分子ひとつをマイクにする方法が編み出される
小さいからこそ、聞こえる音がある。
「マイク」またの名を「マイクロフォン」って、「マイクロ」なだけに小さいのが普通な気がします。でも、これほど小さなマイクは他にないんじゃないでしょうか。というのは、たったひとつの分子が、マイクになるからです。スウェーデン大学のYuxi Tian氏らが、ひとつの分子を音の振動検知に使う方法を編み出しました。
音は「触れる」ものではなく「聞く」ものとして捉えられていますが、音の実体は、何らかの媒体(通常は空気、または液体やその他の気体)を通じて伝わってくる物理的な振動です。その振動が鼓膜にぶつかることで、我々は音を認識するんです。Physical Review Lettersに掲載されたTian氏らの新たな論文によると、そんな振動がジベンゾテリレン(DBT)という物質の1分子にぶつかると、音の高さに応じた蛍光を発するんです。
そんなDBTをマイクとして働かせるには、その分子いくつかをアントラセンの結晶の中に閉じ込めなければいけません。音の波が結晶を静かに揺らすと、DBTの分子も結晶の中で揺れます。この動きによってDBTとアントラセンの電子雲の中での相互作用が変化し、最終的にDBTの蛍光の強さがわずかに変化します。そこでDBTの1分子の蛍光の変化をトラッキングすることで、音の周波数がわかるというわけです。
で、それで何ができるんでしょうか? おそらく日常生活に役立つことはあまりなさそうです。というのは、常温だと空気の分子の動きが多すぎて邪魔になってしまうため、このセットアップではものすごい低温環境が必要だからです。でもこの技術は物理学の研究室などでは使えます。ごく小さなナノレベルのシステムの中の音に耳を澄ませるとき、そんな小さなマイクが役に立つんです。そう、小さなシステムの小さな音を聞ける、小さなセンサーができるんです。
image: Eliks/shutterstock
source:New Scientist、American Physics Society
Sarah Zhang - Gizmodo US[原文]
(miho)