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LTE電波調査隊:東海道新幹線・新大阪-東京 復路調査〜下りau、上りSoftBank、改善見えないドコモ - Engadget Japanese


Engadgetでは、9月22日・23日の2日間に東海道新幹線・東京ー新大阪間、および大阪市内のLTE品質調査を実施しました。

東海道新幹線・東京-新大阪間 および 大阪環状線の外回り・内回りでのXenSurveyによる調査リポート、大阪市内のユニバーサルスタジオおよび大阪環状線の主要駅、新幹線往復時の停車駅のRBB TODAY SPEEDTESTによる調査リポートと連載してきた本特集もいよいよラストです。本稿では東海道新幹線・新大阪-東京間のXenSurveyによる自動テスト結果をリポートならびに今回調査のまとめをお届けします。
 

今回の調査ですが、電車移動区間は 昨年11月の東北新幹線今年4月の東海道新幹線・東京-名古屋間などで実施したLTE品質調査と同様、モバイルネットワーク自動テスト・ツールXenSurveyによる3キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)のフィールドテストを実施しました。

電車移動中の停車駅でのスポットでの計測や、大阪市内スポット・駅でのLTE品質調査では、RBB TODAY SPEEDTESTを使用しています。ソフトバンクとワイモバイルは、グループ内でモバイルネットワークを融通しているため、今回はワイモバイルのテストは実施しないこととしました。

東海道新幹線・新大阪~名古屋間間(上り・山側)のLTE品質調査

往路の東海道新幹線 東京 ー 新大阪間では、auがダウンロード(下り)に強くソフトバンクがアップロード(上り)に強い結果となりました。すでに十分なテストデータが取得できているため、復路の東海道新幹線 新大阪 ー 東京間では、新大阪から名古屋間のテストと、名古屋から東京までを計測しました。これは4月の東京~名古屋間でのXenSurveyによるテストと比較できる2区間に区切ってLTE品質の変化を調査するためです。

以下は調査概要、まずは新大阪~名古屋間についてリポートします。
 

調査概要

東海道新幹線 388号・新大阪~名古屋(14号車1E席=山側)
日時 2014年9月23日(火)
テスト時間 16時41分16秒~(57分28秒))
総移動距離 約210.6km(営業キロ)
電波強度(RSRP、SNR)サンプル数 約3301件/1台
電波品質(Latency、Packet Loss、Jitter)
サンプル数
約57件/台
通信速度計測方法・サンプル数 2分間隔の自動実行・29回/台
テストツール XenSurvey
テストに使用した端末 ドコモ:GALAXY S5 SC-04F
au:GALAXY S5 SCL23
ソフトバンク:AQUOS Crystal 305SH

 
東海道新幹線 388号・名古屋~東京(14号車1E席=山側)
日時 2014年9月23日(火)
テスト時間 17時39分54秒~(1時間41分3秒)
総移動距離 約342.0km(営業キロ)
電波強度(RSRP、SNR)サンプル数 約5802件/1台
電波品質(Latency、Packet Loss、Jitter)
サンプル数
約102件/台
通信速度計測方法・サンプル数 2分間隔の自動実行・51回/台
テストツール XenSurvey
テストに使用した端末 ドコモ:GALAXY S5 SC-04F
au:GALAXY S5 SCL23
ソフトバンク:Nexus5 LG-D821
 
最新かつ3社共通機種のiPhone6・iPhone6 Plusでのテストを実施したいところですが、Androidとは異なり、iOSの制限からXenSurveyのiOS版が開発されていないため、最新2014夏モデルAndroidスマートフォンを使用しました。
 
左から手動テスト用iPhone6 Plus、XenSurvey用GALAXY S5 ドコモSC-04F・au SCL22・AQUOS Crystal 305SH
 

ソフトバンクの直近3日間1GB 超利用時の厳密な通信速度制限、しかし上りは制限なしで高速

調査概要
 
ドコモ、au、ソフトバンクのいずれも、直近3日間のデータ通信量が1GB(ソフトバンクは839万パケット=約1GBとしています)を超過すると、通信制御(速度規制)の対象となります。 

このうちドコモとauは、通信速度を制限する場合があるとしているものの、実際には接続している基地局が混雑しているときにのみ速度が制限されます。しかし、ソフトバンクはネットワークが空いていても、当日の午前6時から翌日の午前6時まで24時間、解除する方法もなく速度が制限されます。また月間7GBのパケットプランでも、前日から3日以内の合計データ通信量が1GBを超えた場合、制限の対象です。

さらにソフトバンクは、多彩なSIMを機種・タイプごとに発行しており、ソフトバンクのAndroid端末用のSIMとソフトバンクのiPhone用のSIMが相互利用できない制限もあります。今回、フィールドテスト専用としてソフトバンク3回線(Android用 x 1、iPhone用 x 2)を用意していましたが、iPhone用のSIMをAQUOS Crystalでは使用できません。(Nexsus 5では使用できます)

そういった背景があるなか、前日に余裕で1GBを超過している回線を新大阪~名古屋間のテストに使用しましたが、当然しっかり規制され下り速度は平均50kbps程度という状況。しかし上りに関しては速度制限されず、最速12.61Mbps・平均8.05Mbpsと3社でトップとなり、自称ではない上りNo.1の結果になりました。

とはいえ、かねてよりドコモやauと同様に、仮に1GBを超えても混んでいる基地局・ネットワークでの通信制限・速度制限にとどめるよう切り替えて欲しいという声も聞きます。法人での利用においては、出張時などPC接続して業務データを会社に送信する際、一時的にデータ通信量が増えることも少なからずあるため、是非とも見直しして欲しい点です。

 

新大阪~名古屋間もauの下りは最強だった

ソフトバンクの下り速度は規制を受ける中、ドコモとauの下り速度一騎打ちです。

下り速度

ドコモが平均9.85Mbpsにとどまり、auはその倍以上となる平均21.85Mbps・最速54.38Mbpsと大差をつけました。29回のスループットテストで、ドコモの平均以上を計測したのが24回、ドコモは10Mbps超となったのがわずかに10回だけでした。

東名阪バンドのBand3・20MHz幅が利用できないエリアが含まれているかもしれませんが、乗客の多い東海道新幹線エリアのドコモの通信品質は早期改善を期待したいところです。


上り速度

前述した通り、上りは速度制限されていないソフトバンクが圧勝しました。グラフをみたままの結果で、ドコモ・auのはるか上に折れ線グラフがプロットされており、平均8.05Mbps・最速12.61Mbpsと余裕があります。

auも平均5.35Mbps・最速9.12Mbpsと良好ですが、ドコモは名古屋直前で区間最速の12.94Mbpsを記録したものの平均は3.56Mbps。特に京都を過ぎてから滋賀エリアにおいて1Mbps未満を9回も記録するなど、かなり厳しい結果です。 そういえばドコモは「Strong.」に変わる新しいスローガンは打ち出していないようです。
 

Latency(Ping応答速度)

Packet Loss(パケット損失)

Jitter(ゆらぎ)

 
端末 Operator Latency(ms) Packet Loss Jitter(ms)
平均 200ms超 平均 1%超 平均 100ms超
GALAXY S5 SC-04F ドコモ 178 5回 1% 2回 31 6回
GALAXY S5 SCL23 au 193 11回 0% 1回 61 9回
AQUOS Crystal 305SH SoftBank 180 9回 0% 1回 42 6回
電波品質(Latency・Packet Loss・Jitter)

しかしスループット(下り速度・上り速度)では苦戦していたドコモが、こと電波品質においては、最も良好という結果でした。 スループットでは勝てないものの区間全体としての、通信品質は安定しており、派手さより実を優先するドコモらしさが出ています。ただしドコモだけPacket Lossが往路復路で2回ずつ検出されており手抜きともとれます。あるいは、電波品質を高めてきているソフトバンク、下り速度を追求するauを褒めるべきかもしれません。
 

東海道新幹線・新大阪~名古屋 LTE品質調査

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名古屋~東京間も下りのau、上りのソフトバンク


東海道新幹線での下りの通信速度と接続性を徹底的に改善してきたauは、名古屋~東京の上り路線においても、平均14.38Mbps・最速45.91Mbpsと余裕の1位でした。

上りはソフトバンクが平均7.84Mbps・最速16.34Mbpsで余裕の1位で、下り速度についても25Mbpsを越える結果こそなかったものの、下り平均11.63Mbpsと良好でありエリア改善が進んでいることが確認できました。auがこの猛追をかわすには、上り速度の改善が必須です。

ドコモについては名古屋までの区間と同様、穴が多すぎます。グラフをぱっとみて、下の方にブルーのライン(ドコモ)が集中していますが、スループットテスト51回の内、下り速度5Mbps未満が18回、上り速度2.5Mbps未満が26回もあり、さらに通信できていない0Mbpsが10回もあるという惨憺たる結果。 接続率もドコモのみ100%を逃し99.52%となっています。この結果はたまたま、その時、その端末、その場所、と言い訳をいえるような状況ではなく、改善あるのみです。
 

下り速度

上り速度


4月の東京~名古屋間のテスト結果と比較します。

Device Operator Signal 下り(Mbps) 上り(Mbps) 接続率
平均 平均 最速 平均 最速 全て LTE
GALAXY J DOCOMO -89dBm 8.89 27.75 2.14s 7.94 99.94% 99%
GALAXY Note3 KDDI -82dBm 10.07 23.12 5.5 10.52 100% 100%
Nexus 5 SoftBank -87dBm 7.23 20.04 4.85 11.31 100% 98%
STREAM X EMOBILE -88dBm 5.3 22.85 4.25 11.98 99.79% 99%

4月の東京~名古屋間テスト結果サマリー(Signal・Downlink・Uplink・接続率)

海側を走行する東京~名古屋間と、山側を走行する名古屋~東京間では、掴む電波が異なること、5カ月の時を経ていることからも数値はかなり異なりますが、ソフトバンクの下り平均速度が7.23Mbpsから11.63Mbpsへ、上り速度平均が4.25Mbpsから7.84Mbpsへ、接続率が98%から100%と改善された点は評価すべきポイントです。

これに対し、ドコモは接続率が99.94%から99.52%に下がっており、対策が進んでいないことがわかります。

またauは下り速度が伸びていますが、計測した機種がGALAXY Note 3からGALAXY S5となり、WiMAX 2+とCAを掴めるようになったことで、下り最高速度が23.12Mpsから45.91Mbpsへと高速化され、15Mbps以上も13回/計55回から20回/計51回と、下り高速化に成功していることが確認できました。
  
最後に電波品質(Latency・Packet Loss・Jitter)について確認します。

Latency(Ping応答速度)

Packet Loss(パケット損失)

Jitter(ゆらぎ)

端末 Operator Latency(ms) Packet Loss Jitter(ms)
平均 200ms超 平均 1%超 平均 100ms超
GALAXY S5 SC-04F ドコモ 194 15回 1% 3回 53 11回
GALAXY S5 SCL23 au 172 12回 0% 1回 30 8回
AQUOS Crystal 305SH SoftBank 182 12回 0% 3回 47 10回

電波品質(Latency・Packet Loss・Jitter)

auがもっとも良好で、猛追してくるソフトバンクを引き離すような品質向上が進んでいます。ドコモは、新大阪~名古屋間まで耐えていましたが、名古屋~東京間ではスループットの結果を裏付けるように、かなりひどい、Jitter(通信のゆらぎ)がワーストになるなどドコモらしくない、改善する気はないのか、と思わせるような結果です。

東海道新幹線・名古屋~東京 LTE品質調査

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LTE品質調査を終えて

今回はじめて、東海道新幹線は東京から新大阪まで、大阪市内でも線と点での計測を行い、広範囲なLTE品質調査を実施できましたが、予想どおりと予想外がいくつも交錯しました。

NTTドコモ
大阪環状線では絶対的な強みがあると、スピードテストのレポートやSNS上の口コミで見聞きしてきましたが、実際に調査してみるとそれほど強さはなく、あくまでも「点」で強いところが多いだけという予想外、あるいは疑いをもっていたがやはりそうだった、という結果です。

また、他社と比較して東海道新幹線での電波品質の悪さは全くの想定外でした。

Signal、SNR、RSRQの全てが低いドコモの東海道新幹線


ドコモは、優れた研究、技術、実装、運用、権利(クワッドバンドの強み)、資金力を有しており、ベストエフォートで推進すれば、あっという間に改善できるはずです。しかし今回の結果は、NTTらしくベストではなくリーズナブルエフォート(妥当な努力)に留めている、という状況にみえます。
 
計測値が低くとも、電波の質やプロトコル制限などをおこなわずに快適に使えるはずのドコモが、その電波品質・通信品質の低下により信頼をも失うと、顧客の流出(MNP転出超過)が拡大し、収益(音声ARPU・データARPU)も低下し、株価の低迷といった状況にまで陥るかもしれません。

CA(キャリアアグリゲーション)による下り最大225Mbpsも大切ですが、業界で最も高いポテンシャルが単なる幻想や妄想だった、あるいは過去のものだと言われる前に、しっかりとポテンシャルを活かし、やるべきことを進めていただきたいと感じました。

 
au(KDDI)
電波が切れないエリア改善や下り速度の向上に、KDDIの田中社長や木下室長が徹底的に取り組んできたからこそ、成し得たLTE品質が結果として確認できました。

東海道新幹線エリアで安定した高いレベルのLTE電波品質のau

課題として見えてきたのは、優先的にLTE Band 41(WiMAX 2+)に接続しており、Band 41で繋がると上り上限10Mpsとなり、実効値としては概ね7Mbps台に留まり、他社の上りと比較するとドコモのBand 3では5倍もの差が開きます。

期待すべきは、LTE Band 18・800MHz帯とBand 1・2.1GHz帯で束ねたCA(キャリアアグリゲーション)エリアの広がりです。下りに余裕ができ、Band 41に優先的に接続しなければおのずと上り速度が向上するでしょう。

ただし、CAは10MHz幅x2の下り通信を束ねるだけでであるため、上り速度はプライマリ接続したBandの10MHz幅での上り最大値である25Mbpsが上限になります。これはドコモのBand 3・20MHz幅の上り最大50Mbpsには及びません。

またCAを優先拡大すると、獲得している周波数の関係で15MHz幅・20MHz幅のエリアが増えることはありません。上り速度の課題は継続します。

いずれにせよauは現状に甘んずることなく、更なるエリア品質の向上と、上り速度の改善を図って欲しいところです。


ソフトバンク
今回の調査で良い意味で期待を裏切り、予想を大きく上回ったのがソフトバンクです。上り速度の速さ、大阪市内でも東海道新幹線エリアでも電波品質の向上にかなり力をいれてきたことが伺えます。

東海道新幹線エリアでも予想外に品質が良かったソフトバンク

懸念としては、スピードテストには強く実利用には弱い、罠があるとされる点です。動画閲覧などのプロトコル規制や圧縮にユーザーが満足できるのか。直近3日間の1GB超利用における厳密な速度制限に我慢ができるのか。1つのSIMで異なる機種(Androidスマホ、iPhone・iPad、フィーチャーフォン)で使い回しができない不便さに耐えられるのか、といった課題が挙げられます。

また、プラチナバンドLTE 900MHz帯が、いつになったら使えるようになるのかといったこともあります。グループ内の周波数帯を束ねたり分散させたりすることで、ごまかしごまかし運用している印象もあり、また下りの高速エリアは広がらないのかという点においても、引き続き留意すべき点と言えます。

次回はユニバーサルスタジオ内で?

左からドコモGALAXY S5 SC-04Fとau GALAXY S5 SCL23のServiceMode、iPhone6 PlusのField Test


 今後も、Engadget電波調査隊のLTE電波品質フィールドテストの旅は続きます。
 

LTE電波調査隊:東海道新幹線・新大阪-東京 復路調査〜下りau、上りSoftBank、改善見えないドコモ

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