2014年のノーベル生理学・医学賞発表、脳内で空間把握を司る細胞の発見に対して
ノーベル賞委員会は6日、2014年のノーベル生理学・医学賞を、John O’Keefe博士(ロンドン大学:University College London)、May-Britt Moser博士(ノルウェー科学技術大学: Norwegian University of Science and Technology)、Edvard I. Moser博士(同じくノルウェー科学技術大学)の三名に贈ると発表しました。
受賞理由は “for their discoveries of cells that constitute a positioning
system in the brain” となっており、脳の中で空間把握を司っている細胞を発見した功績に対して贈られたものとなっています。
O’keefe博士は1971年、動物の脳の中の「海馬」と呼ばれる部分に、空間内の特定の場所を通るときだけに反応する細胞(後に「場所細胞」と呼ばれる)を、ラットを使った実験により発見。これにより、生物の脳内には「自分が三次元空間内のどこに存在しているか」を把握するシステムが存在していることが明らかになります。
そして2005年、Moser博士らはO’keefe博士の研究をさらに発展させ、マウスの海馬の中に空間内の方向感覚を司っている「グリッド細胞」が存在していることを発見するに至ります。
海外では近年、欧州の “Human Brain Project” や米国の “Brainイニシアチブ” など、脳に関する大規模な研究プロジェクトが活発になってきています。今回の受賞は、そうした「脳の時代」を象徴するようなものと言えるかもしれません。
↓論文はこちら
▼場所細胞の発見
The hippocampus as a spatial map. Preliminary evidence from unit activity in the freely-moving rat. (Brain Res. 1971 Nov;34(1):171-5. リンク先PubMed)
▼グリッド細胞の発見
Microstructure of a spatial map in the entorhinal cortex. (Nature. 2005 Aug 11;436(7052):801-6)
▼ちなみに、昨年にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校のグループが、人間の脳内にも動物同様にグリッド細胞が存在していることを発見しています。
Direct recordings of grid-like neuronal activity in human spatial navigation (Nature Neuroscience 16, 1188–1190 (2013))
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著者
企業の研究所でR&D業務に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。Techinityはソース明示のポイントを押さえた解説を、Cul-Onはちょっとした小ネタ紹介的な内容にしていければと思っております。
アイゴー!
すごいな
そのうち意識をどの脳細胞が持つのかとか解明されそう
五感の他に空間感覚なんてあったのか
3次元の移動をする生命体なら皆持ってそうだな
この細胞を消滅させれば2次元に行けるのか!