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勇者「もう勇者なんてやめたい」|エレファント速報:SSまとめブログ

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勇者「もう勇者なんてやめたい」

1: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/08(水) 10:55:30.42 ID:lpuJ/0to0

>勇者達は全滅した!



2: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/08(水) 10:56:10.01 ID:lpuJ/0to0

16歳の誕生日、私の体に勇者の証である紋章が浮かび上がってきた。それまで普通の村娘として生活をしていた私の生活は一変、私は勇者として魔王討伐を命じられたのだけど――


戦士「動きが遅いっ!そんなんじゃこの先やっていけないぞ!!」

魔法使い「いつまで休んでるわけ?こうしている間にも魔王軍は活動しているのよ?」

勇者「ご、ごめんなさい、今行きますから!」

僧侶「ふぅ…こんなお嬢さんのお世話を丸投げされるなんて、王様の命令とはいえいい迷惑です」

勇者「…」


半ば強制的に旅立たされた私が満足に剣など扱えるはずがなく、王様から派遣された強者が集まるパーティーで、私は肩身の狭い思いをしていた。

私が勇者だということが国中に広まるのは早いものであり――

「頑張って下さい勇者様!」
「魔王討伐の報せ、1日も早くお待ちしております!」
「勇者様だ!世界を平和に導いて下さる勇者様だぞ!」

行く先々で見知らぬ人達にこんな声をかけられ、その旅に義務感と重圧が私にのしかかった。

僧侶「ほんと、1日でも早くまともに戦えるようになってほしいですねぇ勇者様?」

勇者「…」

僧侶さんの皮肉にはいつまでたっても慣れることはできず、言われる度私の心に突き刺さった。



3: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/08(水) 10:56:52.43 ID:lpuJ/0to0

戦士「…!おい、空を見ろ!」

魔法使い「あれは…!魔王軍の飛行部隊じゃない!?」

勇者「ひえぇ…」


それは今まで私が見てきた魔物の群れとは違い、正に「軍勢」と呼べる程の集団だった。
腕のたつ仲間達も多勢に無勢と判断したのか、ただ怯えるだけの私をよそに逃走準備を始めたが――


暗黒騎士「逃がすな」


私がもたついていたせいで、逃亡は失敗し――



4: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/08(水) 10:57:31.78 ID:lpuJ/0to0




勇者「う、うーん」

ベッドで目を覚まし、まず最初にため息をついた。

また皆に怒られてしまう…。

これまでも私は何度も戦闘不能に陥った。それも、ほとんどが私の要領の悪さが原因している。
いくら私が勇者といえど、皆がパーティーのお荷物である私にいつまでも寛容でいてはくれなかった。

勇者(私なりに頑張っているつもりなんだけど…)

泣きそうになったけど、泣いたら僧侶さんに皮肉を言われてしまう。
勇者という生き方は私に合わない。そう思うけど、逃げることはできない。私に期待という重圧をかけてくる人達の中に、勇者を放棄することを許してくれる人が何人いるのだろうか。

勇者「もう、起きなきゃ…」

国の神官様がかけてくれた魔法のおかげで、私達は全滅しても、最後に祈りを捧げた教会まで戻ることができる。
かといって、今回の全滅で山1つ分は大戻りしたわけで、結局皆に責められることになるわけだが――

勇者「…あれ?」

だけど周りを見渡すと、違和感があった。

勇者「ここは――教会?」

上手く言えないけれど、そこは教会の一室とは思えない程雑多というか、雰囲気が暗いというか…

?「目を覚ましたか――」

勇者「ひっ!?」

ドアが開いたと同時、低く、威圧感のある声が聞こえ、私は思わず飛び上がった。
それから声のした方を見ると――



5: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/08(水) 10:58:13.51 ID:lpuJ/0to0

暗黒騎士「随分、長く眠っていたな――勇者よ」

勇者「あ、貴方は…」

先ほど自分達を襲った軍隊の先頭に立っていた暗黒騎士だった。
あの時は恐怖で混乱していたが、その物々しい鎧はしっかりと記憶に残っている。

勇者「あのう、ここは…どこですか?」

まだ残っている恐怖心からか、それとも元々の気弱さからか、つい敵にも敬語で話してしまう。

暗黒騎士「ここは魔王城の一室…俺の部屋だ」

勇者「なっ!?」

勇者(ここが私達の目指していた魔王城…なら魔王もここに!?ということは遂に最終決戦…無理無理、絶対負けちゃうううぅぅ!!)

暗黒騎士「落ち着け。お前は感情がすぐ顔に出るようだな」

勇者「はい!?あ、ひゃあぁ」

勇者(は、恥ずかしい…。あれ?でも、今の状況って…)

勇者「私は…捕まったってことですか?」

暗黒騎士「…気付くのが遅い」

鎧兜で表情は見えなかったけれど、口調で呆れているのがわかった。

勇者(うぅ、敵に恥を晒してしまった、また皆に何か言われる…って、あれ?」



6: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/08(水) 10:59:01.70 ID:lpuJ/0to0

勇者「あのぅ、私の仲間の皆さんは?」

暗黒騎士「さぁな。死んではいないと思うが、置いてきたので何をしているかはわからん」

勇者「そうですか。でも、あれ?全滅したら私達教会に戻るはずじゃ…」

暗黒騎士「全滅などしていない」

勇者「そ、そうなんですか!?」

暗黒騎士「あぁ。お前は攻撃される前に気を失ったからな。そのままここに運んできた」

勇者「え、あ、そうなんですか…」

暗黒騎士「恥ずかしい奴だな」

勇者「うぅ」

自分が恥ずかしい奴だということに言われてから気付き、情けないやら悲しいやらで泣きそうになってしまった。

勇者「あら」

それから、遅く気付いたついでに、もう一つ気付いてしまった。

勇者「わ、わわ私これからしょしょ処刑とかされいやあああぁぁぁ」

暗黒騎士「しないから落ち着け」

勇者「しないんですね!?」



10: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/09(木) 10:01:57.29 ID:sthOuHbb0

トントン

暗黒騎士「来訪者か…おい、ベッド下に隠れろ」

勇者「あ、は、はい」モタモタ

命令されるまま隠れてからようやく疑問に思う。
隠れる?どうして?

私が隠れてから、暗黒騎士の「入れ」という言葉で、ドアは開いた。

竜騎士「只今戻りました暗黒騎士様」

暗黒騎士「…で、どうだった?」

竜騎士「はい。勇者は行方不明のままのようです」

勇者(!?)

いきなり自分の話題を出され、思わず声をあげそうになった。

暗黒騎士「勇者の件は急がなくて良いだろう。今日はもう休め」

竜騎士「はい」

客人が部屋を出てから「もういいぞ」と言われ、私はベッド下から出た。
無言の暗黒騎士に声をかけるのは緊張したが、それでも状況を知っておきたかった。

勇者「あのう…私がここにいること、あの方は…」

暗黒騎士「知らん。俺以外な」

勇者「!」



11: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/09(木) 10:02:42.57 ID:sthOuHbb0

彼の話によると、あの場は戦闘で大分混乱し、気絶していた私を見ている者はいなかったようで、それで皆の目を盗んで私をさらってこれたようだった。
聞けば聞く程自分が情けない。

勇者(だけど…)

勇者「どうして私を殺さなかったんですか?」

こちらとしては当然の疑問に、暗黒騎士のため息が聞こえた。

暗黒騎士「殺されたかったわけか?」

質問を質問で返され、答えをはぐらかされた気がした。だけど、その質問につい――

勇者「…そうかも」

本音がこぼれた。
暗黒騎士の表情は相変わらず見えないが、彼は言葉を詰まらせたのか、それとも言葉の続きを待っているのか、返事はなかった。

勇者「処刑とかは怖いですけど…気絶したまま死ねるのは、楽だし」

暗黒騎士「驚いたな、勇者の口からそんな言葉が出てくるとは」

勇者「だっごへの攻撃を続けてきた。なのに、いいのですか、それで」

魔王「フ――」

魔王は笑った。今度の笑みは自嘲を含んでいるようだった。

魔王「我の代では人間を降伏させることが不可能かもしれん。だが世代交代した後のことに口出しをすべきではない。それに――」

暗黒騎士「――!」






魔王「我はもう、疲れてきたのでな」

魔王が袖をめくって見せたのは、暗黒騎士と同じ、呪いの紋章だった。



109: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/14(火) 18:51:14.85 ID:TOPw8sWB0

翌年、勇者を奪われ絶望に満ちていた人間の弱小国達は、次々と魔王軍への降伏を申し出た。
制圧国に対し魔王軍が暴利を働くことは無かったが、制圧国の人々は敗北感を根強く抱いていた。
大国は魔王に歯向かう意思を覆さず、軍隊による魔王軍への攻撃を行う。これを魔王軍は迎え撃ち、一進一退の攻防が続いた。
強い意思を持って魔王軍に立ち向かう者は多く、彼らは人間達の希望となることはなくとも、最後までその意思を貫いていった。

そういった時代が長く続いたが、その年歴史は一変する。

先代の魔王が旧没し、世代交代が行われたのである。

新魔王が最初にした事、それは魔王軍の引き上げ。そして、制圧国の解放。

それから各国への、和解交渉が始まった。



110: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/14(火) 18:52:01.41 ID:TOPw8sWB0

長年戦っていた為仕方ないが、まだ魔王軍に敵意を持つ人は多い。

争いを止めるというのは、なかなか難しいものですね――

私の言葉に彼が頷く。だがその後続けた。「まだまだこれからだ」と。
彼は強い。これから困難な道が続くとわかっていても、立ち向かう覚悟ができている。
あまりにも強い彼が、私には大きな存在に感じる時がある。それから思う。自分は共に立ち向かえるのか、と。

「お前は立ち向かう必要はない」

彼は即座にそう言った。どうやら、また思っていることが顔に出ていたようだ。

「立ち向かうのは俺の役目だ。お前は――」

貴方を支えれば宜しいでしょうか――そう尋ねたが、すぐに否定された。
何年連れ添っても彼の言いたいことが読めない…だけどそんな私に彼は優しく微笑んだ。

「守られていろ。それで俺は前に進むことができる」

本当にそれでいいんですか?尋ねると彼はああ、と頷いた。「今までと同じくな」とつけ加えて。
彼は弱い私をずっと、守り、支えてきてくれた。私はあれから変わらず弱いまま。いいのだろうか、それで。

「何故、無理に強くならなければならない?」

答えられない。理由はわからないけど、弱いままではいけないような気がして。

「弱くてもいい」

私の自己否定的な考え方を、彼はすぐに否定してくれた。

「それがお前だ」

彼はいつも、私に欲しい言葉をくれた。



111: ◆WnJdwN8j0.:2014/10/14(火) 18:53:41.74 ID:TOPw8sWB0

魔王の世代交代から3年、新たな展開が訪れる。

魔王の妻が子をなした。

既に魔王と和解していた多くの国々はこれを祝い、そして希望の象徴が生んだその子を「奇跡の子」と呼ぶ。
奇跡の子はやがて世界に平和をもたらすと言われるようになり、その存在が争いの沈静化に大きく貢献した。

「昔よりは世界の状態が大分マシになったな」

そうですね。

「その子を生んでくれたお前のお陰だ。感謝する」

貴方の力あってのことです。

「お前が側に居てくれたから、俺はここまでできたんだ」

貴方が守って下さったから、私は幸せでいられるんです。

「ありがとう」

こちらこそ、いつもありがとうございます。


いつの間にか子は眠りについていた。寝た子を起こさぬよう、2人とも言葉を止める。
言葉が無くても気持ちを伝えることはできる。
私は昔の顔をして、彼に微笑んだ。




『貴方に出会えて良かったです――暗黒騎士様』




彼も昔の顔で応えてくれた。
それから共に子を見守る。

これから守っていくべき存在を胸に抱き、私はようやく強くなれた気がした。







Fin



転載元
勇者「もう勇者なんてやめたい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412733320/
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コメント一覧

    • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 20:42
    • 最後はご都合主義かよ。暗黒騎士が死んでお涙ちょうだいエンドかと思ったのに
    • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 21:04
    • いいから永久にROMってろ
    • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 21:05
    • そもそも勇者ならゴッドバードヘッドカッターの万発億発やらかさんかい。
      だからここはアイマスモバマス物のSSばっかなんだよ。
    • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 21:08
    • 元のパーティーの3人が暗殺に来るかとヒヤヒヤしたわ
    • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 21:26
    • くっさい厨房湧いてんな
    • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 21:34
    • 魔王と暗黒騎士の対峙までは良いけれど、
      和平エンドに持ってくには人間側の身勝手さを解決or納得する展開が要るんじゃないかねえ
    • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 21:40
    • 5 良作
    • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 21:42
    • 何故かスレタイが脳内で勇者「やばい、尿漏れしそうだ」に変換されててシリアス過ぎてテンパった
    • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 23:08
    • こういうのってたいていRPG、特にドラクエとかがモデルだけど
      プレイヤー≒勇者だから、戦いたくないとか言うのが違和感なんだよな
      こっちは冒険したくてやってるわけで
    • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2014年10月14日 23:27
    • めっさいい話!

はじめに

コメント、はてブなどなど
ありがとうございます(`・ω・´)

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