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KDDI田中社長インタビュー:僕はオタクでガジェッター、自ら電波測定する社長の「べき」論 - Engadget Japanese


KDDIの田中社長と言えば、ネットで「田中プロ」、自身でも「オタクのガジェッター」と公言してはばからない人物です。昨年に引き続き「話したいことがある」として、会社に呼ばれたEngadget編集部。これをチャンスとばかりにauの戦略について根掘り葉掘り聞きました。

今回のインタビューはauのネットワーク戦略について。自ら電波測定し続けているという田中社長に、ネットワークのあり方について見解をうかがいました。
 
(KDDI田中社長へのインタビュー記事は以下の5本です)


社長が電波測定


Engadget:去年、田中さんヘッドロックした写真を掲載させてもらったら反響があったようですね。

KDDI 田中孝司 社長:ヘッドロックしたらヘッドロックじゃなくて抱き合っていると言われて、ホモじゃないかって噂も出てきて(笑)。



Engadget:それは失礼いたしました。今回のiPhone 6 /6 Plusは、LTEのBand 41対応ですよね。つまりWiMAX 2+(Band 41)をサポートしているKDDIにとっては良い材料に見えます。

KDDI 田中孝司 社長:すごく影響ありますよ。実は昨日、新幹線の中でずっと使っていたんですが、大阪までテザリングしながら仕事しようと思って。うちの木下(auエリア品質強化室 木下雅臣 室長)も完璧だって言うからさ。

実際浜松までは完璧だったんだけど、浜松を過ぎたら急に調子が悪くなって、大阪に到着したらもう僕は怒り心頭ですよ。それで調べさせたら、どうもWiFiの調子が悪かったみたいで。同じように帰りも電波を見ていましたが、全く問題なかったです。どこでバンドが切り替わったか、とか細かいログも取りました。

人の多い停車駅ではBand 41を拭いているんです。Band 18(auの800MHz帯)はみんなが使っているから、混んでると(遅くて)ヤバいじゃないですか。Band 41は空いているし結構速いんですよ。周波数をもらって作ったところだし、まだお客さんもそれほど入ってないから速いんです。ほら見て、行きに繋がらなかったからもうずっと帰りはログをとっていました(田中社長、定期的に計測したログを披露)。



Engadget:ちなみにその報告は木下さんに届くんですか?

KDDI 木下雅臣 室長:はい、昨日はその件でCメール(SMS)のやりとりを10回以上(笑)。社長は穴を見つけるのが得意なんです。とくに新幹線はかなりきれいにネットワークを作らないと、すぐに言われます。

KDDI 田中孝司 社長:僕は電波オタクだからよく見つけるんですよ。昔、新大阪でなんでこんなところで繋がらないんだ! って怒ったら基地局が落ちていたこともありました。

150MbpsはiPhoneに合わせた


Engadget:それではネットワーク関連について聞かせてください。まずはエリアから。

KDDI 田中孝司 社長:そうですね。2.1GHz帯の人口カバー率が9月末で92%になります。800MHz帯はすでに99%なんだけど、人口カバー率だからもうここまで来るとなかなか増えないんですよね。今現在、99.1%超といったところです。

Engadget:通信速度についてはiPhone 6のLTE Categoly 4(最大150Mbps )に照準を合わせてきた印象があります。

KDDI 田中孝司 社長:ご存知の通り150Mbpsは前倒しで進めてきましたが、これはiPhone 6のCate 4に合わせるためで、CA(キャリアアグリゲーション、周波数を束ねて通信を高速化する技術)を展開しました。でもCAだけだとトラフィックの混雑する都心部では容量に不安があるから、WiMAX 2+(現在110Mbps、TD-LTE互換)を合わせて使ってもらおうと。この辺のネットワーク戦略についてはばっちり当たっていると思っています。

CAとWiMAX 2+


これは我々が調べたものですが、WiMAX 2+もあるし、CAを導入したことで通信は安定する。このため平均スループットはCAでないよりも2倍弱上がっています。

編集部注:9月18日現在、150Mbpsに対応するエリア(2.1GHz帯の20MHz幅局と、2.1GHz帯と800MHz帯のCA)は1万1000局。KDDIが総務省に報告した当初の開設計画では、2015年3月までに2万局としていましたが、これを2014年12月に早めています。

Engadget:他社比で通信速度の面で優位ということですか? かなり違う?

KDDI 田中孝司 社長:違う、これはもう違います。都心はどこもみんなトラフィックは混んでますよね。これをWiMAX 2+のBand 41で救っている状況で、ちょっと空いている場所ならCAが効いてくるから、平均スループットが上がるんです。

それに無線はフェージング、つまり電波の強さが波を打つんです。CAだと複数の周波数を使えるから、たとえば一方が弱いときはもう一方がカバーするので安定するんです。

Engadget:理屈としてはわかるんですが、AとBの周波数があってAが弱まったときにBは確実に補完関係になるものなんですか? 両方とも同じような振幅になれば補完しませんよね?

KDDI 田中孝司 社長:あ、それはあります。2つの周波数は非同期で動いていますから。でも2つの波が同期する方が変なので平均値は上がるんです。

Engadget:iPhone発売のタイミングでauの通信速度調査に同行しましたが、CA対応機種では理論値に近い速度も出ました。全ての対応エリアでそうもいかないとは思いますが。

KDDI 田中孝司 社長:まぁ、それなりに。ただRBBのアプリで計測しているから結構ピークっていて、測定するものによって違うところもあります。RBBはトップの平均値を出すので高めに出ますね。自社でモニタリングしている装置の方が低めに出ます。

通信レポートは技術と営業両面から


Engadget:これはKDDIに限りませんが、ドコモやソフトバンク含め、技術や建設部門などインフラを支える人達の地道な作業は頭の下がる思いです。その一方で、Twitterなどでもサポートを行っていますよね。

KDDI 田中孝司 社長:はい、お客さんがTwitterであそこがダメだとかいろいろ書いてくれるんですよ。それを営業CS部門が調査してフィードバックをお客さんに返すんです。いろいろ修正するので結構評判いいんですよ。コスプレ好きの川北さんがコミケなんかでも頑張ってくれて。

Engadget:え、コミケのコスプレ部隊に!? 進撃の巨人ですか?

KDDI 川北氏(コンシューマ営業企画部):はい。あのでもコスプレは好きというか、変身願望があったぐらいで。



KDDI 田中孝司 社長:でも普通、こういうのをボランティアでやりませんよ。コミケでWiFiかついでさぁ。木下が技術関連から通信を見ていますが、川北さんは営業目線でチェックしてくれるんです。技術部門は嘘つくからね(笑)。

Engadget:木下さん信用されてませんけど(笑)。

KDDI 田中孝司 社長:いやね、営業側の言うことの方が概して正しいんです。技術部門は理屈をこねるというか、「ここはエリアじゃない」とか「これは正しいはずだ」とか言うんです。営業側はお客さんのクレームを受けるわけだから先入観がないんですよ。今、ネットワークに関するレポートを技術部門と営業部門と両方から出させていて、どちらも僕が見ているんだけど、時々そういうことがあります。コストは倍かかるけど必要かなと思って。

KDDI 木下雅臣 室長:というわけで、今は営業部門と連携をとりながらやっているところです。

コミケは気合い


Engadget:なるほど。ところで冬コミでの反応はいかがでした?

KDDI 川北氏:いろいろと声をかけていただいて「普段auを使っているよ」と言われて嬉しかったですね。会場ではかなりの人数でWiFiを背負っていたのですが、批判的な声をいただくことがなく「寒いのに薄着でご苦労さま」とねぎらっていただきました。



Engadget:夏コミでも弱虫ペダルをやっていましたが、auにとってかなり重要なイベントになってますよね。

KDDI 田中孝司 社長:コミケはもう気合い。ホントとんでもない人が集まるイベントでしょ。それに毎回、人の集まる傾向が違うんだよ。運用本部にコミケのリアルタイムモニターがあるんだけど、人の動きに合わせてトラフィックがゆれていくのがものすごいんだ。動けばそれに合わせて、あそこに行けー! って。

Engadget:えっ? 人間WiFiの人達はトラフィックモニターに合わせて動いてるんですか?

KDDI 川北氏:はい、指示が飛んできたらそこに向かうんです。

KDDI 田中孝司 社長:どこそこ行けー! て、いやほんと最後は人なんだよね。基地局の調整とかリアルタイムにできない以上、人をかけるしかない。イベントならばコミケだし、リアルトラフィックなら新宿、渋谷、池袋が電波の嵐です。



Engadget:じゃ、そこにも人間WiFiを。

KDDI 木下雅臣 室長:トライアルではやったことがあります。ただ、電車の出入りが多く、その人たちがWiFiを瞬間的につかんでしまうため、あまり評判がよくないんです。だからコミケも人が滞在しているところには強いですが、動いている最中は難しいと思います。

0.0014%の積み重ね

Engadget:なるほど。川北さん、インタビュー前に社長と同席ということでかなり緊張されているようでしたが、もっとしゃべってください。

KDDI 川北氏:え、えと、はい、そうですね。白川郷は営業側が技術や建設部門に無理を言って置局してもらいました。白川村は人口カバー率としては0.0014%しか増えないのですが、それでも観光客は年間140万ぐらいは来ますから、お客様がちゃんと使えるようにしたいと営業から技術に要望して対策してもらいました。

白川村は白山スーパー林道などうねった道路が多く、置局が大変なところ場所です。技術建設部門に頑張ってやってもらったということもあり、営業側でもしっかりアピールしないとと考えて、オリジナルのステッカーを作って観光施設などでエリア化を伝えています。



Engadget:0.0014%のエリアカバー率アップとか、そういう積み重ねなんですね。山間部ということはその分基地局建設自体にコストもかかりますよね。

KDDI 田中孝司 社長:800MHz帯は99%までいってますからね。ほんとここからが気が遠くなるぐらい大変なんです。

LTEは1年先行している


Engadget:とはいえ利用者目線で言えば、どこにいたって繋がらなければイライラします。これはあくまでも印象ですが、山間部など山歩きの人の間ではドコモのエリアに対する信用度が高い気がします。

KDDI 田中孝司 社長:たぶん昔の2Gの頃の測定の仕方だと、ドコモさんは100%までいっていると思います。でも、LTEだと今、うちの方がそれなりに広いはずですよ。ドコモさんは2014年度末で99%にするって言ってるから、我々の方が1年ぐらい先行しているんじゃないかな。

終わりなき戦いだよね。とはいえまぁ、エリアは僕らNo.1 だと思っているし実際にそう。CAやWiMAX 2+もあって、結構イケてるかなと思うんです。去年はダントツって言ったけど、今年もそれなりに自信がある。いかがですか?

Engadget:ネットワークに関して、2013年はauの年だったと思います。2014年は200Mbps 超もやるしドコモがネットワーク面を牽引するんじゃないかと想像していましたが、今のところはそこまでで一気には広げていない印象です。秋以降の製品発表のタイミングに合わせて何か手を打ってくるのかもしれません。

KDDI 田中孝司 社長:エリアは途中まではわりと一気にいくんですよ。どうしても物理的に時間がかかる、ここからが遠い。都心は細かいところまで僕らは入っていて、木下から毎週レポートが届くんだけど、それをそのまま信用せずに、つっこみ入れていかないとと思っています(笑)。



Engadget:社長から二度も信用されていないと言われた木下さん、そんなレポートを出すお気持ちをうかがってもいいですか?

KDDI 木下雅臣 室長:そういうものだと思っていますから(笑)。もう1年半ぐらい毎週レポートを提出していますが、当初は土日に社長からメールが来るのが、うわ〜、と思っていました。しかし今は来るのが当たり前になっています。

土曜の23時とか遅い時もあるんですが、それに返信すると社長から朝の6時にメールが来たりとか。いつ寝てるんだ? と思うこともあります。たまに、返信がないとアレ? 社長どうしたのかなと思ったり。

KDDI 田中孝司 社長:死んでたりしてね(笑)。いや昨日もメールしてたんだけど、どこでどの周波数を掴んだか知らせてね、あーだこーだとずっとやりとりしているわけですよ。

KDDI 木下雅臣 室長:ちょうど嫁さんと子どもと布団を買ってる時にメールが来ました。あ、社長からメールきとるな〜と(笑)。こういう連絡をいただくのは社長からだけなので、実際のところ、相当ネットワークが好きな方だなぁと思ってます。

ネットワークは常にハイスピードであるべき



Engadget:各社の担当者が職務を全うするのは理解できるのですが、田中さんは日本の中でもかなり大きな会社の社長ですよね。ご自身でそこまでやるのはどうしてなんでしょう?

KDDI 田中孝司 社長:いや僕は、常に繋がっていたいんだよ、高速に。ネットワークは常にハイスピードであるべきだと思うだよね。なのに繋がらない穴があると嫌な感じがしません? いやオタクだからね、ガジェッターだし。

真面目な話、auは結構がんばっている。数字だけ見ても意外とお客さんがauを選んでくれていて本当に嬉しいし、ネットワーク戦略はばっちり当たったと思う。来期もエボリューションが見えているしね。木下も川北もホント頑張ってくれているし、お客さんは喜んでくれるかなと思います。

Engadget:ありがとうございました。

(KDDI田中社長へのインタビュー記事は以下の5本です)
KDDI田中社長インタビュー:僕はオタクでガジェッター、自ら電波測定する社長の「べき」論

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