阿良々木暦「かおるファイア」
- 1 : ◆8HmEy52dzA 2014/09/05(金) 17:59:11.25 ID:thWzpapF0
- ・化物語×アイドルマスターシンデレラガールズのクロスです
・化物語の設定は終物語(下)まで
・ネタバレ含まれます。気になる方はご注意を
・終物語(下)より約五年後、という設定です
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- 5 : ◆8HmEy52dzA 2014/09/05(金) 18:14:35.15 ID:3/LdyvdFO
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001
今思えばその数日は、龍崎薫と過ごした数日は、夏の最期の断末魔のような有様だった。
その日、僕は文字通りの炎天下にいた。
陽射しは容赦無く肌を焼き、汗腺から汗を次々と滲み出させる。
木々に張り付く蝉たちは我の生涯の証を立てん、とばかりに合唱し鼓膜さえにも予断を許さない。
その様相は、まさに煉獄と形容しても決して大袈裟ではないだろう。
紛うことなき真夏だ。
用意した二枚のタオルのうち、一枚はもうそろそろ物理的に使用不可になりそうだ。
ここは本当に日本なのだろうか、と疑いたくなる気温と湿度に辟易とする。
待ち人の為に用意したジュースも最早人肌にまでぬるくなってしまっている。
仕方ないな、来たら改めて買い直すとしよう。
「暑…………」
口にしたところで涼しくなる訳もなく、暑い。
本日の気温は下手をしたら四十度へ到達するらしい。
ここ数日はずっとこんな感じだ。
特に夏が嫌いなわけではないが、ここまで猛暑が続くとさすがにげんなりとしてしまう。
そんな中、僕は何をしているのかというと、ここで担当アイドルを待っているのだが、正直言ってもう限界に近い。
一応、木の下で直射日光は避けているものの、染み付くような湿度のせいで木陰程度では涼を取ることもままならない。
代わりに陽光を受けてくれている木には悪いが焼け石に水もいいところだ。
場所としては川沿いの堤道のため風通しは良いのだが、風が無ければそれもてんで意味を成さない。
出来ることならば今すぐにでも目の前の川に飛び込んでしまいたい位だ。
手をかざし太陽を隠し、空を見上げる。
融けるような暑気の中、僕の血潮は果たして良く見えなかった。
- 6 : ◆8HmEy52dzA 2014/09/05(金) 18:18:25.32 ID:3/LdyvdFO
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「あ、鬼のお兄ちゃんだ」
「……斧乃木ちゃん?」
この暑気のためか人もほぼ見えない中、足音も立てずに斧乃木ちゃんが現れた。
片手に棒アイスを携え、いつもの無表情で僕の眼前に立つ。
……今の今まで近付いていることさえ気付かなかった。
暑さで相当参ってるのかな、僕。
「……なんでこんなところにいるんだ?」
「ちょっとカブトムシを探すついでに怪異関連の探しものをしていたんだよ、鬼のお兄ちゃん」
「いや、明らかに逆だろそれ」
斧乃木ちゃんは死体だからなのか、半袖とは言え暑そうなワンピースを着ているのに汗ひとつかいていない。
暑さを感じないのだとすれば羨ましい限りだ。
「そうかそうか。で、見つかったのか?」
「何言ってるの、冗談に決まっているじゃないか鬼のお兄ちゃん。式神である僕がカブトムシなんて子供っぽいもの求める訳ないでしょ? それにこんな都会のど真ん中でカブトムシが見つかるわけないじゃないか」
「そっちじゃねえよ」
いや、いつ如何なる時もどこからか平然とカブトムシを見つけて来るアイドルがうちにはいるんだが……。
「で、具体的には何を探しているんだ? 僕も協力出来るようならしてやるぞ」
「いらない。邪魔」
「ああ、そう……」
ひょっとしたら人の手が及ばない類の探し物なのかも知れない。
自他共に認めるお節介な僕だが、助けを必要としていない人を無理やり手伝うほど僕も厚顔無恥ではない。
- 7 : ◆8HmEy52dzA 2014/09/05(金) 18:21:45.71 ID:3/LdyvdFO
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「この辺りにいる、って聞いて来たんだけれど見つからなくてね。一生懸命探してはいるんだけど」
「とても一生懸命には見えないけどな」
棒アイス片手に無表情で闊歩していても何かを探しているようには見えない。
ましてや一生懸命に傾倒しているかと問われれば限りなく違うと言わざるを得ない。
「鬼のお兄ちゃん、顔が悪いね」
「顔が!?」
斧乃木ちゃんから何の脈絡もなく、突如として発せられた暴言に気の利いた返しも出来ず鸚鵡返しにする僕。
名ツッコミ役として割と名を馳せてきた僕ではあるが、今はそんな元気もなければそこまで落ち着いている歳でもない。
「間違えた、顔色が悪いね」
「本当に間違えたのかよ!」
間違え方に悪意を感じるよ!
「暑いんだよ……そりゃ顔色も悪くなるさ」
「なに言ってるんだい、鬼のお兄ちゃん。顔が悪いのは元々じゃないか」
「やっぱりわざとじゃねえかこの野郎!」
ああ、怒鳴ると更に汗が吹き出してくる。
斧乃木ちゃんを無視してタオルを取り出し汗を拭い一息つくと、河に掛かっている橋の上に見慣れた人影が見えた。
キャミソールにミニスカートと如何にも夏を感じさせる格好をした少女が走ってこっちに向かってくる。
僕の担当するアイドルがひとり、龍崎だ。
- 8 : ◆8HmEy52dzA 2014/09/05(金) 18:25:00.40 ID:3/LdyvdFO
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「やれやれ、やっと来たか」
「なにあの子。鬼のお兄ちゃんの新しいロリ奴隷?」
「新しいも何も僕にそんな犯罪臭がする存在はいない!」
「そうか、現状のロリトリオにあの子を追加してロリカルテットにするんだね」
「する訳ないだろ。僕の担当アイドルだよ」
斧乃木ちゃんの言うロリトリオは忍、八九寺、斧乃木ちゃんの三人のことだが、さすがにアイドルユニットとして売り出すのは無謀にも程がある。
全員人外の存在である、という如何ともし難い理由を除いたとしても、まともにユニットとして成立しないのが目に見えるようだ。
いや待てよ、シンデレラプロのロリ組でユニットを組むのもアリだな。
龍崎に市原に横山で新生ロリトリオ、更に佐城と福山も加えてロリクインテット、更に更に佐々木とメアリーと遊佐と赤城も加えてロリノネットでどうだ!
素晴らしい、天国じゃないか!
「鬼のお兄ちゃん、死体の僕がドン引きするくらいすごい顔してるよ」
「おっと、いかんいかん」
頬を張って表情を引き締める。
斧乃木ちゃんはともかく龍崎に僕の弛んだ表情など見せられない。
無邪気な子供にみっともない大人の姿は見せられないからね。
- 10 : ◆8HmEy52dzA 2014/09/05(金) 18:28:45.09 ID:3/LdyvdFO
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「せんせぇー!!」
息も絶え絶えに手を上げ、笑顔で駆け寄ってくる龍崎。
龍崎薫、九歳。
大所帯を持つシンデレラプロの中でも最年少組にあたる小学生アイドルだ。
同い年は着ぐるみ女王・市原と現代の魔女っ娘・横山しかいない。
龍崎のアイドルとしての魅力は、何と言っても年相応の子供らしさと元気が挙げられる。
僕も龍崎の、その非常に強そうな苗字とは相反した無邪気さと純粋な心に何度癒されたか、もはや両手では数え切れない程だ。
僕の言うことは何でも信じるし、知らない人について行きそうでちょっと心配な父性を感じさせる側面もある。
あまりの純粋さに下手をしたら僕がパンツくれと言ったらくれるかも知れないが、僕は龍崎へのセクハラはあと最低五年は我慢しようと綿密な計画を立てているのだ。
目指すは光源氏だ。
更には僕のことを先生と慕ってくれている、将来が一番楽しみな子だと言っても過言ではない。
「よう龍崎、お疲れ様」
「はぁ……はぁ……ご、ごめんねせんせぇ……ウサギさんのお世話の当番してたら、遅くなっちゃって……」
ああ、そうか。
世間ではもう小学生は夏休みというやつだ。
僕も近年までは大学生だったが、妙に懐かしい響きを感じる。
社会人に、ましてや芸能界に夏休みなんてある訳がない。
一般的にはお盆休みなるものがあるが、皆が休みの時こそ稼がなければいけないのが芸能界だ。
それに小学生から大学生までのアイドルたちは夏休みだからこそ行動範囲が広がる。
僕としては忙しいが一際頑張らなければいけない時期だ。
関係ないけれど、大学ってあんなに学費高い割になんであんなに長期休暇が長いんだろう。
- 11 : ◆8HmEy52dzA 2014/09/05(金) 18:32:49.03 ID:3/LdyvdFO
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「いいよいいよ、龍崎こそそんなに走って来て疲れただろう。何処かで冷たいものでも飲もうか」
「やったぁ! かおるクリームソーダがいい!」
買って来た缶ジュースはぬるくなってしまった事だし、経費で冷房のガンガン効いた喫茶店でアイスコーヒーでも飲みたい気分だ。
「僕はかき氷がいいな」
「なんでついて来るのが前提なんだよ。探し物をしているんじゃないのか?」
「怪異とスイーツ、優先すべきはどちらかなんて明確じゃないか」
「……そうかよ」
誰に頼まれたのか知らないが、どうせ臥煙さんか影縫さんあたりだろう。
この世で最もおっかない女性ベストスリーのうち二人だ
。斧乃木ちゃんが怒られるのは構わないが、それを僕のせいにされたらとても困る。
斧乃木ちゃんなら何食わぬ顔でやりそうだし。
「そのお姉ちゃんだぁれ?」
「…………」
ちらりと目配せをしてくる斧乃木ちゃん。どうやらどう対応するべきか僕に問うているらしい。
無言の圧力を感じる。
「ああ、僕の……友達で、斧乃木余接ちゃん」
「龍崎薫です、よろしくお願いします、余接お姉ちゃん!」
「……よろしく」
初対面の斧乃木ちゃんにも満面の笑顔で挨拶をする龍崎は天使に違いない。
それに対し安定の無表情で返す斧乃木ちゃんだったが、何処か様子がおかしかった。
いや、無表情はそのままなのだけれど、フリーズしているかのように微動だにしない。
「おい、どうしたんだよ斧乃木ちゃん。大丈夫か?」
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん………………いい、いいよ」
「……おい」
心なしか、斧乃木ちゃんの表情が緩んでいる気がした。
あくまで『気がする』程度なので実際には変わっていないのだろうが、気のせい程度でも無表情以外に表情を持たない斧乃木ちゃんの印象を変えるとは大したものだ。
で、当の本人はどうやらお姉ちゃんと呼ばれたことが嬉しいらしい。
「僕はお姉ちゃんなんて呼ばれたことはないからね……斬新な気分だよ」
「そりゃそうだろうな」
斧乃木ちゃんは歳を取らない上にデフォルトが童女だ。
その上怪異なので子供が関わることも少ない。
となれば必然的に年下と知り合う機会自体が希少になる。
僕の知り合いの中でも斧乃木ちゃんよりも年下なのは外見面で忍くらいだ。
その忍にしたってお姉ちゃんなんて言うようなキャラでもなし、そもそも斧乃木ちゃんの生前の年齢もいまいち不明なため曖昧模糊としている。
- 12 : ◆8HmEy52dzA 2014/09/05(金) 18:34:45.12 ID:3/LdyvdFO
- 「とってもいい子だね、龍崎薫」
「ああ、僕の自慢のアイドルさ」
「いい子すぎてむかつくね。殴っていい?」
「どんなキャラだよ! いい訳ないだろ!」
「今回はヤンデレでいこうと思って」
相変わらずキャラの安定しない子だな。
まあ、それが斧乃木ちゃんのキャラと言えなくもないけれど。
「それにそれはヤンデレじゃなくてただの情緒不安定だ。ヤンデレなめんじゃねえ」
ヤンデレとは相手を愛するがあまり少々軌道が逸れてしまった女の子のことだ。
重度ともなると常軌を逸した行動を取ることもしばしばだが、その愛情の深さと一途さは一線を画している。
ひたぎもある意味ヤンデレの側面を持っているので、僕は割とヤンデレには寛容なのである。
「せんせぇ、やんでれってなぁに?」
「……龍崎も大きくなればわかコメント一覧
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- 2014年09月05日 20:27
- いいと思います
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- 2014年09月05日 20:36
- さらっと読めていい
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- 2014年09月05日 20:38
- なんでほたるん、不幸な目にあうのん?
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- 2014年09月05日 20:56
- もし埋まってた子の苗字が白菊だったりしたら、全俺が泣く
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- 2014年09月05日 21:21
- 最初のほたるちゃんで
白菊さん他の事務所と勘違いしてた
やっぱりこのシリーズは読みやすく高評価
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- 2014年09月05日 21:30
- 久しぶりにSSきたな
やっぱりこの人の作品は違和感なく読みやすいな
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- 2014年09月05日 21:50
- 流石だ
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- 2014年09月05日 22:07
- 楽しみだったから嬉しい
グリに移らない限りは読み続ける
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- 2014年09月05日 22:24
- 今回もよかった。
これ見て公式もコラボとかしないかな
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- 2014年09月05日 22:42
- 西尾嫌いだからこのシリーズ終わってほしい
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- 2014年09月05日 22:53
- これは西尾が書いてるわけではないだろ
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- 2014年09月05日 22:57
- めだかボックスみたいな痛々しさが足りない。リスペクト不足
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- 2014年09月05日 23:02
- ※10 読まなきゃいい話
※12 あなたが書いてくれるんですよね?
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- 2014年09月05日 23:10
- 続編で白菊の方のほたるちゃん出してくれると嬉しいね、もう出てたっけ?
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- 2014年09月05日 23:32
- ※覧荒らしたいならもう少し考えてから書き込めよ
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