勇者(Lv99)「死にたくても死ねない死なない俺と、殺そうにも殺せない殺したい魔王」
- 1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/09/03(水) 00:08:55.04 ID:0i+UKr460
・初投稿です。
・残酷な描写があります。
よろしくお願いします- 2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/09/03(水) 00:10:53.76 ID:0i+UKr460
その疫病は、強い感染力を持っており、発病した人間から空気感染する。感染した人間は発病後、一週間をかけて徐々に体の力が抜けてゆき、やがて体が動かなくなると今度は全身の穴という穴から血を流し、地獄の苦しみの果て死ぬ。
しかし特筆すべきはその疫病が魔族には一切発病しないということであった。
疫病は女神との対話を経て、教会が解毒魔法を開発するまでの3年間に全人口の4割を死滅させた。
結果として人々は魔族の進行と、疫病に苦しみ、魔王が現れてから三年の間に人類の領土は、ある小さな王国と、その周辺地域を残し、すべて侵略された。
三年間の劣勢の中、その小さな王国が生き残ることができたのは、孤島に浮かぶ地の利があったほかに、勇者の存在があったためであった。
その女神の加護を受けた選ばれし少年が、その啓示を全うし、疫病に苦しむその王国を仲間と共に、襲い来る魔物の手から守り抜いたのである。
そして、疫病の危機を人類が乗り切った後、勇者は旅立つことを決意した。
人々を苦しめる魔王を倒すため、勇者は、頼もしい三人の仲間と共に、世界を救うための旅にでた。
そして、艱難辛苦乗り越えた勇者一行は、5年間の旅の末、ついに魔王と対峙を果たしたのである。
- 3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/09/03(水) 00:12:13.60 ID:0i+UKr460
勇者「魔王……っ」
魔王城、魔王の間。 勇者は目の前、王座に鎮座する男を鋭く睨みつけた。
魔王「我の配下を次々屠り、ついにここまで辿りつたと思うと、感慨深いものがあるな」
魔王は、穏やかな口調でいった。一見すると黒髪長身の若い男にしか見えない。
しかし、勇者にはわかった。この男から発せられる禍々しい魔翌力が、目の前の存在が間違いなく魔王であると告げていた。
僧侶「勇者さま……」
勇者と同様、魔王の気に感づいたのか、彼女は冷や汗をかきながら勇者を呼んだ
僧侶「あの者は、今までに感じたことのないほどの力を感じます、ご用心を」
勇者「言われるまでもねーよ」
戦士「さっさとやっちまおうぜ」
戦士は筋肉隆々の腕に握られた斧を担ぎ、構えを完成させる。
魔法使い「援護は任せて」
彼女も小ぶりな杖を構え、いつでも戦える体制だ。
魔王「頼もしい仲間だな」
魔王の言葉に、皆がプレッシャーを感じる、ただその口から発せられる言葉だけでも、並みの人間なら意識を刈り取られていただろう。
魔王「だがな勇者、余は知っているぞ、貴様らが余を前にして勇敢に戦える理由をな」
勇者「…なんだと?」
魔王「ふふ、余がただ、何もせず貴様らが来るのを待っているとおもっていたのか?」
魔王「その貴様らの希望が、地獄であったことを教えてやろう」
魔王は、顔に微笑を浮かべると、王座から腰を上げた。
勇者「くるぞっ!!」
――仮に、この場に、村人がいたとしよう。その村人の目には、魔王が席を立った瞬間、勇者一行と魔王がその場から消えたように見えただろう。
次に起こるのは、爆炎と粉塵、しかしその粉塵も刹那の間に切り裂かれ霧散する。
魔王の間には今、常人ならかすっただけでも致命傷になりうる暴力が錯綜していた。
- 4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/09/03(水) 00:13:04.17 ID:0i+UKr460
魔法使い「極大疾風呪文!」
巨大な竜巻が、魔王めがけ突き進む。
魔王「ふん」
魔王の手の一振りで、魔法使いが生み出したものと同じレベルの竜巻が発生する。
同規模の呪文が激突し、相殺された。
僧侶「全能強化呪文」
僧侶の魔法が、勇者と戦士のステータスを跳ね上げる。
そして風の衝突により発生する粉塵を突き抜け、戦士と勇者が魔王に切りかかった。
戦士の重く早い斬撃と、勇者の素早く正確な斬撃が息の合ったコンビネーションと共に、音速を超える速度で放たれる。
魔王「ふははは」
その閃撃を、魔王は両手の上腕のみで受けきってみせた。
刃と腕が激突するたびに、金属音と火花が散る。
勇者と戦士の剣技を受け、体を後退させながらも、魔王は余裕を張り付けた顔で、二人の攻撃を防いでいた。
勇者(伝説の剣でも切れないのか!?)
戦士(ぬうううっ僧侶ちゃんによって強化された俺たちの剣技を防ぐとは)
無呼吸運動に二人が限界を感じたその時。
魔法使い・僧侶「どい てっ・くださいっ!」
勇者・戦士「!」
その音が届くと同時、勇者と戦士はその場から飛び退く。
魔法使い「極大熱線呪文!!」
僧侶「極聖十字呪文」
灼熱の極太光線と、眩く光る巨大な十字の衝撃波が、取り残された魔王を襲う。
魔王「!」
魔法使いと僧侶の究極魔法が、魔王に直撃する。粉塵と共に爆音と衝撃が空間を駆け抜けた。
戦士「やったか!?」
着地同時、声を発した戦士の顔が、一瞬で曇った。
魔王のいた地点を起点に巻き起こる風が、粉塵を払いのけ、無傷の魔王が姿を現したのだ。
- 5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/09/03(水) 00:13:46.67 ID:0i+UKr460
魔王「ふむ、なかなかやるな」
魔王の周囲に、野球ボールほどの大きさの光球が三十ほど召喚される。
勇者「!」
魔王が手を振るうと同時、光球が、四人それぞれへ向け迫る。
勇・戦・魔・僧「っツ!」
四人がそれぞれ音速の回避運動に入る。 それを追尾する光弾。
戦士「なっ」
迫る8つの光弾、その内の一つに戦士は斧を振り下ろした。 着弾、同時に爆発、その爆発は残りの光弾にも誘爆し、戦士は爆炎の中に包まれた。
勇者「戦士! くっそ」
勇者は、体を錐もみさせながら跳躍し、紙一重で迫る10の光弾を避けると、自身を通り過ぎた光球めがけ雷撃呪文を放つ。呪文の衝突により、10の光球が同時に炸裂した。
光球の爆風に吹き飛ぶ体の舵を取り、なんとか着地する。視界の隅で、魔法使いが僧侶と自分に迫る光球を、勇者と同じ要領でやり過ごすの確認する。
魔王「」
勇者「!!」
背後に走る悪寒に、勇者はとっさに背面へ向け伝説の剣を振り抜く。
刃が空を切る、その切っ先の数センチ先に魔王の余裕の張り付いた顔があった。
勇者「――~~ッ!!」
勇者は左手をかざし、雷撃呪文を放つ。
対し魔王は、暗黒呪文で応じた。
至近距離で二つの呪文が激突する。 鋭い雷鳴と光が辺りを包み込み、その後訪れる衝撃波に勇者の体が吹き飛んだ。
体が地面をバウンドし、転がり、やがて停止。 停止と同時、呪文を撃った左手に激痛が走る。
見れば、腕がなくなっていた。
ほぼゼロ距離からの勇者専用魔法と魔王専用魔法の激突だ、これぐらいで済んでむしろ運が良かった。
そう思考すると同時、勇者は同じ条件であった魔王を見、顔をしかめた。
魔王は涼しげな顔をして、先ほど勇者がいた場所に直立している。
僧侶の回復魔法で、黒焦げになった戦士の体と、勇者の失った左腕が再生した。
魔王「どうした? こんなものか?」
魔王はその余裕ゆえか、声をかけた。
勇者「……く」
勇者は、顔をゆがめる。
強い……今まで戦ったどんな敵よりも……これが魔王
女神の加護を授かった自分達をまるで相手にしていない。
しかし……どうにも引っかかる。戦闘前の言葉もそうだが、今の魔王の戦いぶりだ、たとえば先ほどの魔法使いの疾風呪文に対して、あの暗黒魔法を使えば、貫けたはずだ。 なぜ相殺を選択した? というより、なぜ人型のまま戦うのか。 この最終局面で本気を出さない理由などどこにもないはずなのに……
- 6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/09/03(水) 00:17:04.92 ID:0i+UKr460
勇者「!」
一瞬で勇者の目前に移動する魔王、その手刀と、勇者の剣が激突する。
魔王(何か感づいたか?)
勇者「――ッっ」
勇者は、思考を中断し、魔王との鍔迫り合いをやり過ごすと、後方に跳び、魔王と距離をとる。そして皆に目配せする。
戦・魔・僧「!」
三人の仲間達は、その目配せから読み取ったのか、勇者へ手をかざした。
三人の魔翌力が勇者に注ぎ込まれる。
勇者の体から魔翌力がほとばしる、頭髪が発光し重力に逆らうように逆立った。
魔王「!」
魔王の眼前に伝説の剣が迫る。
今までとはくらべものにならない圧倒的な初速で、繰り出されたそれを、魔王は屈むことで避けた。
続く第二閃、勇者によって放たれるそれは、やはり今までの比でない速度と威力をもって魔王に迫る。
魔王は魔翌力を腕の前腕に集中させ、繰り出されるそれを腕をクロスさせることで防いだ。
しかし、その威力を相殺できず、体が大きく後方へ吹き飛ぶ。
続く三閃、音速の空中滑空の最中迫るその閃撃を、魔王はまたしても前腕で防ぐ。
魔王「……!」
四閃、五閃、六閃、刹那の間に繰り出されるその攻撃を魔王は腕の挙動のみで対処しきった。
吹き飛ぶ魔王と並走する勇者によって振るわれる剣撃と、魔王の腕撃の激突により、二人の通る空間には漆黒と稲妻の衝撃波だけが取り残され。まるで二人を追従するように次々と爆ぜてゆく。
魔王の背が壁と激突する、それによって停止する体の滑空、目前には、伝説の剣による刺突が迫っている。
対し魔王は、両の手の平で白刃取りした。
勇者「!」
白刃取りの衝撃波が黒と雷の魔撃を放出しながら波紋上に周囲を駆け抜けた。その中心、勇者の腹部に、魔王のつま先がめり込む。
勇者「……ッ」
魔王に蹴り上げられ、上空にかちあげられる勇者。
同時、戦士が投射したアックスが、僧侶の極大呪文が、魔法使いの極大呪文が―
―三方から魔王へ迫る。
対し魔王は、漆黒の魔翌力を周囲に球体状に展開し、魔翌力のバリアを張った。
すべての攻撃が、魔王へ届くことなく、バリアに阻まれる。
勇者「究極皆雷撃呪文」
魔王(詠唱時間を稼ぐことが狙いか)
勇者を纏っていた魔翌力が、一瞬にして体から離れ、周囲に拡散する、そして勇者の掲げた手のひらに収束、まるで光線のような極太の雷撃が、雷速でバリアを貼った魔王へと降り注いだ。
魔王「……!」
勇者の全魔翌力を放出した一撃が、魔王のバリアを吹き飛ばし、魔王に直撃する。
光のドームに包まれる魔王。
やがて光が拡散する。
同時、着地する勇者。
勇者「……くそ」
勇者は着地と同時、顔を歪めた。
そこには、傷つき、口の端から血を流しながらも、直立する魔王の姿があった。
- 7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/09/03(水) 00:18:08.21 ID:0i+UKr460
30分後
魔王「思いのほか手こずったな、さすがは勇者一行といったところか」
衣服や体についた傷に顔をしかめながらも、魔王は満足気に足元に倒れる勇者一行を見つめた。
勇者「……く」
戦士「なんたる…」
僧侶「はぁ…はぁ…」
魔法使い「化け物…」
魔翌力をすべて使い果たし、立ち上がる体力も奪われた勇者たち、しかし皆、息がある。
魔王「まだしゃべれるのだから大したものだよ」
魔王はそういいながら、指を鳴らした。
魔王の間に魔物がぞろぞろと入ってくる。
魔王「連れて行け」
魔物「はっ」
勇者一行は乱暴に引きずられながら、荒れ果てた魔王の間を後にした。
- 11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/09/03(水) 21:43:22.58 ID:0i+UKr460
勇者に選ばれたものに与えられる女神の加護。
この加護を受けた人間は、人としての限界を超える体力と魔力を得ることができる。
そして勇者は、制約はあれど、この加護を仲間にも与えることができ、それにより勇者の仲間は、勇者と変わらぬ力を得ることができる。
また、女神の加護を受けたことによる最たる効力として不死がある。
どんな方法で殺そうと、加護を受けたものの死体はその場に残ることはなく、契約を交わした教会へ全快の状態で転移される。
つまり女神の加護を受けた者は、高い戦闘能力に加え、何度死のうがその戦闘の経験値を引き継いだまま生き返り、戦い続けることができるという、一般の人間や魔族と比べても圧倒的なアドバンテージを有するのであコメント一覧
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- 2014年09月08日 23:41
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