福太郎「えーと……閻魔殿?」
- 1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/05(金) 21:14:28 ID:piKX.j06
- 福太郎「あいたたた、なんや薄暗いなぁ。えーと……閻魔殿?」
鬼灯「あなた、そんなところで寝ていてはいけませんよ」
福太郎「おわっ! こいつは失礼しました」
福太郎(なんやチンピラみたいな兄ちゃんやな、大大家さんと同じ鬼っぽいけどがたいは普通やな、目つき悪いわー。しっかしここどこやねん、不思議町に閻魔殿なんてあったかな……。まあなんにせよ会話できる人みたいやし、ちょっと聞いてみるか) - 2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/05(金) 21:15:16 ID:piKX.j06
- 福太郎「あのー、俺さっきまで街中におったんやけど、連れに殴られてひっくり返ってしもうてん。髪の白い兄ちゃんがおったと思うんですが……」
鬼灯「? いえ、私はいまあちらから歩いてきましたが、ほかには獄卒と亡者しか見ていませんよ。あなた街中にいたとおっしゃいましたね、どこの街です? もしやあなた……それより早くお立ちなさい、ほら」
福太郎「あ、手ぇありがとうございます。あれ、お兄さん社会保障ナンバー付けてへんの」
鬼灯「ああ、やっぱり。あなた現世から迷い込んだ生者ですね。どこから落ちてきたのか知りませんが、せっかくですから少しお話を聞いてから帰して差し上げますよ。こちらへどうぞ」
福太郎「え、現世て。そしたらここはなんなんですか、あの、俺絵描きで万魔学園美術教師の田村・福太郎です。あなたは一体」
鬼灯「これは失礼しました。ここは地獄の第5寝殿閻魔殿、私は閻魔大王の補佐官、鬼神の鬼灯と申します。あなたの身柄は私が保証しますのでご安心ください。さぁどうぞ、歓迎しますよ」 - 3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/05(金) 21:16:16 ID:piKX.j06
- ーー閻魔殿 鬼灯の部屋
福太郎(クリスタルヒトシくんや……鬼もふしぎ発見見てるんか。すっごい生活感あるなー。鬼ちゅうても人間とそんなに生活スタイル変わらないんかな。そいやパンデモニウムもそんなファンタジーでもなかったな)
鬼灯「散らかっていてすみません。きちんとおもてなししたいところですが、ここの住民は生者に慣れていませんから人前に出るのはやめておきましょう。こちら地獄名物金魚草のお茶です」
福太郎「あ、どうもありがとうございます……なんやリポDとコーラに梅昆布茶足したみたいな味やな……」(あっか! これ腹大丈夫かな)
鬼灯「………人間でも飲めるようですね」(ぼそっ)
福太郎「? なにか」
鬼灯「いえいえお気になさらず。ところで、少し調べてきましたが福太郎さんのお話から類推するに、卍巴市の不思議町にある井戸から落ちた可能性が高いですね。ここは以前からふさいでしまおうと言っているのですが何分権力的に複雑な場所ですから手が出せないでいるのです。お戻りになってから、現世側から塞ぐなりしてくださいね」
福太郎「それはえらいすんまへんです。せや、帰るてことは、地獄から現世に行く方法があるんですね」
鬼灯「ええ、私など亡者に沙汰する立場ですから現世のあなた方の文化を学ぶためによく視察に行っています。罪を犯した事実は変わりませんが、その罪が現世でどうやって犯されるのか解らないと適切な裁判が行えませんからね。それよりあなたからお聞きしたいことがあるのですよ」
福太郎「俺が話せることならなんでも。助けてもらったお礼ができたらええんですけど」
鬼灯「では、大召喚後以前からいる人間と以後に生まれた人間の死後の世界に対する認識の違いなど聞かせて貰えませんか? 視察で推し量ることはできますが、ずばり質問できる内容では無いので」 - 4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/05(金) 21:17:06 ID:piKX.j06
- 福太郎「確かに、初対面の人間に聞かれたらびびりますなぁ。せやな、俺なんかは大召喚前に生まれて、悪いことすると地獄に落ちるんやでー言われて育ちましたわ。今の子は大召喚で地獄?が身近になった大人に育てられたから昔とは”地獄”のニュアンスがちょっとずれてる気ぃはしますね。たとえば、20年前に鬼灯さんが地上に出たらまぁ、良くてコスプレ悪くて大騒ぎやったと思うんですけど、今ならなーんも言われへんでしょうね」
鬼灯「なるほど、地獄が身近。過去では我々はファンタジーの住人でしたが、いまや隣人同様ということでしょうね。確かに、最近の亡者は鬼を見てもあまり驚かないので困ります。まぁ、それを理由に刑罰を重くできてこちらは……おっと失礼、今のはお忘れください。たしかに地獄に堕ちても見慣れた存在がいるようでは、恐れもなにもありませんよね。裁判の段になれば亡者達も状況が解ってくるのでいいのですが」
福太郎「あの、やっぱほんまに裁判で刑罰を決めてお前は地獄行きやー!って仕組みなんですね。……もしよかったら、俺も地獄ってどないなってんのか聞きたいなーなんて」
鬼灯「そうですねぇ、まぁ、現世でも知られていることに多少の補足をする程度なら良いでしょう、いまの現世で口外しても、どうせ知っている者もいるでしょうしね、図解します」
すらすら
福太郎「あ、よかった。地獄でも使てる文字は同じですね。……八寒と八大それぞれに8つの小地獄を持つ16小地獄……こうして描かれるとほんま広いんやな」
鬼灯「ええ、地獄は広大です。福太郎さんはここに落ちて良かったですね。血の池や針山だったら大変なことになっていましたよ。具体的に言うと多分死んでます、地獄で生者が死亡した試しはないので助かりましたよ」
福太郎「ほ、ほかに迷い込んだ人っていてはるんですか? 小野篁なんかは地獄で閻魔の手伝いをしてたーちゅう伝説がありますけど」 - 5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/05(金) 21:17:41 ID:piKX.j06
- 鬼灯「おや、彼をご存じでしたか。ほかにいてもすぐに連れ戻されていると思いますよ。山から迷い込む場合は見てくれている方がいらっしゃいますから。先ほども言ったとおり、あなたが落ちた井戸のような抜け穴さえ塞いでしまえば、あなたがたがこちらに迷い込むということはそうそうありません。さ、見ましたね。残念ですが差し上げませんよ」
福太郎「ありがとうございます。残念ですわー、って、ほんまにこっちでわかることだけでしたね。死んだら観光とかできたら面白いと思いますわ」
鬼灯「そうですねぇ、死後あなたを職員としてスカウトできるような能力があれば、裁判ののち転生せずにここに留まって働いてもらうことになりますから、あなた次第ですね。なにか特筆するような特技はお持ちですか?」
福太郎「特技ちゅーか、能力?なら。地獄で役に立つかは分からんけど。あれ、死後でも使えるんかな」
鬼灯「生前でないと使えないのなら難しいですね、せっかくですから見せて頂けますか」
福太郎「ええ、ゆうても絵を描くだけなんですわ。……俺、ダブルマンで背中に獏がおるんです。そいつと一緒に白澤図を作ってるんです。ちょっと特殊なペンがあって、その縁で白澤図を作ってます、それで妖怪の絵を描くんですね。白澤図に載せるのはあれでも、似顔絵でも描きましょうか?」
鬼灯「おや、あなた白澤の宿主ですか。それは大変でしょう。私を白澤図に並べるのはお断りします。そうですね、私の絵は結構ですから、ちょっと描いて頂きたいものが、風景画はお得意ですか?」
福太郎「はい! イヤー実は風景の方が得意なんですわ。生きてる内に地獄の絵ぇ描けるなんて生きててよかったわーなんて」
鬼灯「喜んでいただけて何よりです、ただ描いてもらったものはこちらでいただきたい。それでもよろしいですか? あ、人に見せないでもらえれば写真でも」
福太郎「風景によりますけど……あ、もしかして地獄絵図ですか?」
鬼灯「とんでもない、美しい風景ですよ、さきほどあなたも飲んだ……」 - 6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/05(金) 21:19:21 ID:piKX.j06
- ーーー閻魔殿 中庭
白澤「あれ、中庭通行禁止だ。ついたてまでしてある。金魚草になんかあったのかな」
茄子「えー? でも俺中庭に来いって鬼灯さまに呼ばれてるんだけどな」
唐瓜「絵の手伝いする準備してこいって言ってたし、なんかすごい人がお忍びで来てるのかもな、北斎とか」
白澤「僕は薬の配達と牛頭に用事なんだけど、それならちょっと見てみたいかな。でも朴念仁に頼むのは癪だし」
唐瓜「それなら見なかったことにして配達しちゃった方がいいんじゃ……閻魔殿壊されるとちょっと」
白澤「壊すのはあいつだけどね! いや、それ以外にちょっと気になるにおい?がするんだよね。それでこっちまで来たんだけどさ」
茄子「ふーん、鬼灯さまお風呂入ってないのかな、まあいいや、鬼灯さまー、来ましたよー」
唐瓜「お前それ、聞いてたら失礼だぞ!」
ぱたん
鬼灯「どうも、非番のところ急に呼び出してすみません。ちゃんと入浴はしてますから大丈夫ですよ。お客人にあなたの話をしたら興味を持たれたので。あとは絵の手伝いを、と。唐瓜さんも良い機会ですからどうぞ。と………」
白澤「あ、胃潰瘍になったみたい……。あ、あのさ朴念仁。その中からすげー気になる気配がするんだけど」
鬼灯「ここでお前を殴って閻魔殿の修繕費がかかるのが癪だから許してやる。それ、多分あなたの眷属だと思いますよ。まあ、いいでしょう。入れ」 - 7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/05(金) 21:19:54 ID:piKX.j06
- ーーー
茄子「あれ、お兄さんが鬼灯さまの言ってた絵描きさん? 俺茄子っていうんだ。お兄さんは? へー、油絵の具なんだ。俺岩絵の具がメインなんだよ。ちょっと使ってみたいかも」
福太郎「お、おお。茄子さんな。俺は田村・福太郎いいます。よろしくお願いします。うん、やり方は西洋画やね。日本画はがっつり勉強はしてへんけど見るのは好きやな。鬼に言うのもあれやけど、地獄絵図とか」
茄子「茄子でいいよ福太郎さん。あれねー。閻魔大王以外の十王とかみんな同じ顔なのこっちじゃどうなの?って感じだよ。西洋の地獄絵っておどろおどろしいよねぇ。ああいうのも好きだけど。地獄は観光した?」
福太郎「じゃあ茄子、よろしくな。それと、じつは俺……」
鬼灯「茄子さん、唐瓜さん、白豚。そちらの福太郎さんは手違いで迷い込んだ生者です。おおらかな時代とはいえイレギュラーですから口外しないこと。絵を描かれるというので記念に金魚草畑を描いてもらっています。あと、実は生者でも地獄に来られるというのは知られるとトラブルの原因になりかねません」
福太郎「だもんで、念のためこうして人払いまでしてもらってるんですわ。地獄の観光は死んでからのんびりしよう思ってるわ。茄子は獄卒って聞いてるから、世話にならんよう頑張るわ」
茄子「すげー! 篁さんといっしょだね! でも従兄弟が臨死体験してる生者乗せた話してたけど、生きてる人も普通だねー」
唐瓜「あ、すいません。こいつの父親朧車なんです、父方の従兄弟も朧車だから、乗せたってそういうことです。こいつ変なことばっかり言うけど……すいません……」
福太郎「ええよええよ! 地獄にもタクシードライバーがあるんやね(……あれ、そういや臨死体験なんかな、これ)」 - 8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/05(金) 21:20:27 ID:piKX.j06
- 鬼灯「あ、福太郎さんは体ごと落ちてきてますから大丈夫ですよ。向こうにあなたの死体が転がってたりはしませんから、安心してください」
福太郎「あ、ですよね。背中の獏が普通におるし」
白澤「あ、あのさ福太郎くん。きみもしかしてア・バオア・クー?」
福太郎「え? ああ、そうです。獏王・白澤が背中に召喚されました。えーと唐瓜さんは茄子の付き添いで、あなたは?」
白澤「僕も白澤なんだよ、天国で薬屋をやってるんだ。そっかー、白澤かぁ。ねえ、影響がなかったら作業中その獏とちょっと話がしたいんだけど、いい?」
ーーー
福太郎「………で、これに素描して色付けて、壁に貼りたいってことだからぐわーっと」
茄子「さきに別紙にスケッチしてからこっちにするならコメント一覧
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- 2014年09月05日 22:50
- 足洗だ!!!!!
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- 2014年09月05日 22:54
- まさかほんとに足洗邸とは・・・
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- 2014年09月05日 23:01
- 予想外すぎる
そして俺得すぎる…
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- 2014年09月05日 23:15
- 足洗邸?と思ったら足洗邸だった!
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- 2014年09月05日 23:25
- 味野が出るかと期待したのに出なかった…
まあ多分呵責されてるだろうからなぁ味野は。
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