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女「恋人同士になって5回目のクリスマス」|エレファント速報:SSまとめブログ

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女「恋人同士になって5回目のクリスマス」

1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:10:29 ID:XyQ61WTk

山無し谷無しオチ無しの日記のようなもの。


ピリリリリというアラーム音で目が覚める。

瞼が開き切らず、霞む視界で確認する携帯電話のサブディスプレイに、6:00の表示。

女「ぐ、うう……」

寒い。

冬の朝、布団は鳥餅の塊のように私に絡みつく。

私は朝に強い方だと思うけども、寒さに強いわけじゃない。

この時期はどうしても布団に包まる時間が長くなってしまう。

しかし、寝ているわけにもいかない。

なにせ今日は12月25日、日曜日。

クリスマス当日であり、私の戦いの日でもある。

私は特に信心深いわけではないけど、心の底からキリスト様に感謝する。

大好きな人と公然といちゃいちゃできる口実を作ってくれて、本当にありがとうございます。



2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:11:38 ID:XyQ61WTk


冷たい水で顔を洗い、歯を磨いて眠気を散らす。

ゴムで髪の毛を括って、パジャマの上にエプロンをつけ、キッチンに立つ。

何度も言うが、今日はクリスマスである。

男くんにケーキを食べて貰うのである。

ベタベタに甘い物が苦手な男くんでも、美味しく食べられるケーキを。

特に生クリームは、あんまり食べ過ぎると気分が悪くなってしまうみたいだ。

どちらかといえば少し苦いものが好き。

なので、今日はほろ苦いプチティラミスを作ろうと思う。



3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:12:45 ID:XyQ61WTk


何週間も前から、今日のシミュレーションを繰り返してきた。

必要な材料は既に揃っているし、事前に2度ほど試作もした。

準備は万全。

あとは作るだけだ。

まずはエスプレッソコーヒーを淹れ、ついでに一杯飲む。

ほっと一息。

寝起きの身体に熱いコーヒー。

五臓六腑に染み渡るとはこのような感覚なのだろうか。



4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:13:45 ID:XyQ61WTk


今回はビスケットを焼くところから始める。

卵黄とグラニュー糖を混ぜ合わせ、生地の素を作る。

卵白に篩ったグラニュー糖を数回に分けて入れながら、ミキサーで泡立ててメレンゲを作る。

生地の素とメレンゲの様子を見ながら混ぜ合わせ、篩った薄力粉を加えてゴムベラで軽く馴染ませる。

これだけでビスケットの生地は完成だ。

絞り袋に生地を入れて、キッチンシートの上にぎゅぶぶぶぶーと棒状に絞っていく。

せっかくなので、家族の分もティラミスを焼く。多めに作っても弟と父が食べてくれるだろう。

あやつらは私が驚愕するほど甘い物が好きだ。

最後に上からコーヒーパウダーを散らし、予熱したオーブンで8分ほど焼き上げる。



5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:14:35 ID:XyQ61WTk


その間にムースを作る。

ボウルに卵黄としっかりと篩ったグラニュー糖、そしてコーヒーパウダー、白ワインを入れ、湯煎で暖めながらしっかりしっかりと泡立てる。

ここを怠るとまず間違いなく失敗する。

泡立てが完了したら、今度は氷水でボウルを冷やしながらマスカルポーネをほぐして軽くあわせ、ムースの素が完成。

さっきとは反対に、ここで混ぜすぎると大失敗する。

別のボウルで、生クリームを泡立てる。

ムースの素と生クリームの状態を見ながら、お互いに馴染んで邪魔しない状態になるまで泡立てたら、

5回に分けてムースの素を加えて行き、全体が均一に、ムラの無いよう混ぜてムースが完成した。



6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:15:35 ID:XyQ61WTk


その頃には既に焼きあがって余熱も取れているビスケット。

刷毛を使って、さっき淹れたエスプレッソコーヒーをしっとりとするまで染み込ませる。

プチケーキ用の型の底にビスケットを敷き詰め、上からビスケットが埋まる程度までムースを流し込み、

軽く粉糖を振りかけて、その上にもう一度ビスケットを敷き詰めて、さらにムースを流し込む。

ビスケットとムースの層が二段。

ひとまず、完成だ。

あとは冷蔵庫でじっくり冷やしておいて、男くんの部屋に行く直前にコーヒーパウダーを振り掛けるだけ。

美味しいと、言って貰えるだろうか。

何度も何度も男くんにお菓子を作ってきたけども、その度にいつも不安になってしまう。

口に合わなかったらどうしよう……という不安は、いつになっても拭いきれない。

……でも正直に言うと、この不安も仄かに幸せだったりするのだ。

なんというか、役得だと思う。

男くんにお菓子を振舞える人なんて、私か男母さんくらいのものなのだから。



7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:16:49 ID:XyQ61WTk


時刻は丁度7時頃。

朝ご飯を作ることにする。

ご飯にキノコのお味噌汁、目玉焼きとソーセージとサラダ。

私は目玉焼きのふちがカリカリになっているのが好きだ。

さらにベーコンを下に敷いてカリカリになっていると最高だけども、今日はベーコンはなし。

ちなみに私も男くんも目玉焼きは半熟で醤油派だ。

結婚したら目玉焼きは同じ焼き加減で大丈夫……。ふふふ。

フライ返しで目玉焼きをお皿に移しながら、まだ見ぬ結婚生活に想いを馳せる。

ああ、願わくば、男くんと結婚できますように。

私、結婚したら毎日男くんに美味しい朝ご飯を作るんだ。



9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:17:30 ID:XyQ61WTk


7時半を過ぎる頃になると、家族が続々と起きてくる。

まず母、そして三歳差の弟、最後に僅差で父。

父「おはよう」

女「おはよ」

弟「んはよう」

母「おはようございます」

弟と父は良く似ている。

女「お父さん寝癖」

父「ん、どこ」

母「夫さん、弟と同じところですよ」

弟「マジか」

例えば、寝癖のつき方とか。



11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:18:54 ID:XyQ61WTk


一家「いただきます」

一家「ごちそうさまでした」



12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:19:37 ID:XyQ61WTk


食器を軽く洗ってから、洗浄機に入れ、スイッチを入れる。

じょばばばばと音を立て、洗浄機が動き出す。

母「今日男くんの部屋に行くんでしょ?」

女「あ、うん」

母「さっさとシャワー浴びときなさい。なんか凄く甘ったるい匂いするよ」

自分の服を摘まんで嗅いでみると、確かに、甘ったるい。

髪の毛にも匂いが染み付いてしまっている。

女「う。……浴びてくる」

母「あと、女性が無闇に胸元を摘まむんじゃないよ」

女「……気を付けます」



13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:20:18 ID:XyQ61WTk


母のアドバイスどおり、軽くシャワーを浴びて染み付いた匂いを落とす。

髪の毛もしっかり漱いで、括っていたせいで付いてしまった癖を直しておく。

冬場は乾燥して、肌も髪の毛もどうしても痛みがちなのが辛い。

特に髪の毛は、私が自分の身体で自慢できる唯一といって良い場所だ。

しっかりと芯までドライヤーで乾かしたあと、保湿も欠かさず行っておく。

女「……あ。枝毛……」

……。最近、夜遅くまで勉強しているせいだ、きっと。

そうに違いない。

はさみで切っておく。



14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:21:02 ID:XyQ61WTk


時刻は8時半。

まだまだまだまだ時間がある。時間が早く過ぎればいいのに。

今日は15時ごろから男くんとデートの予定だ。

一度、男くんの部屋に上がらせてもらって、ケーキを食べてもらう。

プレゼント交換をして、少しのんびりDVDを見たりして、それから外でデート。

ライトアップされる公園に、イルミネーションを一目見に行く。

それからお食事、の予定だ。

女「……ふふふふふ」

脳内で予定を確認しているだけで表情筋が緩みに緩んでしまう。

弟「姉ちゃん浮かれすぎてきもいぞ」

顔を洗った帰りらしき弟が、廊下で呆れ返った表情をする。

女「やかましーぞ、人の事言えないでしょーが」

浮かれてしまうものは浮かれてしまうのだから仕方ない。



15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:22:42 ID:XyQ61WTk

はたと気付く、弟が未だにパジャマ姿だ。

女「あれ? 弟は予定無いの」

弟「無い」

女「……てっきりあるもんだと思ってたけど」

去年、弟はクリスマスに朝からデートしていた。

弟が小学生の時から好きだった相手と恋人同士になり、初めてのクリスマス。それはそれは浮かれ切っていたのだ。

だから、今年もそうなるだろうと、先ほどは“人の事言えない”と言ったのだけども……。

女「恋人ちゃんはどうしたの…………もしかして、別れちゃったとか」

弟「いや、今日はどうしてもダメなんだって。受験勉強。俺も勉強する」

弟と弟の恋人ちゃんは高校受験を間近に控えた身。浮かれている暇は無いということだろう。

女「あー。がんばって。冷蔵庫にあるケーキ適当にして良いから」

弟「うん、ありがと。というか姉ちゃんは勉強良いの?」

かく言う私も大学受験を控えた身。

女「……一日くらい息抜きしてもバチ当たらないはず。というかいい加減会えなさ過ぎて寂しい」

弟「いや、別に責めてるわけじゃないけどさ」



16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:23:39 ID:XyQ61WTk


自室に戻って、今日の服装を確認する。

悲しい事に、私は断じておしゃれではない。

むしろ己がセンスを壊滅的と評価している。

普段なら制服でいいのだけども、今日は休日も休日、世間一般的にクリスマスという、特別な休日だ。

こんな日に制服で男くんと出歩くなんて、私も恥ずかしいし男くんにも恥ずかしい思いをさせてしまう。

そして周りからは可愛そうな人として認識されること請け合い。

制服で行くわけにはいかない。

いかないのだが、わかっていても、おしゃれのセンスがないのはどうしようもない。

センスのない人は、いくらがんばってもセンスがないのだ。

……ああでも、制服でいいのは今年度までか。

今からでも遅くはない。

ファッションセンスを高める事はできそうにないけども、可愛い組み合わせを覚えておかなければ。



17 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:24:34 ID:XyQ61WTk


……そういえば、男くんと恋人同士になって始めてのデートは、服装を悩みに悩んで頭がポンコツ化してしまい、休日だというのに制服で行ったなぁ。

なんでこいつ初デートに制服で来てんだ? と、男くんの表情が熱弁を奮っていたことを思い出す。

懐かしく、そしてとても恥ずかしい記憶だ。

しかし、あれから私もちょっとは成長した。デートに私服で行けるくらいには。

基本的に雑誌のコピーだけども。

センスがないのだから、完成品をまるまるコピーしてしまえばよいのだ。

やっぱり、大好きな人には少しでも可愛いと思われたいというのが女というものだし。



18 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/07(日) 20:25:28 ID:XyQ61WTk


私はあんまり女の子っぽい服を選ばない。

というか、スカートがどうしても落ち着かないのだ。

中学校で制服になるまで、私はスカートをはいたことがなかったと言っても過言ではなかった。

そのせいもあると思う。

今現在、高校では制服のスカートだけども、できれば制服のスカートもやめたいくらいに落ち着かない。

私服はいつもいつも適当なデニムやパンツに、特にこだわりのあるわけでもないトップス。

……でも、今日は年に一度のクリスマス。

せめて今日くらいは、女の子っぽい服を着ようと決意した。



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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年09月07日 23:04
      • 5 「まとめ依頼しようと思っていたらすでにまとめられていた」
        何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何をされたのか わからなかった…
        AA略
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2014年09月07日 23:06
      • 甘い甘い甘い甘い…
        くそ、幸せにモゲロ
        まだ夏だろうが!

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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