BitTorrentは、音楽業界の未来となるか
トム・ヨークに続け!
BitTorrentと言うと、多くのは人は「無料で音楽やら映画やらダウンロードできるやつやろ?」と答えるのではないでしょうか。が、まさに今、そのイメージが変わろうとしています。海賊版の横行で損害を受けているミュージシャンや映画製作者が生き残る道、それがBitTorrentになるのかもしれないのです…。
BiTorrentの新たな試みとトム・ヨークの挑戦
先週金曜日、レディオヘッドのヴォーカルであるトム・ヨークが、BitTorrentで自身のアルバム「Tomorrow's Modern Boxes」を発売したことで、BitTorrentを使ってアルバムを売り出した初のアーティストとなりました。「Tomorrow's Modern Boxes」は、BitTorrent「バンドル」として6ドル(約650円)で販売中。このバンドルとは、BitTrorrentが昨年始めた新たな試みで、楽曲に歌詞カードや動画ファイルがついてくるパッケージのことをいいます。
BitTorrentでは、このパッケージ=バンドルが「ゲート」と呼ばれる門の向こう側にあり、Eメール登録をすることでアクセスすることができます。今回、トム・ヨークがアルバム販売で使っているのは、これのもう1歩先のシステム「ペイゲート」です。その名の通り、お金を払うことで、ゲートの向こう側にアクセスすることができるというのもの。
初のBitTorrent有料アルバムをリリースしたトム・ヨークですが、彼の音楽業界における先進的な取り組みはこれが初めてではありません。2007年には、レディオヘッドとしてアルバム「In Rainbow」をダウンロード販売しましたが、その時、代金はユーザーが決めるというプロジェクトに取り組みました。代金を支払うことなくダウンロードしたユーザーが多くいた一方、CD発売前(つまりダウンロード版のみの時点で)、レディオヘッドの6枚目のアルバム「Hail to the Thief」の全体売上げを超すという快挙となりました。売上げで言えば、大成功を収めたわけです。
今回のトム・ヨークのアルバム販売は、デジタル販売へと変化していく世の中で大きな革命となるのではないでしょうか。BitTorrentの公式ブログの発表において、彼は不安ものぞかせながらもこう語っています。
「このシステムを一般的に人々が使ってくれるのか、それを見る実験的な試みだ。もし成功すれば、ネット販売をコントロールする効果的な方法としてクリエイターに提供できる。音楽や動画など、さまざまなデジタルコンテンツを制作する人間が、自分で販売することができるようになる」
トム・ヨークの言う通り、BitTorrentのシステムはクリエイターにとても優しい形になってます。iTunesなどが売上げの40%を持っていくのにたいし、BitTorrentは10%しかカットしません。この差は大きい!
現在のところ、新アルバムの売れ行き状況はまだわかりません。わかったとしても、あくまであのトム・ヨークのアルバムであって、アマチュアバンドにとってその数字が参考になるかはわかりません。しかし、その結果が良好であれば、バンドルという仕組みやBitTorrentのプラットフォームが使えるものだという指標にはなるでしょう。
まだまだこれから…
今年前半、BitTorrentはMobyの新アルバム「Innocents」を、無料バンドルを使うことでプロモーションしました。このプロモーションでは、900万ダウンロードを記録し、15万人がiTunesの本アルバムページへのクリックしていきました。残念ながら、BitTorrent側は、この15万人の内何人がアルバム購入に至ったかまでは把握していないということですが。
Mobyの例では、BitTorrentでの取り組みがどれほど売上げに貢献しているかはわかりませんが、全く貢献度がないとは言えないでしょう。トム・ヨークのアルバムで、BitTorrentでの売上げの可能性が見えてくるのが楽しみです。
もちろん、とあるユーザーがアルバムを購入する一方で、海賊版をダウンロードする人は消えないでしょう。BitTorrentバンドルは、海賊版を止める手段とはなりません。ただ、作り手により近い位置に売上げを持ってくる、いくらかのお金を彼らに届ける手段となるだけです。BitTorrentは、現在、1日4000万人のユーザーを抱えています。これは、マーケットとして大きな数であり、そこに可能性とチャンスがあるのは間違いありません。
もちろん、トム・ヨークの後に今すぐ続く必要はありません。彼の今回の挑戦が1つのステップとなればいいのです。例えば、コンテンツの1つを無料で配布し、残りを販売したっていいわけです。例えば、限定コンテンツへ誘導するポータルとして使ったっていいわけです。数ヶ月前、BitTorrentの上級役員であるMatt Mason氏は、BitTorrentバンドルはどんなマネタイズのプラットフォームにも対応できると力説しました。どんなプラットフォームにも、とはiTunesやSpotyfyなどのこと。もっと広く言えば、コンサートチケットを売るプロットフォームだって意味も含まれます。
BitTorrentのスタイルは、他社よりもアーティストがコンテンツを手軽に販売でき、そしてより多くの収益を受け取ることができます。ダウンロードするユ−ザーは、BitTorrentのネットワークを支えるバックボーンとなります。それこそが、BitTorrentが俊敏に柔軟に動ける鍵となるわけです。お金を払う人々を惹き付け、そして海賊版から正式版へと誘導するミソとなるのです。4,000万人というユーザにもチャンスはたくさんあるのです。
BitTorrentバンドルの登場で、iTunesなどのその他のプラットフォームが無くなる、脅かされる、なんていうことはまぁないでしょう。それはそれ、これはこれ。ただ、デジタルコンテンツの世界で、お金を払ってくれるユーザーを見つけるのが安易ではない現代、その支払いの仕組みにオプションがあるのはいいよねって話です。未来はまずそこから。
Mario Aguilar - Gizmodo US[原文]
(そうこ)
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