1: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:13:55 ID:y7SNMCTA

オーガ娘『ぐすっ、ひっく…』

悪ガキ1『みなしごーみなしごー!』

悪ガキ2『やーい、巨女ー!デカ女ー!』

悪ガキ3『鬼の子ー!』

オーガ娘『やめてよぅ、ぐしゅっ』

悪ガキ1『やーい!弱虫ー!』

悪ガキ2『デカイくせに泣き虫ー!』

悪ガキ3『鬼のくせにすぐ泣くー!』

オーガ娘『うぐっ、うわぁぁぁん!』




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2: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:17:10 ID:y7SNMCTA


男『オラァっ、お前らっ!!』ダダッ

オーガ娘『ううぅっ…お、男…ひっ、ちゃん、えっぐ…』

男『また性懲りもなくっ!』

悪ガキ1『来やがったな!』

悪ガキ2『デカイ奴にデカイって言って何が悪い!』

悪ガキ3『角なんか生やしやがって!だっせーの!』

男『おまえらっ…!!!』ムカムカ

悪ガキ1『やるか?』

悪ガキ2『いつもやられてばっかだから、今日はやり返してやる』

男『やれるもんなら、やってみろ!』

悪ガキ3『やっちまえー!』

男『おらぁっ!』

バキッ、ドカッ、ゲシッ…

……




3: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:18:55 ID:y7SNMCTA

……

オーガ娘『男ちゃん、ひっく、大丈夫?』

男『いつつ…、くちびる切れてる…』

オーガ娘『ごめんね、いつも私のために』

男『オーちゃんが謝る必要なんてないだろ?』

男『悪いのはアイツらだ』ムカムカ

男『でも、1対3はキツかったな…やられちゃった』

オーガ娘『卑怯だよぅ、うくっ』

オーガ娘『アイツら、えぐ、わ、私をダシにして、男ちゃんをおびき出したのよ…』

男『…わかってた』




4: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:19:54 ID:y7SNMCTA

オーガ娘『私のせいで、男ちゃんがケガしちゃ嫌だよ…ひっく』

男『こんなもんはほっときゃ治るからいいんだよ。それよりオーちゃんが傷つけられるのは我慢ならねぇ』

男『アイツら、オーちゃんが今までどれだけ辛かったか知らないから…!』ギリッ

オーガ娘『男…ひっく、ちゃん』

オーガ娘『ふふ、優しいね、男ちゃん』

男『オーちゃんはそうやって笑ってる方がいいよ』




5: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:21:04 ID:y7SNMCTA

オーガ娘『いつも、ありがとう』

?「お………ゃん…」

男『いいよ、別に』

?「男……ん」

オーガ娘『私、大人になったら…』

?「男ちゃ…」

オーガ娘『男ちゃんとけっ… ?「男ちゃんっ!」

―――
――




6: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:24:20 ID:y7SNMCTA



?「男ちゃんっ!」

男「んが…」

男「んあ、オーちゃん…」

オーガ娘「んあ、じゃないっ!」プン

オーガ娘「私が警護団の任務で遠方に行くから、出発までに工房に来てくれって言ったの、男ちゃんでしょう!?」プンスカ


男「ふああぁ…そだったな…」

オーガ娘「来てみたら、型紙にヨダレ垂らして寝てるし…」

男「あ、いけね、作り直しか…」ジュル

オーガ娘「あーあー、もう…」




7: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:25:09 ID:y7SNMCTA

男「んん、うぇぇいぃ…」グリグリコキコキ


オーガ娘「随分お疲れのようね」

男「最近、オーダーがよく入って、忙しいのなんのって…」

オーガ娘「人気仕立て職人はツラいね、ふふふ」

男「忙しいうちが華ってことさ」

男「あ、お茶淹れるわ」

オーガ娘「もう頂いてまーす」

ホカホカ

オーガ娘「勝手に用意させてもらったよ」

男「すまないな」

オーガ娘「それで用件は何?」




8: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:28:44 ID:y7SNMCTA

男「ああ、採寸だ」

男「新作のドレスを作るから、念のためにな」



オーガ娘「ああ…////」

オーガ娘「やっぱりか…////」

男「落胆するわりに、素直に寄ってくれたんだな」

オーガ娘「まあ…男ちゃんが仕立て職人になったのは、私が原因だから」

オーガ娘「協力しないとね」

男「原因とかそんな言い方するなよな」

男「俺がオーちゃんの服を仕立てたのが始まりなだけだろ?」




9: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:30:37 ID:y7SNMCTA

オーガ娘「男ちゃんの手先の器用さにはびっくりしたよ」

オーガ娘「簡単に服を作っちゃうなんて」

男「小さい頃からもの作りは好きだったんだよ」

オーガ娘「それからどんどん巧くなって」

男「新作を作ると、オーちゃんスゲェ喜んでくれるから」

オーガ娘「今は自分の工房も持って、人気も出て」

男「よせよせ////」

オーガ娘「まあ、オーガ族の私の体型に合うような服なんて、そうそう無いから助かるっちゃ助かるんだけどね…」




11: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:32:35 ID:y7SNMCTA

オーガ娘「…」シュン

男「自分で言ってヘコむなよ…」

男「ま、だから俺が仕立ててんだろ?」

男「オーちゃんは出るとこ出て、引き締まって全体的にバランスの取れた良いカラダしてるから」

男「モデルにピッタリなんだよ」

オーガ娘「恥ずかし…////」

男「照れんな照れんな」

オーガ娘「そんなこと言ったって////」




12: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:33:04 ID:y7SNMCTA

男「はははっ」

男「オーちゃんは気にするかもしれないけど、大きいと服の見映えもよくなるし」

男「俺も結構助かってんだぜ?」

オーガ娘「そう言われると、大きいのも悪くないね」

男「そういうこと」

男「じゃあ、採寸するか!」




13: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:35:14 ID:y7SNMCTA

男「ふむふむ…」メモメモ

オーガ娘(ああ…男ちゃんの前で薄着で…)

オーガ娘(女の子の極秘情報のスリーサイズ計られてるなんて…////)

オーガ娘(いつまで経っても慣れないなぁ////)



男「オッケ!ありがとう」

オーガ娘「うん」キガエキガエ




14: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:39:18 ID:y7SNMCTA



男「オーちゃん、また胸でかくなったな」

オーガ娘「あえ!?////」

オーガ娘「や…やっぱり?////」

オーガ娘「最近、団の制服、前ボタンがキツくなったんだよね…////」

男「いつまで成長期なんだか…」

オーガ娘「し、身長は止まったもんっ////」


男「まあ、毎日の訓練で鍛えてるから、体幹がしっかりして姿勢もよくなるしな」

男「胸なんかは下地の筋肉が鍛えられたら大きくなりやすいらしいし…」

男「しかし…」ジー




15: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:40:54 ID:y7SNMCTA

ポヨン

男「…」ニヘラ

バキッ

男「おがっ…」

オーガ娘「せっ、セクハラッ!////」

オーガ娘「目線がやらしいっ!」

男「いだいいだい」モンゼツ


オーガ娘「あ、ごめん…」

男「いたた…いや、こっちも悪かった」


男「しかし、相変わらずのパワーだな」

オーガ娘「このオーガ族天性の剛力で王立警護団にスカウトされたからね」フン

オーガ娘「コンプレックスだったのに、頼りにされると誇りに思うの…不思議ね」




16: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:42:58 ID:y7SNMCTA

男「はははっ、昔はいじめられっ子のオーちゃんだったのにな」

オーガ娘「はう…////」

男「今じゃ、警護団でも一目置かれてるもんな」

オーガ娘「なんでそんな話////」

男「さっき寝てたときに、夢を見てな…」

男「小さい頃の夢だった」


男「いつも、オーガ族の事をからかわれて泣いてたのに…」

男「ホントは強かったんだよな」

男「両親を早くに亡くして、それでもへこたれず、真っ直ぐ、いい女になった」

オーガ娘「いい女…」

オーガ娘「私みたいな、デカイ女に…そう言ってくれるの男ちゃんだけだよ」




17: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:44:09 ID:y7SNMCTA


男「そんなことないだろ」

男「それは見た目の話であって、みんな内側の良さにも気づいてるよ」

オーガ娘「そう、かな」

男「もう昔と違って、みんなに認められてるだろ?」

オーガ娘「まあ…うん」

男「自信持てよ」

オーガ娘「うん!」




18: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:45:10 ID:y7SNMCTA


男「それで?今回の任務は?」

オーガ娘「ああ、っとね。隣国からの要請で災害支援」

オーガ娘「おととい、大嵐があったでしょう?」

オーガ娘「国境を越えてすぐの場所なんだけど」

オーガ娘「先刻の大嵐で複数の種族の集落が被災し、甚大な被害が報告されており、当国だけでは対応しきれないため応援願います、だって」




19: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:46:10 ID:y7SNMCTA


男「…災害支援、か」

男「…毎度の事だけど…危険な任務の時は気をつけてくれよな」

ギュ

オーガ娘「男ちゃん…」

男「出発は?」

オーガ娘「明日夜明け前」

男「そうか」

男「帰ってきたらまたモデル、頼みたいから」

男「気をつけて、な」

オーガ娘「うん!」

オーガ娘「そろそろ行くね、明日の準備とかあるから」

オーガ娘「お茶ごちそうさま」




20: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:46:42 ID:y7SNMCTA

男「明日、見送り行くよ」

オーガ娘「いいよ、男ちゃんは忙しいみたいだし」

オーガ娘「それに、夜明け前だと男ちゃん、大変でしょう?」

オーガ娘「朝、弱いし」クスクス

男「う…。まあ、確かに…」

オーガ娘「男ちゃんはいい服仕立てて!ね?」

男「ああ」

オーガ娘「じゃあ、またね」




21: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:49:01 ID:y7SNMCTA

―翌日・夜明け前―


団長「今回の任務は隣国に於ける災害支援だ」

団長「如何なる状況下でも対応できるよう、各自細心の注意を以て臨むように」



総員「「「はいっ!!」」」ビシッ!



オーガ娘(男ちゃん…行ってきます)

団長「では出発する」

ヒヒーン!

ドドッドドッドドッ…


 




22: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:49:58 ID:y7SNMCTA

――


男「いらっしゃい、注文の品できあがっていますよ」

客「まあ…!ホントにいつ見ても綺麗な仕上がりね」

男「ありがとうございます」

客「これで孫に素敵なウェディングドレスをプレゼントできるわ」

客「ありがとう」

男「いえいえ。またどうぞご贔屓に!」

男「ありがとうございましたー!」



男(夕方か…少し休憩しようか)




23: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:51:55 ID:y7SNMCTA

[只今休憩中]

[ご用の方は呼び出しベルを鳴らして下さい→]


男(お茶は…と)カチャカチャ

男(出発から約半日…)

男(そろそろ警護団も活動し始めた頃かな)

男(無事に任務をこなしていればいいけど…)

コポコポ…

ピシッ…!

男「あ!」

男(この湯飲み、気に入ってたのに)

男(しかし、ひび割れするなんて、なんか縁起悪いな…)


男(オーちゃん…)




24: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:53:52 ID:y7SNMCTA


――

オーガ娘「周辺集落の住民の避難、順調に進んでいます」

団長「ああ」

オーガ娘「ただ、二次災害の恐れもあり生存者の捜索、救助は慎重にならざるを得ません」

団長「ん…ああ」

オーガ娘「…どうかしましたか?」

団長「いや、朝な」

団長「滅多に見ない新聞の占いを見たんだよ」

オーガ娘「団長もカワイイところがありますね」

団長「うるせ。そしたら、まあ、俺の今日の運勢、最下位だったんだが…」

団長「大切なものを失うかもしれません、だとよ」




25: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:55:23 ID:y7SNMCTA

オーガ娘「所詮占いですよ」

団長「それに、愛用のブーツの靴紐も切れちまったんだ」

オーガ娘「あら…」

団長「不吉だろ?」

オーガ娘「そう言えば…私も今朝、愛用のマグカップ、落としてもないのに横に真っ二つに割れましたね」


団長「横に?」

オーガ娘「マグカップの輪切りみたいな感じですね」

団長「なんか、気味悪いな…」

オーガ娘「考えすぎでは?」

団長「だといいんだがな」




26: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:56:33 ID:y7SNMCTA




団員1「団長!」

団長「どした?」

団員1「危険区域のエルフの集落にて、生存者を確認しました!」

団長「よし。団員1、オーガ娘、いけるな?」

オーガ娘・団員1「はい!」

団長「行くぞ」ダダッ




27: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:57:56 ID:y7SNMCTA

――

団長「くそっ」

団長「もっと早くに救援要請してくれりゃ、まだ楽に活動できたのによ」

オーガ娘「同感ですね」

オーガ娘「何故もっと早く要請が無かったんでしょう?」

団長「推測の域を出んが、過去の因縁だろう、どうせ」

団長「どうぞ慌てずに!必ず全員助けますから!」

オーガ娘「はい、もう大丈夫よ。お父さんお母さんとはぐれないでね」

エルフ子供「ありがとう、オーガのお姉さん!」

オーガ娘「どういたしまして」ニコ

オーガ娘「…でも大戦があったのはもう二百年以上前でしょう?」




28: ◆loxSgAubwY 2014/06/26(木) 23:59:01 ID:y7SNMCTA

団長「隣国の中枢は、頭でっかちで石頭のジジイ共らしいからな」

団長「何よりメンツが大事な連中じゃねーの?」

オーガ娘「皆さん、足元気をつけて下さいね!」

団長「そんなのチャチなメンツなんかどうでもいい。今は任務に集中して救える命を救うだけだ」


オーガ娘「…ですね」

団長「落ち着いて避難して下さい!」

ポツ…

ポツ…




29: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:00:08 ID:Z99Q33ws

ポツ…

オーガ娘「!」

ポツ…ポツ…

団長「雨…?」

ポツポツ…ポツポツポツポツ…

ザアァァアァァァァ…

オーガ娘「本降りかも…マズイですね」

団長「しばらくは快晴続きとか言ってたじゃねぇかよ!」




30: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:01:12 ID:Z99Q33ws

ザザアァァァアアァァァァァ…

オーガ娘「未だ止む気配は無し」

オーガ娘「むしろ降り方が激しくなってきています」

団長「あと何人いる!?」

団員1「あと二人です!」

オーガ娘「急ぎましょう!」


ゴ…

ゴゴッ…

オーガ娘「!?」




31: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:04:19 ID:Z99Q33ws

ガラッガラガラガラ…!

オーガ娘「そんなっ…」

ドドッ…

オーガ娘「みんなっ!離れてぇぇっ!!」

ドドドドドドッ…

団長「み、道が崩落…」

団長「前の大嵐と…この急な大雨でか!!」

団員1「向こう側も長く保ちそうにありません!」

オーガ娘「あと、あと二人なのにっ…!」

団長「くそ、何とかしないと…」


エルフ少女「パパっママぁっ!」

オーガ娘「!」


オーガ娘「…」




32: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:05:29 ID:Z99Q33ws

………


オーガ娘『お父さんっお母さぁんっ!』


オーガ娘父『行きなさいっ!』

オーガ娘父『父さん達は…もう、そっちに行けない…』

オーガ娘母『あなたはっ…生きて』

オーガ娘母『私達の…分までっ…幸せになってっっ!』

オーガ娘『お父さんっ…!!お母さんっ…!!』

オーガ娘父『約束…だぞ!』

オーガ娘『約束っ…する!』




33: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:06:11 ID:Z99Q33ws



オーガ娘父母『私達はずっとお前を見守っているよ』

ドドッドドドドドドドド…


オーガ娘『お父さ…お母…さ』




『いやあぁぁああぁぁあぁっっっ…!!』




……



オーガ娘「…」ギリッ




34: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:08:13 ID:Z99Q33ws



オーガ娘「私が行きます」

団長「は?」

オーガ娘「私が跳び越えて、二人を連れて戻ってきます」

団長「ちょ、何言って…」

オーガ娘「私の跳躍力なら…可能です」

団長「落ち着け!オーガ娘っ!」

オーガ娘「その子に…私と同じ思いをさせたくありません!」

団長「待てっ!冷静になれっ!」

オーガ娘「エルフちゃん…」

オーガ娘「必ずお父さんとお母さんを助けるから!」




35: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:10:02 ID:Z99Q33ws




ダダッ

エルフ少女「え」

団長「待…!」

ダダダッ!

オーガ娘「うぉおおぉぉあぁぁぁっ…!!」

ダンッッ!!

オーガ娘「らああぁぁぁぁぁぃっ!!!」





団長「!」

一同「「「!!!」」」




36: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:11:05 ID:Z99Q33ws




ズシャアァァンッッッ!

エルフ父母「うわっ!」

オーガ娘「ふんっ!」フン

団長「と…届いた…!」



一同「「「ワアーーーー!!」」」




オーガ娘「驚かせてすいません。でも、事は急を要するので」

オーガ娘「さ、早く行きましょう。お嬢さんが待ってますよ!」ニコッ


エルフ父「な、なんて無茶を…」

オーガ娘「…」




37: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:12:12 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「私は…災害で両親を亡くしています」

エルフ母「え…」

オーガ娘「エルフちゃんに…私と同じ思いをしてほしくありませんから!」ニコッ

オーガ娘「必ず…あの子の元へ!」

エルフ父「…ありがとう」



オーガ娘「では失礼しますね」

ガシッ

オーガ娘「跳ぶ瞬間、少し力みますから…苦しいかもしれませんが我慢して下さいね」

エルフ父母「…はいっ!」




38: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:12:45 ID:Z99Q33ws



オーガ娘(とは言ったものの…)

オーガ娘(助走距離は…行きの半分くらいかな)

オーガ娘(かつ、小柄な種族とは言え、成人エルフ二人を両脇に抱えて…)

オーガ娘(いや…マイナスイメージはやめよう…)キリッ

オーガ娘「ふぅっ…ふぅっ!」








 




39: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:14:03 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「…行きます」ゴクッ



オーガ娘「お父さん…お母さんっ!」



オーガ娘「男ちゃんっ…!」



オーガ娘「ふぅっっ!」グッ

タッ!

オーガ娘「私に力をっ…!私をっ…!」

ダダダッ!

オーガ娘「守ってぇぇぇっっっ!!!」

ダッンッッ!




40: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:14:56 ID:Z99Q33ws






一同「「「!!!!」」」







ドンッ

オーガ娘「!」

オーガ娘「届いた…」ホッ


ガラッ


オーガ娘「え」




41: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:16:33 ID:Z99Q33ws

ズルッ

オーガ娘「ヤバっ…!」

団長「お、オーガ娘ぇっ!!」

エルフ少女「お姉ちゃんっっ!」

オーガ娘「せめて…お二人だけは!」

エルフ父母「え?」


ブンッ


エルフ父母「わあっ!?」ドシャァ



ガラガラッ

オーガ娘「男ちゃん…」




42: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:17:18 ID:Z99Q33ws

――



男(!)

男(!?…?)



――




43: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:18:19 ID:Z99Q33ws



オーガ娘「もうモデル、できないよ…ごめんね…」ジワ



オーガ娘「もっと」ポロリ



オーガ娘「男ちゃんの仕立てた服」ポロポロ



「着たかったな」



ブチッ


 




44: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:19:18 ID:Z99Q33ws


―工房―

バタンッッ!

男「おわぁっ!?」

?「しっ、失礼っ、します!」

男「警護団、の方…?」

団員2「はっ、はあっはあっ、伝令…です、はっはあっ…」



団員2「先程…はっ、派遣先から、連絡が、はあっ、ありまして…」

団員2「おっ、オーガ娘が…はあっ、任務で…はあ、被災者を救助しようと…」




男「え」ドクン




45: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 00:19:48 ID:Z99Q33ws


団員2「救助した、二名は…、かすり傷程度で済んだんですが…」

団員2「オーガ娘が…!」






男「え…」ドクンドクン




ドクンドクンドクンドクン!




50: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:13:33 ID:Z99Q33ws

―避難所―

オーガ娘「」

男「…」

オーガ娘「」

男「うぅ…ぐすっ」




 




51: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:14:36 ID:Z99Q33ws













オーガ娘「男ちゃん…」

オーガ娘「泣いてるの?」


男「…」コク



オーガ娘「男ちゃん…」




52: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:18:25 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「あばら骨と足、折っちゃった!てへ♪」テヘ



男「てへ、じゃねぇ!!バカタレェ…あぐっ」


オーガ娘「ごめん…なさい…」

男「顔も…うぐ、傷、だらけで」

男「頭も、何針か、っく、縫ったらしいな」

オーガ娘「ごめん…」

オーガ娘「骨折以外は、異常は無いみたい」

男「うん…生きててくれて…」

男「うっく…良かった…ホントに良かった…ぐすっ」




53: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:20:03 ID:Z99Q33ws


オーガ娘「小さい頃、ケンカで負けても泣かなかった男ちゃんが…泣いてる」

男「ひぅ、ぅうるせぇっ!」

オーガ娘「泣いてるの初めて見た」

男「ふっぐぅ…」

オーガ娘「心配かけてごめんね…しか、言えない…。ホントにごめん…」

男「ぐすっ、ああ」




オーガ娘「…これ」スッ

ボロッ

男「すん、これは…」




54: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:21:47 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「ミサンガ。切れちゃったけど…」

オーガ娘「今回も着けて任務に就いたの」

男「…ぐすっ」

男「まだ、持ってたのか…」

オーガ娘「任務の時のお守りにって、男ちゃんが入団祝いにくれたんだよね」



男「お守り…か」

オーガ娘「崖から落ちた時ね…」




……
………




55: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:24:02 ID:Z99Q33ws

ガラッ

オーガ娘「え」

ズルッ

団長「お、オーガ娘ぇっ!!」

エルフ少女「お姉ちゃんっっ!」

オーガ娘「せめて…お二人だけは!」

エルフ父母「え?」


ブンッ


エルフ父母「わあっ!?」ドシャァ




56: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:24:47 ID:Z99Q33ws

ガラガラッ

オーガ娘「男ちゃん…」

オーガ娘「もうモデル、できないよ…ごめんね…」ジワ

オーガ娘「もっと」ポロリ

オーガ娘「男ちゃんの仕立てた服」ポロポロ

オーガ娘「着たかったな」



ブチッ


オーガ娘「あ…」

オーガ娘「ミサンガ切れ…」




57: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:27:19 ID:Z99Q33ws


………

男『これ、お守りだ』

オーガ娘『これは?』

男『南の大陸の工芸品で、願いが叶うとき切れるって言われてる、紐で編んだ腕輪』

男『ミサンガっていうものなんだ』

男『警護団の入団祝いに、な』

オーガ娘『ホント!?ありがとう!』

男『ごめんな。まだ工房も開いたばっかりで、金が無くて…』

男『余った糸とか…生地で編み込んだだけなんだ』シュン

オーガ娘『ええっ!?そんなの気にしないでよ!』

オーガ娘『ホントに…嬉しいよ、ありがとう』




58: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:28:15 ID:Z99Q33ws

男『せめて、俺に着けさせてくれ』

オーガ娘『うん』

クルッキュッ

男『ほい』

オーガ娘『ありがとう』

オーガ娘『私、頑張るから!』

ギュッ!

男『ああ、応援してる』

オーガ娘『ふふ、うん!』




59: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:30:12 ID:Z99Q33ws

………

オーガ娘「男…ちゃ…」

オーガ娘「私の…手…、掴んでっ…」


ガッシィッッ!!

オーガ娘「あがっ…!!」ギシンッ!

ギシッ…

オーガ娘「いぎぃっ…木の…枝っ!?」

オーガ娘「助かっ…」ベキッ…

オーガ娘「あ」

ベキベキベキッ!

オーガ娘「うそうそうそ…」ベキンッ!


オーガ娘「きゃあぁぁっ…!!」


――




60: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:31:46 ID:Z99Q33ws


――

団員1「い、いました!」

団員1「おいっ、オーガ娘!!」

オーガ娘「…ぅ」



団長「様子は!!?」

団員1「息はありますっ!気絶しているだけですっ」

団員1「しかし、頭部から出血、足も折れているようです」

団長「無茶しやがって…!救護班!急げっ!!」


………
……




61: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:33:19 ID:Z99Q33ws

男「俺の…手?」

オーガ娘「うん…」

オーガ娘「男ちゃんが、私に手を伸ばしてくれたの」

オーガ娘「男ちゃんが掴んで、助けてくれたんだね…」

男「大袈裟な…」

オーガ娘「ううん、本当にありがとう」


男「俺は何もしてねぇんだけど」

男「…何にせよ、大事に至らなくて良かった」

男「オーちゃんに何かあったら、亡くなったご両親に顔向けできねぇもの」

オーガ娘「ごめん…」

男「…もう無茶しないでくれよな」




62: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:35:48 ID:Z99Q33ws


オーガ娘「うん…でも、わかんない」

オーガ娘「また今回みたいな事があったら、ね」

男「ははっ、オーちゃんらしいや」



コンコン

オーガ娘「はい」

団長「団長だ。入っても大丈夫か?」

オーガ娘「はい、大丈夫です」


ガチャ

団長「お?仕立屋の男」

男「おひさしぶりです」

団長「ああ」

団長「今回はすまんな。俺がついていながら、お前の大切な幼なじみに大ケガさせてしまって…」ペコリ




63: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:37:37 ID:Z99Q33ws

男「あいやや、団長さんの責任じゃないっすよ!」

男「こいつが冷静さを欠いたのが問題なんであって…」

オーガ娘「…ごもっともです」

団長「確かにな」

団長「本当に…事故の日の占い、外れて良かった」

男・オーガ娘「え?」

団長「大切なものを失うかも…オーガ娘、お前は俺の大切な部下であり、大切な仲間だ」

団長「失わなくて…本当に良かった」

オーガ娘「はい…ご心配おかけしました」




64: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:38:44 ID:Z99Q33ws


団長「うむ。今回は運が良かった、ということもある」

団長「今後はもっと冷静に行動するように」

オーガ娘「…はい。すいません」

団長「まあ、そのオーガ娘の無茶のお陰で、二次災害での死者はゼロ」

団長「お前はかけがえのないものを守ったんだ」

団長「入ってください」

バッターーーーン!

男・オーガ娘「!?」ビクゥッ!

ダダダッ!

エルフ少女「お姉ちゃんっ!!」ダキッ!




65: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:39:31 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「あだだだっ!あ、あばら、おお折れてるの!!」

エルフ少女「わあっ!ごめんなさいっ!」バッ

オーガ娘「え、エルフちゃん!」

エルフ少女「ありがとう!パパとママを助けてくれて!」

エルフ父母「オーガ娘さん…」

オーガ娘「お父さんお母さんも!」

エルフ父「すいません、私達のために…」

エルフ母「なんとお礼を言っていいのか」

オーガ娘「いえ、私は私の役目を全うしただけです」

オーガ娘「何より、エルフちゃんに辛い思いはさせたくなかった」

オーガ娘「私がケガ済んで、幸せな時間が守れたならそれで満足ですから」

エルフ母「オーガ娘さん…」




66: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:41:21 ID:Z99Q33ws

エルフ父「エルフ、あれをお姉さんに渡して」

エルフ少女「はい!」

ゴソゴソ

エルフ少女「お姉ちゃん、これ」

オーガ娘「あら、カワイイ包み」

エルフ少女「私が包んだの!」

エルフ父「中にはエルフ族の秘薬が入っています」

オーガ娘「エルフ族の秘薬っ!?」

オーガ娘「そんな貴重な物を!?」

エルフ母「せめてものお礼です。長老様から是が非でも受け取ってもらうように、と」

エルフ父「オーガ娘さんは、この秘薬よりももっと大切なものを守ってくれました…、どうかお受け取り下さい」


オーガ娘「でも…」




67: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:42:18 ID:Z99Q33ws

団長「お前はそれだけのことを成したんだ」

団長「厚意を受け取るのも礼儀だぞ」

オーガ娘「はい…、では有り難く、頂戴しますね」

エルフ母「ええ、どうぞ!」



エルフ少女「ね、お兄ちゃん」

クイクイ

男「ん?」

エルフ少女「お兄ちゃんはお姉ちゃんの恋人?」




68: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:43:13 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「どぅえっ!?」

オーガ娘「エルフちゃんっ!違っ 男「そうだよ」

オーガ娘「え////」

オーガ娘「ええっ?////」


オーガ娘(ええええっっ!!?)


エルフ少女「お姉ちゃん、優しくてカッコよくて美人で」

エルフ少女「お兄ちゃん、ハナタカダカ、だね」

男「ああ、そうだな」ニッコリ

エルフ少女「お姉ちゃんを泣かせたら私が許さないよ!大切にしてね!」ニッコリ

男「ああ、約束する」ニッコリ

オーガ娘「////////」マッカッカ!




69: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:43:48 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「あ、あ、ああの、ささ早速、お薬いいい頂きますね!」アセアセ

パク

エルフ父母「ああっ!?」

オーガ娘「んえ?」

エルフ母「その秘薬は…料理とかに混ぜないと…」

エルフ父「と、とてつもなく…ニガイ、ですよ?」


オーガ娘「!!!!」




オーガ娘「ぎにゃあああああああああああああっっっっ!!!!!!」




70: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:45:44 ID:Z99Q33ws

―数日後―


団長「痛みは残るようだが、もう骨は十分にくっついているそうだ」

オーガ娘「驚きました」

団長「多少なら動いても大丈夫だと」

男「すげえな、エルフの秘薬」

団長「それから」

団長「与えた休暇でキッチリ傷を癒すことだ」

オーガ娘「…はい」シュン

団長「そう落ち込むな」

団長「今回、無茶をしたと言ってもその功績は多大なものだ」




71: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:46:45 ID:Z99Q33ws


団長「自信を持て、オーガ娘」

団長「団の皆も、お前が帰ってくるのを待っている」

オーガ娘「団長…」

団長「俺達の大切な『仲間』だからな」スッ


オーガ娘「はいっ!」ニギッ

アクシュアクシュ



団長「では男」

男「はい」

団長「付き添いを任せてすまないな」

男「いえ、大丈夫っすよ」




72: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:47:46 ID:Z99Q33ws

団長「我々もまだ復興作業が残っているのでな」

団長「あまり時間が無いんだ。協力感謝する」


男「気にしないで下さい」


団長「それから休暇中のオーガ娘の話相手でもしてやってくれ」

男「はい。団長さんも復興作業頑張って下さい」

団長「ああ。ありがとう」

団長「外に馬車を待たせてある」

団長「直ちに帰還し、英気を養いたまえ」

オーガ娘「ありがとうございます」ペコリ

男・オーガ娘「では失礼します」




73: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:48:56 ID:Z99Q33ws

――

ゴトゴト…

オーガ娘「…////」

……

エルフ少女『お兄ちゃんはお姉ちゃんの恋人?』

男『そうだよ』

……



オーガ娘(気まずい…)

オーガ娘「…はあ」

男「団から離れるの、不安か?」

オーガ娘「え?」

男「さっきから黙ってて、ため息ばっかりだ」

オーガ娘「そ、そうかな?」
オーガ娘(男ちゃん、アナタのせいですよ!)




74: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:49:37 ID:Z99Q33ws


オーガ娘「不安…かな。でも、今は全力で休養に勤しみます」

男「休むのに全力…か、はははっ」

オーガ娘「ふふふっ」


オーガ娘「…忙しいのに何度も往復させてごめんね」

男「気にするな。仕事は問題無くこなしてるよ」

男「それにオーちゃんとは幼なじみなんだから、大変な時は俺を頼ればいいさ」

オーガ娘「うん、ありがとう」


男・オーガ娘「…」




75: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:50:28 ID:Z99Q33ws


男「…なあ」

オーガ娘「ん?」

男「王都に着いたら、工房に寄ってくれないか?」

オーガ娘「いいわよ。どうせ暇だから」


男「見せたいものがあるんだ」

オーガ娘「え?何?何?」

男「見てのお楽しみ!」


ゴトゴト…




76: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:51:19 ID:Z99Q33ws

―夜・工房―

男「入ってくれ」


オーガ娘「うわっ…!」

ゴッチャゴチャ…

シッチャカメッチャカ…


オーガ娘「どこが『問題無く』よ!」

オーガ娘「バタバタした後が目白押しじゃない!」


男「忙しいのも重なって、な」ポリポリ




77: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:51:39 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「しかし、これは…」

ゴッチャゴチャ…

シッチャカメッチャカ…

男「お客さんも忙しいのは解ってくれてるし、ボチボチ片付けるから」

オーガ娘「はあ…。ま、私のせいでもあるから後で手伝うよ」

男「そんな事より、こっちこっち!」チョイチョイ


オーガ娘「うん」




78: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:52:41 ID:Z99Q33ws


男「これを見せたかったんだ」


キラキラ



オーガ娘「真っ白で…すごく綺麗…」

オーガ娘「でも不思議な形の服ね」



男「文献で見つけた『キモノ』っていう服で、東の果ての島国の服らしい」

男「その中でも」

男「花嫁に着せる、この純白の衣装を」



男「『シロムク』というらしいんだ」




79: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:54:12 ID:Z99Q33ws


オーガ娘「花嫁…」

男「シロは純白、ムクは無垢」

男「純白も無垢も、清く穢れのない清楚な状態の事を指すだろ?」

オーガ娘「うん」

男「花嫁の清純さを表した衣装なんだと」

オーガ娘「へぇ…」ホレボレ



男「服の構造を調べるのにえらく時間がかかったけど…」

男「ようやく8割くらいまで作れた」



オーガ娘「新作のドレスって、これのことだったのね!」


男「ああ」




80: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:55:34 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「あ、この白い帽子みたいなのは?これも不思議な形ね」



男「それも、同じ島国の花嫁衣装で」

男「『ツノカクシ』っていう帽子なんだ」

男「白無垢とセットの帽子だ」




オーガ娘「ツノカクシ…角隠し、ってこと?」


男「まあ、そうだな」

男「説明臭くなるけど、文献によると…」




81: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:56:42 ID:Z99Q33ws

男「女性が嫁入りするにあたって、嫉妬や怒りを象徴する角を隠すことで、優しく従順でしとやかな妻となることを示す」

男「だ、そうだ」



オーガ娘「なんかイヤなカンジー!」ツーン



男「違う」

オーガ娘「え?」

男「この衣装を文献で見つけた時」

男「俺は真っ先に、オーちゃんの顔が浮かんだ」

オーガ娘「え?え!?」




82: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:57:38 ID:Z99Q33ws

男「オーちゃんの真紅の綺麗な髪と純白の衣装」

男「紅白で縁起がいいだろう?」

オーガ娘「…う、うん」

男「角隠し」

男「オーちゃんの額に生えた、オーガ族の象徴の角」

男「偶然だけど、ツノカクシ、そのまんまだろ?」

男「オーちゃんの為の衣装って思ったんだ」


オーガ娘「ほえぇ…」ポカーン




 




83: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:58:25 ID:Z99Q33ws

男「この衣装は」

男「ただのモデルでオーちゃんに着てもらうために作ったんじゃない」

オーガ娘「え…」



オーガ娘「え、どういうこと…!?」




男「オーちゃん…」

オーガ娘「はっ、はひっ!」


男「小さい頃から一緒にいて」

男「いつのまにか好きになってた」

オーガ娘「!!////」




84: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 12:59:14 ID:Z99Q33ws

男「体は大きいけど、心は繊細で」

男「でも芯は真っ直ぐで、決して曲がらない、決して折れない」

男「そんなオーちゃんに惹かれていた」


男「さっき、帰りの馬車で『幼なじみ』って言ったけど…」

男「俺の中で、オーちゃんはもう『幼なじみ』じゃいられないんだ」



男「この衣装を俺のために」

男「俺のお嫁さんになるために、着てくれないか?」


オーガ娘「お…と…」

オーガ娘「男…ちゃんっ!」




85: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:00:14 ID:Z99Q33ws


オーガ娘「種族…違うよ?」

男「それでも心は通じ合うだろ?」


オーガ娘「私、大きいよ?」

オーガ娘「身長242センチの大女だよ?」

男「それはこっちが聞きたい」

男「俺は人間の平均身長からしたら普通だと思う」


男「でも、オーちゃんと比べたら、やっぱり小さいだろ?」

男「キスもオーちゃんに屈んでもらわなきゃできない」

男「抱きしめ合っても、抱いてるのか抱かれてるのかわかりゃしない」

男「それでもいいのか?」




86: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:01:06 ID:Z99Q33ws


オーガ娘「私は…いつも守ってくれる男ちゃんが大好きだった」

オーガ娘「こんな私でも『女の子』として見てくれて、優しくて、いつも勇気をくれる男ちゃんが大好きだった」


オーガ娘「体は私の方が大きいけど」


オーガ娘「男ちゃんの『器』は他の誰より大きい!」

オーガ娘「そんな男ちゃんの…」


オーガ娘「あなたの、隣で…」


オーガ娘「その花嫁衣装を身に纏いたい!!」

男「オーちゃんっ…!!」




87: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:02:14 ID:Z99Q33ws


男「オーちゃん…おいで!」

オーガ娘「はいっ!」タッ

ダキッギュウ!

男「おぅげっ」ギリリッ

オーガ娘「あ、ごめん…嬉しさのあまり…」シュン


男「大丈夫…」

オーガ娘「うふふふ」キュウ



男「なあ、キス…していいか?」

オーガ娘「…はい////」

トン




88: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:03:14 ID:Z99Q33ws

男「はははっ、立て膝ついてもらってようやくか。少し情けないな」ポリポリ

オーガ娘「仕方ないよ」

オーガ娘「ね?それより////」ン

男「うん…」スッ

チュ

オーガ娘「んんっ」チュウ

男「ふむっ」チュウ

オーガ娘「ふぅっ…はぅふっ」




男「へへへ////」
オーガ娘「うふふ////」




 




89: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:04:23 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「男ちゃんっ!」ガバァッギュウ

男「ふんむっ!」ムネギュウゥゥゥゥ!


オーガ娘「大好きっ!大好き!大好き大好き大好き大好き大好きっ…!!」ギュウ


男「…!…!…!」バタバタバタ

オーガ娘「大好き大好き大好き!!!」

男「もぶぁっ!ちょ、ぜぇ、胸に、ぜぇ、押し付け、はあ、られて」

男「ぐる、はあ、し、はあ」

オーガ娘「ああっ!ご、ごめん!!」


男「ふひー、気をつけてくれよな」

オーガ娘「…はい」シュン

男「まあ、その大きな胸も大好きデスヨ?」ニヘラーニヘラー


オーガ娘「////」




90: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:05:00 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「…えっち、ばか////」


オーガ娘「採寸の時、いつもすごく見てたもんね」クスクス


男「…////」

男「…はい////」



オーガ娘「でも」

オーガ娘「私は…もう男ちゃんのモノだから…許す////」ニッコリ




91: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:05:31 ID:Z99Q33ws


男「ははは」

オーガ娘「ふふっ」



男「オーちゃん…」

オーガ娘「ん?」


男「二人で、幸せな家庭をつくろうな」

キュ

オーガ娘「!」

オーガ娘「はいっ!」


―――
――


 




92: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:06:54 ID:Z99Q33ws

―十数年後―

オーガ娘「おはよう」

息子「おはようごさいます!団長!」ビシッ

オーガ娘「こらこら」

オーガ娘「家では『母さん』でいいのよ」

息子「あ、ついクセで…警護団で訓練中の母さんは、ホント『鬼』だからな」

オーガ娘「まあ、ヒドイ!」クスクス



娘「ふわああああ」ノビー

男「ふわああああ」ノビー


オーガ娘「二人ともおはよう」




93: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:08:22 ID:Z99Q33ws

男・娘「おはよぅふあああぁぁ」

オーガ娘「また徹夜?」

男「まあ」

娘「だってお父さんが新作のキモノのデザイン、なかなか描いてくれないんだもん!」

娘「結局、私が出した図案でいくことになったけど…」

男「ふむ、お前も随分腕を上げたな」

男「父さんはあえてお前を試したのだ!よくぞ試練を乗り越えた!」

娘「馬鹿言ってないで、早く食事!仕事も貯まってんだから!」

男「へい」シュン

娘「まったく!どっちが上かわかりゃしない!」




94: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:09:59 ID:Z99Q33ws



オーガ娘「ふふふっ」
男「はははっ」


息子「何を二人して笑ってんだよ」

娘「気味悪い…」

男「息子、お前は母さんに似て良かったな」

息子「は?」

男「恵まれた体格、揺るぎない勇気、類い稀なる身体能力」

男「どれも母さん譲りのものだ」

息子「ああ、感謝してる」

息子「でも、いつか母さんを超えてやる」

オーガ娘「ふふふっ楽しみね」




95: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:11:07 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「貴女は父さんに似てるわね」

娘「ん」

オーガ娘「器用な手先、美的センス、底を知らない探求心」

オーガ娘「ホントに父さんとそっくり」

娘「私はまだまだ高みへいくよ?」

娘「それで、父さんの服より素晴らしい物を作ってやる!」

男「俺も負けねぇからな!」

オーガ娘「ふふふ」

オーガ娘「さあ、朝ごはん食べましょう!」

カチャカチャ、ワイワイ




96: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:11:49 ID:Z99Q33ws

――

オーガ娘「そうそう!」

オーガ娘「エルフちゃん、今度結婚するらしいわ」

男「エルフちゃんも、もうそんな歳か!」

オーガ娘「昨日、連絡があったの」

オーガ娘「お相手は隣国の貴族なんだって!」

娘「エルフお姉ちゃん玉の輿だぁ!いいなぁ…」

息子「エルフ姉みたいな美人の嫁さん!いいなぁ…」



オーガ娘「それでね」




97: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:12:48 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「ウェディングドレスを、あなたと娘に」

オーガ娘「結婚式典の近衛兵の役を私と息子に頼みたいって!」

オーガ娘「旦那さんも賛成してくれてるみたいだよ!」サムズアップ!


一同「「「おお!イイネイイネ!」」」

オーガ娘「お忙しいとは思いますが、是非ともお願い致します、だって」


息子・娘「やるしかないでしょ!!」



男「決まりだな」

オーガ娘「そうね」




98: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:13:41 ID:Z99Q33ws



オーガ娘「…じゃあ」

オーガ娘「式典当日まで各自精進に努めよ!」ビシッ


一同「「「了解!」」」


息子「先輩に近衛兵の心構えを教わろ!」

娘「早速デザイン考えなくちゃ!」




99: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:14:30 ID:Z99Q33ws



オーガ娘「ふふふっ」

男「どうした?」

オーガ娘「ううん、なんでもないの」

オーガ娘「ただただ、幸せだなって…」


男「そうだな」

オーガ娘「うん」

キュ

男「またまたどうした?」

オーガ娘「この幸せは、あなたのおかげよ」

男「いや、違うな」

男「二人で築き上げたもんだろ?」




100: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:15:58 ID:Z99Q33ws

オーガ娘「いいえ」

オーガ娘「あなたと出会えたのが全ての始まりだった」

オーガ娘「あなたが居たからこそ」

オーガ娘「あなたと幼なじみになれたからこそ」



オーガ娘「幸せになれたんだよ」




 




101: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:16:56 ID:Z99Q33ws


……



孤児院のおばちゃん『今日からうちで預かることになった、オーガ娘ちゃんっていうの』


オーガ娘『…』ペコ

男『俺は隣に住んでる男っていうんだ』

男『事情は…聞いた』

オーガ娘『…』

男『つらかっただろう?』

男『だから、俺がオーガ娘をつらいのから守ってあげる』




102: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:17:59 ID:Z99Q33ws

オーガ娘『え』

男『誰だってつらいより楽しい方がいいもんな!』

男『おばちゃん!二人でちょっと出かけてきてもいい?』

孤児院のおばちゃん『ええ、あまり遅くならないようにね』

男『おっけ!』

男『早速、王都を案内してあげるよ!』

男『行こう!』グイ

オーガ娘『あ』

男『えーと、オーガ娘だから…』




103: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:18:53 ID:Z99Q33ws

男『オーちゃん!』

オーガ娘『あ、と、うん』

男『よろしく、オーちゃん!』

オーガ娘『よ、よろしく、男ちゃん』

男『ぎゃー、男ちゃん!?男なのに、ちゃん付けしないでくれよーぅ』プー


オーガ娘『…ふふ』

オーガ娘『男ちゃん!』

男『ぎぇー!』

オーガ娘『男ちゃん!』

男『ぴゃー!』

オーガ娘『あはははっ!!』


……




104: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:19:41 ID:Z99Q33ws



オーガ娘「私、男ちゃんと出会えて本当に良かった!」

男「お?その呼び方、久しぶりだな」

オーガ娘「…ダメ?」

男「いや、久しぶりだから少し照れるけど『オーちゃん』がそう呼びたいなら、かまわないよ」

オーガ娘「あ…ふふ////」




105: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:20:38 ID:Z99Q33ws



オーガ娘「男ちゃん!」

男「オーちゃん!」

オーガ娘「男ちゃん♪」ニヘラー

男「オーちゃん♪」ニヘラー

オーガ娘「男ちゃ~ん♪♪」ニヘニヘラー

男「オーちゃ~ん♪♪」ニヘニヘラー




息子・娘「…バカ夫婦め////」




 




106: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:21:51 ID:Z99Q33ws




オーガ娘(お父さんお母さん…)

オーガ娘(見てくれてる?)

オーガ娘(二人と約束したこと)

オーガ娘(ちゃんと叶えたよ!)




オーガ娘(だから、これからも見守っててね)




「私、今すごく幸せよ!」





おわり




109: ◆loxSgAubwY 2014/06/27(金) 13:27:43 ID:Z99Q33ws

最後まで読んで頂きありがとうございました

過去作共に読んで頂いている方がいるとは思わず、感激した次第です

また、新しく作った時は投下したいと思いますので、その時はよろしくお願いいたします


ありがとうございました




110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/27(金) 13:45:52 ID:iWr94jVA
オーちゃん可愛いな
乙乙




引用元: オーガ娘「私、大きいよ?」