1: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:07:42 ID:ENZJCqj2


ザザアァァアアァァァ…

男(ひー、すっげー雨!)

男(会社に置き傘しててよかったわ)

?「ひっく…どうしよう…」

男「ん?」

?「たす…っく、けて…ぐす…」

男(!!傘もささないで、女の人がうずくまってる!?)

女「誰か…ひっく」

男(しかも、泣いてる!)
男「ど、どうしたんですかっ!?」

女「!あのっ…」クルッ

男「!??」

男「っか!!!!!!!!!」ゾッ
元スレ
のっぺら嬢(のっぺらじょう)「こんな顔ですが…」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1409461662/


 
2: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:09:11 ID:ENZJCqj2


男「かかか顔が無いっ!!??」

女?「あのっ、わ、私は俗に言うのっぺらぼうなんですけどっ…!」

男「あ、ああ…あ…」ガクガク

のっぺら嬢「こ、こんな顔ですいませんっ」ペコペコ

男「ああああ…」アトズサリ

のっぺら嬢「お願い!逃げないでっ!」

のっぺら嬢「この子を…、仔猫ちゃんを助けて下さいっ!!」

仔猫「…」グッターリ

男「あぇ?」

のっぺら嬢「ここ何日かは元気だったんですけど…!」

のっぺら嬢「この雨で冷えて、具合が悪くなったみたいでっ!」

のっぺら嬢「さっきからぐったりして、声もあげないんです!」




3: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:10:02 ID:ENZJCqj2


男「あーっと…」

のっぺら嬢「どうしようぅっ…えぐっ、このままじゃ…この子…あああっ」

のっぺら嬢「お願いしますっお願いしますっ!」ペコペコ

男「えっと…」ゴクリ

男「…あんた、俺を襲ったりしないか?」

のっぺら嬢「ひくっ、え?」

男「バケモノ、なんだろ?人を食ったり襲ったりしないのかって…」

のっぺら嬢「はい!ひっく、しません!ちょっと驚かしたりしますけど、危害は加えません!信じてください!」


男「…うん、そうか。わかった」




4: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:11:48 ID:ENZJCqj2


のっぺら嬢「えっ!?」

男「近くに動物病院がある」

男「確かまだ開いてるはずだから、行ってみる」

のっぺら嬢「本当ですかっ!?」

のっぺら嬢「ありがとうございます!ありがとうございます!」ペコペコ

男「仔猫をこっちに」

のっぺら嬢「お願い、します」

男「よっと…」スッ

仔猫「…」グッタリ

男「はい、傘」

のっぺら嬢「え?」




5: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:12:30 ID:ENZJCqj2


男「この子を抱いてたらさせないし、急ぐから邪魔になるし」

男「君もずぶ濡れじゃないか」スッ

のっぺら嬢「あ」

男「じゃ、行ってくる」ダダッ

のっぺら嬢「あ、あのっ…」



のっぺら嬢(私を見て、逃げなかった…)

のっぺら嬢(それに傘まで…)


ザザアァァァァ…




6: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:13:34 ID:ENZJCqj2



――
―――


男「では、よろしくお願いします。ありがとうございました」

ウイーン

男「へっぷし」

男(さむ…。一雨ごとに寒くなるな)ブルッ

のっぺら嬢「あの…」

男「どわあぁあぁっっ!」ビクビクビク!

のっぺら嬢「ああっ!ごめんなさいごめんなさい!」

のっぺら嬢「顔が無くて、驚かせてごめんなさい!」ペコペコペコペコ!

男「あの、ああ、いや…」ドキドキ

のっぺら嬢「ごめんなさい…」ウツムキ

のっぺら嬢「あの、これ傘…」スッ

男「ああ、うん」




7: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:14:50 ID:ENZJCqj2


のっぺら嬢「…ありがとうございました」ウツムキ

のっぺら嬢「それで…あの…仔猫ちゃんは…?」ウツムキ

男「あ、ああ。少し衰弱してたのと、風邪をこじらせたみたいで様子見で入院」

男「命に別状は無いって」

男「先生もここが自宅だから、たまに様子を看てくれるってさ」

のっぺら嬢「よかった…」

男「健康診断とかもして、何もなければ明日には退院できるみたいだ」

のっぺら嬢「はぁあぁあぁ…よかったよぅ…ぐすっ」ポロリ

男「あの…顔、上げなよ」

のっぺら嬢「ひくっ、え?えっ!?」




8: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:15:42 ID:ENZJCqj2


のっぺら嬢「でも、私のっぺらぼうで気持ち悪いですから…ずず」

男「さっきはすまなかった…」

のっぺら嬢「はい?」

男「バケモノとか言っちゃって、ごめん」

のっぺら嬢「え?あ、と、妖怪ですから、事実そうなんですけど…」

男「仔猫の心配する優しい人…、っていいのかわかんないけど」

男「とにかく、優しいのに」

のっぺら嬢「あなたこそ、私なんかのお願いを聞いてくれて」

のっぺら嬢「傘まで貸してくれて」ウツムキ

男「だから、顔上げなって」

のっぺら嬢「えっと…」

のっぺら嬢「…で、では////」ソッ




9: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:16:15 ID:ENZJCqj2




男「ふーん…」ジーッ

のっぺら嬢「あの…そんなに見つめられると…////」ドキドキ

男「あ、ごめん」

男(ちゃんと赤くなるのか…)

男「口はあるんだな」

のっぺら嬢「はい」

のっぺら嬢「目と鼻はありません」

男「…どうやってモノを視てるんだ?」

のっぺら嬢「えーっと、なんか普通に見えるんですけど…」

のっぺら嬢「どうやって見てるんですかね?」

男「なんじゃそら」




10: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 14:16:51 ID:ENZJCqj2


のっぺら嬢「まあ、バケモノ…ですから…」

男「そう言うなって、へっ…」

男「へっぷしん!」

のっぺら嬢「大丈夫ですか?」

男「ううっ、寒い」ズルル

のっぺら嬢「めっきり秋も深まりましたからね」

男「早めに帰るよ」

のっぺら嬢「そうして下さい」



のっぺら嬢「あの…」

男「ん?」




14: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 20:10:58 ID:ENZJCqj2


のっぺら嬢「また仔猫ちゃんの様子、見に来てくれるんですか?」

男「もちろん。明日また来るよ」

男「家もけっこう近くだからな」

のっぺら嬢「そうなんですか」

のっぺら嬢「ではあの、それで…えと…」モジモジ

男「どうした?」

のっぺら嬢「わ…私にも…仔猫ちゃんの様子、教えてくれませんか?」

のっぺら嬢「あまり明るい時間帯だと、私はこんなのなんで」

のっぺら嬢「今ぐらいの時間になっちゃうんですけど…」

男「優しいなぁ、君は」

のっぺら嬢「はぇっ!?////」




15: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 20:12:03 ID:ENZJCqj2


男「じゃあ、明日のこれぐらいの時間に、ここらへんで待ち合わせする?」

のっぺら嬢「いいんですかっ!?」

男「いいも何も、心配だろ?仔猫の事」

のっぺら嬢「なっ、何から何までありがとうございます!」ペコペコペコペコ

男「…ははっ」

のっぺら嬢「な、何かおかしいですか?」

男「いや、ふふふ、なんかちょっとカワイイなって」

のっぺら嬢「なっ、妖怪相手に何を言うんですか!////」

男「仔猫の為に一生懸命になって」

男「おまけに礼儀正しい律儀な妖怪って」




16: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 20:12:53 ID:ENZJCqj2


男「全然怖くないや、はははっ」

のっぺら嬢「ううー////」カァァァ

男「名前、まだ聞いてなかったな」

のっぺら嬢「はい?」

男「お互いの名前、まだ言ってなかったよな」

男「俺は男」

のっぺら嬢「あっ、あ、あの、わたた、わたしはっわたたた、私のなまなな名前は」

男「おいおい、落ち着けってば」

のっぺら嬢「すいません!すいません!」ペコペコ

のっぺら嬢「普通の人間の方に、名前を聞かれたのなんて初めてで…」

のっぺら嬢「私は…のっぺらぼうののっぺら嬢です」ペコリ




17: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 20:14:23 ID:ENZJCqj2


男「よろしく、のっぺら嬢さん」スッ

のっぺら嬢「は、はい…」スッ

アクシュアクシュ

男「猫が繋げた縁ってことで、な」

のっぺら嬢「…はい」

男「ふぇ…」

男「ふぇでっくしっ」

のっぺら嬢「わっ!さっきからクシャミばっかりですよ!」

男「うん…」ズルル




18: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 20:15:42 ID:ENZJCqj2


のっぺら嬢「早く帰って下さいって言いながら、長話してすいません」ペコペコペコペコ

男「いや、大丈夫」

のっぺら嬢「仔猫ちゃんの事と言い、傘と言い」

のっぺら嬢「今日は本当にありがとうございました!」

のっぺら嬢「明日もお世話になりますがよろしくお願いします」ペコリ

のっぺら嬢「では!」

タッタッタッ…

男「あっ…」

男(行っちゃった…)

男(今さらだが…、夢じゃないんだよな)




19: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 20:17:07 ID:ENZJCqj2

ザァァァ…

男(あ)

男(少し小降りにはなったけど)

男(あの子、雨大丈夫かな?)


男「ふぃっくしっ!」

男「んああっ」ブルルッ

男(ホントに寒くなったな)

男(早く帰ろう)

男「へっくしんっ!」



―――
――





20: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 20:18:42 ID:ENZJCqj2


―翌日―

のっぺら嬢(男さん、来てくれるのかな…)ドキドキ

のっぺら嬢(それにしても…初めてだな、あんなに人と喋ったの…)

のっぺら嬢(私みたいな妖怪を気味悪がらずに優しくしてくれて…)

のっぺら嬢(素敵だな…男さん…////)ドキドキ



のっぺら嬢(はっ!?////)

のっぺら嬢(ダメだダメだ!)

のっぺら嬢(私は妖怪なんだから、そんな気持ち持っちゃダメだ)

のっぺら嬢(妖怪…なんだから…)

のっぺら嬢(…)




21: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 20:19:41 ID:ENZJCqj2



ウイーン

男「ありがとう…ございました」

のっぺら嬢(あ!)

のっぺら嬢(もう様子を見に来てくれたんだ!)タタッ

のっぺら嬢「男さんっ!」

のっぺら嬢「…あ!」

のっぺら嬢(しまった!また驚かせちゃう!)

男「うん?ああ…のっぺら嬢さん…」

のっぺら嬢(あれ?驚かない?)

のっぺら嬢「その、あの…仔猫ちゃんはどうでしたか?」




22: ◆loxSgAubwY 2014/08/31(日) 20:20:05 ID:ENZJCqj2


男「…ああ、うん…」

のっぺら嬢(え…暗い返事?)
のっぺら嬢「な、何か良くなかったんですか?」

男「いや、仔猫は…元気になった…みたいだ」

のっぺら嬢「そうですか…」ホッ

男「入院は…もう一日することにした」

のっぺら嬢「え?どうしてですか?」

男「うん…」

フラリ…

男「あ…」ガク

のっぺら嬢「男さん!!?」ガシッ




26: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:20:48 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「んぎぃー!!…お、重い…!」

男「ご、ごめん…」

男「ちょっとカゼを引いたみたいで…」

のっぺら嬢「男さん昨日っ…、クシャミたくさんしてました!」

ヒタ

のっぺら嬢「熱い…今日一日こんな調子だったんですか!?」

男「いや、朝はクシャミだけだったんだけど」

男「一人暮らしで昼間は仕事だから、終わってから、仔猫を迎える準備しようとか思ってて」

男「そしたら、仕事の帰りからフラフラしだして…」

男「ちゃんと…休んだつもりだったんだけどな…」




27: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:22:08 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「体調が良くないなら、無理しなくてもよかったのにっ…!」

のっぺら嬢「私のせいでっ…ごめんなさいっごめんなさいっ!」ペコペコペコペコ

男「のっぺら嬢さんのせいじゃないから、気にしないで」

男「仕事がここんとこ忙しかったから…疲れが出たんだろな」フラフラ

のっぺら嬢「でも…」

男「明日にはちゃんと治して、仔猫を迎えに来るから…」

フラリ…

のっぺら嬢「あっ、またっ!?」ガシッ

のっぺら嬢「んぎぃー!!…お、重い…!」

男「また…ごめん…」




28: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:23:47 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「ふう」

のっぺら嬢「…家、近くだって言ってましたよね?」

男「あ、ああ…そうだけど」

のっぺら嬢「心配なので、ついていきます」

のっぺら嬢「よっと」グイッ

男「ちょ、ちょっ!大丈夫!?」

のっぺら嬢「大丈夫!一人暮らしだと、家族に私の姿を見られる心配はありませんので!」

男「そうじゃなくて!」

のっぺら嬢「はい?」

男「重いだろ?」




29: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:24:57 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「まあ…。ですけど、肩を貸さないといつコケるかわかりませんからね」

のっぺら嬢「何より、色々助けてもらったのに、放っておくわけにはいきません!」

のっぺら嬢「放っておいて、ヘタにケガをされるよりはいいですよ」

男「のっぺら嬢さん…結構言うねぇ」

のっぺら嬢「はっ!?」

のっぺら嬢「ごめんなさいごめんなさい!余計な事を!」ペコペコペコペコ




30: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:26:26 ID:9GOEhIVY


男「ホントに…ははは…優しいなぁ、のっぺら嬢さんは」

のっぺら嬢「えひゃい!?////」

男「こっちこそ、ごめん…。肩、借りるわ」

のっぺら嬢「…はいっ!」

のっぺら嬢「行きましょうか。ゆっくりでいいですから、ね」ニッコリ



―――
――





31: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:27:24 ID:9GOEhIVY




ガチャ

のっぺら嬢「お邪魔しまーす」

男「はは…」

のっぺら嬢「なんですか、また笑って」ムー


男「妖怪が礼儀正しいって、やっぱりおかしいや」

のっぺら嬢「妖怪だって色々ですよ?」

のっぺら嬢「中には…人を襲ったりする妖怪もいれば」

のっぺら嬢「幸福をもたらす者だっています」

男「へぇ」




32: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:28:43 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「生い立ちだって」

のっぺら嬢「生まれながら生粋の妖怪の者」

のっぺら嬢「命を全うした後、妖怪に転生した者」

のっぺら嬢「なりたくなかったのになってしまった者…あ」

のっぺらぼう娘「…あれ?」



男「どうかした?」

のっぺら嬢「いえ…」

のっぺら嬢(なんだろ、今の感覚…)

男「あ、ベッドは…こっち」

のっぺら嬢「あ、はい。んしょ」




33: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:30:54 ID:9GOEhIVY



のっぺら嬢「よいーしょ」

ギシッ

男「ふぅ…」


のっぺら嬢「薬とかありますか?」

男「タンスの上の薬箱に」

のっぺら嬢「はい」



のっぺら嬢「よいしょ」

のっぺら嬢「水、持ってきますから」トタトタ

のっぺら嬢「コップ適当にお借りしますね」

キュ、ジャーーー、キュキュ

のっぺら嬢「はい、お水です」




34: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:31:30 ID:9GOEhIVY



男「ああ、ありがとう」

ゴクゴク、ゴクリ

男「ふぅ…」

男「ふぇ、ふぇっくしん」ズルル

のっぺら嬢「今日もずいぶん冷えそうですからね」

のっぺら嬢「さ、横になってください」

ポフ

のっぺら嬢「ちゃんとお布団かけましょうね」




35: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:32:28 ID:9GOEhIVY


男「うん」

のっぺら嬢「あの…」

男「うん?」

のっぺら嬢「ここまで来て何ですけど、本当に…迷惑じゃないですか?」

男「いや、全然。すごく助かった」

男「ありがとう」

のっぺら嬢「で、でしたら…」




36: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 12:33:53 ID:9GOEhIVY



のっぺら嬢「あの…」

男「ん?」

のっぺら嬢「本当にご迷惑でなければ…このまま看病っ、させて下さい!」

男「…」

男「…はい?」

のっぺら嬢「私のお願いをたくさん聞いてくれた、せめてものお礼です!」

男「いやでも…」

のっぺら嬢「…あ」

のっぺら嬢「やっぱり…私なんか、気持ち、悪いです…よね?」シュン

男「えっ!?」




37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/01(月) 12:39:14 ID:ktMhyGS.

のっぺら嬢かわいい




38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/01(月) 12:59:00 ID:6ARDkAZA

かわいすぎワロタ




39: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 18:11:16 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「すいません、独り善がりで」ペコペコ

のっぺら嬢「今のは無かった事にして下さい」

のっぺら嬢「ゆっくり休ん… 男「そんなことないよっ!」

のっぺら嬢「え」

男「妖怪だからとか、気持ち悪いとかそんなことない」

男「それより、のっぺら嬢さんはいいのかって?」

のっぺら嬢「え?どういう事…ですか?」

男「俺の事を心配して看病するって言ってくれたのはわかる」

のっぺら嬢「…そう、です。はい」




40: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 18:14:46 ID:9GOEhIVY


男「嬉しいよ、すごく」ニコ

のっぺら嬢「ひぇい////」ポッ

男「でも…」

のっぺら嬢「はい?」

男「一人暮らしの男の家に…妖怪とは言え、一応…女、だろ?」

のっぺら嬢「はあ、まあ」

男「だから、いいのかな…って」

のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「ふっ、ふふふっ…」

男「な、なに?」




41: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 18:18:32 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「はははっ、見た目はほとんど人間の女性でも、妖怪ですよ?」

のっぺら嬢「目も鼻もないのに…ふふっ」

のっぺら嬢「そんな私に気遣いしてくれるなんて」

のっぺら嬢「やっぱり男さん、優しいですね」ニッコリ

男(あ…なんか口元が笑ってる)

男「そうかな////」

のっぺら嬢「そうですよーぅ!」

のっぺら嬢「礼儀正しい妖怪と、妖怪を怖がらない人間」

のっぺら嬢「ふふ、ホントに、おかしいですね」




42: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 18:21:36 ID:9GOEhIVY


男「はははっ…だな」

のっぺら嬢「ま、さしずめ『のっぺらぼうの恩返し』ってところですよ」

男「昔ばなしみたいだ」

のっぺら嬢「ですから、男さんさえ迷惑でなければ、看病させて下さい」

男「うん、じゃあ…お願いします」ペコ

のっぺら嬢「ふふ、はいっ!」


のっぺら嬢「あ、体温計りましょうね」

スピョ

のっぺら嬢「おでこ、結構熱いですね」

男「寒気と頭痛がする…」




43: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 18:24:12 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「…本当にごめんなさい。無理させてしまって」


男「いいよ。気にしなくて」

のっぺら嬢「…気にしてしまいますよ」

男「…ごめんな」

のっぺら嬢「ああいややややっ!?」

のっぺら嬢「そんな、いやっ、あの、男さんが謝ることじゃなくて」

のっぺら嬢「仔猫ちゃんの病院代だって、安くはないんでしょう?」

男「そんなに高額じゃないさ」

のっぺら嬢「でも、見ず知らずの…しかも顔が無いのっぺらぼうにですよ?」

のっぺら嬢「こんなに良く…してくれるなんて」




44: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 18:26:47 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「今まで、普通の人間の方とここまで接したことが無くてですね」

のっぺら嬢「どうしてここまでしてくれたんだろうって思いましてですね…」

のっぺら嬢「不思議に、思いました」

男「そか」


ピピピピ…

のっぺら嬢「あ」

スピョ

のっぺら嬢「9度2分」

のっぺら嬢「結構出てますね」

男「平気なつもりだったんだけどな」

のっぺら嬢「タオル…」キョロキョロ




45: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 18:30:09 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「あ、このタオル使っていいですか?」

男「うん」

のっぺら嬢「濡らしてきますね」トタトタ

キュ


ヒタ

のっぺら嬢「どうですか?気持ちいいですか?」

男「うん。ひんやりする」

のっぺら嬢「安心して寝て下さいね」

男「うん」

男「一人で寝込むより気が紛れて、楽になる」




46: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 18:31:24 ID:9GOEhIVY


のっぺら嬢「寝てる間に捕って食ったりしませんから」

男「怖いこと言うなよ」

のっぺら嬢「ふふっ。すいません」

男「薬、効いてきたかな…ふぁああ…」

のっぺら嬢「きっと仔猫ちゃん、男さんが迎えにくるの、待ってますよ」

のっぺら嬢「だから、ちゃんと治しましょうね」

男「ああ」



男「誰かがそばにいるって、やっぱりいいな…」

のっぺら嬢「ちょちょっと!妖怪相手に何安らいじゃってるんですか!?」




47: ◆loxSgAubwY 2014/09/01(月) 18:32:25 ID:9GOEhIVY


男「…変かな」

のっぺら嬢「ホントに不思議な人、ですね」

男「…うん…」

男「…」

男「…」

男「すーすー」

のっぺら嬢「あ、寝ちゃった」

のっぺら嬢「よっぽど、無理してたんですね」

男「すーぴょー、すーぴゅー」

のっぺら嬢「…ゆっくり休んでください」


―――
――





48: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 00:52:10 ID:o.M.reuY


――
―――


男「…」ゴソ

男「…ん」パチ

男「…んあ」ゴロン

チラ

のっぺら嬢「すーすー」

男「どわあああっ!!」ビクビク!

のっぺら嬢「わあっ!?」ガバッ

のっぺら嬢「あ、えっ、な、なに?」


男&のっぺら嬢「あ」

男&のっぺら嬢「看病…」


男「されたんだった」
のっぺら嬢「したんだった」




49: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 00:53:19 ID:o.M.reuY



男「あっと…おはよう」

のっぺら嬢「お、おはようございます」



男「ごめん、大声出して」

のっぺら嬢「い、いえっ」アセアセ

のっぺら嬢「私もタオルを取り替えたりしてる間に、枕元で寝ちゃったみたいで」

のっぺら嬢「そりゃ目覚めてのっぺらぼうが目の前にいたら、ビックリしますよね」

男「…そんなにまで看病してくれたのか」

のっぺら嬢「恩返しですから」ニコッ

男「ありがとう」

のっぺら嬢「いえ、そんなっ////」




50: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 00:54:15 ID:o.M.reuY



のっぺら嬢「た、たた体調はどうですか?」

男「あ、うん」

男「体は少しだるいけど、熱は下がったっぽいな」

男「頭も痛くない」

のっぺら嬢「とりあえず回復したみたいでよかったです」

男「のっぺら嬢さんのおかげだな」

のっぺら嬢「そ、そんな…」



男「あ、部屋もちょっと片付いてる」




51: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 00:54:55 ID:o.M.reuY


のっぺら嬢「男さんが寝てる間に少しだけ」

のっぺら嬢「…ご迷惑でしたか?」

男「いや、そんな事ないよ」

男「男の一人暮らしだとどうしても散らかってしま…」ハッ

のっぺら嬢「どうしました?」

男「…雑誌も…」キョロキョロ

男「片付いてる…な」

のっぺら嬢「散らばってましたので////」

男「…なぜ顔が赤い」

のっぺら嬢「えーとー、そのー、なんというかーですねー////」

男「…いろいろ見ちゃった?」ダラダラ

のっぺら嬢「若い男性なら…致し方…ないですよね!////」




52: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 01:00:22 ID:o.M.reuY


男「あ、おお…」

のっぺら嬢「まあ、妖怪と言えど、色恋の知識もありますから////」

男「ああ…ごめん////」

のっぺら嬢「あわわっ、大丈夫ですよ!謝らないで下さい!」

男「…うん////」

のっぺら嬢「胸の大きい女性が魅力的なのは私も重々承知してますから!」

男「ああっ!もうっ!人の性癖をハッキリと言うなよ!////」

のっぺら嬢「あわわわ!ごめんなさいごめんなさい!」ペコペコペコペコペコペコ!

―――
――





53: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 01:02:30 ID:o.M.reuY



のっぺら嬢「ど、どうでしたか?」


男「うんっ、おいしかった!」

のっぺら嬢「よかったです」

のっぺら嬢「病み上がりですからね。卵がゆでしっかり栄養を摂れるようにしました」

のっぺら嬢「生姜湯も風邪に効きますからね」

男「料理、結構できんの?」

のっぺら嬢「ええ、それなりには」

のっぺら嬢「…あれ」

男「どした?」

のっぺら嬢「なんで料理できるんだっけ?」

男「そりゃ誰かに教わったとか」




54: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 01:03:24 ID:o.M.reuY


のっぺら嬢「…誰かに?」

のっぺら嬢「誰に?」

のっぺら嬢「あれ?あれ!?」

のっぺら嬢「いつ?誰に?いつ?わからない」

のっぺら嬢「…わからない?」

のっぺら嬢「なんでわからないの?」

男「お、おい大丈夫か?」

のっぺら嬢「あれ…?あ…う…」

男「の、のっぺら嬢さん?」

のっぺら嬢「…うう」ポロポロ

男「おい、大丈夫か!?」ガシッ

のっぺら嬢「はっ!?」




55: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 01:04:40 ID:o.M.reuY


のっぺら嬢「あ、あの、すいません。急に変なことになっちゃって」

男「いや、いいんだけど…ホントに大丈夫?」

のっぺら嬢「ぐす、はい…」

のっぺら嬢「すいません、大丈夫ですから気にしないで下さい」

男「うん…」

のっぺら嬢「と、ところで仔猫ちゃんは…」

男「うん、迎えにいけるよ。のっぺら嬢さんの看病のおかげで、すっかり体調もよくなったし!」

男「仔猫も寂しいと思うからさ、早めに行ってこようと思う」

のっぺら嬢「はいっ!」ニコニコ

男「のっぺら嬢さんは、どうする?」




56: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 01:05:23 ID:o.M.reuY


のっぺら嬢「あー、朝っぱらからホイホイ外をうろつくワケにはいきませんからね」

男「だよなぁ」

男「じゃあ、留守番…頼むよ」

のっぺら嬢「へぃ?」

男「気になるだろ?仔猫のこと」

のっぺら嬢「それはそうですけど…」

男「よし。なら早速迎えに行ってくるわ」

のっぺら嬢「いいんですか?」

男「え?なにが?」




62: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:09:04 ID:o.M.reuY


のっぺら嬢「何がって…私が留守番、いいんですか?」

男「ああ、そゆこと」

男「うん、俺は平気だよ」

のっぺら嬢「でも」

男「のっぺら嬢さんはちゃんと俺の看病をしてくれた」

男「それだけで十分だよ」

のっぺら嬢「男さん…」

男「じゃあ行ってくるかな」

のっぺら嬢「男さん」

男「ん?」

のっぺら嬢「少しお聞きしたいことがあるんです」

男「なに?」




63: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:15:01 ID:o.M.reuY


のっぺら嬢「どうしてそんなに…私なんかに…良くしてくれるんですか?」

男「ああ、その事か。えらく気にするんだな」

のっぺら嬢「…すいません」

男「謝ることじゃないよ」


男「うん、大したことじゃないと思うんだけど」

のっぺら嬢「はい」

男「もう1年になるか…、俺、猫を飼ってたんだ」

のっぺら嬢「そうなんですか」

男「俺が生まれた時にうちに来た猫で、長生きしたんだよ」




64: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:17:16 ID:o.M.reuY


男「生まれてから、ずっと一緒にいたんだ」


男「俺がここで一人暮らしするようになってからは」

男「実家に俺がいないせいか一日中、にゃーにゃー鳴いて」

男「母さんが言うには、『あんたを探してるみたいだった』だって」

のっぺら嬢「ふふ、ずいぶん仲が良かったんですね」

男「うん」

男「それで、ここの大家さんに相談して、引き取ることができたんだ」




65: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:18:27 ID:o.M.reuY



男「朝起きたら、『にゃー』」

男「行ってきます、『にゃー』」

男「帰ってきたら、『にゃー』」


男「おかげで全然寂しくなかったな…」



男「でも、猫とかってさ、人間より早く逝っちゃうだろ?」

のっぺら嬢「…ですね」

男「まあ、いつか来るってわかってたんだけど」

男「ある日、普通に朝起きて、『にゃー』」

男「行ってきますで、『にゃー』」

男「いつもと変わらない朝だったんだよ」




66: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:19:50 ID:o.M.reuY




男「でもその日は帰ってきた時、いつもあるはずの『にゃー』がなかったんだ」



男「自分の寝床でうずくまって…」

男「呼吸も荒かった」

男「慌ててかけよったらさ」

男「少しだけ目を開けて、ギリギリ聞こえるくらいの鳴き声で」

男「『にゃー』って言ってくれたんだ」

男「それが…最期だった」


のっぺら嬢「…」

男「まるで俺の帰りを待ってたみたいだった」




67: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:21:20 ID:o.M.reuY


男「それから、ペットの葬儀屋に供養してもらって」

男「色々片付けて…」

男「普段の生活に戻った…つもりだったんだけど」

男「あん時の寂しさったら…なかったなぁ…」

男「起きても、家を出ても、帰ってきても」

男「静かだった」


男「わかってたんだけど、実際そうなるとキツいもんがあったな…」

のっぺら嬢「…」

男「まあ、ちょっと猫に依存した男の話、情けなかったかな」




68: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:24:17 ID:o.M.reuY


のっぺら嬢「…そ」

のっぺら嬢「ぞぉんなごど!うっぐ、あびば、えぐっひぐっ、ありまぜんよぉおおぉ〜!」ポロポロポロポロ〜!

男「!!?」ビクビクビク!

のっぺら嬢「あぐっ、男ざんのやざじざっ、よくつだわりまじだよぉおおぉぉ〜!」ポロポロポロポロ〜!

男「わっ、ちょっとちょっと!」

のっぺら嬢「うぇええやああああっ!」

男「ああっ、もう!落ち着いて!」アーターフーター








69: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:27:10 ID:o.M.reuY


――


のっぺら嬢「ずぴ。すびばぜん、取り乱しまじだ」

男「ちょっとびっくりした」

のっぺら嬢「ずずっ、猫ちゃんに…くすん、思い入れがあったんですね」

男「ちなみにこれがその子の写真」スッ



のっぺら嬢「!」

のっぺら嬢「仔猫ちゃんと模様が一緒?」

男「そ、灰縞の、俗に言うサバトラ柄ってやつか」

のっぺら嬢「だから…」

男「そ、余計にほっとけなかった」




70: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:27:57 ID:o.M.reuY


男「それにのっぺら嬢さんの必死さが伝わったからな」

男「あれだけ猫のために必死になれる…人?、なんだから悪いワケないだろう?」


のっぺら嬢「男さん…」

男「前置きが長くなったけど、気にかけたり、留守を任せる理由はそれ」

男「納得してくれた?」

のっぺら嬢「はいっ!」ニコッ


男(…たぶん、ちゃんと顔があると、笑ったら可愛いんだろうな)

男(そんな感じの笑顔だ)




71: ◆loxSgAubwY 2014/09/02(火) 22:29:05 ID:o.M.reuY



男「よしっ、じゃあ行ってきます」

のっぺら嬢「はい!」

男「色々買い物してから病院に行くから、少しだけ待っててくれな」スクッ

のっぺら嬢「はい!いってらっしゃい!」

男「…いいな、やっぱり」

のっぺら嬢「え」

男「誰かが送り出してくれるってさ」ニコッ

のっぺら嬢「あ…////」ドキン

男「行ってきます」ガチャン




74: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:16:36 ID:cGtuJWJs



――
―――

男「た、ただいま…」

のっぺら嬢「おかえりなさー…って!?」

男「いたた…」

のっぺら嬢「どうしたんですか!?顔中、傷だらけじゃないですか!」

男「コイツ」スッ

箱「ふぎゃーにぎゃー!」ガサゴソ!

男「連れて帰ろうとしたら、めっちゃ暴れやがって…」

のっぺら嬢「あっれー?おとなしい子なんですけどねー?」

のっぺら嬢「仔猫ちゃーん?私だよー?元気になってよかったねー」




75: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:20:06 ID:cGtuJWJs


箱「…」

箱「うにゃーん」カタカタ

男「お!おとなしくなった!」

のっぺら嬢「出してあげていいですか?」

男「ああ」

パカ

ピョイ〜ン

仔猫「にゃーん」

のっぺら嬢「あはっ!ホントに元気になったね!」ダキッ

仔猫「なーう」ゴロゴロ

男「…なんだこの変わり様は…」




76: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:21:46 ID:cGtuJWJs


のっぺら嬢「きっと大丈夫ですよ」

男「そうか?」ソー

仔猫「ふしゃー!」ザワッ

男「わわっ!無理じゃないか!?」

のっぺら嬢「男さんこそっ、猫に慣れてるんじゃないんですか!?」

男「あー、そうなんだけど、その子、オスだろ?」

のっぺら嬢「あ、そうですね。ついてます」チン

男(ついてるって…)

男「もしかしら、同性同士で相性が悪いのかも…」

のっぺら嬢「そんなのもあるんですか…」




77: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:23:38 ID:cGtuJWJs


男「前の猫はメスだったから」ソー

仔猫「ふしゃー!」

のっぺら嬢「あわっわっ!ダメだよ!」

のっぺら嬢「男さんはアナタを助けてくれた大事な人だよ?」

のっぺら嬢「傷つけちゃダーメ!」ハナチョン

仔猫「うにぃ」

のっぺら嬢「ふふ。イイコだねぇ」

男(おお…和むわ〜)

男「しかし、俺に飼えるかな…」

のっぺら嬢「え!?飼うんですか?」

男「え、いや、一度保護したら最期まで面倒見ないと…」

男「それがマナーってか、責任だからな」




78: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:26:08 ID:cGtuJWJs


のっぺら嬢「そうですか…」

のっぺら嬢「じゃあ、時々…会いに来ていいですか?」

男「ああ、うん」

のっぺら嬢「もちろん、昼間に無闇にお邪魔したりしません」

のっぺら嬢「ですから…」

男「そんなに気にしなくていいよ」

男「いつでもおいで」

のっぺら嬢「男さん…」

男「どっちにしろ平日は仕事で昼間いないからさ」

男「夜なら都合いいだろ?」




79: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:28:04 ID:cGtuJWJs


のっぺら嬢「はいっ!」ニッコー!

男(顔が無いのが関係無いくらい、感情が溢れ出とる)

男「ははっ」

のっぺら嬢「?どうしたんですか?」

男「いや、なんでもない」

男「さ、仔猫の過ごしやすいように、少しだけ模様替えをしますか!」

のっぺら嬢「お手伝いしますっ!」ケーレイ!

男「うん、頼みます」


―――
――





80: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:29:44 ID:cGtuJWJs




――

仔猫「にゃ」ヨジヨジ

男「キャットタワー!」

のっぺら嬢「男さん…これ、結構したんじゃ…」

男「大したことなかったよ」

男「ただ、次に猫がうちに来ることがあったら、絶対欲しかったんだ」

のっぺら嬢「お、男さんの趣味ですか!?」

男「…うん////」ポリポリ

仔猫「にゃにゃ」ヨジヨジ

のっぺら嬢「がんばって登ってますね〜」ニコニコ

男「あー…ただ…」




81: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:30:52 ID:cGtuJWJs


仔猫「んにぃ〜…」ヨジ〜…

仔猫「にゃん!」スタ!

のっぺら嬢「おおー!頂上まで行きましたね!」

仔猫「…」

仔猫「…」キョロ

仔猫「…」キョロキョロ

仔猫「にゃーにゃーにゃー!」

のっぺら嬢「あれ?どうしたの?仔猫ちゃん?」




82: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:32:36 ID:cGtuJWJs


男「仔猫あるある」




男「登るは容易、下り無理」




のっぺら嬢「…降りられないんですね」

男「仕方ないなぁ」ニヨニヨ

のっぺら嬢(男さんの顔のゆるみ方がスゴい!)

のっぺら嬢(でも…)

仔猫「ふかーっ!!」ザワワッ

男「ああっ!またしても!」

のっぺら嬢(やっぱり…)




83: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:33:30 ID:cGtuJWJs


のっぺら嬢「私が降ろしましょうか?」

男「いや。これから家族の一員になるんだ」

男「いつまでもわだかまりを残すワケにはいかないよ」

のっぺら嬢「そうですね」

のっぺら嬢「がんばって!男さん!」

仔猫「おぁー…」ザワ

男「大丈夫だから、な?」ソー

仔猫「にゃいん!」ピョン

男「あ」




84: ◆loxSgAubwY 2014/09/03(水) 00:34:25 ID:cGtuJWJs


ガッガリッ

男「アーーーっ!」

ピョイ〜ン

仔猫「にゃん」スタッ!

のっぺら嬢「お、男さん…」

男「バンソウコウ…持ってきてくれる?」タラー

のっぺら嬢「ああっ!男さんの顔に新たなキズがっ!!」

――





88: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:39:09 ID:.Uhry4ZY



――

男「うん、模様替えはこんなもんかな」

のっぺら嬢「よかったねぇ」

仔猫「にゃん!」

男「トイレもちゃんと一人でできてたし、平日の留守番も大丈夫そうだ」

のっぺら嬢「お利口さんだねぇ」ナデナデ

仔猫「なぁ〜」ゴロゴロ

男「じゃあ次で最後だ」

のっぺら嬢「?まだ何か?」

男「仔猫に名前をつけないと」

のっぺら嬢「ああ!」ポン

男「コイツだっていつかは立派なオス猫になるんだ」

男「いつまでも仔猫、じゃな」

のっぺら嬢「ですね」




89: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:40:21 ID:.Uhry4ZY



のっぺら嬢「そういえば、男さんが飼ってた猫ちゃんの名前は何だったんですか?」

男「トラ」

のっぺら嬢「え?」

男「サバトラ柄だったから、トラ」

のっぺら嬢「お、女の子だったって言ってましたよね?」

男「ああ…オヤジがつけた」ガックリ

のっぺら嬢「男さんのお父さん…」ガックリ

のっぺら嬢「あ、でもでも!今度は男の子ですから、いいんじゃないですか?」

男「いいのか?」

のっぺら嬢「強そうでいいじゃないですか」




90: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:43:49 ID:.Uhry4ZY


のっぺら嬢「ねートラ」

トラ「うにゃん!」

男「トラー」

トラ「ふしゃーっ!」カーッ

男「なんでだよっ!?」

のっぺら嬢「わっわっ、いい子だから仲良くしようね〜」

トラ「うにぃ」

のっぺら嬢「ふふっ。あ、もう外、真っ暗ですね」

男「ホント秋も深まってきたな。日が暮れるのも早い」

のっぺら嬢「じゃ、私はそろそろ…」

男「あ、うん」




91: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:44:56 ID:.Uhry4ZY


のっぺら嬢「本当にいろいろありがとうございました」ペコリ

男「いや、お互い様だよ」

男「看病してくれて助かった」

のっぺら嬢「いえ////」

男「それに、傍にいてくれて…安心もできた」

のっぺら嬢「また、そんなことを…////」カァッ

男「本当に、普通の人間と思うくらい自然に仲良くなっちゃったな」

のっぺら嬢「そうですね」

男「だから、また気兼ねなくウチにおいでよ」

のっぺら嬢「あ、ありがとうございます!」ニコッ

男「コイツ…トラも楽しみにしてるだろうしな」

のっぺら嬢「はい!」




92: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:46:07 ID:.Uhry4ZY


のっぺら嬢「ではお邪魔しました」ペコリ

男「うん、またな」

のっぺら嬢「はいっ!」



バタン

男「…さて」

チラ

トラ「!」

トラ「ふかーっ!!」


男「ああっもうっ!」


―――
――





93: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:47:12 ID:.Uhry4ZY



―数日後―

のっぺら嬢「ねこじゃらしだよ〜」ミョンミョンミョンミョン

男「…」

トラ「にー」ジリ…

男「…」

のっぺら嬢「ほりゃっ!」ミョン!

男「…」

トラ「にゃ!」ピョン

男「はあ…」

のっぺら嬢「あ、うるさかった、ですか?」

男「え!?いや、違うよ」

のっぺら嬢「でも、ため息…」




94: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:48:25 ID:.Uhry4ZY


男「いや、もうね…ため息のひとつやふたつ、出ますよ」

ソー

トラ「ふしゃーっ!」

男「な?」

のっぺら嬢「私の時は、すんなりなついてくれたんですが…」

男「そのくせ、キャットタワーに登っては降りられなくて」

男「降ろそうとしたら、引っ掻かれる…」

のっぺら嬢「すいません、ご迷惑おかけして…」シュン




95: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:49:18 ID:.Uhry4ZY


男「のっぺら嬢さんが謝ることじゃないよ」

男「どうしても、平日の昼間はほったらかしになっちゃうからなぁ…」

男「まだまだコミュニケーションが足りないのかも」

のっぺら嬢「昼間は男さんがいなくて寂しいねぇ」

のっぺら嬢「でもね、男さんはトラの為に一生懸命お仕事がんばってるんだからね?」

トラ「にー」

男「寂しい、か」




96: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:50:44 ID:.Uhry4ZY


のっぺら嬢「え、あ、男さんを責めたワケじゃないんですよ?」

男「うん、わかってる」

男「ただ…先代のトラも、ホントは寂しかったのかなって」

のっぺら嬢「男さんを慕ってくれてたんでしょう?」

のっぺら嬢「男さんの気持ちは伝わってるハズです!」

のっぺら嬢「きっと前のトラちゃんも幸せだったと思いますよ!」

男「うん…ありがとう」

のっぺら嬢「いえ…////」



男「あのさ」

のっぺら嬢「はい」




97: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:52:48 ID:.Uhry4ZY


男「前から気になってたんだけど」

男「のっぺら嬢さん達妖怪は、普段どんな風に寝起きしてるんだ?」

のっぺら嬢「はい?」

のっぺら嬢「そうですねぇ…基本、廃屋とか倉庫とか神社のお社やお寺…」

のっぺら嬢「あ、たまにビルとビルの間の暗がりとか…」

のっぺら嬢「そんな感じですね」

男「ほぼ野宿か…」

男(その割に服や体は綺麗だ)

男(魔力とか妖力とかそんな類いのものかもしれないな)

のっぺら嬢「どうかしたんですか?」キョトン




98: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:54:18 ID:.Uhry4ZY




男「…うん」

男「余計なお世話かもしれないけどさ…」




男「行くアテが無いなら、ここに住まない?」




のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「…はい?」

男「トラと一緒にここにいないかって…」




99: ◆loxSgAubwY 2014/09/04(木) 23:58:40 ID:.Uhry4ZY






のっぺら嬢「え…」

のっぺら嬢「ええええぇえぇぇぇっっっ!!??」




男「ちょっ、声が大きい!」

のっぺら嬢「そりゃ大声も出ちゃいますよ!」

のっぺら嬢「正気ですかっ!?」

男「うん、まあ」

のっぺら嬢「なんでっ、そんな事…!」

男「うーん…ほぼコイツ」チョイチョイ




100: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:00:59 ID:4fG3Y1X.


トラ「?」

男「お前だよ、トラ」

トラ「ふしゃー!!!」ザワワッ

のっぺら嬢「あ、ダメだよっ」

のっぺら嬢「トラ、ですか?」


男「のっぺら嬢さんにはなついてるし」

男「効果があるかわからないけど」

男「トラと俺の仲を取り持ってほしいんだ」

男「相変わらずこんな感じだし…」ソー

トラ「おぁぁぁ…」ザワ


男「どうかな?」

のっぺら嬢「でも…」




101: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:04:36 ID:4fG3Y1X.


男「もちろん無理にとは言わない」

男「よくわかんないけど、妖怪の掟とかあるかもしれないし」

男「ましてや、のっぺら嬢さんはのっぺらぼうである以外、見た目はもちろん内面も人間の女性と変わらない」

男「もちろんいかがわしい事なんてするつもりはないけど」

男「人間と、しかも男と一緒にって…抵抗あるかもしれない」


男「でもトラもさ、いつまでも俺を警戒してばっかりじゃ疲れるだろうし」

男「だから、のっぺら嬢さんさえ良ければ、だけど」




102: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:05:40 ID:4fG3Y1X.



のっぺら嬢「…本気…ですか?」

男「うん」

のっぺら嬢「…あ」

のっぺら嬢(『うーん…ほぼコイツ』)


のっぺら嬢「『ほぼ』トラの為、なんですよね?」

男「あ?うん」

のっぺら嬢「その『ほぼ』以外の『少し』の理由、聞いてもいいですか?」

男「ああ、その…////」

のっぺら嬢「?」

男「…」




103: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:08:04 ID:4fG3Y1X.



男「看病、してもらって…安心できた…」

のっぺら嬢「え!?」

男「トラを迎えに行くとき、送り出してくれたのが…心地よかった…」

のっぺら嬢「ぷ…」

のっぺら嬢「ふふっふふふっ」

男「な、なんだよ…////」

のっぺら嬢「ふふっ、私なんかにどれだけ安心感抱いちゃってるんですか」クスクス

男「へーん、あいにく他に安心感を求める相手がいないもんでね」ツーン


のっぺら嬢「だからって、あははっ、妖怪の私にっ、ふふっ」




104: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:08:54 ID:4fG3Y1X.



男「うるせぃ」

のっぺら嬢「ふふふ、トラの事もありますし、私にできる事があれば協力します」

のっぺら嬢「でも、本当に良いんですか?」

男「ああ」

のっぺら嬢「大食らいってワケではありませんが、普通並みに食べますよ?」

のっぺら嬢「出費、かさみますよ?」

男「それぐらいなんとかなるだろ」

のっぺら嬢「部屋、狭くなっちゃいますよ?」

男「狭くなって困ることは…無いな」


のっぺら嬢「ふぅ…ホントにもう…」クスクス

のっぺら嬢「じゃあ…」




105: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:09:33 ID:4fG3Y1X.


のっぺら嬢「トラー?早く男さんと仲良くなろうねー?」

トラ「うにぃ」

男「決まりだな」

のっぺら嬢「ホント、不思議な人ですね」

男「猫に限らず動物になつかれる人に、悪い人はいない」

男「俺の持論だ」


のっぺら嬢「私、のっぺらぼうですよ」


男「そこ屁理屈言わない」




106: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:10:23 ID:4fG3Y1X.



男「よろしく、のっぺら嬢さん」

のっぺら嬢「はい、お世話になります」

のっぺら嬢「あ」

男「ん?」

のっぺら嬢「ひとついいですか?」

男「なに?」

のっぺら嬢「私を呼ぶとき、さん付け…しなくていいですよ」

のっぺら嬢「ヘタにさん付けされると、気を使わせてるみたいで…」

のっぺら嬢「ダメですかね?」

男「わかった」

男「でも呼び捨てもアレだから…」


男「アダ名で…」




107: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:12:39 ID:4fG3Y1X.






男「のぺちゃん」




のっぺら嬢「…」ポカーン

男「あら?変かな?」

のっぺら嬢「いえ、私…アダ名なんて今までつけられたことがなかったので…」




108: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:14:00 ID:4fG3Y1X.


男「のぺちゃん」

のっぺら嬢「あぅ」

男「のぺちゃん」

のっぺら嬢「…はい////」ポ


男&のっぺら嬢「…」

男&のっぺら嬢「…あはははっ!」


のっぺら嬢「うふふ、お世話になります。よろしくお願いいたしますね」ペコリ

男「硬ぇ」

のっぺら嬢「そ、そですかね?」


男「ま、のぺちゃんらしいや」




109: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:14:51 ID:4fG3Y1X.




男「ほい、改めて握手」スッ

のっぺら嬢「あ、はいっ」スッ

アクシュアクシュ

男「よろしく」

のっぺら嬢「はいっ!」




110: ◆loxSgAubwY 2014/09/05(金) 00:15:50 ID:4fG3Y1X.



男「じゃ早速、模様替え第2弾!」

のっぺら嬢「え、え?もう夜ですよ!?」

男「のぺちゃんが少しでも居心地がいいようにしないとな」

男「それに明日は休みだ!」

のっぺら嬢「ホントに男さんは…」

男「ん?」

のっぺら嬢「いえ!なんでもありませーん!」

男「んじゃ、早速!」

のっぺら嬢「はい!」

―――
――





112: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:30:46 ID:0axfrvYg


―翌朝―

チュンチュン

男「…」ボー

のっぺら嬢「…」ボー



のっぺら嬢「緊張して寝れませんでした…」ボー

男「同じく…」ボー

男「平常時に一緒に寝るとなると、こうも緊張してしまうとは…」ボー

のっぺら嬢「すいません。せっかく、ベッドを貸して頂いたのに…」ボー

男「緊張したのはお互い様だ。仕方ないよ。しかし…」




113: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:32:26 ID:0axfrvYg


トラ「すぴー」グー

男「くそっ、うらやましい」



のっぺら嬢「あっ」

男「ん?」

のっぺら嬢「お、おはよう…ございます」

男「お、おはよう」

男「なんか新鮮だ…!」キューン

のっぺら嬢「そ、そうですね…普通に朝の挨拶は初めてですね////」

のっぺら嬢「前は看病の時に、大声あげながら起きましたからねぇ」

男「はははっ、そうだったな」




114: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:33:58 ID:0axfrvYg



トラ「うにぃい〜」ノビー

のっぺら嬢「あ、トラもおはよう」

のっぺら嬢「これから朝も会えるね!」ニコッ
トラ「なうなぅ」スーリスリ

男(はあぁあぁぁ…このツーショットはマジ和むわ)ホコホコ


のっぺら嬢「あ、台所お借りしていいですか?」

男「いいけど…なんで?」

のっぺら嬢「なんでって…」

のっぺら嬢「朝ごはん作るんですけど…」

男「ああ、じゃあ頼むよ」

のっぺら嬢「はい!まかせて下さい!」トッテトテー




115: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:34:49 ID:0axfrvYg



男「…」

男「…あれ?」


のっぺら嬢「ふんふ〜ん♪ふふぅ〜♪」カチャカチャ

男「おわぁっ!」

のっぺら嬢「わあっ!?な、なんですかっ!?」


男「ご、ごめんっ!なんか食事の用意してもらうのが当たり前、みたいな返事しちゃって!」

のっぺら嬢「ああ、そんなこと」

のっぺら嬢「いいんですよ」




116: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:36:27 ID:0axfrvYg


のっぺら嬢「なぜかはわかりませんが、私、料理するのが好きみたいなんですよ」

男「でも…」

のっぺら嬢「それに居候の身ですからね。これぐらいはしないと」

男「うーん…」

のっぺら嬢「ささ、男性はどんと構えて!」

のっぺら嬢「トラの相手をしていてくださーい!」

男(それって邪魔者扱いされてるみたい…)

男「うん、じゃ、お願いするよ」

のっぺら嬢「はいっ!」

男「のぺちゃんみたいないい娘に会えて良かったな、トラ」

トラ「すぴー」グーグー

男「おいっ!?」



 





117: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:38:48 ID:0axfrvYg



――



男&のっぺら嬢「ごちそうさま」

トラ「に」ペロペロ

男「お、トラもごちそうさまだな」

のっぺら嬢「みたいですね」

男「いやー、朝に手作りのお吸い物を飲むなんてどれくらいぶりだろ」

のっぺら嬢「お味噌汁にしたかったんですけどね」

のっぺら嬢「お味噌がなかったもので」

男「のぺちゃんが料理好きなら、食材…調理器具も揃えないとな」




118: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:39:58 ID:0axfrvYg


男「欲しい物があったら、じゃんじゃん言ってくれよ?」

男「買ってくるから」

のっぺら嬢「そんな…、出費がかさむのにワガママは言えませんよ…」

男「ワガママなんてとんでもない!」

のっぺら嬢「そ、そうですか?」

男「うまいご飯が食べれるなら、なんてことないよ!」

男「一人の時は、料理なんてほとんどしなかったし」

男「手作りの料理って、ホントいいものなんだよな」



男「一人暮らしして、今更ながら改めて気づいたよ」


のっぺら嬢「男さん…」




119: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:41:17 ID:0axfrvYg



男「片付けは俺がするよ」

のっぺら嬢「いえ!」ピシャッ

のっぺら嬢「今日は休日です」

男「そうだけど」

のっぺら嬢「男さんは普段のお仕事の疲れを癒してください」カチャ

男「ああっ、食器ぐらいは自分で持っていくのに!」

のっぺら嬢「いいんです!」カチャカチャ

のっぺら嬢「居候である以上、主には少しでも居心地良くしててもらわなければ!」カチャ

男「うーむ」

のっぺら嬢「それに…やっぱりお世話になるばかりじゃ、申し訳ないですから」スタスタ




120: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:41:51 ID:0axfrvYg





男「…のぺちゃんみたいな、彼女とか奥さん」


男「いたらいいよなぁ」



ガチャンパリンガチャーーン

パリン

男「のぉわあぁっ!?」




121: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 00:42:31 ID:0axfrvYg


のっぺら嬢「ななな、はにゃなな!」プルプル

男「大丈夫かっ!?」

のっぺら嬢「ななナにを言ってルんデスカ!?////」ドッキドキドッキドキ

男「ちょっ、そんな事より!ケガはっ!?」

のっぺら嬢「ひゃいっ!?だだ大丈夫…みたいです」ドッキドキ

男「よかった…」ホッ




123: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 08:14:20 ID:0axfrvYg



男「あーあー、ずいぶん派手に割っちゃったな」

のっぺら嬢「お、男さんが変な事言うからですよ!」プンスカプンスカ!

男「う…ごめん…」

男「ここまで動揺するとは…」

のっぺら嬢「ホントに!何度も言いますけど、妖怪相手に何を言ってるんですか!」

のっぺら嬢「からかうのもいい加減にして下さいっ!」プンスカ!

男「からかうつもりは無かったんだけど」

のっぺら嬢「むー」ムー




124: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 08:15:23 ID:0axfrvYg


のっぺら嬢「でも、割ってしまったのは…すいません」

男「まあ、ケガが無くてよかった」

男「どうせ朝からいろいろ買い出しに行くつもりだったからさ、ついでに買ってくるよ」

のっぺら嬢「お願いします」

男「ケガしないうちに片付けちゃおう」

のっぺら嬢「あ、はい」









125: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 08:17:49 ID:0axfrvYg


ガチャガチャン

男「居候とはいえ、家族が増えた事には変わりないから」

男「心機一転、食器も新しくするのもいいかもな」


のっぺら嬢「家族…ですか」

男「よっ」ガチャガチャ

のっぺら嬢「…」ジー

男「よっと」ポイ

のっぺら嬢「…」ジー




126: ◆loxSgAubwY 2014/09/06(土) 08:19:27 ID:0axfrvYg


男「?どうかした?」

のっぺら嬢「あっ////いえ…////」プイッ

のっぺら嬢「あ、えと、そそ掃除機、要りますねっ。取ってきます」

男「ベッドの足元に置いてあるよ」

のっぺら嬢「はーい」




―――
――





128: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:09:13 ID:4ZvDsldo




男「じゃあ、留守番頼むな」

のっぺら嬢「はい、いってらっしゃい」

のっぺら嬢「ほらトラも」ダッコ

トラ「にゃぁ」

のっぺら嬢「えらいねぇ、お利口だねぇ」ギュー

男「文字通り、猫をかぶってやがる…」

のっぺら嬢「私の前では、これが普通のトラなんですけどねー」

男「早くなついてくんないかなぁ…」

のっぺら嬢「きっとすぐですよ」




129: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:10:14 ID:4ZvDsldo



男「じゃ、鍵は閉めて行くから」

男「誰かが訪ねて来ても、出なくていいからな。居留守を使うように」

のっぺら嬢「はい」

男「あと大したもんはないけど、家の中の物、自由に使ってかまわないから」

のっぺら嬢「ありがとうございます」

男「昼には戻るようにするから」

のっぺら嬢「はい、気をつけてくださいね」

男「うん。いってきます」


バタン

ガチャン



 





130: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:10:49 ID:4ZvDsldo


のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「ねえ、トラ」

トラ「に」

のっぺら嬢「男さんて、すごく優しくていい人だね」

のっぺら嬢「私達の為に一生懸命で」

のっぺら嬢「トラも私も、家族だって思ってくれてるんだね」



のっぺら嬢「本当は…このままこの関係が…」




131: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:12:14 ID:4ZvDsldo




のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「でも、ダメだよね」

のっぺら嬢「私は妖怪で」

のっぺら嬢「男さんは人間」



のっぺら嬢「本来ならこんなに近くにいちゃダメなんだよね」


ズキン…


のっぺら嬢「…」

トラ「にぃにぃ」ペロペロ

のっぺら嬢「ふふ、ありがとう」




132: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:13:22 ID:4ZvDsldo


ギュー

のっぺら嬢「男さんはね、本当にいい人だから」

のっぺら嬢「きっとあなたを幸せにしてくれるよ」

のっぺら嬢「だから早く、男さんに気を許してね?」

トラ「にい!」

のっぺら嬢「はーい、イイコイイコ」ナデナデ

のっぺら嬢「少しねこじゃらしで遊んで、そのあと掃除しようね」ミョン

トラ「にゃあぁぁ」キラキラ


のっぺら嬢「ほりゃほりゃほりゃほりゃ!」ミョンミョンミョンミョン!


トラ「にゃあああっ!」トッテテートッテテテー!



 





133: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:14:24 ID:4ZvDsldo



――


男「ただいまー」

のっぺら嬢「お帰りなさい」ニコ

男「お、おう////」

のっぺら嬢「ずいぶん大荷物ですね」

男「どっこいせ」

男「トラのオモチャとかも買ったし」

男「食器だろ」

男「あと調理器具諸々…」ゴソゴソ

のっぺら嬢「わっ、こんなにたくさん!」

男「これでもっと楽しく料理できるんじゃないかな」

のっぺら嬢「ありがとうございます!」ニッコー!




134: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:16:04 ID:4ZvDsldo



のっぺら嬢「それから、その大きな荷物は?」

男「あともう一組布団をな」

のっぺら嬢「私がベッドを使うからですね」

のっぺら嬢「…別に床の上でもいいんですけど」

のっぺら嬢「今までずっとそんな感じでしたから」

男「だからって、女の人を硬い床で寝かせるワケにいかないだろう」

のっぺら嬢「ふふっ、男さんらしいですね」

のっぺら嬢「あ、お昼、用意しますから少し待っててくださいね」

男「うん!」ニヨニヨ

のっぺら嬢「なんですか?ニヤニヤして」




135: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:16:58 ID:4ZvDsldo


男「これからこんな感じに毎日が迎えられるんだなって…」

男「誰かが自分の帰りを待っててくれるって、ホント癒されるよ」ニコ

のっぺら嬢「あ////」

…ズキン

のっぺら嬢「…そう、ですね」

のっぺら嬢「ささ、早く手洗いうがい済まして待っててください」

男「はいよー」



――





136: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:17:35 ID:4ZvDsldo



―それから数日経った夕食時―



男「なあ、のぺちゃん」

のっぺら嬢「なんですか?」

男「一緒に暮らしだしてから、ずっと家にこもりっきりだけど」

男「退屈じゃないか?」

のっぺら嬢「そんなことないですよ」

のっぺら嬢「トラもいますし」

のっぺら嬢「最近のマイブームは、ネットの海にダイブして、未知なるレシピを発掘することです!」フンス

男「確かにスゴいね」




137: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:18:08 ID:4ZvDsldo


男「料理スキルは尋常じゃないくらい上がってるし、掃除も俺一人の時とは比べもんにならないくらい片付いてるし」

のっぺら嬢「掃除のウラワザもたくさん検索してますからね!」


男「…うん」

のっぺら嬢「どうしたんですか?」

男「今まで避けてたかもしれないけど」

のっぺら嬢「はい」

男「昼間、外に出てみたくない?」

男「ってか、外に出てみない?」





のっぺら嬢「はい?」




138: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:37:02 ID:4ZvDsldo



のっぺら嬢「むっ、無理ですよ!」

男「なんでさ」

のっぺら嬢「なんでって、私はのっぺらぼうですよ!?」

のっぺら嬢「昼間に出歩いたら、町中パニックになりますよ!」

のっぺら嬢「本来なら、都市伝説やもしくは眉唾物の怪談の存在なんですよ!?」

男「…うん」

のっぺら嬢「ですから無理ですよ…」シュン

男「でも俺からしたら、すごく家庭的な女の人にしか思えないんだよ」

男「だから楽しめる事は楽しんでほしいんだ」

のっぺら嬢「気持ちはありがたいですけど…」




139: ◆loxSgAubwY 2014/09/08(月) 00:38:31 ID:4ZvDsldo


男「…実際どうよ?」

のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「やはり外に出るのは…怖いです」

のっぺら嬢「ただ、ネットのいろんな情報を見て…憧れが出てきたのは事実、です」

男「なるほどなるほど」

男「ふっふっふっ…」

のっぺら嬢「な、何なんですか…?」



男「ちょっとイイモノ、買ってきました!」


のっぺら嬢「?」


――





143: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:07:19 ID:AJwOKkFY


―翌日・繁華街―

ガヤガヤ

ワイワイ

のっぺら嬢「あ、あの、男さん…」ギュ

男「そんなに怖がらなくても大丈夫」

のっぺら嬢「うう…」

男「結構自然だな。その付け鼻」

男「パーティーグッズだったからちょっと心配だったんだけど」

男「切ったりしたら思いの外、自然な感じになったな」

のっぺら嬢「でも、でも、バレたら…」ギュギュー

男「ファンデーションで巧く肌感が出てるし」

男「サングラスもファッションでかけてる人も多いから、晩秋のこの時期でも不自然じゃないよ」

のっぺら嬢「でも…でも…」ビクビク




144: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:08:09 ID:AJwOKkFY


男「初めてだから、仕方ないよな」

ギュ

のっぺら嬢(あっ、手、握り返してくれたっ…!!!////)ドッキドキーン!

男「安心できるか?」

のっぺら嬢「…はい////」

のっぺら嬢(安心もしましたけど、それ以上に胸の鼓動ががスゴいことに!)ドッキドキドッキドキ!



男「ごめんな」

のっぺら嬢「え?え!?ちょっと!なんで謝るんですかっ!?」

男「半ば強引に外に連れ出して…」

のっぺら嬢「いえ。すごく嬉しかったです。私に気を使ってくれて」




145: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:09:13 ID:AJwOKkFY


男「まあ…こもりっきりじゃアレだしな」

男「服もいくつか買っておいてよかった」

男「俺が適当に選んだけど、どう?」

のっぺら嬢「か、かわいいと思います。気に入りました」


男「なら、良かった」

のっぺら嬢「でも、買いに行くの…恥ずかしかったんじゃないですか?」

のっぺら嬢「この服やファンデーション…」

のっぺら嬢「当然、女の人が行くお店に行ったんでしょう?」

男「…まあな」

男「でも、お店の人に『彼女へのプレゼント』って言ったら…」




146: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:10:27 ID:AJwOKkFY


のっぺら嬢「かっかっかっカッカッ彼女っっ!?////」ポポーッ!

男「ごめんっ!その場の出任せっていうか口実っていうか…」

のっぺら嬢「いえ…////」ポーッ!

男「まあ、いろいろアドバイスしてくれて」

男「それなりに良いもの買えたと思うよ」

のっぺら嬢「ありがとうございます」ニコ


男「うん」

男「で?何かしたいこととかある?」

男「緊張してそれどころじゃないか?」

のっぺら嬢「い、いえっ」

のっぺら嬢「こう…ちょっとだけ男さんにくっついていれば、少しだけ安心できます」ギュギュギュー




147: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:16:05 ID:AJwOKkFY


男「そ、そか」
男(ちょっとくっつくどころじゃありませんよ!!)


のっぺら嬢「あの…」

男「ん?」

のっぺら嬢「クレープを食べてみたい、です」

男「またベタなものを…」

のっぺら嬢「い、いいじゃないですかっ!!」クワッ

のっぺら嬢「ネットで見て美味しそうだなって」




148: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:16:57 ID:AJwOKkFY


のっぺら嬢「白いクリームがいっぱいでですね…」

のっぺら嬢「イチゴ、バナナ、リンゴ…」

のっぺら嬢「あ、あと軽食っぽいのもありましたね!」

のっぺら嬢「ポテトサラダとか、チーズ、ツナ、ハム…」ジュルリ

男「ぷぷぷ…」

のっぺら嬢「はぁっ!す、すいませんっ!」ジュルリ

のっぺら嬢「ちょっとトリップしてました////」




149: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:20:04 ID:AJwOKkFY


男「はははっ!どんだけ食べたいんだよっ!」

のっぺら嬢「し、仕方ないでしょう!?」

のっぺら嬢「クレープには食欲を異常に刺激する魔力があります!」

のっぺら嬢「恐るべしクレープ!」

男「なんじゃそら」クスクス

男「じゃ、行こうか」

男「少し歩くけどおいしいクレープ屋があるから、そこで食べよう」

のっぺら嬢「はいっ!」




 





150: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:22:02 ID:AJwOKkFY




――

のっぺら嬢「…すいません」

男「いいんだけどさ」

のっぺら嬢「す、すいませんっ!すいませんっ!」ペコペコペコペコ!

のっぺら嬢「クレープ4つも食べてすいませんっ!」ペコペコペコペコ!

男「店の人、びっくりしてたな」

のっぺら嬢「うう…」シュン

男「ははっ、そう落ちこまない!」

ポン

男「のぺちゃんが楽しめたなら、何よりだよ」

のっぺら嬢「はい」




151: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:23:25 ID:AJwOKkFY



男「…また、一緒に出かけような」

のっぺら嬢「いいんですか?」

男「俺で良ければ喜んで」

のっぺら嬢「ふふ、こんなこと頼めるのは男さんしかいません」

男「そうだな」



男「そろそろ帰ろうか」

のっぺら嬢「そうですね。トラもお留守番、頑張ってますしね」




152: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:28:14 ID:AJwOKkFY


のっぺら嬢「楽しい時間は…あっという間、ですね」

男「それだけ楽しんでくれたなら、連れ出した甲斐もあるってもんだ」

男「てか、俺もけっこう楽しんだんだけどな////」

のっぺら嬢「お互い様ってことですかね」

男「だな。俺はのぺちゃんと一緒だったから余計にな」

男「またのぺちゃんと来たいと思ったよ」

のっぺら嬢「…」ズキン…




のっぺら嬢「はい」


―――
――





153: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:29:35 ID:AJwOKkFY


―別の日―


のっぺら嬢「うぅぐ…ひっぐ…」

のっぺら嬢「あ゛あ゛ぅっあぁぁああ」ポロポロ

のっぺら嬢「あぁぁああっ」ポロポロポロポロ

のっぺら嬢「はぅっぐ…えぐっ…」

男「あんまり泣くと鼻が取れるぞ?」

のっぺら嬢「だっでぇえ…」

男「確かにいい映画だったけどさ…」

のっぺら嬢「まざが…ひっぐ…」




154: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:30:33 ID:AJwOKkFY



のっぺら嬢「ヒロインのアレがアレで、まさか親友がアレでアレだったなんてぇ…」

のっぺら嬢「おまけに親友の恋人まで…」


のっぺら嬢「切な過ぎますよぉぉうぅ」



男「ほれハンカチ」



のっぺら嬢「ずびばぜん…」

のっぺら嬢「ぐしっ…」



のっぺら嬢「映画って、ホントにいいものですね」




155: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:31:57 ID:AJwOKkFY



男「映画館で観ると特にな」

男「まあ、のぺちゃんがここまで号泣するとは思わなかったけど」

のっぺら嬢「あ、あんまり言わないでくださいよぅ…////」

男「ははっ、悪い悪い」

男「まだまだ話題作はあるから」




男「また、見に来よう」



のっぺら嬢「…はい」

ズキン…

 





156: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:32:59 ID:AJwOKkFY


―また別の日―


のっぺら嬢「はわ〜、ジンベエザメおっきいですねぇ」

のっぺら嬢「やっぱり生で見ると違いますね!」

男「そりゃパソコンの画面とは迫力も存在感も違うさ」

のっぺら嬢「イワシの群れも綺麗です」

のっぺら嬢「えーっと、次は…」

男「あっ」




157: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:33:48 ID:AJwOKkFY


男「急がないとイルカショー始まるぞ!」

のっぺら嬢「わ、もうそんな時間ですかっ!?」

男「ショーが終わってから、またゆっくり廻ろう」

男「はい」


スッ

のっぺら嬢「え?」

男「え、って…手だよ手」

のっぺら嬢「…はい////」スッ




158: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:34:49 ID:AJwOKkFY




キュ

男「はぐれるといろいろ面倒だろ?」

のっぺら嬢「ですね」

男「俺となら、昼間の世界を満喫できるだろ?」ニシシ

のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「はい」ニコ…

ズキン…ズキン…




―――
――





159: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:35:44 ID:AJwOKkFY





――
―――

テレビ「今夜は例年よりぐっと気温が下がり、地域によっては雪がちらつくかもしれません」

テレビ「一転、明日明後日の週末は全国的に晴れ。傘の心配はありません」

テレビ「お日様が出て、日中はポカポカ陽気。絶好の行楽日和となるでしょう」

テレビ「以上、週末のお天気でした」

テレビ「続いては…」




男「ふんふ〜ん♪」

男「のぺちゃん、明日はどこに行きたい?」

のっぺら嬢「…」




160: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:36:44 ID:AJwOKkFY


男「せっかく晴れなんだし、外でぶらぶらしようか?」

のっぺら嬢「…」

男「それとも…」

のっぺら嬢「男さん」

男「お?行きたいとこ決まった?」

のっぺら嬢「違います」

男「あれ…ふ、雰囲気…いつもと違うんじゃないか?」

男「…何かあった?」

のっぺら嬢「…」

男「あ、もしかしてここ最近、出かけっぱなしだから、たまには家でゆっくりしたいとか?」




161: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:37:38 ID:AJwOKkFY




のっぺら嬢「トラ…男さんになついてくれましたね」

男「あ、ああ。今も俺の膝の上で丸くなってるよ」

トラ「にゃあ」

のっぺら嬢「ひっかかれる事も無くなりましたね」

男「たまにあるよ」

男「トラの機嫌が悪い時とかはな」


のっぺら嬢「でも、もう困るほど手を焼く事は無くなりましたね」

男「そうだな。トラも大きくなって、身のこなしや風貌もすっかり『猫』って感じだな」




162: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:38:57 ID:AJwOKkFY


のっぺら嬢「あんなに小さかったトラも大きくなりましたね…」

男「…どうしたんだよ?さっきから」

男「ほらっ!明日は休みだからさ?どこに行くか決めようよ、な?」



のっぺら嬢「…」フルフル



のっぺら嬢「もう…あなたとはどこにも行きません」

男「は」

男「え?」



のっぺら嬢「もう…」



 





163: ◆loxSgAubwY 2014/09/09(火) 01:40:25 ID:AJwOKkFY








のっぺら嬢「もうあなたとは一緒に居られません」







 





168: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 19:49:26 ID:I8v53mRw



男「ちょっ…え?何言って…?」

男「え?え?妖怪界隈でなんかマズイことになった?」

のっぺら嬢「…」フルフル


のっぺら嬢「違います。私の…意思です」



男「…意味がわからん」

男「俺…なんか悪い事した?」

男「思い当たる節はないんだけど…」



のっぺら嬢「いえ、男さんは悪くありません」




169: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 19:50:16 ID:I8v53mRw


のっぺら嬢「元々、男さんとトラの仲を良くするお手伝いだけの約束でした」

男「確かに仲良くはなったけど」ナデナデ

トラ「にゃーにゃー」

男「それがのぺちゃんがここに居ちゃダメな理由にはならないだろ!?」

のっぺら嬢「いいえ…」

のっぺら嬢「男さんにはいくら感謝しても足りないくらい…良くして頂きました」




男「あ、ああ、そりゃどうも////」ポリポリ



男「…じゃなくて!」




170: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 19:51:34 ID:I8v53mRw


男「だったらなんで俺といられないなんて…!」




のっぺら嬢「…」

のっぺら嬢「…私です」

男「はい?」

のっぺら嬢「…悪いのは私ですっ!」

のっぺら嬢「あなたが…優しいから…その優しさに甘えて、あなたを頼ってしまいました…!」

男「俺はそれで構わないよ!」


のっぺら嬢「私は…のっぺらぼうで妖怪です」




171: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 19:54:07 ID:I8v53mRw


男「何を今更…そんなのわかってるよ?」



のっぺら嬢「ううっ、く…」

ポロポロ…

のっぺら嬢「ひぐっ、わかっていたのにっ…!」ポロポロ

のっぺら嬢「望んでは…うぅっ…いけなかったのにっ…!!」

ポロポロ


男「の、のぺちゃん…?」




172: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 19:55:22 ID:I8v53mRw


のっぺら嬢「えぐっ、でも…全部私が…私が悪いんです!」

のっぺら嬢「あなたの優しさは…一生忘れません」

ガタッ

のっぺら嬢「さようなら」ダダッ

男「おいっ!?ちょっと待っ…」

男「くそっ!いきなり何なんだよっ!」ガバッ


トラ「う゛に゛ゃっ!?」ボテン

男「ああっ!ごめんっトラっ!」

トラ「うにぃ」

男「お前の大切な人を追うから、今はごめんな」

ダダッ

トラ「にぃ」




173: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 19:56:19 ID:I8v53mRw


――

ダダダダッ…

ガシッ!

男「うおらぁっ!捕まえたぁっ!」

のっぺら嬢「離してっ!離してください!」グイグイッ

男「離すもんかっ!」グッ

男「いきなり自分が悪いとか言い出してワケわかんないしっ…」

男「こっちが納得できないまま、俺の前から去ろうとするなんて」

男「見過ごせるワケないだろ!?」

のっぺら嬢「ですから!男さんの問題ではないんです!」

のっぺら嬢「全部私が…悪いんですっ!」

男「だからっ!それがわかんないんだって!」




174: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 19:57:11 ID:I8v53mRw


のっぺら嬢「私は…私はっ」

のっぺら嬢「あなたの優しさに触れて」



のっぺら嬢「あなたに惹かれてしまった」



のっぺら嬢「あなたと居るのが心地よくて」


のっぺら嬢「あなたと共に居たいと願ってしまった…!」



男「のぺちゃん…」




175: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 19:59:09 ID:I8v53mRw



のっぺら嬢「だから」

のっぺら嬢「これ以上一緒に居たら」



のっぺら嬢「私のせいで…本当にあなたを縛りつけてしまいます!」



のっぺら嬢「私は…妖怪なのにっ…!」

のっぺら嬢「男さんは人間なのにっ…!」


のっぺら嬢「妖怪の私は」

のっぺら嬢「ケガもなければ、病気もありません」

のっぺら嬢「寿命も…人間のそれとは比べものならない、永遠に近いような長さです」




176: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 19:59:52 ID:I8v53mRw



のっぺら嬢「どれだけあなたが好きでも」



のっぺら嬢「所詮は…妖怪」

のっぺら嬢「生きる世界も、時間も違うんです」

のっぺら嬢「だから…」





男「だから?」

のっぺら嬢「だから…」

男「だから…何なんだよっ!」

のっぺら嬢「えっ?」




177: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 20:01:50 ID:I8v53mRw


男「初めてのぺちゃんに会った時は、そりゃびっくりしたさ!」

男「でもっ!」

男「その時、トラの事で必死になってたのはのぺちゃんだ!」

男「紛れもないのぺちゃんの優しさだろ!?」

男「俺が仕事でへこんだり、疲れて帰った時」

男「いつも癒してくれたのはのぺちゃんだ!」


のっぺら嬢「お、男さん…」


男「のぺちゃんが俺を縛りつける?」

男「それが俺の前から去る理由?」




178: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 20:02:21 ID:I8v53mRw





男「だったらっ…!」





男「俺が望んで、縛られてやる!」





のっぺら嬢「えっ!?」




 





179: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 20:06:03 ID:I8v53mRw


のっぺら嬢「あ、あの!?」

のっぺら嬢「え?えっ!?」


男「惹かれてたのが、のぺちゃんだけだと思うなよ?」

のっぺら嬢「ひょっ!?」



男「確かに、延々とコソコソしなきゃならなくなるかもしれない」

男「確かに、普通の恋愛なら苦労しないことも苦労するかもしれない」



男「なら、俺がその苦労ごと、全部縛られてやるっ!!」

ガバッギュギュー

 





180: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 20:07:21 ID:I8v53mRw


のっぺら嬢「きゃうっ」


のっぺら嬢「い、いやっ…離して…ください」

男「抵抗が弱々しいな」

のっぺら嬢「うっ…////」

男「そりゃ顔が無いなんて恋人なんて普通の恋愛じゃないよな」

のっぺら嬢「…全くです」

男「家族に紹介…できないな」

のっぺら嬢「わかっててどうして…」



男「そんなこと以上に、のぺちゃんの内側に惹かれたんだよ」ギュ

のっぺら嬢「そんなことって…」




181: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 20:08:08 ID:I8v53mRw


男「のぺちゃんの為ならなんてことないさ」


のっぺら嬢「でも私は…うぅっ…」ポロ

のっぺら嬢「私のために…私の、せいで男さんが苦労するのは、ひぐっ」ポロポロ

のっぺら嬢「見たく、あ、ありません…」ポロポロ

男「だからって、俺から離れるなんて嫌だな」


のっぺら嬢「ぐすっ…怖いんです」

のっぺら嬢「私のせいで男さんが不幸になると思うと…」

男「なんで不幸になる前提なんだ?」

のっぺら嬢「だって…」




182: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 20:08:52 ID:I8v53mRw



男「苦労は必ずしも不幸じゃないんじゃないかな?」

男「その中でも、幸せに感じれることなんていくらでもある」

男「必ず、な」


のっぺら嬢「ぐすん」

のっぺら嬢「断言、しちゃうんですね」

男「ああ」


のっぺら嬢「敵いませんね、男さんには。ふふふ」




185: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:06:31 ID:I8v53mRw


男「やっと笑った」

男「今日一日なんかピリピリしてたからな」

男「こういうことだったのか…」

のっぺら嬢「よく見てくれてるんですね」


男「好きだからな。のぺちゃんの事が」

のっぺら嬢「男さん…////」




のっぺら嬢「一つだけ…約束してください」

男「ん?」




186: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:09:04 ID:I8v53mRw


のっぺら嬢「今は…好きだと言ってくれています」

のっぺら嬢「でも、私と一緒に居るのが辛くなったなら」

のっぺら嬢「すぐに言ってくだ… 男「言うもんか!」

男「のぺちゃんが俺の事を嫌いにならない限り、そんなこと言うもんかっ!」

のっぺら嬢「…」ポカーン

のっぺら嬢「ふぅ、あーあ…」

のっぺら嬢「もう、諦めます。ふふふっ」

のっぺら嬢「諦めて男さんに甘えます」

のっぺら嬢「…いいんですよね?」



男「任せろ!」フン!




187: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:10:04 ID:I8v53mRw




のっぺら嬢「じゃあ…ですね////」


男「ん?どした?」



のっぺら嬢「キス」

男「にぇぃ!?」

のっぺら嬢「キスしてください////」

男「い、いきなりそんなっ…!」

のっぺら嬢「試すみたいで申し訳ありませんが」


 





188: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:10:50 ID:I8v53mRw


のっぺら嬢「私に自信を」



のっぺら嬢「男さんを愛してもいいという自信を



のっぺら嬢「私にください」


男「お、おう////」ゴク



のっぺら嬢「私は…いつでも大丈夫です」

男「ああ…」スッ

のっぺら嬢「…」プルプル…




189: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:17:30 ID:I8v53mRw


男(震えてる…)

男(…のぺちゃんはずっと葛藤していたんだ)

男(俺が少しでも安心させてやれるなら…!!)スス…



チュ

男「…」

男「…どうっすか?////」

のっぺら嬢「…大好きです、男さん////」

ドクン…

男「俺もだ////」

のっぺら嬢「えへへ////」ドクン…




190: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:18:44 ID:I8v53mRw


ドクン

のっぺら「?」ドクン

のっぺら嬢「!?」ドクン!

のっぺら嬢「あ…う…!!!」ドクン!

男「?」

のっぺら嬢「ううっ…」ドクンドクン!

男「ど、どうした!?大丈夫か!?」



のっぺら嬢「あ、あ、あ…」ドクンドクンドクン!




191: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:19:42 ID:I8v53mRw





のっぺら嬢「呪いが…」



のっぺら嬢「解けるっ!!!」




ピッカアアアアァァァァァァァァァァ!!!

男「なわっ!!?」





 





192: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:20:31 ID:I8v53mRw


男「…」

男「…のぺちゃん?」


のっぺら嬢「はい」


男「なんだ…今の光は…」





のっぺら嬢「誰かに愛されること」



のっぺら嬢「それが解呪の条件でした」


男「え?何、言って…」チラリ




193: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:23:08 ID:I8v53mRw



美女「…」


男「?」

美女「…」

男「??」

美女「…」

男(…すっげー美人さんが目の前、のぺちゃんがいた場所にいます)

美女「…」




194: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:24:29 ID:I8v53mRw



男(おお…綺麗な、はっきりとした大きな瞳(め)…。吸い込まれそうだ…)

美女「…」

男(鼻もすらっと適度に高く整った形…)

美女「…」

男(口も…、いや、口は何度も見た)

男(笑うとそれだけで感情が見てとれるほど存在感のあるその口は…)

男「まさか」

男「のぺちゃん!?」



のっぺら嬢「…はい」

のっぺら嬢「たった今、呪いは解かれ」

のっぺら嬢「私は本来の姿…いや、顔を取り戻しました」




195: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:29:13 ID:I8v53mRw


男「本来の顔を…って」

男「えーと…」

男「マジか…」

のっぺら嬢「もう、どれくらいのっぺらぼうであったかわからないほど」

のっぺら嬢「長い時間が流れました」




男「その…、呪いって…誰かにかけられたのか?」



のっぺら嬢「はい」

のっぺら嬢「当時、とても仲が良かった友達がいました」

のっぺら嬢「明るくて活発で、何かと物事の中心になるような…」

のっぺら嬢「そんな人でした」




196: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:30:38 ID:I8v53mRw




のっぺら嬢「ただ、いつからか私は恨まれていたようです」


のっぺら嬢「彼女は私に呪いをかけました」


のっぺら嬢「顔が無くなる呪い」

のっぺら嬢「解く方法は、のっぺらぼうの姿のままで誰かに愛されること」

のっぺら嬢「ただ、同情で愛されない為にそれまでの記憶も封印されます」

のっぺら嬢「もちろん、解呪の方法も…」


男(そうか、だから料理の話の時、あんなに苦しんだのか…)


のっぺら嬢「見た目に惑わされず、純粋に心だけで愛されること」

のっぺら嬢「そんな呪いでした」




197: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:34:02 ID:I8v53mRw




男「ひどい目に遭わされたんだな…」


のっぺら嬢「いえ」フルフル

のっぺら嬢「記憶が戻った今も、私は彼女を恨んではいません」

のっぺら嬢「正直、裏切られた悲しみはありましたが、彼女は私に対して憧れを抱いてくれていたんです」


のっぺら嬢「私も彼女に対して、憧れや嫉妬を抱いたことがあります」



のっぺら嬢「彼女は…道を外れてしまっただけです…」




198: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:36:04 ID:I8v53mRw


のっぺら嬢「それと、あとになって聞いたことですが」

のっぺら嬢「彼女は、私に呪いをかけたことを後悔し」

のっぺら嬢「死ぬまで自責の念に駆られて、苦しんだそうです」

のっぺら嬢「のっぺらぼうになった私にはよくわからない話でしたが…」

のっぺら嬢「今、わかりました」

のっぺら嬢「私はいろいろな物を失いましたが」

のっぺら嬢「彼女が本当は、優しい人なのだとわかっただけで、救われます」



男「…のぺちゃんらしいな」




199: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:37:30 ID:I8v53mRw




のっぺら嬢「さて、男さん」


男「は、はいよっ!?」ビクッ


のっぺら嬢「こうして呪いが解けた今」

のっぺら嬢「私はのっぺらぼうではなくなりました」



男「う、うん…」

のっぺら嬢「ですが、のっぺらぼうであった時の記憶が無くなったワケではありません」




200: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:39:52 ID:I8v53mRw





のっぺら嬢「こんな顔ですが…」





のっぺら嬢「改めて、私を受け入れてくれますか?」



 





201: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:41:18 ID:I8v53mRw


男「…アホぅ」


のっぺら嬢「へっ!?」


男「まあ、確かに美人だ」

のっぺら嬢「ま////」ポッ


男「でも違うだろ?」


男「解呪の方法のとおり」



男「のぺちゃんの心に惹かれたんだ」



男「何も変わらないよな?」




202: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:43:16 ID:I8v53mRw



のっぺら嬢「うく…」ポロ

のっぺら嬢「ひっく…はい!」ポロポロ

男「のぺちゃん…」

男「あ」

のっぺら嬢「ひっく、どうしたんですか?」

男「呪われる前の記憶が戻ったってことは、名前も…」

のっぺら嬢「いいんです」


のっぺら嬢「男さんを好きになったのはのっぺらぼうであった私ですから」





のっぺら嬢「私は男さんに愛されているのっぺら嬢、です!」ニコッ!




203: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:46:30 ID:I8v53mRw




男「のぺちゃん!」

のっぺら嬢「男さん!」


ダキッ


のっぺら嬢「好きです。今までもこれからも」

男「ああ。俺もだ」

ギュウ…




204: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:48:15 ID:I8v53mRw




ハラリ

のっぺら嬢「…雪、ですね」

ハラリハラリ

男「天気予報で降るかもって言ってたな」

ハラリハラリ

男「冷えそうだな…」

のっぺら嬢「…////」ギュ

男「ん?」

のっぺら嬢「わ、私は…男さんとこうして抱き合っていると」


のっぺら嬢「冷えるなんて、全く思いませんよ?////」




205: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 21:53:03 ID:I8v53mRw



男「おぅ…照れるな////」

のっぺら嬢「ふふふ////」

のっぺら嬢「やっと自信が持てました」



のっぺら嬢「ずっと…一緒に居ましょうね、男さん////」


男「うん!もちろんだ!」



チュ


ハラリハラリ…



―――
――





208: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:28:35 ID:I8v53mRw






テレビ「予報どおり、お昼を過ぎてから益々暖かくなってきました」

テレビ「見てくださーい!この緑地公園にも沢山の家族連れが訪れています」

テレビ「現在、緑地公園内でイベントが催されておりまして………」






男「…のぺちゃん」

のっぺら嬢「…はい。なんでしょう?」






 





209: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:31:14 ID:I8v53mRw


男「風邪、大丈夫?」

のっぺら嬢「もう何年…いや、何十年…もっとかもしれません…」




のっぺら嬢「久しぶりの風邪…、つらいです」

男「まあ、ゆっくりしなよ」

のっぺら嬢「男さん…」






 





210: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:32:13 ID:I8v53mRw


のっぺら嬢「男さんこそ、風邪…大丈夫ですか?」

男「体の節々が痛い…」

のっぺら嬢「あー…はあ…」





男&のっぺら嬢「へっくしゅん!」



 





211: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:33:14 ID:I8v53mRw


男「うう…寒い」ブルッ

のっぺら嬢「トラぁ…あったかいねぇ」ヌクヌク

トラ「にゃん」

男「トラ、こっちにも来てくれよ」




トラ「…」チラ

トラ「…」プイッ




男「あ、ひでぇ」

のっぺら嬢「ふふふっ」クスクス




212: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:34:16 ID:I8v53mRw


男「ああ…せっかくのぺちゃんの呪いも解けて、さあこれからって時に…」


男「二人同時に風邪を引くなんて…」




男「昨日、外に居すぎたかな…」

のっぺら嬢「ですね…」

男「のぺちゃん、抱きついたまま離してくんなかったんだもんなぁ」

のっぺら嬢「い、言わないでくださいよぅ////」カアァァ




213: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:35:04 ID:I8v53mRw


男「そろそろって言ったら」


男「もう少し、このまま」

男「ってさ」

のっぺら嬢「はうぅ…////」カアァァッ



男「まあ、たまには家でゆっくりもいいかもしれないな」


のっぺら嬢「そうですね」

のっぺら嬢「これからはもっといろんなところに連れて行ってくださいね」



のっぺら嬢「…男…君////」




215: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:38:58 ID:I8v53mRw


男「…え?」

のっぺら嬢「もう正式な恋人同士なんだし、いつまでも他人行儀じゃアレかなって…」

男「お、お…おお!なんか新鮮だ!」

男「もう一回!もう一回!!」


のっぺら嬢「ええ〜…////」

のっぺら嬢「はずかしいよ…////」




216: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:40:13 ID:I8v53mRw



男「わぁお!敬語じゃないのもこらまた新鮮だ!」

男「もう一回!ハイっもう一回!!ハイっ!」


のっぺら嬢「ふふ仕方ないなぁ」



のっぺら嬢「風邪が治ったら、またどこか出かけようね?男君っ!」


男「おうっ!」




217: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:41:11 ID:I8v53mRw








のっぺら嬢「…ずっと一緒だよ、男君!」







おわり




218: ◆loxSgAubwY 2014/09/10(水) 22:42:02 ID:I8v53mRw

気長にお待ち頂き最後まで読んで下さり、ありがとうございました

今まで書いたSSより長かったため、ややまとまりがなかったかもしれません

それでも少しでも楽しんで頂けたなら幸いです

また投下した際には、是非ともよろしくお願いいたします

改めてありがとうございました




220: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/09/10(水) 23:10:22 ID:kth1HG22

美女と野獣の逆バージョンって感じで面白かった
ある意味王道だね
おつでした





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