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【銀と金】森田鉄雄たちがエスポワールに乗るようです 第一部【賭博黙示録カイジ】|エレファント速報:SSまとめブログ

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【銀と金】森田鉄雄たちがエスポワールに乗るようです 第一部【賭博黙示録カイジ】

1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/08/13(水) 07:40:11.95 ID:ZGe9lj7P0

※福本伸行作品より「銀と金」と「賭博黙示録カイジ」のSS

※銀と金の森田がカイジのエスポワールに乗ることになった場合のお話

※一部モブキャラに名前や苗字あり(参考はかの有名な鬼畜ゲーから)

※三部構成の予定



2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/08/13(水) 07:52:21.23 ID:ZGe9lj7P0

森田「嫌になった……何もかも……」

森田「悪党のお守りなんて、もう……」

裏社会でのし上がるため、「銀王」こと裏社会のフィクサー平井銀二と共に活動を続けていた森田鉄雄――
しかし彼は、神威家の内部抗争における出来事をきっかけに、裏社会から足を洗うことを決意する。

天才的・悪魔的な才能を持つ平井銀二に魅かれていた森田は、銀二と袂を分かつこととなる。
もう二度と、彼のような自分を引き上げてくれる特別な人間とは出会えないことに涙して――

森田「さよなら、銀さん……」

1994年3月、森田鉄雄引退――


それから2年後……1996年2月――



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/08/13(水) 08:02:07.30 ID:ZGe9lj7P0

森田鉄雄は、無気力な日々を送っていた。
平井銀二という、彼が魅せられ、信頼し、そして超えたいと思っていた存在を喪失した森田は「自分の中の何かを失った」ように満たされない毎日を繰り返す。
裏社会の稼業で数億という大金を稼いだ森田であったが、彼はその金を全て捨て去っていた。
悪党として稼いだ金を見ているだけで、彼は自分の感覚が壊されていくような嫌悪を感じるようになったからだ。

引退後、森田は銀二と出会う前の日雇いの仕事などで地道に稼ぐフリーター生活へと逆戻りしていた。
さすがに競馬などのギャンブルに手を染めることはなかったが。
だが、再び戻ってきたシャバでの生活にまるで生き甲斐など感じられない……。

森田「ふぅー……ズルズル」

今日は仕事もなくアパートでカップラーメンを食べていた森田。

コン、コン

と、そこに扉をノックする音が。



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/13(水) 08:24:06.64 ID:ZGe9lj7P0

森田「はい? ……ん!?」

応対のために扉を開けた所、そこに立っていたのはサングラスをかけたヤクザのような男が一人……。
かつて裏稼業をしていた頃に自分達をサポートしてくれていた元新聞記者、巽 有三と似たような面影があった。

森田「な、何だよ? あんたは」

???「……森田鉄雄さんだね? 俺はこういうものだ」

ヤクザ風の男、懐から一枚の名刺を差し出す。

『TEIAI Group 遠藤金融 株式会社 代表取締役 遠藤勇次』

つまりこの男はサラ金会社の社長ということだ。



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/13(水) 08:50:18.85 ID:ZGe9lj7P0

だが、森田が目をつけたのはこの男の身分や会社などではなく、会社が属しているグループ名……!

森田「て、帝愛だと……!?」

遠藤「ほう、我ら帝愛グループをご存知とは光栄だねぇ」

森田(銀さんが言っていた、財閥じゃねえか……!)

森田はかつて裏社会で活動していた際、銀二から帝愛グループの話を少しだが聞かされていた。
何でも金融業を主体にした日本最大の巨大グループ企業であり、他にもカジノなどの娯楽業など様々な経営を生業にし、有名政治家とのパイプも持つほどだという……!
かつて対決した巨大グループ企業の一つ、誠京とは長年に渡り水面下で争っていたとか……。



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/13(水) 13:16:53.48 ID:ZGe9lj7P0

遠藤「中でいいかな? こんな戸口で話すようなことじゃないんだ」

森田「……帰んな。俺はあんた達に用はない。金なんか一銭も借りたことはないぞ!」

そう。森田は過去に一度たりとも「帝愛」から金を借りたことなどない。
帝愛が債務者に課す金利は極めて法外なものであり、10万借りただけでも1年後には200万もの負債に膨れ上がるというのだ。
金を借りていない以上、帝愛が自分に金を取り立てる道理などないはずだ。

遠藤「クックック……確かにな。お前さんは確かに、ウチからは一銭も金を借りちゃあいない」

遠藤、不敵に笑みを浮かべる……!

森田「だったら……!」

遠藤「まあ、落ち着きな。そのことについては、これから色々と話すよ……」



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/13(水) 13:33:52.69 ID:ZGe9lj7P0

森田、仕方なく遠藤を中に招き入れる。
互いに床に座り込み、遠藤は持ってきたケースから一枚の紙を取り出しテーブルに置く。

遠藤「一ヶ月前、ウチの親会社が金融会社の一つを買収して、グループに加えたんだ。その会社が持っていた債権をいくつか俺の所に回してくれてね。その一つが、こいつだ」

森田「ぐ……!」

森田、唖然とする……! それは4年前、銀二にスカウトされる前に一度だけ借りたことがあった消費者金融の契約書……!
帝愛とはまるで関係の無い、金利も至って普通のサラ金であった……!
だがまさかそこまで思い至らなかった……! 買収と債権の譲渡が行われていたとは……!

裏稼業に集中しすぎて、すっかり忘れていた……! 痛恨のミス……!!

遠藤「元金は20万、月5%の複利で4年と4ヶ月転がったことになるから……」

遠藤、電卓を取り出し計算する……その負債額は252万……!
裏社会で活動していた頃であればすぐにでも返済はできただろうが、今となっては素寒貧同然の森田に払える額ではない……!



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/08/13(水) 13:55:07.15 ID:ZGe9lj7P0

森田「それで、俺に今すぐそいつを払えというのか?」

遠藤「森田鉄雄、25歳……両親は既に死去している上、保証人もいない以上はそういうわけなんだが……」

さらに遠藤は取り出したのは債務者の情報を記した資料に目を通すが……。

遠藤「今日俺が来たのはそういうことじゃない……」

森田「なに?」

遠藤が言うには、一ヵ月後に晴海埠頭から出港するエスポワールという大型客船で帝愛が主催する負債者同士を集めてギャンブルが行われるという。
そのギャンブルに参加し、勝つことができれば負債は全て帳消しになる。それどころか1000万や2000万を稼ぐことも可能だそうだ。
ただし、負ければさらに借金は増えるだけでなく、どこぞで数年強制労働をしなければならない。

森田(やっぱり、銀さんが言っていた通りだ……こいつら……!)

かつて銀二から聞いた話だと、帝愛は裏では負債者の人権・命を奪う凶悪なギャンブルを行なわせているらしい。
と、なればそのエスポワールで行われるというギャンブルもそこらで行われるようなただのギャンブルではないのは想像に難くない……!



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/13(水) 14:21:42.67 ID:ZGe9lj7P0

森田(何が、希望の船だ……!)

誠京の会長、蔵前仁が政治家をギャンブルによる負債で縛り、さらには負債者を地下で飼い殺しにしていたのと同じ……いや、それ以上……!

遠藤「どうだい、森田鉄雄……? その船で勝てば、お前さんの借金はチャラになる。選ぶのはお前次第だが、今の借金は数年そこらで返せるものじゃねえぞ……」

森田「くっ……ぬかすな。要するに、俺に選択の余地はないってことなんだろう?」

たとえその主催するギャンブルに参加しなくとも、結局は負債者を生殺しにしようとするのは当然のこと。
つまりは、帝愛に借金をした時点で負債者の命運・生殺与奪は奴らに握られているも同然なのだ……!

遠藤「まあ、そういうことさ……」

遠藤、タバコに火を点けると森田の威嚇を軽くいなす……!

遠藤(森田鉄雄……ふっ、噂にたがわない男だな……。さすがに、あの「銀王」と組んでいたという話なだけはある。もっとも、今となってはお前もクズの一員……)



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/13(水) 14:59:01.86 ID:ZGe9lj7P0

一ヶ月後、晴海埠頭――

結局、森田は帝愛が主催するギャンブル、エスポワールのクルーズに参加することになった。
参加者は時間差をつけて招集され、帝愛の黒服に身元や持ち物などのチェックを行われ、それが済むと乗船し、船内の一室へと通される。
そこに集められていたのは100人弱の負債者たち……。理由は様々だろうが、帝愛に借金をして集められた囚人……。
生気が無く負のオーラで満たされた群衆の中に、森田も足を踏み入れる……。

森田(俺も銀さんに拾われなければ遅かれ早かれこうなってたってことか……。それが伸びていただけ……)

森田、部屋の隅の壁に寄りかかり自嘲する……。

カイジ(何だ、この男……他の奴らとは何か雰囲気が違うっていうか……)

森田のすぐ隣に立っていたその男の名は、伊藤開司……森田同様に遠藤によってこの希望の船に導かれた者……。
彼自身が借金をしたわけではないが、友人の借金の保証人となったことがきっかけで、この船へと落ちてしまった……!
カイジは森田が発する他の参加者とはまるで別物のオーラを感じ取っていたのである。



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/13(水) 15:28:06.09 ID:ZGe9lj7P0

黒服「お待たせいたしました。早速ですが、これから軍資金の貸付を行います」

数分後、現れた黒服は参加者たちの前に台車に乗せてきた札束の山を見せる。ざっと8億はあるのではなかろうか?
札束の山に、参加者たちの目は釘付けになる……。ただ一人、森田を除いて……。

黒服「貸付の上限は1000万、下限は100万。但し30歳以上の方の上限は500万となっております。金利は利率1.5%の10分複利……クルーズは4時間の予定ですので、借りた額に4割ほど上乗せして返して頂ければ結構……」

カイジ「よ、四割……!?」

森田(とんだぼったくりだな……。帝愛もとんでもない悪党だぜ……)

つまり、たとえシャバでの借金がチャラになってもこのクルーズで新たな借金を抱える可能性もあるということだ。
負債者救済と言いながら、帝愛はどこまでも金を搾り取ろうとしている……。
かつて平井銀二が不正融資をしていたのと良い勝負かもしれない……。



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL):2014/08/13(水) 16:06:46.88 ID:ZGe9lj7P0

その後、軍資金の利息に対して石田という男を筆頭に次々と参加者たちが抗議を始めるも、黒服は軽くいなしていた。
降りたければ降りろ、10年、20年をかけて借金を返すのも一つの選択だと言って。

カイジ(汚ねぇ……! 俺たちはそんな選択ができねえから、この船に乗ってるんじゃねえか)

森田(いや、むしろ一生負債を抱えていろってことか……)

たとえ石田の言ったようにこの船を降りたとしても、帝愛が課す金利は元金さえ払えずに膨れ上がっていくだけ。
つまり、一生はおろか数代でさえ返せるようなものではないのである。

黒服「どうなさいます? 石田様」

石田「100万だ……! くそぅ……」

黒服「ありがとうございます。次の方」

「沢村、100!」
「中根、100万!」
「今田、100万!」
「佐藤、100!」
「こっちも100!」
「俺も100だ!」
その後も参加者たちは軍資金を次々と借り受けていくが、ほとんどが下限の100万ばかり。