薔薇師の水晶 第8話~第14話
- 845 :名無しさん@避難中:2014/10/16(木) 20:50:40 ID:Jx8zvuFM0
- 第1話~第7話はこちら
- 846 :名無しさん@避難中:2014/10/16(木) 20:50:40 ID:Jx8zvuFM0
- 【薔薇師の水晶 08/21 花と紛う(前編)】
- 847 :名無しさん@避難中:2014/10/16(木) 20:51:41 ID:Jx8zvuFM0
- 河童「待った!」
木鬼「さっきから何回『待った』かましてるんだよ」
河童「いや、ちげーし。将棋のルールが俺の知ってるのと違うから戸惑ってるだけだし。初心者には優しくしてくれYO!」
木鬼「将棋のルールなんて全国一緒だろうが」
河童「だって盤の端から端にワープできないとかありえねーし」
木鬼「アホか。そんなルール許したら一手目で玉が王取って終わるだろ」
河童「あ…」
木鬼「……」
河童「そ、それはともかくYO! 水晶ちゃん、今日はまだ帰ってこないの?」
木鬼「一週間は多分帰ってこないと思うぞ」
河童「えーッ!! なんで? そんなに!?」
木鬼「お前と言う奴は全く人の話を聞いていないな。あの子は薔薇師なんだ。
薔薇の怪異の噂が有れば全国どこでも津々浦々、出っ張るんだよ」
河童「そうでしたっけ」
木鬼「第一の目的は、上位の薔薇が宿っていたとされる人形の遺体探しだが
僕が薔薇の尾を引いて探せる範囲内には今、それらしき薔薇の気の渦巻きは見つからなかった」
河童「難しい話は苦手DEATH」
木鬼「近場に目当てが無ければ遠出するしかなかろう」
河童「あ、それ分かりやすい。最初からそう言ってYO!
それと水晶ちゃん、折角左目あげたのにまた眼帯してたけど、ナンデ?」
木鬼「水晶の左目の穴は義眼と眼帯のセットにした方が呪いの抑制効果が高い。
前、眼帯外していたのは義眼の移植直後だったからだ」
河童「ほへぇ~」
木鬼「…何が悲しゅうて妖怪もどき相手に何度も同じ講釈せにゃならんのだ」
河童「俺だって何が悲しくて男やもめの相手を…毎日水晶ちゃんを見ることだけが楽しみで、やって来てたのに」
木鬼「じゃあ、もう帰って冬眠でもしてろよ」
河童「まだ冬じゃねーし。あ、でも槐先生の冷たい視線で冬眠できそう」
木鬼「じゃあ見ててやるからここで寝ろ。眠ったら土に埋めてやる、深めに」
河童「なんか理不尽なぐらいキツイっすYO! 槐先生だって水晶ちゃんいなくて寂しくて暇なんでしょう?」
木鬼「そんなことは無い」
河童「だって今日、俺朝からいたけど、だーれもお客さん来なかったじゃない。
開店休業、閑古鳥がピーチクパーチクさえずってますYO!」
木鬼「医者に閑古鳥が鳴くのは村が平和な証拠だ。大体ピーチクうるさいのは貴様だろう、アヒル口」
河童「そ、それじゃあこうしましょう。河童界隈で大流行の将棋特別ルール、将棋相撲!!」
木鬼「何が『それじゃあ』だ。それにお前、正確には河童じゃないだろう」
河童「まあまあ。ルールは簡単、お互い将棋を一手指した後に相撲を一つ取る。
相撲を取り終えたら、またお互い一手指す。体力が尽きた方が負けってやつですYO!」
木鬼「それ殆ど相撲じゃねーか、ナマモノ」
河童「ふっふっふ、槐先生ともあろう方が怖いんですか?」
木鬼「なんだと?」
河童「水晶ちゃんも言ってたなぁ…『私、千代の富士みたいに強い人が好きなんです』って」
木鬼「…いいだろう、挑発に乗ってやるよ。それに前から言いたかっただけど
お前が喋ると時代背景とか世界観とか片っ端から崩れていくんだよ」
河童「うるせぇーーー!! 行司を呼べぇーーー!!」
木鬼(勢いで無視しやがった。タイミングといい、声の大きさといい、できる…)
- 848 :名無しさん@避難中:2014/10/16(木) 20:55:45 ID:Jx8zvuFM0
- 木鬼「…ぐはぁッ!!」
河童「かっかっか! 勝負ありだな槐先生」
木鬼「つ…強い。『くるくるエンちゃん』と呼ばれたこの僕の土俵際の粘りが通じないとは!」
河童「俺の実力を見誤っちゃあ困るYO! 伊達に人外に身を落としてないってばYO!」
木鬼「くっ、ふざけたキャラのせいで奴のポテンシャルを過小評価していたか…」
河童「それじゃあ約束通り、娘さんを僕に下さい」
木鬼「あんまり調子に乗ってっと皿割るぞナマモノ」
河童「…すんませんでした。これ皿に見えるけど普通に頭皮なんで勘弁して下さい」
木鬼「やれやれ。で、もう晩飯の時間だがどうする?」
河童「え?」
木鬼「食べていくのか? いかないのか?」
河童「え、槐先生! 何だかんだ言って優しいあなたが俺は大好きだ」
木鬼「味は保証できんぞ。いつもは水晶に作ってもらってるからな」
- 849 :名無しさん@避難中:2014/10/16(木) 20:57:20 ID:Jx8zvuFM0
- 河童「…むしゃむしゃ。水晶ちゃんも今頃ご飯をちゃんと食べてるんでしょうかね」
木鬼「さあな。あの子はそもそも一週間位なら食事をしなくても困らないからな」
河童「ええ!? 餓死とかしないのかYO! 本当に人間ですかい、あの娘?」
木鬼「お前が言うな河童モドキ。だが、あの子のことを『人間だ』と胸を張って言ってやれない僕がいるのも事実だ」
河童「?」
木鬼「いや、なんでもない。些細なことだ」
河童「何かよく分からないけど、槐先生も大変なんですね。あ、醤油とってくれません?」
木鬼「…ほら」
河童「ども。ところで彼女、薔薇の怪異を求めて遠出したって話でしたが、どんな異変があったんです?」
木鬼「西国から流れてきた噂話に薔薇の怪異の匂いがしたんで水晶に現場まで行ってもらった。
実際、どんな薔薇の仕業かは水晶が帰ってからの報告待ちだな」
河童「じゃあ、せめてその噂話の内容だけでも教えてくださいYO!
薔薇の仕業のスメルがするってんなら何か見当つけてるところもあるんでしょう?」
木鬼「いいだろう。まんざら、お前にも関係のない話でもないしな」
河童「へ?」
- 850 :名無しさん@避難中:2014/10/16(木) 21:00:50 ID:Jx8zvuFM0
- 木鬼「とある面打ちが般若の面を作った。それをまた、とある富豪の妻が買い取った」
河童「ふむふむ」
木鬼「しかし、妻がその面を夫の家に持ち帰る途中の山道で雷に打たれて死亡。面と死体は沼に落ちた」
河童「ありゃりゃ、可哀想に」
木鬼「同行していた召使いの証言から沼をさらったが妻の死体は見つからず、般若面だけが見つかった。
しかも、その般若の面は妻の顔とそっくりだったという」
河童「不気味っすね」
木鬼「夫である富豪は、周囲が諌めるのも聞かず、その般若面を妻の形見として保管していた」
河童「気持ちは分かるYO!」
木鬼「ところがある日、富豪は衝動的にその面を被って以来
般若面が取れなくなってしまい、他人の前に姿を見せなくなったとさ」
河童「怪談にしちゃオチが弱くねえですか?」
木鬼「誰が怪談だと言った」
河童「冗談だYO! で、この話のどこに薔薇の仕業があるんDIE? 大方、その同行していた使用人ってのが
あやしいYO! 適当ぶっこいて富豪のワイフと駆け落ちしたんじゃないのかYO!」
木鬼「発想が下世話な奴だな。途中、死体と面が沼に落ちたと言ったろう。
沼には、落ちた死体を適当に合成する癖をもつ薔薇がいることがある」
河童「あ、それって」
木鬼「そう、翠物(みどりもの)の欲張り型だよ。般若面も見方を変えれば『木の死体』だ」
河童「でも、そりゃちょっとこじつけが過ぎませんかい?」
木鬼「二つの死体が沈んで、その両方の特徴を持った一つが見つかる。
偶然にしちゃあ出来過ぎだと思うがな。般若の面が緑色に変わっていたなら確定なんだが…」
河童「噂話じゃあ、そこまではインコンプリート! 分かんなかった…と」
木鬼「黒薔薇師なんかは、人為的に合成獣を作る際に翠物を利用することもあるというが。
植物と動物の合成というのも、前例…と言えるのは多くない」
河童「槐先生、また話が難しくなってきていますYO!」
木鬼「…七薔薇の一つに、翠星石と呼ばれる薔薇がいる。エデルロゼでは、その姿は海に棲む
巨大な鮫(フカ)とされているんだが、目の前にある物を何でも食べる大食いだったらしい」
河童「先生~、僕は早くも話についてけません」
木鬼「その時に大量の海水も飲みこむもんだから定期的に空に向かって鰓や口から水を噴き出す。
近くの陸地には塩気を含んだ雨が降り、植物を枯らした」
河童「先生~、僕を置いてかないでYO!」
木鬼「これは翠星石のゲップ、あるいはもうちょっと洒落て翠星石の如雨露と呼ばれる現象だが…
まあとにかく植物は枯れるし、金属は錆びるしで迷惑だったらしい」
河童「……」
木鬼「もっと困ったのは翠星石が水と一緒に吐き出すペレット(未消化物)だ。
なんでも丸呑みにするもんだからペレットがまだ生きていたということがある」
河童「……」
木鬼「食われた生き物がペレット内で混じり合ってたって言うのもザラだ。
海藻とクジラが合体してたりな。エデルロゼ内の記述だから確かめる方法は無いが」
河童「…zZZ」
木鬼「だから栄養源となる相手を融合させる性質を持った薔薇に
翠物って名前がつけられたのも、この翠星石の伝説にあやかってだ」
河童「…zZZ」
木鬼「一方で翠星石は多食の薔薇とされながらも多産の性質も持つとして、食う以上の生命を育んだとも…」
- 851 :名無しさん@避難中:2014/10/16(木) 21:03:22 ID:Jx8zvuFM0
- 水晶(…困った。困りましたよ、これは。
まさか富豪の般若面の怪異がこんな事態になっていたとは、とても私の手に負える事件じゃない)
商人「よぉ! そこなお嬢さん、店の前でずっと悩んでないで何か買って行っておくれ! 美味しいよ!」
水晶「あ…いえ…」
商人「なんでぇ、ひやかしかい?」
水晶「す、すいません。ちょっと考え事を」
商人「なら、他のお客の邪魔だよ。どいたどいた…」
一樹「おっと、旦那。その鼈甲飴二つくれ。俺と、このお嬢さんの分だ」
水晶「か…一樹さん!?」
商人「へ、へい毎度!」
一樹「久しぶりですね水晶さん。飴をどうぞ」
水晶「あ、ありがとうございます。私も一樹さんにこんなところで、お会いできるとは」
一樹「俺は、また薔薇退治の話がたまったので桜田様の家にでも向かおうかと思って旅していたところです。
それより、どうされたんです? 随分と悩まれていたようだが」
水晶「実は…」
- 852 :名無しさん@避難中:2014/10/16(木) 21:05:38 ID:Jx8zvuFM0
- 一樹「あっはっはっは。薔薇の怪異だと思ったら使用人が適当こいてて富豪の妻と雲隠れ!
恥をかいた富豪が人に合わす顔が無く引きこもってただけだと!」
水晶「笑いごとじゃありませんよ」
一樹「いや失礼した。でもまあ、薔薇師の職業病ですよ。変わった話を聞いたら
薔薇の仕業に結びつけてしまうのは。俺も何度か早とちりしたことがあります」
水晶「富豪の妻の顔が最初から般若に似ていたという事実がもう…」
一樹「はっはっは。事実は小説よりも奇なりってとこか?
そのせいで般若の顔が妻に生き映しだとか、逆の噂が出ちまったんですな」
水晶「どっと疲れました」
一樹「いやいや全く、富豪も使用人も般若面の奥方のどこに惚れたんだか。
他人様の好みに文句は言えませんが、それも不思議っちゃ
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- :-:2014/10/18(土) 21:04:09
- 一気に野薔薇・ロゼリオンな話に進展したね
月見描写すげえ良かった
- :-:2014/10/18(土) 21:10:37
- 河童のヤロウのせいで一時はどうなるかと思ったが…w
- :-:2014/10/18(土) 21:15:26
- マジで新作キタ!
今回もメチャ面白かったッス!!
- :-:2014/10/18(土) 21:25:53
- >水夫「かしら!かしらーーー!!」
カナの生まれ変わりかな?
大昔の高性能機を参考に劣化コピーを作るなんてエルガイムみたいだな
オリジナル真紅はスパロボFのオージの如く超装甲と超火力を持ち合わせてそう
- :-:2014/10/18(土) 21:26:40
- 普通に馴染んでる河童にセーラー戦士でダメだったwwwwww
段々核心に迫ってるがやっぱ野薔薇・ロゼリオンっぽいな、最後はどうなるか
- :-:2014/10/18(土) 21:34:52
- 薔薇がゴルゴムみたいな扱われ方されててワロタ
- :-:2014/10/18(土) 22:14:56
- 見ていて引き込まれる作品だと思ったら安定の稲中ネタに日本神話ネタをぶっ込むとは。
そして「伊達にあの世は見てねぇぜ」ってアニメ版幽白の次回予告の決め台詞だし。懐かしいわ。
- :-:2014/10/18(土) 23:53:18
- 薔薇河童の濃厚なホモからの「帰り迷う」「掌を空に」はまさに芸術
そして般若面の奥方に思わずワロタwww
>図士「いや、月身酒をして酔っぱらってしまっただけだ。もう大丈夫。
たぶん月見酒だと思うんですけど(名推理)
- :-:2014/10/18(土) 23:53:59
- 翠星石のゲップてお前…