【艦これ】後藤喜一「はあ……私が提督、ですか……?」【パトレイバー】
・パトレイバーと艦これのクロスSSです
・作中に原作には無い設定が出てきますが、御容赦ください(例、携帯電話など)
・双方の原作にいないキャラが都合上出てきます
・提督着任してまだ2カ月なので、艦娘の口調などが把握できてない場合があります。
それでも構わないという方は、どうぞ。
~特車二課、課長室~
後藤「はあ……私が海軍に出向……ですか」
福島「不服かね?」
後藤「課長、エイプリルフールはとうに過ぎておりますが……」
福島「これは冗談ではない、この通り、正式な指令書もある」
後藤「はあ……しかし、畑違いの私が軍に行ったところで、物の役に立たないでしょう?」
福島「ともかく、君は日本海軍鹿屋基地の『艦娘』の提督として配属される事となった」
後藤「……はぁ」
福島「復唱したまえ」
後藤「ハッ! 後藤喜一警部補、命令により、日本海軍鹿屋基地に出向いたします!」
福島「……うむ」
課長室から退出しようとする後藤を、福島課長はふと呼び止めた。
福島「これは私の独り言だが……」
後藤「……」
福島「今回の出向の件、私は大いに疑問を持っているよ」
後藤「はぁ……」
福島「出来るだけ上の意向を調べてみよう」
後藤「はい」
福島「君の後任人事については任せる」
後藤「ハッ! では、後藤、退出します」
~隊長室~
南雲「それで、ほいほい引き受けちゃったって訳?」
後藤「しょうがないでしょ、しのぶさん、俺たちゃ所詮組織のコマだし、上の意向にはへー
こらしなきゃいけないわけよ」
南雲「それにしても、『艦娘』ねぇ……」
後藤「……」
南雲「海軍が保有する『対深海棲艦兵器』……艦娘という呼称だけは公表されてるけど、そ
の実態は極秘とされてる筈よね……後藤さんなんかに見せちゃって大丈夫なのかし
ら?」
後藤「その事だけどね、しのぶさん」
南雲「なぁに?」
後藤「しのぶさんの友人にいるでしょ、海軍じゃなくて、陸自の人。
その人と会える席を設けてくんないかな?」
南雲「いいけど……環生も所詮、陸自の人間だし、海軍の事情に通じてるとは限らないわ
よ?」
後藤「未知の分野に足を踏み入れる訳だからね~、課長も力になってくれるって言ったけど、
やっぱり、課長も公務員だからね、自分で動くしかないわけよ」
南雲「わかったわ、連絡は取ってみるけど、あまり期待しないでよ?」
~第二小隊、ハンガー~
野明「あっ! 来た!」
太田「隊長! 海軍に出向とは本当でありますか!?」
後藤「なんだなんだ、これしきの事で騒いで……それにしても耳が早いね~」
篠原「すみません、実家のツテで偶然聞いてしまいまして……」
野明「これしきの事じゃないよ~! 隊長がいなくなったら私達、これからどうすればいい
んですか~!?」
後藤「お前達もそれなりに場数は踏んで来たろうに……だいじょぶだよ、俺がいなくても
上手くやってけるさ」
篠原「それで、後任の隊長は誰になるんスか?」
後藤「それなんだがな、熊耳に頼もうと思ってる」
熊耳「私ですか?」
後藤「復帰したばかりのトコ、悪いが、第二小隊を守ってやってくれ」
熊耳「ハッ! 熊耳武緒、第二小隊隊長職を拝領します!」
後藤「うんうん、気楽にな」
野明「でも、それだと二号機のバックアップが空きますよね? 誰がやるんですか?」
後藤「あ~……それな~……悪いけど、進士、頼むわ」
進士「えっ!? ボ、ボクですかぁ!?」
太田「何だ! 進士! 俺のバックアップが不服か!?」
進士「い、いえ、そういう訳では……」(トホホ……また胃薬の日々が始まる……)
後藤「熊耳もいるし、そう気を落とすな」
進士「は、はい……」
篠原「それで、隊長は何処にさせ……あ、いや、配属になったんですか?」
後藤「気を遣わなくていいよ、ホントに左遷みたいなモンだから」
篠原「は、はあ……スンマセン、それで、何処の基地へ?」
後藤「鹿屋基地だ」
野明「鹿屋?」
山崎「鹿児島県の、大隅半島にある基地でしたね」
野明「そっか、ひろみちゃん、沖縄出身だから近いね」
熊耳「遠いわね……」
後藤「ま、所詮俺たちゃ小役人だから。
上の言うまま、地の果てまでってやつだよ」
篠原「それにしても、隊長、今度はあの深海棲艦? ってヤツをあいてにするんですか?」
野明「一回、東京湾にはぐれて来たやつとやりあったよね、あの深海魚みたいなヤツ……」
太田「おお! あの時の相手か! いやぁ、あの時は参ったぞ! いくら銃弾をぶち込んで
もちっとも堪えんでなぁ!」
篠原「通常兵器が効かないってホントだったんだよなぁ……」
野明「結局、あの時は水中用レイバーまで動員して何とか湾の外に追い出したんでしたっけ」
後藤「はいはい、俺はそんなのを相手にしなきゃならなくなったから、後の事は頼んだぞ
俺の帰る場所が無くなった、なんて事にならないようにな」
一同「ハッ!」
太田「ブツブツ」(いいなぁ……隊長、未知の怪物相手に思いきり銃をぶっ放せるなんて……)
後藤(とか思ってんだろうなぁ……俺がいなくてだいじょぶかね? この隊は……)
~とある居酒屋の一室~
南雲「遅いわね、環生……」
後藤「ま、こちらが無理言って来てもらうんだから、忙しいんでしょ、陸自も」
パタパタ……
南雲「あ、来たみたいね」
ガラッ
不破「遅れてゴメンね、しのぶ、それでこちらが……?」
南雲「ええ、第二小隊の後藤喜一隊長よ」
不破「初めまして、陸上自衛隊、空挺レイバー隊所属、不破環生二尉です」
後藤「どうも、後藤です、しのぶさんには、いつもお世話になっております」
不破「は、はぁ……」(話には聞いてたが、飄々とした人だな……)
後藤「とりあえず、ビールでいいですか?」
不破「は、はい、何でも結構です」
後藤「ま、この場はオフレコって事で、砕けて行きましょうや」
程よく酔いが回って来た頃、不破は本題に取り掛かる事にした。
不破「それで、私に聞きたい事とは、何ですか?」
後藤「そうですね~、私、今度から艦娘の指揮を執ることになったんで、色々聞きたいんで
すよ、艦娘の事とか、海軍の成り立ちとか、諸々を」
不破「艦娘の事については、私も詳しくは知りません、ただ、深海棲艦には艦娘の攻撃しか
通用しないというぐらいですね……」
後藤「深海棲艦には、私達も立ち会った事があるんですが、あれ、レイバーと比べても相当
小さいですよね?」
不破「はい、それに対する艦娘も、相当小さい様です……又聞きですが、人間大だとか……」
南雲「人間大?」
不破「……これは絶対オフレコにしてね?」
後藤「約束します」
不破「……生体兵器……らしいわ、それ以上の事はトップシークレットよ」
南雲「生体兵器ですって!?」
後藤「……」
後藤「……次は、海軍の成り立ちについて聞かせてもらってもよろしいですか?」
不破「ええ……ご存知のように、今、この国には海自と海軍が並立しています」
後藤「そうですね~……日本はあくまで専守防衛、ただし、海上の脅威となる深海棲艦に
対してだけは海軍が当たると……確かそんな感じでしたよね?」
不破「はい、海軍は深海棲艦が出現し始めた10年前に再び設立されました」
南雲「でも、10年前って言ったら、まだまだ左翼勢力が力を持ってた時期よね?
よく海軍の設立なんて案件が通ったわね?」
不破「そうね、でも深海棲艦の脅威は国際問題だったし、米国の強力な後押しもあったわ」
後藤(10年前……10年前って言ったら……やっぱ『アレ』かなぁ……いや、まだ真相は
雲の中だ……)
不破「それに、深海棲艦に対して艦娘の攻撃が有効だっていうのが立証された事も海軍設立
に拍車をかけたわ」
後藤(……)
南雲「海自が艦娘を管理するのじゃいけなかったの?」
不破「それが……どうも艦娘自体が軍制を希望したみたいなのよ」
南雲「艦娘が……? ちょ、ちょっと待って、艦娘は自由意志をもっているの!?」
不破「又聞きだけどね」
後藤(やれやれ……俺はどうやら厄介なモンに首を突っ込まされるみたいだな……)
不破「それでは、私は明日も任務なのでこれで失礼します」
後藤「いやぁ、お忙しい所お時間を取らせてしまって、大変申し訳ありませんでした」
不破「いえ、それじゃ、しのぶ、また飲みに行きましょうね」
南雲「ええ、帰り道、気を付けてね」
不破が店を出てから、後藤は一枚の名刺をテーブルの上に置いた。
後藤「しのぶさん、念の為に、これ持っててくれる?」
南雲「これ……あなたの友人の番号?」
後藤「万が一の為にね、連絡は密にしておいた方がいいと思うワケよ」
南雲「分かったわ……それにしても、『上』はどこまで関わってるのかしら?」
後藤「さあねえ……」
南雲「来週、赴任するのよね? ホントに大丈夫?」
後藤「鬼が出るか蛇が出るか……ま、行けば分かるでしょ」
~1週間後、鹿屋市~
後藤「は~るばる~来たぜ、鹿児島~♪ ときたもんだ」
ジリジリ……
後藤「それにしても暑いね~、さすが南国」
後藤(大きくもなく、小さくもない、標準的な地方都市ってトコロかな……)
後藤「ヘイ、タクシー!」
キキッ
運転手「どうぞ、お客さん、どちらまで?」
後藤「鹿屋基地まで頼むよ」
運転手「基地っていうと、海自の方? それとも海軍?」
後藤「海軍の方」
運転手「ああ、艦娘さん達のいる方ね、了解」
後藤(ん……?)
後藤(地元民が艦娘の存在を知っている……? どういうことだ? 機密じゃないのか?)
後藤「ねえ、運ちゃん、地元の人は艦娘の事良く知ってるの?」
運転手「あ、いけねっ! 秘密なんだっけ?」
後藤「いや、俺、今度艦娘の指揮を執ることになってさ、色々事前に知っておきたいワケよ」
運転手「う~ん……そう言われてもなぁ……」
後藤「色々聞けたら俺の財布の紐も緩くなっちゃうかもね~」
運転手「へへっ、そうかい?」
運転手「っつっても、俺も詳しく知ってるワケじゃないんだよ、艦娘の子がよく地元の商
店街に買い出しに来るのを見かけるぐらいでさ」
後藤「へぇ~……怖くないの? 一応、兵器なんでしょ?」
運転手「基地が出来た頃は地元の人
コメント一覧
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- 2014年10月13日 22:16
- 追っかけてて、最後の更新待ちにここ見たら完結してた。
おもろいわー
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- 2014年10月13日 22:18
- はえーよ ホセ!!
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- 2014年10月13日 22:34
- そう、ハゼです
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- 2014年10月13日 23:13
- 薄い本の竿約イメージとっぱらうと提督のイメージって後藤さんだったからすごい良かった。
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- 2014年10月13日 23:18
- 乙
いやー、後藤提督もとい隊長いいねえ。ところどころセリフが脳内再生余裕でした
そして嫉妬するしのぶさんマジかわゆす
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- 2014年10月13日 23:20
- すごく良かったです!全編から漂う後藤さんらしさが素晴らしかったです!
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- 2014年10月13日 23:28
- ところどころに後藤さんの名言があることに、愛を感じた
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- 2014年10月13日 23:33
- 後藤さん素敵だわ
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- 2014年10月13日 23:38
- 原作設定無視に携帯電話をチョイスするあたり、パトレイバーへの愛を感じる
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- 2014年10月13日 23:42
- 面白かった!
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- 2014年10月13日 23:43
- 不破さんがはじめましてって事は野明が不破さんから正式に勧誘受ける前か
パトレイバー好きだから、好きな人と会えるとホントに嬉しい
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- 2014年10月13日 23:46
- 実写版で語られた後藤隊長と太田の顛末はなぁ・・・・・・(一方で野明、遊馬、進士は幸せになっていたが)。押井としては「こんな問題のある奴らが一般社会に出たら結局こうなるよ」と言いたかったのかもしれないけど
しのぶさんの「へー、ほー、ふ~ん」はマジで怖い…