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iPhone 6 / 6 Plus発売日、KDDIのCA(キャリアアグリゲーション)電波調査に同行 - Engadget Japanese



iPhone 6とiPhone 6 Plusが発売された9月19日、KDDIは社内の検証のため、都内でCA (Carrier Aggregation=キャリアアグリゲーション)の電波状況テストを実施しました。この調査の様子をほぼ包み隠さずリポートします。

今回KDDIが実施した検証は、自社のCAによるエリアを確認するためのものです。その背景には、国内で同じiPhone 6およびPhone 6 Plusを扱うNTTドコモ、ソフトバンクともに現時点ではCAに対応しておらず、その優位性をアピールする狙いもありそうです。


 

KDDIは、CAを5月に発表した2014夏モデルのAndroidスマートフォンから採用しています。CAとはLTE通信において複数の周波数帯域を束ねて広帯域化することで、下り速度を向上させるLTE-Advanced規格の1つです。2つの周波数帯で接続することで、より安定した通信を実現し、自社が保有する周波数帯を有効活用できます。

例えば、800MHz帯(Band 18)の10MHz幅と2.1GHz帯(Band 1)の10MHzを束ねることで20MHzに拡張することが可能で、10MHzでは下り最大75Mbpsの速度が、CAで束ねることで20MHz化され150Mbpsへと倍速化されます。また、CA基地局エリアであっても、2.1GHz帯の電波が届きにくい場所では800MHz帯でカバーすることでより安定した通信を実現しています。

東京タワー駐車場でスピードテスト

この日の調査は都内の複数エリアを回る予定でしたが、Engadget編集部では東京タワー周辺エリアでのCA電波品質チェックに同行しました。東京タワーはスカイツリーが開業した年も来塔数が微増しており、年間250万人程度の観光客が集まるスポットです。 また麻布十番・神谷町・虎ノ門などの周辺エリアも、ビジネスのみならず人が多く集まるため、CA化を推進すべきエリアと言えます。

まずは駐車場のフィールドテスト車両前で軽くスピードテストを実施しました。



CA非対応のKDDI版iPhone 5s(写真左)が下り52.37Mbps/上り7.80Mbps、CA対応のKDDI版iPhone 6 Plus(写真中央)が下り106.55Mbps/上り7.17Mbpsという結果に。 

同じ場所で、ドコモの回線もチェックしました。手元にまだiPhone 6がなかったので、電波測定によく使われる GALAXY S5(写真右)を使用しました。電波強度が-96dBmとかなり弱い場所ながら下り15.07Mbps/上り3.79Mbpsという結果でした。 東京タワーなどの観光スポットは人数の多い入口付近の電波を良好にするため、併設する駐車場の電波が弱いのはよくあること。ドコモの結果が当たり前で、KDDIの結果が特異的と言えます。

このようなスポットでエリア構築に差が出る要因としては、LTEのコアバンドが800MHz帯のKDDIと、コアバンドが2.1GHz帯(Band 1)のドコモという電波特性の違いによることも大きいはず。あるいは東名阪であればドコモはLTE専用20MHz幅の1.8GHz帯(Band 3)を含むマルチバンド基地局で観光スポットのエリア強化もできますが、コアバンドで15MHz幅の2.1GHzをつかんでしまうと、対応機種(ユーザー)が多くかつ帯域幅が狭いため1.8GHz帯よりも遅くなる可能性があります。

東京タワー周辺エリアでCA接続状況をグラフでチェック

さて、ウォーミングアップを終えていよいよ本番です。


今回のフィールドテスト車両は、後部座席2列目にPCやスマホを置くためのテーブルを設置、3列目にはラックを搭載していました。


ラックには、HYBRID車のバッテリーから電力供給する無停電電源装置(UPS)を1つ積んでいるのみ。PCやスマホ用の安定電源を確保するだけでCAエリア品質チェックが可能とのことです。


天井には、アンテナを立てるための穴もありました。

KDDI広報が「CAロゴと同じ配色のグラフです」と計測機器を説明


計測用の機器は、計測用ソフトをインストールしたPCとスマートフォンが1台ずつ。


スマートフォンでは約500MBのファイルを連続してダウンロードしながら、スループットや電波品質、位置情報をPCに転送。 スマートフォンから受け取ったデータをPCでグラフ/数値/マップとして表示します。 当然ながら、これらのデータはログとして保存して検証に利用します。



電波品質データは、CAのプライマリーとなる800MHzとセカンダリーとなる2.1GHzそれぞれのRSRP(基準信号受信電力)、RSRQ(基準信号受信品質)、SINR(信号対干渉電力雑音比)を数値で表示しています。
位置情報は小さなウィンドウでGoogleマップ上に現在位置を表示します。

スループット画面は2種類。1つはCA2波合計のスループット(グリーンのグラフ)とセカンダリーのスループット(ブルーのグラフ)で、データをそのままグラフプロットする詳細データを可視化しています。


もう1つの画面は、CAによるスループットを各バンドごとにグラフ表示することで、ビジュアル的に分かりやすくチェックできます。KDDIのCAロゴの配色と合わせて800MHzをプラチナバンドのプラチナ色、2.1GHzはauオレンジに設定しており、これらを束ねたCAでのスループットはグリーンで表示しいます。


フィールドテスト車両は、東京タワー駐車場を出て、赤羽橋、麻布十番、溜池、虎ノ門、神谷町、東京タワー駐車場のルートで走行してエリアチェックを実施しました。以下の動画では、虎ノ門ー東京タワー駐車場間のPCモニターでのグラフ表示を確認できます。
CAエリア化はトラフィックが多いところを中心に展開しており、調査ルート全てにおいてCA化できているわけではありません。 例えばテスト区間のうち、首都高速道路の下を走行した麻布十番から溜池の間ではCAでの接続が飯倉片町交差点付近だけと限定的でした。

走行中に安定した電波をつかみ、高速な通信をすることは容易ではありませんが、CAエリアの区間では単一の周波数帯よりも安定して高速な通信を実現していました。

なぜ今エリア調査なのか

KDDIとしては、iPhone 6およびiPhone 6 Plusでの初期市場において、CA対応基地局を増加させることで、他社よりも高速なLTEネットワークエリア化を全国に展開できるという強みがあります。

すでに2014夏モデルAndroidから運用、増強してきたCA網が、iPhone 6の登場でさらに花開くタイミング=CA対応機種が一気に増加するため、都内主要スポットでCA稼働状況をチェックし、課題の早期発見のために調査を実施しています。



エリア品質強化室のトップであるKDDIの木下雅臣氏(写真右)としても「もう田中社長のヘッドロックは勘弁」 。広報も「木下室長は、そろそろ頭をなでてもらえるのでは?」と、CAでのエリア構築に自信を見せていました。

過去記事より


NTTドコモは、4つのLTE周波数帯=クワッドバンドでLTEサービスを提供していますが、iPhone 6およびiPhone 6 Plusが対応する周波数帯はそのうち3つで、2.1GHz帯(Band 1)で15MHz幅、800MHz(Band 19)で10MHz、東名阪限定の1.8GHz帯(Band 3)でのみ20MHzです(現在2000局で年度末までに7000局の予定)。

現状ではCAに非対応(今年度中にサービスを開始する予定)ということで、東名阪以外でのiPhone 6およびiPhone 6 Plus利用者は下り最大が112.5Mpsにとどまることになります。

仮にCAをスタートさせたとしても、2.1GHz帯でエリアを構築してきた背景があり、東名阪以外ではCAのセカンダリとなる800MHz帯対応の基地局数・CA対応基地局数もかなり限定的にならざる終えないことから、半年以上はKDDIに遅れをとるであろうことが想定されます。

※ドコモのCAは下り最大225Mbpsに対応することを発表していますが、iPhone 6およびiPhone 6 Plusでは下り最大150Mbpsとなる規格 UE Category4 を採用しています。つまりドコモの下り最大225Mbpsを使うにはより高速なLTE-Advancedの下り最大300MbpsとなるUE Category6 対応端末が必要なのです。

KDDIではCA対応の基地局を2014年内に2万局まで増やす予定です。東名阪のトラフィック量が多い地域を優先するはずですが、全国でのCAエリア化のために必要な2.1GHz帯エリア整備も進めています。こうした優位性を保ち、既存ユーザーの流出を抑制し、いかに他社から乗り換えるMNP新規ユーザーを獲得できるか。KDDIにとって勝負の時期となりそうです。
iPhone 6 / 6 Plus発売日、KDDIのCA(キャリアアグリゲーション)電波調査に同行

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