニエス『今でこそ様々な団体から圧力を受けているけれど、万が一この先、そう、ヒーローTVが終わった後に、その圧力がなくなって、ヒーローTVのような番組がほかで始まるなんてことになったら……私は耐えられないわ』
バーナビー「……」
松本「そんなもんしゃあないやろ、なるようにしかならんやんけ」
アニエス『だからね、シャークレー、例えば……例えばね……こんなシナリオがあったら、素敵じゃないかしら?』
アニエス『ヒーローとして活躍したネクストは……実は能力を使えば使うほど、その能力に飲み込まれて、ついには理性を失い暴走する……その兆候は、ヒーローTVで活躍しているヒーロー達に、すでに見られはじめていたの。ヒーローだけでなく、ネクスト能力を持った石破部長にも、ね。それにいち早く気づいた番組プロデューサーは、市民の被害を避けるためヒーロー達のみの同士討ちに持ち込もうとした。このアポロンメディアのビル内での、ね』
浜田「……」
アニエス『プロデューサーの奮闘の甲斐あって、ヒーロー達の殺し合いは成功した……しかし残念ながら5人の民間人までもが暴走したネクスト達によって殺されてしまう……とても悲しいことだわ…フフッ』
田中「……ッ!」
遠藤「……」
アニエス『しかもその民間人というのがお笑い芸人で、絶大な人気を誇る年末恒例特番の撮影中に死んだとすれば……どうかしら?』
オリガミ「……やっと、石破さんの野望を阻止したのに……」
アニエス『5人の民間人とヒーローの全てが死んだことを受けて……番組プロデューサーはネクストをヒーローとして商業利用したことから、この悲劇に責任を感じ、自ら番組を終わらせ、プロデューサーの職を降りるだけでなく、退職するのよ』
アニエス『輝かしい経歴を持つキャリアウーマンが、そのもっとも輝く経歴である人気番組を自ら終わらせる! しかも潔く引責辞任よ! 感動的じゃなくって?』
松本「無職になるんかいな、リスクでかいやろ」
アニエス『そうかしら? 前社長の次はヒーロー事業部の部長が犯罪者よ? アポロンメディアはもう終わりよ…さっさと逃げた方がいいわ』
タイガー「…………」
アニエス『まぁ、そんな裏事情は、文字通り表には出ないのよ…衆愚は感動するわよ……この美しいシナリオにね』
アニエス『私はしばらくメディアへの露出を避けてから、頃合いを見計らって文化人にでもなるわ……テレビを通して衆愚を操る…今度はそれを、上司もスポンサーも気にせずできるのよ! 考えただけでも……ハァ……』
遠藤「そんなうまいこといかんでしょ」
アニエス『ご心配には及ばないわよ、ブルー遠藤。 ここまで沢山撮らせてもらったもの……ヒーロー同士の潰し合いも! ヒーローが民間人を攻撃する様もね!』
遠藤「そうか……それで石破部長をそそのかしたんやな……防衛大臣に返り咲きたい石破さんに、ネクストを危険視させて軍事利用する計画を提案したんやな……」
アニエス『ンフフフフ……』
田中「でも僕らは……」
タイガー「ああ……こうして生きてるぜ!」
アニエス『だから後は……あなた達全員が死ねばそれでいいのよ』
ローズ「あんた……なに考えてんのよ!」
アニエス『なにって、それは全部話したじゃない……あとはこのビルの各所に仕掛けられた爆弾で……ビルもあなた達も木っ端微塵よ☆』
バイソン「なっ!?」
松本「もーほんま家帰りたいわ」
アニエス『ごめんなさいね、ビルの出入り口はすべて、すでに石破部長のゲルで固められてるでしょ? 今のあなた達みたいにね。だからここから出られないの』
アニエス『あ、ちなみにビルの爆破は過激派テロリストの仕業ということにしておくわね。バーナビーが何やらそんな怪しげな裏組織を追ってたみたいだから、ちょうどいいわ』
バーナビー「ッ!」
タイガー「てめぇ! アニエスッ! こいつの気も知らないでッ!」
アニエス『私には関係のないことだわ。それじゃあ爆破は15分後よ。先に少し離れてるわね。Adieu! ヒーロー諸君! シュテルンビルトでの貴方たちの活躍は永遠に輝き続けるわ……シュテルンビルト市民たちの心の中と……私の経歴の中でね!』
(バラバラバラバラ……バラバラバラバラ……バラバラ……バラ……)
バーナビー「くっ……そぉぉぉぉぉ!!!!」
浜田「……悔しがってる場合ちゃうぞ……何か手を打たんと」
キッド「このままビルが爆発したら……街の人達にも被害が出るよ!」
タイガー「市民に危険を知らせながら……俺達も脱出する……それも今から15分以内に……できんのかよそんなこと」
遠藤「(キィィィンッ)! 前半だけなら、行けるかもしれません!」
バーナビー「本当ですか!?」
遠藤「ええ、田中の能力がうまいこと働けば、ですけど……田中! 女子チーム3人と戦ってる時、空気の変化が見えたって言ってたよな?」
田中「?! うん……」
遠藤「今こうやって話してるのも、音が空気を伝わってるねんけど、それ見えるか?」
田中「……(キィィィンッ)! うん! 見えるわ!」
遠藤「ほんなら、この話し声の振動の方向をコントロールできへんか? 大気組成の操作で……ここの声をシュテルンビルト中に響かせてほしいねん! あの、ルナティックが開けた上の穴から、シュテルンビルト中に!」
田中「……やってみる!」
遠藤「それじゃ、ヒーローの皆さん! 思いっきり大声で叫んでください! このビルが爆発寸前で、早くこの近くから離れるようにって! ほんで助けられるネクストがおったら手ぇ貸してほしいって!」
タイガー「お、おお!」
……………………
遠藤「……田中、どうや?」
田中「うん、振動は市内に拡散できたと思う」
遠藤「これで、前半はほぼ達成ですね……街中で爆発すると被害は大きいでしょうけど、まぁ今はこれが限界でしょ」
バイソン「さーて、そんじゃ、どうすっかな……助けが来るとも限らないし」
遠藤「能力の強制解除、爆弾を作る、大気組成の操作、摩擦係数の操作……ん~、あかんなぁ、何も思い浮かばんわ……念の為聞きますけど、浜田さん、固まったゲルにツッコんでも壊せませんよね?」
浜田「そんなもんだいぶ前に試したわ。石破さんにバレんように、こっそりな」
遠藤「……ですよね」
タイガー「…………ん? おい、なんだあれ?」
山崎「?……! なんや!? あそこの地面が……」
(ズズズズズズズ……サラサラサラサラサラサラサラサラ)
田中「流砂みたいに……」
(バッ……スタッ)
???「助けにきたぞ! イワン!」
エドワードォォォォォ!
あ、また脱獄しちゃった…?
>>246
あんたすげえな
よく覚えておられる
オリガミ「!……そんな……エ……エドワード!!」
バーナビー「あの子は!?」
タイガー「イワンのアカデミー時代からの友達じゃねえか!? ルナティックに殺されかけて、確か今は……」
エドワード「保護観察中で街にいました! 時間がありません! 挨拶はあとにして……僕の能力なら……いけます!(キィィィンッ)」
(……サラサラサラサラ)
スカイハイ「!? ゲルが……砂状に!」
遠藤「すごい能力やな……」
エドワード「皆さん動けますね! それでは僕と一緒に地中を通って脱出しますよ!」
(ズズズズズズズ……サラサラサラサラサラサラサラサラ)
浜田「なんとか全員ビルから出られたな」
キッド「でも、脱出できても、ビルが爆発したら……死人が出ちゃうよ!」
松本「爆弾だけをほり投げることはできへんから、ビルごとほり投げたらええねんけど……」
遠藤「それこそできませんやん! ……て、あれ? 何ですかね?……僕の目が……おかしいんかな?」
タイガー「いやぁ、俺の目にも見えてるから……」
松本「動いてるよな……あのバカでかい菅ちゃん像」
バーナビー「像が……動くって……まさか!」
タイガー「! おいおい! マジかよ!」
???「ワイルドタイガー! 僕も助けにきたよ!」
タイガー「トニー! トニーじゃねぇか!」
ローズ「像や人形を動かせるネクスト……あの男の子!?」
トニー「ワイルドタイガー……前に言ってくれたよね……君の能力が役に立つ時が必ず来るって! 君もヒーローの一員だって! 僕も……街を……街の皆を守れるヒーローになりたい!」
エドワード「……俺もそうさ! 俺もこの人達に助けられたんだ! 今度は俺達が助ける番だよな!? だから来たんだろ!」
トニー「うん!」
ファイヤー「……あんた達……」
エドワード「よっしゃ! そんじゃそのままビルごと空にぶん投げちまえ!!」
トニー「うん! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
(ゴゴゴゴゴゴゴゴッ………ガシッッッ…………ブンッッッッッッ)
(ギュゥゥゥゥンッ)
タイガー「マジかよ……マジでビルごとぶん投げちまった……」
遠藤「田中!」
田中「(キィィィンッ)出来るだけ高く飛ばすために、ビルの飛ぶルートを真空にして空気抵抗をゼロにするんやろ!? もうやってる!」
松本「でもビルまるごとなんて……あ、止まった……やっぱりあんまり飛ばへんなぁ」
スカイハイ「あの高度で爆発しては……まだ被害が大きいぞ! って……あれ? 一回止まったのに……どんどん高く……上って行っている」
???「アイアーイ! キャッキャッ!」
キッド「嘘……あの赤ちゃんまで……サムまで助けに来てくれたの? 市長さんと一緒に……」
サム「アイアーイ!」
タイガー「サムって、あのテレキネシス赤ちゃんかよ!」
バーナビー「ビルを……飛ばして遊んでるのか?」
スカイハイ「私がしてあげた高い高いを……覚えていてくれたのか!」
バイソン「それは違うだろ……でも、どんどんのぼっていくぜ!」
バーナビー「そろそろ爆発しますよ!」
(ドォォォォォォォォォォンッ)
遠藤「爆発したぁ!! でもこのままやと瓦礫が! 街中に落ちてまう!そや! 邦正さん!」
山崎「任せとけ! 上空の摩擦係数を最大にして、大気摩擦で瓦礫を燃やすんやろ!(キィィィンッ)」
(ボッ……ボボボッ……ボワァァンッ……)
ローズ「すごい……瓦礫が……全部空で燃えてる……」
オリガミ「! 見てください!一番大きな瓦礫が……あれは……中継ヘリの方に落ちますよ!」
山崎「あの大きさは燃やされへんわ!」
バーナビー「ヘリに……ぶつかる!」
アニエス『!?…………キャァ(ザザッ)』
(ドォォォォォンッ)
キッド「アニエスさん……」
浜田「あれやったらヒーロー同士の潰し合いの映像も残らへんから、悪用されることはないやろ……とりあえず今はそれで納得せえ! あのでかい瓦礫はまだ落ちてるぞ!」
タイガー「トニー! あれを止められるか!?」
トニー「無理だよ! ここから離れすぎてるし、こんな像が走ったら、そっちの被害の方が大きいよ!」
遠藤「くそっ! ここまでやったのに!」
マツコ「ここまでやったのに、何よ? 途中で諦めたら、初めからやらないのと変わらないわよ」
遠藤「!? マツコさん!」
マツコ「重力操作ッ!(キィィィンッ)」
山崎「え? 瓦礫の落下が……めっちゃゆっくり……」
マツコ「シュテルンビルトの重力を限りなく小さくしたわ……あの瓦礫は、ゆっくりと静かに落ちるわよ……」
タイガー「マツコさん……」
(ズズゥゥゥゥゥンッ)
……………………
ルナティック「……なんだ……今の……一瞬の浮揚感は……地面に激突せずに……済んだのか…………タナトスが……私に生きよと言っているのか……」
タイガー「……終わった……のか……」
ファイヤー「アポロンメディアは……ビルごとなくなっちゃったけど……」
浜田「アニエスさんは、死んでもうたんやろうな……」
オリガミ「でも……市民に被害が出ずに済みました……」
バーナビー「……ウロボロス……一体どんな組織なんだ……」
松本「はよ帰りたい」
浜田「おお、もう帰ろうや……ガキのスタッフも戻って来てくれるやろうしな」
バーナビー「皆さん……本当にありがとうごさいました……皆さんがいなければ、私達は石破とアニエスの野望に、うまく使われていました……」
ファイヤー「ほんと、めちゃくちゃな能力で助けてくれたわね」
浜田「こっちこそ、助けてもらいましたよ……ほんなら、またどっかでお会いしましょう」
バーナビー「ええ!」
(ゾロゾロゾロゾロ……)
遠藤「いやぁ終わりましたね」
松本「結局ブルー遠藤の能力分からんままやけどな」
田中「『氷のような冷静さで思考力が上がる』とかかもしれないっすね」
浜田「え?」
遠藤「え? マジで? いや、そうかも……」
松本「……地味すぎるやろ」
(ゾロゾロゾロゾロ……)
トニー「……ねぇ、ワイルドタイガー」
タイガー「ん? どうした? トニー」
トニー「これでよかったのかな? 街の皆は守れたけど……アポロンメディア……なくなっちゃったから……」
エドワード「それに、あんた達と旧知のプロデューサーが死んじまった……」
タイガー「気にすんじゃねぇよ! 俺達なら大丈夫だよ! どこでだって、どうやったって、生きていくさ! 俺達は生きてんだもんよ! 生きなきゃしょうがねぇだろ!」
トニー「でも……」
ローズ「なぁに辛気臭い顔してんのよ! あんた達は街を守ったヒーローなのよ!」
エドワード「……」
タイガー「そうさ! ヒーローがそんな顔してて良いのか?! 俺達のヒーロー人生、ここで終わるはずがないのに、よぉ!」
http://m.youtube.com/watch?v=s8aeVI6XBKc
おわり
147 名無しさん@おーぷん 2014/08/20(水)22:25:27 ID:QwKoet43m遠藤の能力なんやろ…
148 名無しさん@おーぷん 2014/08/20(水)22:32:03 ID:r1gtT4x6G>>147
察するに頭の回転が…
>>148
あんたすげえな
伝わったようで何よりです
>>261
まあ、大体の人には伝わってたやろ
確かに反応が少ないSSやったなww
いやでも、名作には違いないと思います!
ここ数日の楽しみでした!
お疲れ様!
乙かれさん
>>257
ありがとさん
長いのにお付き合いくださったかた、ありがとうごがいました
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元スレ 藤原「今日はお前たちにはシュテルンビルトを守るヒーローとして働いてもらうで」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1408505174/
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