阿良々木暦「しょうこトータス」
- 1 : ◇8HmEy52dzA 2014/10/08(水) 17:06:47.18 ID:sVspD5O80
- ・化物語×アイドルマスターシンデレラガールズのクロスです
・化物語の設定は続終物語まで
・ネタバレ含まれます。気になる方はご注意を
・続終物語より約五年後、という設定です
関連作品
阿良々木暦「ちひろスパロウ」
阿良々木暦「ののウィーズル」
阿良々木暦「あんずアント」
阿良々木暦「ふみかワーム」
阿良々木暦「になショウ」
阿良々木暦「きらりホッパー」
阿良々木暦「かなこエレファント」
阿良々木暦「まゆミミック」
阿良々木暦「みずきアワー」
阿良々木暦「かおるファイア」
阿良々木暦「ななルナ」 - 5 : ◆8HmEy52dzA 2014/10/08(水) 18:10:26.12 ID:B+mP747VO
-
001
アイドルのプロデューサーとしてはや幾月が過ぎ、僕は出勤すると、机の下を覗くのが習慣となっていた。
理由は明確だ。
担当アイドルの何人かはどんな理由からか僕の机の下が気に入ったらしく、出勤するとかなりの確率で誰かしらいるのだ。
僕の机の下にどんな魅力があるのかは目下不明だが、アイドルたちが心地よいと思ってくれていると思えば悪くはない。
プロデューサーの机なんて触りたくもない、なんて言われたら泣いてしまう自信があるので、それよりは何倍もマシというものだろう。
「おはよう、星」
「お、おはよう……プロデューサー……フヒっ」
今日は星がいた。
体育座りの膝の上にキノコ栽培セットを抱え、いつもの胡乱な瞳で僕を見上げながら、口の端を吊り上げる彼女独特の笑顔を見せる。
最後のしゃっくりのような声は笑い声だ。
ちなみにここにいる確率が高いのは星、森久保がタイで多く、次点で早坂、遊佐、白坂だ。
星輝子、十五歳。
僕の担当するアイドルの一人であり、個性豊かなシンデレラプロダクションの中でも群を抜いてキャラが濃厚なのが彼女だ。
色素の薄い髪におっとりとした垂れ目、全体的に線の細い星は、外見だけをひと目見るととてもおしとやかなお嬢様、もしくは深窓の令嬢のように見えるが、実際はまるで違う。
まず彼女を語る上で欠かせないのが、キノコの存在だ。
彼女はキノコを友達と称し育てることを趣味としており、常にキノコを手放さない。
友達と言っている割には美味しくいただいているようなので、その辺りの線引きは本人にしか預かり知らないところなのだが。
ともかく、素で非常に個性的な子である。
付き合う上において癖は強いが、慣れると会話も楽しくなってくるから不思議だ。
なお、余談ではあるが僕はキノコ類は好きな方である。
- 6 : ◆8HmEy52dzA 2014/10/08(水) 18:15:01.69 ID:B+mP747VO
-
「ん……?星、なんだそれは」
ふと、星の抱えるキノコの中に、動くものがあった。
無論、菌類たるキノコが動く筈もない。
こちらがやきもきする程ゆっくりと動くその物体は、僕の知る限り亀だった。
「亀?」
「ぺ、ペット……昨日、拾った……」
「へえ、拾い亀とは珍しいな。名前は?」
「べ、ベニテング」
「…………そ、そうか」
個性的すぎると突っ込みも冴えないな……。
この僕が突っ込み出来ないなんて、末恐ろしいやつだ。
「な、なあプロデューサー……ちょ、ちょっと提案なんだが……」
「提案?なんだ?」
「フヒ……き、今日はプロデューサーをディナアにご招待……したい」
ディナア?
ああ、ディナーね。
「ディナーって夕飯のことか?」
「ぷ、プロデューサーのために……そ、育てた」
「星……!」
なんてことだ。
あの星が、初めに会った時からキノコ一辺倒だった星が!
僕に食べさせてくれるためにキノコを育ててくれていたなんて!
感無量だ!
思わず涙腺からプロデューサー汁が漏れる。
プロデューサーやってて本当に良かった……。
「フクロツルタケにタマゴテングダケ……クリイロカラカサダケにカエンタケなんてレア物もあるぞ……」
「ってそれ全部食ったら死ぬ系のキノコだろうが!」
「フヒ…………フヒヒフハフヒヒ……!」
まさに魔女のように裂けるんじゃないかと心配するほど口の端を吊り上げて笑う星。
星とコミュニケーションを取るために覚えたキノコの数々をこんな形で披露することになるなんて!
「じょ、冗談だプロデューサー……ディナアはちゃんとある」
「そ、そうか……」
良かった、担当アイドルを毒劇法で通報するなんて事態にならなくて……。
「め、メインディッシュはキノコ鍋……く、く、加えてエリンギのステーキにシイタケの煮物、え、エノキとシメジのサラダにデザートの冷やしナメコのフルコースだ……」
「何その菌類インフレ!!」
「長い間……そ、育ててきたキノコたちが収穫時だからな……フヒヒ」
なんてヘルシーさだ。
血液がサラサラになってしまうじゃないか。
- 7 : ◆8HmEy52dzA 2014/10/08(水) 18:17:36.17 ID:B+mP747VO
-
それに星が手ずから育てたキノコともなれば是非ともご馳走になりたいところなのだが、
「でもごめんな星、今日は残業確定なんだ」
「そ、そうか……残念だ……」
しおらしくしゅんとなる星。
普段こそ変わっている星だが、こういうところは年相応なんだよな……。
担当アイドルの作ってくれたディナーなんて身を分裂させてでも行きたいところなのだが、さすがに仕事を放り出して行く訳には行かない。
ううん、悪いことはしていないんだけれど罪悪感。
「そ、そうだ。明日はどうだ?明日なら――」
「あ……お、おはようございます……」
と、意気消沈する星を立ち直らせるべく提案するも、その声は語尾に行くにつれ音量が小さくなっていく挨拶にかき消された。
振り返ると、森久保がいた。
向けられた僕の視線から逃げようとしているのか、半身を後ろに引く。
「おはよう森久保」
「か、帰ってもいいですか?」
「駄目に決まってるだろ、今日は森久保の大好きな撮影だぞ」
「好きでもないし帰りたいんですけど……」
相変わらず後ろ向きな奴だ。
アイドルをやめたい、とは言わなくなったし、前よりも現場で逃げる確率は減ってきているのはいい傾向だけれど。
ああそうだ、星へフォローしなければ。
「明日はどうだ星、明日なら夜空いているぞ」
「ほ、本当かプロデューサー……」
「ああ、本当だ。僕は生まれてこのかた嘘をついたことがないんだ」
それこそ嘘だが、約束は守るというアピールは出来ているはずだ。
「もし、う、嘘だったら?」
「男が一度した約束だ。何があっても行くよ」
「そ、そうだな……トモダチ、だからな……と、トモダチはトモダチに嘘をつかない……フヒ」
「プロデューサーさんはよくもりくぼに嘘をつくんですけど……」
「そんな馬鹿なことがあるか。そうだ森久保、お前もどうだ?」
「え……?」
星と森久保は生息領域(机の下)が近いから気も合うだろう。
- 9 : ◆8HmEy52dzA 2014/10/08(水) 18:18:58.05 ID:B+mP747VO
-
「の、乃々ちゃんも……来る?」
「星が育てたキノコを振舞ってくれるんだってさ」
「こ、これくらいのき、巨大エリンギもある……き、キノコパーリィだ……」
「何だと」
星がとんとん前の要領でキノコの大きさを表す。
縦も横も細くて小さな星だが、その幅は二十センチはありそうだ。
腕を組んで目を閉じる。
脳内において高解像度、読み込み時間ゼロの動画ソフトを立ち上げる。
停止、再生、早送り巻戻し、チャプタースキップから音声切り替えまで一瞬でこなす超優秀なソフトだ。
ちなみにオーディオコメンタリーは全作僕が担当している。
巨大エリンギを食べる星と森久保……。
即座に脳内HDDにある『仕事資料』フォルダに保存した。
この『仕事資料』フォルダには他にもスク水の羽川やマイクロビキニの及川や貝殻ビキニの八九寺などの画像も保存されている、非常に有用であると同時に危険なフォルダだ。
忍と扇ちゃんの物質化能力で現実のものとなったら僕は確実に羽川とひたぎによって殺される自信がある。
「うむ……素晴らしいな」
「その顔はいやらしいことを考えてますね……」
「杉下右京レベルの紳士な僕がそんな事を考える訳ないだろう」
「ど、どうする乃々ちゃん……キノコはいっぱいある……よ。キノコはかわいい……おいしくて、かわいくなる……」
「そ、そうですね……プロデューサーさんは危険ですが、輝子さんのおうちには、遊びに行きたいかも……」
「ふ、二人なら安心……二人なら、倒せる……」
「僕を危険人物という前提で話を進めないでもらえるかな、フロイライン共」
何だか僕の評価が絶賛低下中なのは悲しいが、元々他人とのコミュニケーションが少ない二人だ。
いい機会になるだろう。
とはいえ、僕も食卓の主役として活躍し辛い菌類であるところのキノコ尽くしの食事を、少なからず楽しみにしていたのだ。
その上、星が手ずから手間隙かけて育てたものだ。不味くなる訳がない。
星のペットであるベニテングが欠伸をするかのように、緩慢な動きで鎌首をもたげた。
- 10 : ◆8HmEy52dzA 2014/10/08(水) 18:21:15.84 ID:B+mP747VO
-
002
「お帰りなさい、阿良々木先輩」
千川さんのスタドリ押し売りを弱腰で跳ね除けつつ残業を済ませて家に帰ると、いきなり扇ちゃんがいつもの袖が余っただぼだぼの学生服にエプロン姿、というとてつもないマニアックな姿で台所にいた。
同時にカレーの匂いが嗅覚と共に空腹感を刺激する。
扇ちゃんが鍋の前に立って中身をかき混ぜているのを見るに、カレーを作っているらしい。
なぜここにいるのか、どうやって中に這入ったのか、なんで料理をしているんだ、と疑問は尽きないが、唐突すぎて何から突っ込んでいいのかわからない。
彼女が神出鬼没なのはいつものことだが、今回はあまりにも度が過ぎている。
僕がなんとも言えない表情で玄関に立ち尽くしていると、扇ちゃんはエプロンで手を拭きながらこちらにやって来る。
関係ないけれど、鍋の前に立つ扇ちゃんってすげえ魔女っぽいな……。
「ご飯にします?お風呂にします?それとも私ですか?」
「少なくとも最後のはないな」
「おやおや?反応が薄い上に酷ですね。もしかして裸エプロンをご所望でしたか?」
顔を覗き込むようにそんなことを言う扇ちゃん。
裸エプロンは間違いなく好きだが、扇ちゃんにやってくれと言ったらすんなりやってしまいそうな辺り、軽々には口に出来ない。
だからあえて言おう。
「いや、学生服にエプロンの方が萌える。そのままでいてくれ」
「流石は愚か者の頂点たる阿良々木先輩。フェティシズムの何たるかをわかっていますねえ」
「扇ちゃんこそ中々やるじゃないか」
単なる裸よりも裸エプロンの方がエロいように、裸エプロンよりも学生服エプロンの方がエロチシズムが減少する分萌えるのだ!
そう、あたかもたった一人の兄のために甲斐甲斐しく家事をする妹や女子高生の通い妻を連想させてくれる。
そういう細かいバックグラウンドまで想像してこそ真の萌道だ。
「阿良々木先輩、なんでもいいので思い付いた言葉を言ってみてください」
「奥様はアイドル女子高生!」
「はっはー、吐き気がする程素敵ですね」
うーん、中々に楽しいじゃないか。
こんなパーソナリティまで発揮するとはやるな、扇ちゃん。
まるで八九寺と遊んでいる時のような躍動感を感じる。
さて、楽しいからと言っていつまでも遊んではいられないな。
僕ももう大人だからね。
「で、なんでいるの、扇ちゃん」
「まぁまぁそれは後にして、とりあえず」
鍋を指差してにこりと生気の皆無な笑顔を見せる。
常に笑っているような表情の扇ちゃんだが、笑顔になると少しだけ眼が細くなるのだ。
「カレー、食べまコメント一覧
-
- 2014年10月08日 21:27
- メビウスの輪!!とお・も・て・な・しの感想しか浮かばなかった
-
- 2014年10月08日 22:57
- あいかわらず起承転結しっかりまとまってんなー
-
スポンサードリンク
ウイークリーランキング
最新記事
アンテナサイト
新着コメント
QRコード
スポンサードリンク